先日東京で、政策プランナーの細川さんと
意見交換した時の概要報告です。
細川さんの御了解を得ましたので掲載します。
なお、私が仕事を依頼したのではなく、
細川さんから意見交換したいと御連絡を受けました。
地方行政・地方政治に関する意見交換会
日時 平成26年10月28日(火)13:00~15:15
場所 CASEShinjyuku 新宿区高田馬場1-28-10 三慶ビル4F
講師 政策支援合同会社 代表 政策プランナー 細川甚孝
内容 これからの地方行政・地方政治について
出席者 多田稔
細川さんの連絡先:政策支援合同会社
同社のミッション:
1.政治・政策セクターにおけるプレイヤーの方々への支援
2.政治・政策セクターに関する市場の拡大、人材の育成
3.政治・政策のスキルアップのためのツール・アイデアの開発
1 市民参加と政策形成
細川:行政への住民参加を進めたいと考えているがどのようなことが課題か?
多田:単に住民を集めて意見を聞くだけでは、一人ひとりの認識や知識がバラバラで、
地域エゴや業界団体のエゴにつながりやすい。ある自治体では住民を集めて
一定の予算の使い方について議論してもらったが、同じメンバーで
何度も会議を重ねるうちに参加者は自治体の課題に対する
共通理解・共通認識を持てるようになり、政策の優先順位や
予算付けについて合意形成が図られるようになったケースがある。
細川:行政職員は住民対象のワークショップでコーディネーターを務められるか?
多田:難しいと思う。行政職員は縦割り行政の中で、部・課に所属しており、
全体を見渡した立場でアドバイスできないと思う。
そのような場合は、行政職員は事務局として準備し、外部から
コンサルタントなどの外部講師を招いた方がうまくいくのではないか。
2 地域活性化と人材育成
細川:行政職員向け研修を行っているが
課長職以上はほとんど参加しない。なぜか?
多田:以前調査したところ、自治体の中には課長職以上の勤務評価を
行っていない自治体が相当あった。周りも本人も「上がり」のポストと
勘違いしてしまうと、仕事上の成果を意識しなくなり、
学ぶ意欲も失われるのではないか。
行政組織が組織として力を発揮するには、
年功序列で管理職に就けるのではなく、能力を評価して昇進させるべき。
昇任後も仕事に対する評価は必要と考える。
細川:地域活性化の取り組みは人口増につながるか?
多田:日本中で人口が減っていく中で、中には例外もあるだろうが、
基本的に過疎地域の人口が増えるとは思えない。
地域以外から引っ越してくる社会的人口増があったとしても、
それを上回る人数の人が、進学や就職を期に、
その地域から出て行っている。トータルとすれば大きなマイナス。
日本中で人口が減っていくのだから、減らさないと考えるのは
無理があるだろう。日本全体の減少ペースと同じなら
むしろ普通の状態。それ以上の減少ならば課題。
ただし、住みにくい地域だからこそ現在過疎になっていると考えられる
ので、その地域で人口を増やすのは基本的には無理だろう。
細川:島根県隠岐諸島では、地域活性化と外部からの移住の優良事例だが、
それでも全体を見れば出て行く人の方が多い。
多田:総務省の職員が講演で、かつての奈良県大塔村の村納めの話をした。
に最後まで住んでいるおじいさん、おばあさんは満足していた。
いくら過疎の地域でも、そこに住んでいる人が満足しているならば、
外部の人間がとやかく言う必要はないのではないか。
今後日本全体を見れば、消えていくや自治体がどんどん出てくる。
活性化や人口を増やそうという取り組みも結構だが、どのように
最後を迎えるべきか現実的な検討を行っていくことが必要。
細川:東京の一極集中から、人を地方へ移動させるために、
東京都の固定資産税を高く設定するなど、東京の人口を減らす
圧力をかけてはどうか?
多田:道一本隔てた埼玉県や千葉県へ移動するだけではないだろうか。
強制的に東京から追い出す政策ではなく、地方に仕事や産業や文化
などを育て、そこに住みたいと思わせるような
魅力的な自治体にならなければ、人は集まってこないと思う。
3 地域創生の動き
細川:中央省庁の役人を地方へ派遣する政策についてどう思うか?
