すちゃらかな日常 松岡美樹

サッカーとネット、音楽、社会問題をすちゃらかな視点で見ます。

【リオ五輪予選・準決勝】劇的な「さよならミドル弾」でリオ行き決定 ~日本2-1イラク

2016-01-27 09:24:12 | サッカー日本代表
少ないチャンスをモノにする火事場の馬鹿力

 日本はビルドアップは雑だしポゼッションもできないが、劇的な決定力がある。そんな驚異の勝負強さで少ないチャンスを生かし、リオ五輪行きをもぎ取った一戦だった。

 まず先制したのは日本。前半26分に左サイドを縦に抜け出したFW鈴木武蔵が、相手GKと最終ラインの間に絶妙なグラウンダーの折り返しを入れ、それをFW久保裕也がスライディングしながらボレーで決めた。

 だが日本はまずい追いつかれ方をする。前半も終了まじかの43分。相手CKからのこぼれ球を押し込まれ、あっさりリードをフイに。40分台での失点はいかにもまずい。あとほんの5分だけポゼッションして時間を使えば、リードしたままハーフタイムに入れた。課題の残る失点だった。

 だがそんな嫌なムードを吹き飛ばす決勝弾が最後に飛び出す。ドン詰まりの後半48分、ゴール前でこぼれを拾った原川力が、空間を切り裂くような低い弾道のさよならミドル弾をぶち込む。日本はあとはアディショナルタイムの終わりを待つだけだった。

 準々決勝イラン戦のレビューで「このチームは最後に得体の知れない底力が湧いて出る」、「このチームは明らかに持っている」と書いたが、それを裏付けるかのような劇的な幕切れだった。

勝負師・手倉森監督、得意の日替わりローテーション

 この日の日本は、ボランチを2枚置く得意のボックス型中盤による4-4-2。2トップに久保と故障上がりの鈴木を起用し、中盤は遠藤と原川をボランチに。左にはイラン戦2ゴールの中島、右には南野を配した。最終ラインはCBに植田と奈良。左SBに山中を、右SBには室屋を使った。GKは唯一不動の櫛引だ。

 相変わらず長丁場を見越した日替わりローテーションによる大胆な布陣だ。レギュラーも控えもない全員サッカーである。戦術面はともかく、少なくとも選手起用に関しては、手倉森監督はA代表・ハリル監督の10倍は勝負師かもしれない。

 イラクのシステムは4-2-3-1。遠目からでも長いボールをトップに当ててきたかと思えば、ワンツーを交えたショートパスをつなぐこともできる。なによりワンタッチ・コントロールの精度が日本とはまるでちがう。前半立ち上がりの15分を見ただけで、個の力では日本より上であることがすぐわかった。(だがそれでも日本が勝つのだから、これがサッカーである)

アタッキングサードでの驚異の殺傷能力

 対する日本は相変わらず攻めの形が作れない。最終ラインからのビルドアップができず、DFがボールを持つとアバウトなロングボールを前線に放り込むか、中盤より前でなんとかこぼれ球を拾ってカウンターを仕掛けるか、の二択だった。どうやってアタッキングサードへボールを運ぶか? についてのビジョンがない。

 例えばDFラインからグラウンダーのボールで丁寧にビルドアップできないし、中盤では意図のあるパスが2本以上つながらない。おまけに突出した選手もいない。だがそれでも日本にはアタッキングサードでの「火事場の馬鹿力」があり、驚異の決定力で少ないチャンスをモノにする。(今大会の日本の得点シーンを思い出してみるといい。どれも衝撃的なファインゴールばかりだ)

 従来の日本代表といえば、中盤でこそ華麗にボールをつなぐがフィニッシュがまるでダメで勝負弱い。カッコいいけどひ弱で勝てないーー。それが定番だった。

 今回のチームのように、不恰好でゴツゴツした試合展開ながら、とにかく前でボールを持ちさえすれば無類の勝負強さで勝ちをもぎ取る、昔の旧西ドイツのような種類の「強さ」を持つ、こんな日本代表は今まで見たことがない。

 総合力や美しさでは劣るが、試合が終わればなぜか日本人が勝ち残っている。「世界」はこの大会を見て、キツネにつままれたような気分でいることだろう。内容や芸術点などどうでもいい、勝利こそすべてだーー。日本にもとうとう初めて「右翼のフットボール」の時代がやってきたのかもしれない。

 さあ次は決勝だ。優勝して終わるのと、2位でオリンピックへ行くのとでは雲泥のちがいがある。勝負勘や勝ちになだれ込む気迫など、特にメンタル面での強化に格段の差が生まれる。もちろん優勝し、そのままの勢いでリオへ行こう。
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