映画の豆

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「ウィッチ」

2017年08月07日 | ホラー映画
ロバート・エガース監督
久しぶりの立ち見でした。
しかしどう考えても大勢の人がキャッキャと楽しむ映画ではなく
ジャンルとしてはオカルト宗教サイコホラー…って感じなんですが、どうしたんだみんな。

1630年、ニューイングランドのピューリタンの集落で、
ある男性が、教義の解釈違いのため周囲に反発し、
妻子を連れて村を離脱する。
夫と妻、5人の子供達は平野に家を作って暮らし始めるが、
生まれたばかりの末の男の子を長女があやしている最中、
ちょっと目を離した間に赤ん坊は姿を消す。
その日から母は泣き暮らし、段々と歯車が狂っていく…というあらすじ。

彼等は物凄い真面目な清教徒なので、
生活はすべて信仰のためのものだし、
子供が連続で死んでも「神が試練をお与えになっている」と解釈して
原因の検証と危機回避ができないのです。
一家のリーダーである父と母が今の価値観からするとまともではないので
見ていてずっと苦しかった。

初監督作品とは思えないくらい話が簡潔で
画面の色と明暗が作りこまれていました。
バロック絵画に寄せてるなーって何回か思ったし、
明らかにゴヤ…ってシーンもあった。

ラストばれ

魔女裁判がどういう風に起こるか、最小ロットで見せられてる気分でした。
きっかけは末っ子の死でしたが、終盤に母親が長女に
「お前は弟を誘惑した。父親を誘惑した。私から幸せを奪った」
というような事を言っちゃってることから分かるように、
元々母親の中にあった嫌悪で、
息子は愛せるけど娘は愛せないタイプの母親は実はそんなに珍しくないと思う。
程度の問題で。

父親も、妻が大切にしている銀のコップを黙って売ってしまって、
妻が長女に嫌疑をかけたときに黙っているのが最悪だと思った。
そもそもこの人が序盤で頭を下げて群れに戻っていれば全滅しなくて済んだのに、
状況も自分も直視できなかったためにああいう結末を迎えた。

なのでラストはむしろすっきりした。
そういう意味ではキングの「キャリー」に近いし、
モチーフに「魔女たちの飛翔」が使われている点で
ダニー・ボイル監督の「トランス」を思い出した。
どれも魔女の誕生を肯定している作品だと私は思います。

ゴヤの「魔女たちの飛翔」、私は長らく魔女に襲われている人と、
そこから逃げ出す人の絵だと思っていましたが(右腕が助けを求めるポーズに見える)、
最近では若者に知恵を授ける魔女と、
文明と理性を拒む愚かな者たちと解釈されているのですね。
(光源と、暗愚の象徴であるロバが地表にいる事が根拠)

ヒロインを演じたのはアニャ・テイラー=ジョイさん。撮影は「スプリット」主演よりも前です。
そういえば「スプリット」で共演したのはジェームズ・マカヴォイ氏ですが、
同じく「魔女たちの飛翔」をモチーフにした「トランス」の主演もマカヴォイ氏で、
妙にこの映画とつながりがあるなあと思いました。




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