多田:国は1000兆円以上の借金をつくり破産状態。現状は更に悪化している。
そのような行政経営能力の国の役人が自治体へ来てどうなるのか?
むしろ国のことをしっかりとやってもらいたい。
細川:国は地方活性化の策が考えられないので、補助金同様に
職員をばら撒き始めたのではないか?
4 政党の動きと政策の支持拡大
細川:今後国の政党はどのようになっていくと思うか?
多田:自民党も民主党も、各議員は政策で結びついているわけではない。
例えば原発賛成から反対まで、180度考え方の異なる議員が
いっしょになっている。これでは有権者は政策で政党を選べない。
過大な借金を抱え、国の財政破綻は避けられないと思う。
そうなった場合、自民党や民主党も含めて、いったんバラバラになり、
同じ政策を持つ議員が集まって本当の政党ができるのではないだろうか。
そうならないと有権者は政策で選べないし、政党としても政策を実現できない。
ただし、共産党や公明党はいまのままかもしれませんが。
細川:少数意見を多数意見に広げていくにはどのようにしたら良いか?
多田:有権者に政策として訴えるには、かつての小泉総理のように
ワンフレーズの演説が良いと思う。政策を5つも並べても覚えてもらえない。
最大3つくらい、できればワンフレーズで憶えてもらい、
覚えた人から他の人へ伝えてもらえれば政策の支持が広がるのではないか。
5 地方再生の本質
細川:田中角栄は土建業を通じて地方が食っていく仕組みを作った。
これから国や地方が取り組むべきことは?
多田:国が考えるべきことは、
どうやって国民が食べていったらよいのかということ。
山奥でも鉱山が栄えていた所には、映画館やパチンコ屋もあった。
高度成長期の日本は、大量に物を安く作る国だった。
これからの時代にその産業モデルでは通用しない。
日本は発展途上国でなく、成熟国家であることを意識して、
フランスやイタリアのように、デザインやブランド、特許など知的、
ソフト的な産業を育成し、そのための人材育成が必要と考える。
日本中の地方都市が同じことをやっていては、選ばれるための
独自の魅力が育たない。その土地独自の歴史や文化、産業などの
魅力を育てていくことが発展につながると思う。
6 地方議会改革
細川:ある知事選挙の支援に入り、自分としては
すばらしい政策を考えたが、有権者の賛同が得られなかった。
どのようにしたら有権者の支持が得られるか?
多田:市町村議員レベルの選挙では、
残念ながら政策で議員は選ばれていないと思う。
地元へ利益を誘導したり、業界団体のために動くことで評価されている。
県や国レベルの選挙では、議員一人ひとりの政策よりも、
そのときの国の政党に対する風向きが大きく影響している。
議員が政策で選ばれていない状況の中で、いくらすばらしい政策を
考えても票に結びつけるのは難しいのではないか。
細川:地方議会は、市民参加や、より政策的な議論が交わされるように
改革が進むか?
多田:自治体によって議会改革の差は大きいと思う。
数名の議員の意識が変わっても議会全体が変わるわけではない。
先に述べたように、多くの場合「政策」で議員が評価され当選する
わけではないので、多くの議会が自然と変わっていくとは思えない。
むしろ、北海道栗山町議会では、なぜあれほどの議会改革ができたのか?
細川:町長と議会側の対立がもとで、町の総合計画が否決されたようだ。
議会側が勉強して独自の総合計画案を作り上げたことをきっかけに、
議会改革が進んだようだ。
7 若い世代の社会参加
細川:20~30代の若い世代の政治参加や社会参加が少ない。
何か動きはあるか?
