きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

京都再び

2022-07-14 16:21:58 | 旅行

 先日、用事があったのでひらりと京都に赴く。高速バスがてっきり八条口の方に着くと思っていたが、どうやらまわり込んで来たようだ。ということは降りて(きの)「おぉ!京都タワーだー」おのぼりさんか。去る時は急だったが、来る時はもっとあっさりしていた。

 

 

 夜に着いて改装中の駅ビルでラストオーダーのトンカツをむさぼり、ホテルがどこか探すのもめんどくさいので、もはや常宿となってしまっているギンモンドへ。烏丸御池で降りて、いつもは3番だがうっかり別の出口へ。

 階段を上がると、なんとあの意識がスカイハイの新風館につながっていた。あいかわらず気取ったデザインだが今日は時間も遅いので人もいない。通り抜けて裏道に出た。ということはこっちの方に行けばホテルがあるはず。真っ暗な事務所や学校?らしきものを越えて、右に曲がればギンモンドと。あった!

 

 前回は表通りに面した大きな部屋だったが、今回は角を曲がって脇道を1本入った方の部屋だ。狭いわけではないが、正面に向いたきらびやかなしつらえの部屋とは違い、なんだか古い旅館のような雰囲気がただよう。ということは、表向きの部屋だけをリニューアルしたのか。開けようと思えば開く窓の向こうには小さなベランダと、カーテンの内側に昔障子だったようなモダンなふすまが。

 そういえば舞鶴の老舗ホテルもこうなっていた。今回は壁にかかる不可思議な絵画はなく、落ち着いた押し花を額縁に入れたものだ。下を見ると大通りの方向に神社が見え、窓が東山の方を向いてはいるが、目の前の高層ビルでほぼ何も見えない。

 

 表向きの部屋の時も不自然に思ったが、あの内装で部屋に置いてある飲み物セットが「湯飲み」な理由がわかったような気がした。鉄柵だらけのレストランに圧倒されるが、ここは実は古いのだ。もしかして最近までパジャマではなくて浴衣だったのではあるまいか。

 半年ほど前イトコに絶賛してもう1泊勧めて、ついでに便乗イタリアン朝食を狙っていたが時節柄朝食は休止したと聞いてフロントで引き返し、部屋までは送らなかったので確かめなかった。神社が見えて良いホテルだったと聞き満足していたが、どっち側の部屋だったのだろう。こういうことは後で確認しなければ気が済まない性分だ。

 

 

 

不愉快なレストランagain

 用事をこなし、またしても意気揚々とカギを振り回しながら入っていく。今日はカウンターに座ってみよう。(店)「さて、今日はどんな風に飲まれますかね」もう安定のアル中扱いだ。(きの)「これはこの前食べたから、カルボナーラが食べたい」(店)「そしてそれに合わせる?・・・」コーラだバーカ。

そんなに不愉快なら行かなければいいが、ほの暗い店の誘惑に勝てない。イタリアン朝食はバイキングだというのでいつか食べてみたい。

 

 ピンクの肉の乗ったカルボナーラを丸飲みにしコーラで流し込んで愉悦にひたっていると、奥から出てきたヒゲの海賊のような店員がおもむろに古式ゆかしい装飾だらけのビールサーバーから無糖の炭酸水をコップに注ぎ、(バンダナ)「あの、これここに置いておきますから」と言ってコトッと置いて去って行った。(きの)「おぉ!これはどうも。」

 前にサービスですと言ってくれたことがあるからわかっているのであって、初めて来た人に突然気泡の浮いた液体を微妙に離れたところに置かれても何の目的か釈然としない場合もあるだろう。掃除用かなとか、展示ケースの乾燥防止の水を飲んでらぁとか笑われたらどうするとか、気になるのではないか。常連の証だろうか。これこそ店主こだわりのイタリア炭酸・サンペレグリノなのかな。ゴクゴク。

 

 寝ようと思ったら、珍しく夜に暴走する集団がいた。その後も現場に急行するパトカーなど多数。あの堀川御池のところから救急車が無限に産み出されてくるのだな。ホテルや店が、奥まった部屋に通そうとしてくれる意味もわかる気がしてきた。月が東山のあたりから出てきてパステルカラーのビルの横に並び、トーマス・マックナイトのような構図になっているのを眺めながら寝る。

 

 早朝に目が覚めた。下の道路で音がしたのかな。起きるとなぜか何かしようと思う。もったいない気がしてそのまま寝る気になれない。黒い板はこの前見た。科捜研のトリックがある意味すごかったので、ますます気になってはいけないから他に何かないかなとスマホを操っていたら、YouTubeのオススメでADHDのテストを紹介していたので見てみた。要は人の気持ちがわかるとかわからないとかの心理テスト。

 

1 なんたら問題(名前忘れた):じゃじゃんっ!

