prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「法廷遊戯」

2023年11月30日 | 映画
法廷でゲロはいたり卒倒したりかなりノイズィな描写が混じるのが可笑しかった。
杉咲花がずうっと黙っているかと思うといきなりまくし立てるあたりのメリハリのつけ方。
ただし肝腎のクライマックスの隠れていて見えないところで何をやっていたのかという謎解きがどうもややこしくて要領を得ない。




「リアリティ」

2023年11月29日 | 映画
FBI側の公式の記録をセリフとして採用しているというのがひとつのポイントになっているのだが、特に初めのうち通常のセリフ運びからかなり外れている。
どういうことなのかと思ったらロシアがトランプへの投票を助けるためにヒラリーの罪状を捏造したデータをヒロインが持ち出したというくだりが抜けているかららしい。

リアリティというのはヒロインの実名で、出来すぎみたいだが実名にこだわった分描写が偏ったとも思える。

ロシアがアメリカの大統領選挙に介入したのだからFBIとしては忸怩たる思いだったろうし、その分ヒロインにやや甘く見える。
後ろ手錠をかける場面も流して撮っているみたい。





「マーベルズ」

2023年11月28日 | 映画
なんだか焦点が定まってない話だなあ。
場所がやたらとあちこちに飛ぶし、主役の三人が位置を瞬時に交代させたりするのもチカチカする。

ネコがタコの触手のような内臓を吐き出すシーンは半ば笑わせようとしている分キモチ悪い。

ブリー・ローソンのスタイルの良さとエラの張り方が目立つ。

ヴィランが忘れた頃に登場するのも間が抜けている。
監督の言によると上映時間を短くまとめるのを目標にしたらしいが、かえってそれでダレたみたい。






「私がやりました」

2023年11月27日 | 映画
女優が明らかにプロデューサーを殺していないのに私がやりましたと言い出し、同棲中の女弁護士がまた殺したことを前提に弁護するという何を言っているのだろうと戸惑うようなシチュエーションで、ここからくるりくるりと変転する展開になる。

そこに実は私がやりましたと名乗りを上げるサイレント映画期の「サンセット大通り」みたいな忘れられたスターにイザベル・ユペールが登場し、出番こそ短いが場をさらう。

女優と女弁護士が同棲しているって、どういう状況なのかと思うが、ラストで女性に選挙権を付与する運動を弁護士が始めるという字幕が出るのでそれ以前の女性の権利が認められてなかった時期、フランスでも第二次大戦後ということになる。

社会派というマジメな手触りではない、どころか相当にブラックでアモラルな内容なのだが、その中に当時の女性の立ち位置を底に沈めて描いてはいる。
陪審員が全員男と、平然とバランスを欠いているのはもう呆れるばかり。

美術はすこぶる贅沢。
ラストシーンは唐突だがちょっと「終電車」を思わせる。





「遙かなる帰郷」

2023年11月26日 | 映画
アウシュビッツから解放された収容者たちがどうやって故郷にまでたどり着いたのか、普通だったら省略されそうな足取りを丹念に追っている。

フランチェスコ・ロージらしい綿密なリアリズムの一方で、かつての故郷に対するノスタルジーが裏切られる不安にさいなまされる分、二重に不安が張り付いている。





「吹けば飛ぶよな男だが」

2023年11月25日 | 映画
山田洋次のかなり初期の映画で、なべおさみと緑魔子の関係は今の作風からはかんがえられないくらい、指を詰めるあたり荒っぽく生々しい。

森崎東が脚本に参加している影響もあるのだろう。




「ゴジラ -1.0」

2023年11月24日 | 映画
米軍が冷戦下の状況だというのに姿を見せない。
佐藤忠男が以前日本の戦争映画には具体的に敵が描かれない、もともと敵をアメリカ映画のように憎憎しく描こうという志向はあまりなく、敵と戦うのを修行のような内面的な行為として描こうとしているのではないかと書いていたが、それを思わせる。

