井沢満ブログ

後進に伝えたい技術論もないわけではなく、「井沢満の脚本講座」をたまに、後はのんびりよしなしごとを綴って行きます。

国旗の尊厳について

2012年09月03日 | 日記
「花嫁の父」では日の丸を振るシーンがあり、書きながらそれから書いてからも政治的メッセージと取られないか、かなり考えこんだくだりです。





再三、書いているように私は作品に政治的メッセージを込めるようなことはしません。それは、ドラマを私的プロパガンダとして使うことであり、不当でもあれば美しくないからです。

オンエア後に、政治的観点から日の丸の部分に異議を呈する人たちは覚悟していたより、遥かに小数で安心しました。
中国でオンエアされる時にもそこを心配しましたが、これといった不協和音は少なくとも私の耳には届いていません。
現在の政治状況下ではやや危うかったかもしれませんね。

ストーリーの流れと、丸という青年の設定から自然に日の丸を振ったわけですが、特に意図しなくてさえ、これだけ気を使うのが日本人です。それに引き換え、中国でも韓国でも実に無造作に日の丸を毀損してくれますね。引き裂く、燃やすなどの行為が民間人ならまだしも、国会議員が列をなして日の丸を踏みつけ儀式めくことをやるのが韓国です。これは民族の品格に帰することでしょう。

石井ふく子プロデューサーとは一度食事の席でご一緒だったことがあるだけで、仕事上の繋がりは何もありませんが、この石井さんが佐久間良子さん主演で帝劇に「唐人お吉」の芝居をかけられた時、脚本上では激昂したお吉が星条旗を踏みつけるシーンがあるところを、カットなさったというのですね。他国の国旗を踏むのはまずい、ということで。

この礼節がまさしく日本人だと思うのです。

中国、とりわけ韓国のわたしたちの国の旗への汚し方、侮辱の仕方を見ながら、それに対してもう腹も立たなくなっていることにふと気づいて、マズイなと思っています。余りにも見慣れてしまって日本人としての誇りがもはや機能不全に陥っているのかもしれません。

以下の画像は帝劇における唐人お吉の佐久間良子さんです。







佐久間良子さんは映画からテレビに移られてから役柄に恵まれませんが、物凄まじい女優魂の持ち主で、水上勉さん原作の「越後つついし親不知」での鬼気迫る演技は目に染み付いています。お姫様的な美人女優だったのに、農村の女を演じ嫉妬に狂う亭主から髪を掴まれ田んぼの泥に顔を突っ込まれるシーンは、切り替えなしのカメラ長回しで、吹き替えではなくご本人。当時銀幕の美人スターは破格でしたから、このシーンには息を飲んだものです。泥田に顔を突っ込まれたまま、延々数十秒間、その時間の長かったこと。目にも鼻にも口にも泥が入り込んだと思います。一度組んでみたい方。三田佳子さんと噛みあわせてみたい、と言ったらニヤリとするのは年配の方ですね。w
そういう面白がり方とは別に、佐久間さん組んでみたい女優さんではあります。上っ面ではない、性根の深い役柄で。





サディスティックなまでに粘っこい演出が記憶に残っているのですが、今井正監督だったんですね。
黒澤、木下恵介以外は監督など意識も行かない学生時代に見て、監督の演出ぶりが記憶に鮮烈なので
相当強烈な存在感だったのでしょうね。

そういえば、若尾文子さんもテレビに移られてから良い人しかやられず、その意味では役柄が極端に狭くなっていますが
映画時代の悪女ぶりなど物凄い迫力でした。ご本人が大映を辞められてからは、良い人しかもうやりたくない、という
ふうに聞いていますが女優としては勿体ないことです。

なぜでしょうねえ、往年の銀幕の大女優さんを映画で使う監督がいません。山本富士子さんもそうですが。京マチ子さんも。

皆さん、テレビのフレームからははみ出てしまう方ばかり。岩下志麻さんがかろうじて、テレビフレームでもやっていらっしゃり、私も一度連ドラでお付き合いがあり、たまにメールのやりとりをさせていただいてますが・・・。

Irezumi いれずみ opening


こちらは監督が増村保造さんだと知って見ました。いやらしいくらい、しつこい監督さんです(褒め言葉です)



出演者 市川雷蔵/若尾文子/越路吹雪/京マチ子/中村玉緒/草笛光子/山田五十鈴
監督: 市川 崑 音楽 芥川也寸志

今見ると震えが来そうな、スタッフ、キャストです。

こういう時代はもう永久に来ない・・・のかな?
役者も脚本家も監督も皆、総じて小粒。巨人の不在。観客も視聴者も矮小化されてしまったのは、テレビの存在ゆえか大きなスクリーンで見ても、テレビの延長の画面にしか見えないのは役者のせいもあるのだろう。ドラマには出なくても、CMでしじゅう見ているし・・・。高倉健さんぐらいじゃないかなあ、いまだスター性をかろうじて保っているのは。ご縁が生じかけては潰えた方だけど。



「夜の河」における山本富士子さんと上原謙さん。

山本富士子さんには数年前にお目にかかりました。今なお美しい方でした。私を知っていてくださったことに恐懼しましたが。上原謙さんとは晩年お付き合いがあり、今拝見すると感無量です。そういえば、邦画だけではありませんが、辺りを払うような美貌の女優さんもいなくなりましたね。やはり神秘性の問題なのでしょう。岸恵子さんともお仕事でご一緒して、岸さん司会の番組に2度出していただいたことがありますが、そういえばテレビとうまくドッキングできたレアな銀幕の女優さんですね。立ち姿の美しさではピカ一の方だと思っています。

国旗の尊厳がなぜか女優さんたちの回顧録みたいになってしまいました。
日本が誇った美貌ということで、国旗並みに価値があると思います。美貌のほうはつかの間の花だから、ひとしお輝きが強いけれど。
こういう時代では、神の造形の妙に、ほとほと驚嘆するような美貌にもう巡りあう事はなさそうです。整形ではなぜか出ない神々しい美しさ。