 女の子が2人遊んでいた。片方はビー玉を持っていて自分のカゴに入れて退出。その隙にもう一人が自分の箱に移し替える。さっき出てった方が入ってきて、さあどうする?

 

解答:箱にあると思う。

 

「不正解」

 

 なぜだ。女の子が2人だぞ?そこに重要なヒントが隠されているように思えてならない。大人しくお花畑の夢見心地で遊んでいるのだろうか。幼馴染のひとみちゃんなどはマセすぎて、おしゃまを通り越して年増のようであった。

 

 

最適な答えはこうだ!:

 A子は部屋に入って視界の隅でビー玉がないことを捉えるが、それについては言及しない。そのまま遊びを続ける。A子は知っている、ずっとその子がビー玉をうらやましがっていたことを。そして大人が来た途端(ひとみ)「あれぇ~?私のビー玉がない~(泣)」

 大騒ぎして弁明の余地なく盗人の汚名を着せられたその子は、以降彼女のお姫様ごっこのしもべとなるのだ。すべては最初から仕組まれた罠であったとも知らずに。このように幼少期の女性は恐ろしい。

 

次。

 

 

アイスクリーム問題:

 これはもうちょっと難しいらしい。なるほど。今度はA子ちゃんとB君が公園にいてアイスクリームを買おうとするが、A子ちゃんは財布を持っていない。家に取りに帰る。B男はしばらく待っていたがアイスクリーム屋が次の場所に移動すると聞き、A子に教えに走る。

 一方A子は財布をつかんで家を出ようとしたところにアイスクリーム屋が通りかかり、次の場所に移動する旨を告げられたので追いかける。そこにB男が到着。A子はもう家を出たと聞かされ、向かうのはどっち?

 

こいつは浅はかだ。だから一番直前に聞いた場所。

 

不正解!!なぜならB男はA子ちゃんがアイスクリーム屋と会ったことを知らない。

 

 そうかもしれないが、そもそもこいつは財布を持って戻ってくるはずのA子を待たずに飛び出した野郎だぞ。行き違いになったらどうする。A子もA子でアイスクリームのことしか頭にないのか。

 

 そしてスティングのテーマを大音量で流しながら走るアイス屋に街のどこかで追いついて買い、満足そうにすするA子は思い出す、「あれ、B男クンは?まいっか。あ!なんとかちゃんだ。お~久しぶりーそれでね、それでね、キャハハハ(スタスタ)・・・。」B男はいたずらに走り回って不憫だ。

 

 これはある情報を知ってるか知らないかの質問であって、相手の立場や気持ちを「思いやる」という視点が全く入っていない。人間の心はスパイの情報戦ではないのだから、こんなこといくら聞いたって人の気持ちは測れない。

 

 例えポケットのGPSでアイスクリーム屋の位置を把握できたとしても、最初にしたA子との約束を守ってアイスも買わず公園で待っているB男の方が人間的に好感が持てないか。おごってやれよB男!だいたい世の中の子供全員がアイスを追いかけるマヌケだと思っている出題者にも問題がある。

 

こういうテストは心理学や哲学など、人文学のエリアの人間ほどやりにくいのではないか。

 

「それは田舎の1本道で起きた出来事でしょうか?」

「1人でしたか?他に味方は?」

「B君は第二言語?A子の家の経済状況は?」

「普通?普通って何?」

「意識はありましたか?それとも無意識の領域の話?」

 

 矢継ぎ早にすべてを無効にするような質問が聞こえてくるようだ。とにかく要素ひとつでだいぶ違ってくるのだから、最終的な返答は “何とも言えません” だ。ちゃんと聞かないと正しい結果は得られない。(きの)「こんな使えないテストはだめだ。invalid(的外れ)!!」