時代設定では戦後すぐの自衛隊はおろか警察予備隊すら現れず、もっぱら武装解除がGHQの方針だった頃で、「シン・ゴジラ」のように官僚や政治家のようないわゆる国家機関も出てこない。
だいたい日本がほぼ国の体をなしていない頃だ。

もっぱら民間の力を、それも「プロジェクトX」みたいに結集するわけではなく、離脱者も出てくる形でなんとか合わせているだけで、それもなんだか頼りない。
神木隆之介がその上で生き残ることと特攻を併せた形容矛盾みたいな作戦を敢行する。

最終的に特攻して終わるか生き延びるかというキワキワのカタルシスがある。

銀座の再現と破壊と共に伊福部昭の音楽が鳴り響くのはちょっと決まり過ぎた感じで面映い。






「ノーウェア 漂流」

2023年11月13日 | 映画
船どころかそこに積まれたコンテナに閉じ込められて辛うじて浮いている妊娠中の難民の女が、どうしてそうなったかの経緯を綴るプロローグの語り口が簡潔。

初めから一人芝居に絞りこまずモッブシーンを生かしたコントラストが効いている。

それからほぼ一人芝居でサバイバルを克明に描いていて、途中で脱出してやれやれと思わせて先があるあたりも粘っこい。





「SISU シス 不死身の男」

2023年11月12日 | 映画
不死身も不死身、ジェイソンもびっくりの不死身っぷりです。
ゴア描写も容赦ない。いくらなんでも荒唐無稽だなあと思わせる段階を通り越すと、あまり気にならなくなる。

爆音がすごくて、静かな場面とのコントラスト、極端に切り詰めたセリフと相まって、音響効果は抜群。

セリフが英語なのはフィンランド映画ではどの程度の割合を占めるのか。オリジナルがそうなのだろうか。



「火の鳥 エデンの花」

2023年11月11日 | 映画
ムーピーの額からアゲハ蝶の幼虫みたいな先端がふたつに割れた触角が出ているところが、ヴァン・ヴォークトの「スラン」みたいだなと今ごろになって思った。

キャラクターデザインが微妙に、というかはっきり手塚のそれとは違う。「ブッダ」もこんなだったかなあ。背景もメタモルフォーゼ中という感じのに書き加えた感じ。

石の輪っかみたいなのがひとりでに動いて連なって襲ってくるあたり、無機物に動くことで命を吹き込むアニメの本質と手塚の体質とが出た。

キャラクターの出番が整理されていなくて回想で処理したりしているところが散見するのは感心しない。
火の鳥の出番が少ない。シリーズではカバーされているのだろうか。ちなみに見ていないがシリーズの方が評価は高い。





「ドミノ」

2023年11月10日 | 映画
先が読めない映画という宣伝だけれど、あちこち「マトリックス」や「インセプション」を思わせるモチーフが出てくるなど、もっとややこしくなりそうな内容をすっきり見せた作り方にはむしろ好感を持てた。

「プリズン・ブレイク」のマホーン捜査官ことウィリアム・フィクナーが人の意思を操る役で出てくるのがお楽しみ。
赤い制服で出てくる連中がちょっと「プリズナーNo.6」みたい。





「ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」

2023年11月09日 | 映画
3時間半という長尺にも関わらず、すぐ体感時間が慣れるのは、文体が一貫しているせいが大きいと思う。
正確に真正面からか真横からカメラを固定して撮った端正な構図、音楽を使わず効果音を少し強調した使い方、極端に少ない、本心はおよそ出さないセリフ、などなど。

1975年の製作だから、パソコンもスマートフォンもないのは当然として、テレビがなくてラジオだけというのは不思議。あるいは製作年度より遡った設定なのか、それほどベルギーではテレビが普及していなかったのか。
いずれにせよ、現代の生活よりは気晴らしが少ない。

