【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

安野光雅つながり

2019-03-21 09:33:38 | Weblog

 昨日の『方言でたのしむイソップ物語』は安野光雅さんの本でしたが、今日の本の奥付を見たら、装幀が安野光雅さんとなっていました。一応「つながって」いますね。しかし、文庫本の装幀って、どのくらい腕の振るいようがあるのでしょう?

【ただいま読書中】『隊商都市』ミカエル・ロストフツェフ 著、 青柳正規 訳、 筑摩書房(ちくま学芸文庫)、2018年、1200円(税別)

 アラビア半島の付け根あたり、現在はシリア砂漠になっているあたりは、かつては肥沃な穀倉地帯でした。それを荒れ地に変えたのは人間の仕業(失敗)ですが、それは別のお話。著者はその「豊かな文明」の時代に、高度な通商システムも機能していたことに注目します。余剰生産物は通商を必要とするのです。
 20世紀初め、サンクトペテルブルグ大学の若い教授だった著者は初めてパレスチナを訪問し、そこを起点に、ペトラ、アンマン、ジェラシュの遺跡を調査しようとしました。
 そうそう、ものすごく「時代」を感じる記述は、著者が旅した時代に「パレスチナ難民」は「ユダヤ人」であることです。まだ「イスラエル」がありません。この地域には、ずっと「難民」がいたんですね。
 ペトラは、インド・南アラビア・エジプト・シリアを結ぶ重要な隊商路の結節点に生じました。アレクサンドロス大王やローマ帝国の支配下でもペトラは繁栄しています。著者はその遺跡を歩き、当時の香料を嗅いだような気分になっています。
 砂漠のまわりでいろいろな帝国が勃興し衰退し、それらの関係で隊商路は栄えたり衰退したり位置を変えたりします。しかし、常に「隊商」は通商に携わっていました。著者は「砂漠」を「海」と同じように見ています。「地域と地域を隔てるもの」であると同時に「結びつけるもの」でもある、と。そしてそこに足を踏み入れることは、海と同じく、全ての者に許されているのだ、と。
 遺跡は「死者の街」ですが、著者はそこに往時のざわめきを聞き、儀式を“見"ます。広範な歴史と地理の知識と、“見る目"を持った人には、様々な“ドラマ"が見て取れるようです。
 本書は「旅のスケッチ」です。だから、遺跡に関する記述に関して学術的には本書は「改訂」または「豊富な脚注」を必要とするでしょう。しかし、「旅のスケッチ」としては本書はすでに完結しています。もし本書を変えたい、としたら、そう望む者は自分自身の旅を行って自分でそのスケッチを描いた方が良いでしょう。







タイヤ交換

2019-03-21 09:21:48 | Weblog

 私が住むところでは、今年はほとんど雪が降りませんでした。先週自動車のタイヤを夏用に戻したのですが、結局このスタッドレスタイヤは、今シーズンは1回しか雪を踏んでいないし、その時もちらつくだけで道路に積もることはありませんでした。
 さて、地球は温暖化しているし、来シーズンは交換はどうしよう、なんて思っていると、こんどはしっかり降ったりするんですよね。一応用心のために年末にはまた交換しよう、と思ってます。どうか忘れませんように。

【ただいま読書中】『方言でたのしむイソップ物語』安野光雅 著、 平凡社、2018年、1600円(税別)

 日本各地の方言で「イソップ」を“翻訳"し、そこに著者がさし絵もつけた本です。著者のことですから(褒め言葉です)単純な“翻訳"ではありません。メタ解説が突然本文中に登場したり、「下心」という解題がくっついていたり、とにかく遊び心満載です。残念なのは、読んでいてどこの方言かがなかなか見当がつかないこと。ちょっと馴染みのある方言で「自分の郷里かな」なんて思っていると微妙に違っていて隣の県かな、なんて思ったりして。
 本書はぜひCDでも発売してほしい。それぞれのイントネーションで表情豊かな「日本語」で語られる「イソップ」って、楽しいと思います。