 

不正解だと怒り出すというのがチェック項目になってないといいが。

 

 

不眠。

 

 

 

 

 

 

寝不足のままチェックアウトし晴明神社に行って、人生で2回目ぐらいの気まぐれでおみくじを引く。「吉」

 

健康-心身共に充実。

勝負-好機到来。

旅行-近場で済ませよ(タイムリーだねハハハ)。

商売-感謝の気持ちを表せば繁盛。

仕事-初心忘れるべからず(新入社員はどうする)。

転居-今が好機(大体の人は3月から4月)。

失せ物-すぐ出る(これは本当にそうだった/重要なものをなくし数か月悩んでいた)。

 

 確かに当たっているものが多い。ここ一か月の報告書を受け取った気分だ。いかんいかん。占いに振り回されるようでは。自分の人生は自分で決めないとね。(貼り紙)「よくない結果が出た人は結んで帰るように」良くない結果こそ持って帰ってじっくり反省すべきではないのか。当たっているところばかりに注目するのも楽観的すぎる。しかし、ネガティブな結果に囚われるのはますます良くない。ふりまわされても良くないが、確かな心持ちの人は占いなどいらないのでは。じゃあ誰が引くんだ?

 

 箱の隅の方にあった紫のヒモの付いた紙を選んだ(陰陽五行で黒だそうだ)。黒は水らしい。最近水の多い所に来た。しかし、最初は箱の中央にこれ見よがしに出ていた山吹色のヒモを選ぼうかと思ったが、やめて紫にした。もし山吹を選んでいたら違うことが書いてあったのだろうか。そりゃそうだろう。全部同じことが書いてあったらあまりにも観光客に対して暴利をむさぼり過ぎている。

 

 全部見て比べてみたいが、それでは「選んだ」という特別感がない。全部見た上で選んだらなぜダメなのかわからないが(マナー的にではなく、パラレルワールドを予測・検討するとか人生設計的な目線で)、他のを見ないという所に人知を超えた神の視点を残しておこう的な心の遊びがあるのかもしれない。その場合、見なかった未来についてああでもないこうでもないと考えをめぐらすのは野暮なのか。自分が「選んだ」ものがどうなのかが重要なのかな。

 

 そもそも「選んだ」のだろうか。全部見て自分の意思で選んだのなら選んだと言えるだろうが、中身が何かもわからないものを目についたというだけで引いたのならそれは「縁があった」という方が近い。縁があるとかないとかを知る意味って。

 確かにただ漫然と生きるより、人が気づかない物事のつながりに気づいたら人生は過ごしやすいだろうが、ではなぜ縁が知りたいだけなのに最初に自分で選んだように見せかけるのか。それを始めるのはあなたなのですというヒント?人は何の目的でランダムに書いた暮らしの指標を売るのか。

 

天文学の祖・兼著名な占い師(陰陽師)が勘で掘ったというボウフラの井戸も止まっていた。ちぇっつまんねえの。

 

 

 時間があるので、せっかくだからつい1か月前まで住んでいた家を見に行ってみる。見慣れた住宅街を通り、角を曲がると見覚えのある景色がまだそこにあった。当たり前だ。消えていたらそれこそびっくりだ。向かいの家のぎりぎりに停めたベンツや隣の玄関前のメダカの鉢など何もかもがそのままで、こっちからすると時間が止まっていたような気分になる。

 

 道路に立って肝心の部屋のベランダを見上げると、知らない洗濯物がかかっていた。もう別の入居者が住んでいるんだと思うと、淋しいような随分感慨深いものがあった。しかし、大家サイドに立ってみると、新しい人が決まってよかったね!という見方もできる。いくら街なかにあるとはいえ、ここ2~3年の混乱で住人も減り、階下の部屋などは軒並み空いている時もあった。

 

 4年前、混んでいる時期に突然来た割に良い部屋を貸してくれた感謝をこめて部屋をピカピカに磨いて出たが、次に見に来た人は入って最初にあの綺麗な北山の景色を見てどう思ったのだろう。

 

 

 

 それとも壊れたエアコンの蓋を見ただろうか。これから駅に向かい、西本願寺のとこの西利でカブとすぐきの漬物を買い、八条口の土井で柴漬けレストラン・・・って漬物多くないか?

