暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

 飯台の茶事・・・(2)

2022年10月17日 | 茶事・茶会(2015年~他会記録)

     (飯台に運び出された箸をのせた両碗、上から利休箸、飯椀、汁椀)

 

「飯台の茶事」とは、懐石で折敷の代わりに「飯台」という机を使うことから名付けられています。

禅寺の僧侶が食事を頂く形式(食礼)を基にしていることから、料理は精進、お替わりの飯器や汁替えはなく、従来の懐石に比べ簡素になっています。

書き忘れましたが、膝が悪い暁庵のために茶室には最初から台と椅子が3組置かれていて、この台が飯台として使われました。

ご亭主が晒ふきんで飯台を浄め、箸をのせた両碗を盆にのせて運び出します。

箸をのせた両碗とは、飯椀に物相の飯をたっぷり盛って蓋をします。蓋を裏返してかぶせた汁椀の上に飯椀を重ね、飯椀の蓋の上に湿らせた利休箸をのせます。お代わりの飯器を出さないので、飯はたっぷり盛ります。(正客M氏のために特別にお代わりを用意してくださいました・・・)

両碗が運び出されると、「どうぞお箸のお取り上げを」の挨拶がありました。

たっぷりの汁が入った鉄瓶(金色に代わり)と練り辛子の入った小鉢が出され、正客に預けます。客が順次、汁椀に汁を盛ると、下座に小さな台を置き、そこに鉄瓶と小鉢が置かれました。汁のお代わりは何度でもよく、セルフサービスです。

それからが大変、亭主の労を軽減する簡素な茶事と伺っていたのですが、料理上手のご亭主は美味しい料理を次々と出してくださり、客一同は感激しながら頂きました。

日が経って記憶はおぼろとなり、詳しく書けず残念!ですが、小向、煮物椀、焼物、炊き合せなどを美味しく頂き、八寸とお酒(盃とガラスの酒杯で2度も)も頂戴しました。最後に、蓋に香の物をのせた湯斗が出て、湯漬けを頂き、器を浄めます。

感想として、朝茶事や暁の茶事に「飯台の茶事」の形式で、小向、煮物椀、炊き合せ(または和え物)までとし、簡素にやってみたらどうかしら? と思いました。

ご亭主Yさまも初めての「飯台の茶事」だったそうで、料理を含めいろいろな工夫や試行錯誤が楽しかった・・・と言ってくださいました。

縁高でお菓子が出されました。菊でしょうか? とても凝った作りの美味しいお菓子です。

「もしかしたらYさまのご自作かもしれませんよ」と言ったら、M氏もKTさまもびっくりしていましたが、後でご自作の練切で銘「千代見草」(菊の異名)と知りました。

           (菓子銘は「千代見草」です)

中立し、銅鑼の合図で後座の席入です。

床には、秋の草花が虫籠に生けられていました。矢筈薄、白い槿、秋海棠、風船カズラ、もう一種ピンクの花、どれもご自宅に咲いていた花だそうで、さりげないご趣向がステキです・・・。

 

火相も湯相もよく、座が静まり、濃茶点前が始まりました。

茶入から茶碗に緑の濃茶が掬い出された途端、良い薫りが漂い、濃茶が待ち遠しかったです。

二服目、黒楽茶椀で美しく練られた濃茶を頂戴しました。一口含むと、甘くまろやかな濃茶が喉を潤して、とても幸せな気分になりました。濃さも量も程よく美味しい濃茶をありがとうございます。客3人とも大満足でした。濃茶は星野園の「星授」です。

黒釉と飴釉が複雑な色合いを醸し出している主茶碗は十代大樋長左衛門作です。暁庵の黒楽茶椀は八事窯・初代中村道年作、詰KTさまは御所丸写しでした。

        (後座の点前座 水指は李朝白磁)

細身のすっきりとした茶入は高取焼、仕覆は角倉金襴でした。

茶杓が素晴らしく、いろいろな景色が楽しめましたが、特に「月読(つくよみ)」という銘が心に残っています。「月読(つくよみ)」とは古事記や日本書紀に登場し、ツクヨミは伊邪那岐命(いざなぎ)によって生み出され、月の神だそうです。

待合の短冊、お軸の「風白月清」に続いて3つ目の月ですが、月の出方がステキでため息です・・・

後炭をしてくださり、茶事で後炭はめったにない事なので客一同大感激でした。

風炉中の拝見があり、炭の風情は元より灰形、炭斗一式、富士釜を嬉しく、間近でしっかり拝見しました。

 

 

薄茶になり、手作りの干菓子でたっぷりの薄茶を頂戴しました。濃茶の後の薄茶はほんわかと緊張をやわらげて、いつも嬉しい一服です。

正客M氏は青磁茶碗(三浦小平治作)、暁庵は青磁の極薄手の平茶碗、詰KTさまは京焼・葡萄絵の茶碗です。

楽しく茶碗の感想や作り手のお話が弾みましたが、薄器がどうしても思い出せないのです・・・トホホ

 

     (干菓子はうさぎさんと吹き寄せで、ご亭主の手作りでした)

最後に詰KTさまのお点前でご亭主Yさまに一服差し上げました。

とっても喜んで飲んでくださって、このような和敬のお茶事もよろしいですね。

なごやかなおもてなしに身も心も癒されて、お招きくださったご亭主Yさまに心から感謝いたします。

皆さま、ありがとうございました。 

 

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