まさおさまの 何でも倫理学

日々のささいなことから世界平和まで、何でも倫理学的に語ってしまいます。

NHK文化センター 「哲学ってなんだろう?」 第1回講座

2010-04-24 23:32:38 | 哲学・倫理学ファック
NHKのカルチャースクールがとうとう始まってしまいました。
事前に連絡をいただいていて、受講申込者は5名とのことで、
やはりこんな講座を聞こうなんていう物好きな方はそれぐらいだろうなあという思いと、
こんな講座を聞こうと思ってくれた方が、
福島に5名もいらっしゃったということへの驚きと感謝の念とが、
半々に入り交じりながら当日を迎えたのですが、
今日の朝に事務の方から電話をいただき、
駆け込みの申し込みがあり、最終的に受講者は9名になったと聞かされました。
大慌てでプリントを増刷し、ギリギリに会場に滑り込みましたが、
受講者9名というのは予想を上回る集客です。
5名くらいなら皆さんに自己紹介をしていただき、
出された質問に答えながら第1回目は過ごそうと思っていたので、
9名となるとどう運営しようかなとちょっと悩み、
ちょっと緊張しながらチェンバおおまちの教室に入っていきました。

けっきょく初回は都合により出席できない方が2名いらっしゃり、
7名相手の講座となりました。
7名くらいなら当初の予定通りで行けるだろうと踏んで、
皆さんに受講動機と、とりあえず今日の段階で私に聞きたいことをインタビューしていきます。
福島大学にも現代教養コースというのがあり、社会人の方々が学んでいらっしゃいますし、
それとは別に、大学の授業を公開授業として開放して社会人の方々に受講してもらっています。
社会人の方々は本当に熱心ですから、大学の授業にそういう方々が混ざってくださり、
学生といっしょに話を聞いていただけるのは大好きです。
哲学にも倫理学にも何にも興味ないけど、ただ単位が必要なので取りに来ている、
という学生さん相手に話をするのと、
どこかで調べてわざわざ私の話を聞きたいと思って来てくださる方相手に話すのとでは、
こちらの気の入りようもちがってきます。
ですので、今回のNHKカルチャースクールはたいへん楽しみでありました。

ただし、大学の学生相手の授業に混ざって社会人の方々に聞いていただくのと、
社会人の方々だけを集めて開講するカルチャースクールとでは、
ちょっとこちらの覚悟が変わってきます。
前者の場合は、基本的に哲学にも倫理学にも何の興味も関心もない学生を想定して、
彼ら向けの授業を構想し実施していけばよいのであって、
社会人の方々向けの話を最初から用意する必要はありません。
万が一それで社会人の方々のニーズを満たすことができなかったとしても、
それは、申しわけありませんでしたとあきらめていただくことが可能です。
しかし、今回はそうはいきません。
皆さん、このテーマに興味・関心をもち、わざわざ8,400円のお金を納めて、
私の話を聞きに来てくださっています。
それはたいへん有り難いことですので、
ぜひ皆さんにそれぞれのニーズを満たして帰っていただきたいところですが、
みなさんのニーズが均一とはかぎりません。
「哲学入門講座 哲学ってなんだろう?」 というテーマですから、
哲学初心者向けということはご理解いただいているとは思いますが、
ひょっとするとけっこう哲学に詳しくて、
ものすごーく深いことを聞けるのではないかと、
期待していらっしゃっている方がいないともかぎりません。
既有知識に大きな差があり、興味・関心がまったく異なっていたりすると、
皆さんに等しく満足していただくことがひじょうに困難になっていくのです。

昨年やった、高校の先生方向けの教員免許更新講習がそんな感じでした。
いちおう免許はもっているけど倫理の授業なんて担当したことがないという方から、
たぶん文学部哲学科卒で、元は哲学研究者を目指していたんではないかという方まで、
皆さんの知識や興味・関心にものすごく温度差があり、
どのあたりをメインの対象に設定してお話しすればいいのか絞りきれず、
けっきょくどっちつかずのまま終わってしまったように反省しています。
そんな経験もあったので、今回は相当悩み、
そのために、どんな話をしようかなかなか心を決めることができずにいたのです。

けっきょく、当日皆さんの顔を見て決めることにし、
上述のような作戦で臨んだわけです。
やはり皆さんのニーズを聞いてみてよかったと思います。
一番恐れていたのはニーズが大きく食い違っているという事態でしたが、
幸いそういうことはなく、皆さん 「哲学ってなんだろう?」 というテーマに、
純粋に関心をもって受講を申し込んでくださっていたようです。
意外だったのは、
「倫理学」 ではなく 「哲学」 の講座をやることにしてよかったということが、
皆さんとのやりとりのなかでわかってきたということです。
私はポスト的に言うと、福島大学の倫理学の教員ですので、
倫理学がらみの講座を開設するのが正攻法だったと言えるでしょう。
しかしもしもそうしていたら、皆さん、私の講座を取ってくださらなかったようなのです。
どうやら、「哲学」 にはわけわからないながらに何らかの興味や憧れがあるようなのですが、
「倫理学」 にはただわけがわからなくて近寄りがたいというイメージしかないようです。
これは私にとっては本当に意外でした。
「倫理学」 は倫理に関する学問であるということは、字を見れば明白であるし、
倫理はやっぱり人間にとって大事なものだと思われているんではないかと思い込んでいて、
哲学よりも身近に感じられているだろうと想像していたのですが、
まったくそんなことはないようです。
これは由々しき問題ですので、今後、倫理学者として考えていかなければいけないし、
倫理学会にも提起していくべきかもしれません。

それはさておき今日は、
「Q.哲学を一言でいうと何ですか?」 や、
「Q.哲学を学んでよかったことは何ですか?」
「Q.倫理学を学んでよかったことは何ですか?」 などに書いた話をしながら、
皆さんの質問に答えていき、
さらに、「すべては文化である」「ありがたい話」 なども交えて、
2時間の持ち時間をしゃべり倒しました。
次回からは、2時間×3回かけて哲学の壮大な歴史を、
ざっくり振り返っていこうかと思っています。
そのような歴史的概観を踏まえながら、
哲学と宗教はどうちがうのか (第2回目)、
哲学と科学はどうちがうのか (第3回目)、
現代の哲学はなぜこんなにわけのわからない学問なのか (第4回目)、
ということを理解することによって、
「哲学ってなんだろう?」 に少しでも近づいていただけたらと思っています。
素晴らしい受講生の方々に恵まれて、
やっと自分が何を伝えたいかが明確になってきたように思います。
次回は1ヶ月先ですが、早く次の講座が来ないかと楽しみになってきました。
始めるまでは気が重いけど、始めてみると楽しくなってくるというのは、
新学期の授業と同じみたいです。
せっかくの機会ですので、この講座を通して私も成長できたらと考えているところです。
受講生の皆さん、本日は本当にどうも有り難うございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます

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