気がつかなくて初めはヒロインの夫なのかと思ってたが、「客」を迎えるのにジャガイモを一袋雑貨屋で買ったあと、出した料理の皿にマッシュポテトがちゃんとついている、それを持ってくる時に髪をちょっとなでつけるといった肌理の細かい描写が見られて、それもいわゆる暖かい生活感のある描写ではなく「手順通り」「習慣として」にことを処理するといったニュアンスになっている。

何を思い立ったのか、魔法瓶のお湯を捨ててヤカンで熱湯をわかしてコーヒーをドリップする、いれて飲むのかというと、飲みはしないでポットにいれてほったらかしにしておく。このあたり、どこか「壊れた」感じが底冷えのするような感触で迫ってくる。







「愛にイナズマ」

2023年11月08日 | 映画
二時間半という長尺だが、省略法とツイストに優れて飽かせない。

松岡茉優が新人の映画監督の役なのだが、プロデューサーと助監督にいいようにあしらわれ、監督としての経験も人生経験も浅いと助監督に監督の座を乗っ取られて、プロデューサーも上の言うことには逆らえないとおよそ責任をとろうとしない。
いざとなったら都合の悪いところはカットすればいいとふたりが手をチョキにしているのがいかにも小馬鹿にした感じでむかつくし、コロナがなかったみたいに空っとぼけているのがまたむかつく。

こういう目に石井裕也監督もあってきたのか、それとも若い女の監督だから誇張してある(というかリアル寄りにしている)のか妄想したくなる。

シナリオの内容というのが松岡の家族をモデルにしたもので、助監督がこんなキャラクターありえないと最初から決めつけて接してくるのに、いやありえるんですと言い返すところから佐藤浩市が父親で池松壮亮が長兄、若葉竜也が次兄の家族の話に入っていく、この語りが上手い。
平行して窪田正孝の食肉処理を生業にしている家族のいない男がなんとなくくっついて松岡の家族にカメラを向けながら入っていく。

松岡がずうっと誰に対してもカメラを向けていて、中でも家族にカメラを向けた時ウソ臭いとムチャクチャに怒って窪田が驚くくらいの口の悪さを見せるところなど笑ってしまう。

カメラを回しているときこそ正体が現れる感じで、職業にした分、発想が型にはまる業界人っぽさをいちいち避けて描けている。

家族同士でハグや、一家の母親の出番、佐藤浩市がいなくなってからのオフのシーンの暗示機能の使い方がいちいち上手い。





「極限境界線 救出までの18日間」

2023年11月07日 | 映画
冒頭の字幕で人物も展開もほぼ創作と出るので、外国それも政治的にややこしい地域で人質をとられての交渉ごととあっては秘密を保持しなくてはいけない事情があるにせよ、どの程度ウソなのかそれともかなり本当のことが意外と混ざっているのかわからない。
明らかにこりゃウソだなと思うのはちょっと出てくるカーチェイスで、スリリングには違いないがやり過ぎ。

途中から出てくる通訳などなんで牢屋に入っているのをわざわざ釈放させて使うのか。
韓国大統領のそっくりさんが出てくるのだけれど、出方が唐突なのとあまり似ていないものでいささか戸惑う。

エピローグで交渉役をつとめた主人公がラストでジャーナリストに転身して大統領(この頃は文在寅か)に質問するというのが意外。
下野した人間が監視役をつとめている図になる。





「北極百貨店のコンシェルジュさん」

2023年11月06日 | 映画
絶滅危惧種といったらここに出てくる動物たちもだが、まずコンシェルジュという仕事そのものがそうではないか。 
人間の欲望が絶滅させた動物と他ならぬその欲望の現れであるデパートとの取り合わせが独特なわけだけれど、コンシェルジュの存在自体がかなり危なっかしいあたり二重三重に意味を重ねている感じ。

カラーデザインが精練されている。なんでもコンテの段階ですでに着色していたというが、白黒のマンガに対するアニメの大きなアドバンテージではないか。