多田:
・高崎市では、市役所若手職員らを中心にした町のさまざまな人が集まり、
朝活ミーティングや、ワールドカフェを行っている。
その活動を核にしてさまざまなイベントも実施している。
・伊勢崎市では、取り壊し予定の倉庫に若者が集まって映画を観たり、
音楽を演奏する活動が起こっている。
・横浜市では、空き店舗を利用して地域住民がカフェを営業し始めた。
地域コミュニティ活動をすすめるには、みんなが気軽に集まれる
カフェのような場所が必須と思う。
―以上です。
意見交換した時の概要報告です。
細川さんの御了解を得ましたので掲載します。
なお、私が仕事を依頼したのではなく、
細川さんから意見交換したいと御連絡を受けました。
地方行政・地方政治に関する意見交換会
日時 平成26年10月28日(火)13:00~15:15
場所 CASEShinjyuku 新宿区高田馬場1-28-10 三慶ビル4F
講師 政策支援合同会社 代表 政策プランナー 細川甚孝
内容 これからの地方行政・地方政治について
出席者 多田稔
細川さんの連絡先:政策支援合同会社
同社のミッション:
1.政治・政策セクターにおけるプレイヤーの方々への支援
2.政治・政策セクターに関する市場の拡大、人材の育成
3.政治・政策のスキルアップのためのツール・アイデアの開発
1 市民参加と政策形成
細川:行政への住民参加を進めたいと考えているがどのようなことが課題か?
多田:単に住民を集めて意見を聞くだけでは、一人ひとりの認識や知識がバラバラで、
地域エゴや業界団体のエゴにつながりやすい。ある自治体では住民を集めて
一定の予算の使い方について議論してもらったが、同じメンバーで
何度も会議を重ねるうちに参加者は自治体の課題に対する
共通理解・共通認識を持てるようになり、政策の優先順位や
予算付けについて合意形成が図られるようになったケースがある。
細川:行政職員は住民対象のワークショップでコーディネーターを務められるか?
多田:難しいと思う。行政職員は縦割り行政の中で、部・課に所属しており、
全体を見渡した立場でアドバイスできないと思う。
そのような場合は、行政職員は事務局として準備し、外部から
コンサルタントなどの外部講師を招いた方がうまくいくのではないか。
2 地域活性化と人材育成
細川:行政職員向け研修を行っているが
課長職以上はほとんど参加しない。なぜか?
多田:以前調査したところ、自治体の中には課長職以上の勤務評価を
行っていない自治体が相当あった。周りも本人も「上がり」のポストと
勘違いしてしまうと、仕事上の成果を意識しなくなり、
学ぶ意欲も失われるのではないか。
行政組織が組織として力を発揮するには、
年功序列で管理職に就けるのではなく、能力を評価して昇進させるべき。
昇任後も仕事に対する評価は必要と考える。
細川:地域活性化の取り組みは人口増につながるか?
多田:日本中で人口が減っていく中で、中には例外もあるだろうが、
基本的に過疎地域の人口が増えるとは思えない。
地域以外から引っ越してくる社会的人口増があったとしても、
それを上回る人数の人が、進学や就職を期に、
その地域から出て行っている。トータルとすれば大きなマイナス。
日本中で人口が減っていくのだから、減らさないと考えるのは
無理があるだろう。日本全体の減少ペースと同じなら
むしろ普通の状態。それ以上の減少ならば課題。
ただし、住みにくい地域だからこそ現在過疎になっていると考えられる
ので、その地域で人口を増やすのは基本的には無理だろう。
細川:島根県隠岐諸島では、地域活性化と外部からの移住の優良事例だが、
それでも全体を見れば出て行く人の方が多い。
多田:総務省の職員が講演で、かつての奈良県大塔村の村納めの話をした。
に最後まで住んでいるおじいさん、おばあさんは満足していた。
いくら過疎の地域でも、そこに住んでいる人が満足しているならば、
外部の人間がとやかく言う必要はないのではないか。
今後日本全体を見れば、消えていくや自治体がどんどん出てくる。
活性化や人口を増やそうという取り組みも結構だが、どのように
最後を迎えるべきか現実的な検討を行っていくことが必要。
細川:東京の一極集中から、人を地方へ移動させるために、
東京都の固定資産税を高く設定するなど、東京の人口を減らす
圧力をかけてはどうか?
多田:道一本隔てた埼玉県や千葉県へ移動するだけではないだろうか。
強制的に東京から追い出す政策ではなく、地方に仕事や産業や文化
などを育て、そこに住みたいと思わせるような
魅力的な自治体にならなければ、人は集まってこないと思う。
3 地域創生の動き
細川:中央省庁の役人を地方へ派遣する政策についてどう思うか?