 西利のベンチの前に設置されたモニターからは、漬物の作り方が優雅な京都弁で説明されて延々と流れている。大原の柴漬やどっかのカブ漬の解説をしばらく眺めていたが、さすがに関東の言葉とはイントネーションが全然違うので、しっかり聞けば内容はわかるのだが、気を抜くと今何と言っていたのかよくわからないという状態になる。

 上賀茂の「ぐ・き」ではなく「す・きー」らしい。うす暗い「むろ」と呼ばれる小部屋の中で石を乗せ、40℃でふつふつと泡を吹いている発酵食品を今から買うと思うとだいぶ臨場感があっていい。

 

 

 

 帰りのバスまで時間があるので駅ビルの屋上に登って景色を眺める。あまり知られていない秘密の通路を通って登ったところにテーブルとイスがある。自由に弾いていいピアノを誰かが下手くそな演奏で弾いていた。

 

 隣のテーブルのご婦人方3人のグループが視界の隅に入った。なぜ1人だけ立っているのだろう。3人ともおしゃべりに夢中だが、すぐ帰るのだろうか。それでも気になるので念のためこちらで余ったイスを渡しておいた。はっきりいってうるさいので長居してほしくないが、イスは常に人数分以上あるべきだ。

 

 ぼうっと暮れていく京都タワーを見ていて、最初に京都に来た時のことを思い出した。街中はものすごい人混みで大変な所だと思ったが、北大路駅の交差点の辺りに来た時に、全く知らない街だが妙に公共設備が古臭く学生が多くて古本屋などもあり、軒先の植木鉢が新宿の慣れ親しんだ早稲田のあたりに似ていたので、これなら多分大丈夫だろうと思った。この根拠のない自信がどこから来たのか知らないが、それでやっていけるのならそうに越したことはない。

 

 もう今は見慣れてしまって、あの時のような変な既視感はない。北大路は北大路だ。そういえば駅ビルは新しい名前に変更し、イオンモール北大路というダサダサの大型娯楽施設といった感じになってしまったらしい。自分はきっといつまでも「ビブレ」呼ばわりして今はない名称で道案内し、人々を惑わす迷惑な元住民となるのだ。

 

 隣のテーブルが立ち上がり、礼を言ってイスを返してきて去っていった。演奏者が替わり Alan Walker  の Faded を弾き始めたので拍手喝采しておいた。なかなかやるじゃないか。そういえばよく見たら駅もずいぶん混んでるな。もう観光客が戻ってきたのか。

 

 ドーナッツが食べたい。唐突に閃いて建物の中だがよく見たらテラスのような場所にあるミスドに行き、カウンターで観光客の流れを上から見おろす。ここは隠されたトイレがあって良い。隣の席の高そうなカメラを持った親子が荷物を置いたまま選びに行ってしまう。世の中は良い人ばかりとは限らないのだぞ。まったく。そのうち戻ってきて食べ始める。

 

 ここの雑踏の中で冬の夜に人と待ち合わせたことなどを懐かしく思い出していたら、隣の親子が「じゃ、片づけよっか」と言ってマジックテープでビリってやる財布などを置いてトレーを持って行ってしまった。いいかげんにしてくれよ。こっちは席が立てないじゃないか。

 

そうしてしばらくして戻ってきたのでアホらしくなって帰る。京都は思ったよりも近かった。

コメント

横暴旅行社 縦横無尽

2022-07-14 15:37:55 | 旅行

 引っ越しの片づけをしたいが、住んでいるとやりにくい。というか実は住んでいないとやりやすいということを経験則で知っているので、勝手になじみにしたギンモンドに電話して(きの)「引っ越しの途中です。京都最後だから景色のいい部屋にしてほしい。」というあいまいなオーダーで予約し、斑入りのフランスゴムの木やレモンの葉っぱがいっぱい飛び出したIKEAの青い大袋を持った客が夜半に到着する。

 

