【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

読むと読める

2018-02-09 07:14:19 | Weblog

 「何を読む」を決めるのは、自分です。でも、「何が読めるか」を決めるのは、流通です。
 ただ、昔の「流通」は「書店の店頭」「書店で注文」「近くの図書館」「近くの古書店」だったのが、最近は「ネット書店」「ネット古書店」「ネットでつながった図書館」まで利用できるようになって、「読める本」の範囲はずいぶん広がりました。読書にとってもネットはありがたいものです。

【ただいま読書中】『復刊ドットコム奮戦記』左田野渉 著、 築地書館、2005年、1700円(税別)

 日本では毎年7万点以上の書籍が出版されています。しかし書店のスペースは限られているため、せっかく並べられても短期間であっさり返品、倉庫で保管されますが、やがて断裁、品切れ、絶版。つまり本は「出版されたらすぐ買わないと、二度と手に入らない商品」になってしまったのです。日販の王子流通センターには「品切れ本への注文」が毎月7万点あるそうです。しかし「ないもの」は送れません。そこで「絶版本への注文をオンデマンドで出版する」ブッキングという会社が1999年10月に設立され、著者はその責任者に任命されました。
 はじめは出版社からコンテンツを預かってオンデマンドで少量出版する、という方針でした。しかしこれでは大赤字(社員6人で月商16万円、ということもあったそうです)。そこで様々な試みをして「インターネットで読者の希望を募る」方向に著者らは進むことにします。2000年6月「復刊ドットコム」の設立です。投票を始めて著者は驚きます。入手困難な専門書が票を集めると思っていたら、コミックや文庫、ゲームの攻略本が人気なのです。茫然としたまま3箇月。白泉社が三原順の『かくれちゃったのだぁれだ』の復刊協力を申し出てくれます。集まった票数は90だったのに対して出版数は500。ところがこの復刊第一号が、1週間で完売(最終的に2000冊以上売れました)。
 絶版になるにはいろんな理由があります。たとえば差別語。『ダルタニャン物語』はこのために絶版だったのですが、著者らは訳者の著作権継承者と交渉して許諾を取り、翻訳に若干の修正を加え、出版をしてしまいました。
 『藤子不二雄ランド』は元々は中央公論社から刊行されていた301巻の大全集です。問い合わせをすると「復刊は難しい」。だったら自分たちでやろう。ただ「A」本人からは快諾だったのですが「F」の方は関係者の意見が揃わず、『藤子不二雄(A)ランド』149巻の復刊となりました。ブッキングにとっては、会社の存亡がかかる復刊です。じっくり2年間準備をして、ついに刊行。その結果は……
 本書には,「復刊できた本、漫画、写真集」などの個別の紹介、交渉の難しさ(そもそも絶版になったのには、それぞれの理由があるのです)などが具体的に紹介されています。ただ、インターネットのおかげで入手困難だった本に手が届くようになったのは、ありがたいことです。「どうしても読みたい」場合に、国会図書館まで行かなければならない、というのはちょっと避けたいですから。