多田:国は1000兆円以上の借金をつくり破産状態。現状は更に悪化している。
そのような行政経営能力の国の役人が自治体へ来てどうなるのか?
むしろ国のことをしっかりとやってもらいたい。
細川:国は地方活性化の策が考えられないので、補助金同様に
職員をばら撒き始めたのではないか?
4 政党の動きと政策の支持拡大
細川:今後国の政党はどのようになっていくと思うか?
多田:自民党も民主党も、各議員は政策で結びついているわけではない。
例えば原発賛成から反対まで、180度考え方の異なる議員が
いっしょになっている。これでは有権者は政策で政党を選べない。
過大な借金を抱え、国の財政破綻は避けられないと思う。
そうなった場合、自民党や民主党も含めて、いったんバラバラになり、
同じ政策を持つ議員が集まって本当の政党ができるのではないだろうか。
そうならないと有権者は政策で選べないし、政党としても政策を実現できない。
ただし、共産党や公明党はいまのままかもしれませんが。
細川:少数意見を多数意見に広げていくにはどのようにしたら良いか?
多田:有権者に政策として訴えるには、かつての小泉総理のように
ワンフレーズの演説が良いと思う。政策を5つも並べても覚えてもらえない。
最大3つくらい、できればワンフレーズで憶えてもらい、
覚えた人から他の人へ伝えてもらえれば政策の支持が広がるのではないか。
5 地方再生の本質
細川:田中角栄は土建業を通じて地方が食っていく仕組みを作った。
これから国や地方が取り組むべきことは?
多田:国が考えるべきことは、
どうやって国民が食べていったらよいのかということ。
山奥でも鉱山が栄えていた所には、映画館やパチンコ屋もあった。
高度成長期の日本は、大量に物を安く作る国だった。
これからの時代にその産業モデルでは通用しない。
日本は発展途上国でなく、成熟国家であることを意識して、
フランスやイタリアのように、デザインやブランド、特許など知的、
ソフト的な産業を育成し、そのための人材育成が必要と考える。
日本中の地方都市が同じことをやっていては、選ばれるための
独自の魅力が育たない。その土地独自の歴史や文化、産業などの
魅力を育てていくことが発展につながると思う。
6 地方議会改革
細川:ある知事選挙の支援に入り、自分としては
すばらしい政策を考えたが、有権者の賛同が得られなかった。
どのようにしたら有権者の支持が得られるか?
多田:市町村議員レベルの選挙では、
残念ながら政策で議員は選ばれていないと思う。
地元へ利益を誘導したり、業界団体のために動くことで評価されている。
県や国レベルの選挙では、議員一人ひとりの政策よりも、
そのときの国の政党に対する風向きが大きく影響している。
議員が政策で選ばれていない状況の中で、いくらすばらしい政策を
考えても票に結びつけるのは難しいのではないか。
細川:地方議会は、市民参加や、より政策的な議論が交わされるように
改革が進むか?
多田:自治体によって議会改革の差は大きいと思う。
数名の議員の意識が変わっても議会全体が変わるわけではない。
先に述べたように、多くの場合「政策」で議員が評価され当選する
わけではないので、多くの議会が自然と変わっていくとは思えない。
むしろ、北海道栗山町議会では、なぜあれほどの議会改革ができたのか?
細川:町長と議会側の対立がもとで、町の総合計画が否決されたようだ。
議会側が勉強して独自の総合計画案を作り上げたことをきっかけに、
議会改革が進んだようだ。
7 若い世代の社会参加
細川:20~30代の若い世代の政治参加や社会参加が少ない。
何か動きはあるか?
多田:
・高崎市では、市役所若手職員らを中心にした町のさまざまな人が集まり、
朝活ミーティングや、ワールドカフェを行っている。
その活動を核にしてさまざまなイベントも実施している。
・伊勢崎市では、取り壊し予定の倉庫に若者が集まって映画を観たり、
音楽を演奏する活動が起こっている。
・横浜市では、空き店舗を利用して地域住民がカフェを営業し始めた。
地域コミュニティ活動をすすめるには、みんなが気軽に集まれる
カフェのような場所が必須と思う。
―以上です。