 なんじゃそれ??とは思うだろうが、おくびにも出さないのがプロのホテルマンだ。同行者の名前を書けというから書いたら(ホテル)「娘さんのお名前はこう読むのでは」なぜわかる。あぁそうか、前に1回ひとりでデイ・ユースのランチを食べたんだったっけ。そうすると一応リピーターか。

 この繊維商(西陣織?)で儲けたらしいオーナーには独自の美意識があるのか、ホームページに「素泊まり」などという無粋な表現は使わない。宿泊プランの最後にさりげなく「室料のみ」。宿泊料金も今どき珍しい後払いだ。キーチェーンは無論アクリルの透明な棒。それを出かける時にフロントに渡すと、行ってらっしゃいませと言ってくれる。イタリア風のシャレた装飾に似合わず、古式ゆかしい作法に則っている。

 

 置く場所がないとも、資金がないとも思えないが製氷機もなし。頼めばフロントでアイスペールごとくれるらしい。酔っ払いはキライと宣言しているのか。コーラに必要だったら頼もうかなと一瞬思ったが、そうまでして出してくるのは、もちろんオシャレなかち割氷や売ってる透き通ったやつでしょうねぇ?まさか事務所の冷蔵庫の製氷皿をひっくり返したのでは、一周まわってあまりに所帯じみすぎている。もちろん洗濯機などという生活感あふれる装置はなく、すべてがホテルのクリーニングサービスだ。

 

 HPでは大々的には言ってなかったが、朝食弁当をこっそり頼んだらあるらしい。デイユースのイタリアンランチBoxは、500円の予算をだいぶ越したと思われる内容(利益はどうした)だったらしいから、和食限定だがどんなのを出してくるのだろう。渡された紙箱は、地下の和食料理屋で作ったらしい漆黒の2段。

 

 (フロント)「このヒモを引いて下さい」わかった。部屋に持って帰って箱から出ていたヒモを(きの)「ズルズルズルッ。」・・・。何も起こらないじゃないかと思っていると(箱)「ゴゴゴゴ・・・コォォォォゴボゴボゴボゴ(蒸気)ブシューッ」これ大丈夫でしょうか!何の原理で熱くなっているのかわからないが、こういうのは軍の食事などに使われているやつではないのか。とにかく今は開けない方がいい。

 

 10分ぐらい遠巻きにして見ていると静かになったので、開けてみるとすっかり温まった山ほどのちらし寿司が(きの)「無理」朝からこんなに甘いご飯たべるのやだ。壁の絵画を眺めながらソファーで長時間かけていただく。

 

 

 部屋の壁に、鉛筆で描いたような不思議な絵がかかっている。どう考えても素人で絵をたしなむ人が描いた、京都の民家の絵だ。オーナーの知り合いだろうか。パースが独特というか、全部が浮いているようなセザンヌもびっくりの遠近法で、どれが手前にあるのかわからない。ロビーにも舞妓さんの絵があったから、やはりこれは祇園祭の夜なんだろうな。

 

 朝食を食べたら家に出かけて片付ける。朝一番で挨拶に来た個人の引っ越し屋さんに心付けを渡す。(きの)「おつまみにどうぞ。それからこっちは向こうの方へ渡してください。そしてこの封筒でどうぞお昼を。」(業者)「えっそうなんですか!?」聞かれても困る。喜んで受け取るか遠慮するかのどっちかにしてほしい。梱包済みの荷物を積み込む。

 

さてと掃除。最初は備品のエアコンカバーを、

 

(留め具)「ばきっ」

 

 

 

(きの)「・・・。」

 

 

 

 

 どうしたんだろう。取れてしまった。これはカバーがないと中の機械が丸見えでどうしようもない。どうしよう。(きの)「おろおろ」とりあえず散らばった部品を集めてビニールに保管。大体あんなちゃちな留め具で持つわけがない。デザインのミスではないのか。新品そうだったのに。最初に払ったデポジットで賄いきれるのか。弁償という言葉がちらつく。

 

 気を取り直してベランダの網戸が汚かったので取り外して洗ってこすったら(枠)「もああぁぁ」網がブヨブヨにたわんで取れた!どうしたんだまったくもう。これは前から古かった。しかたがなかったんだ。自分にそう言い聞かせ、時間も限られているので前向きに進もう。

 

最後の洗濯をしながら作業を進める。(洗濯機)「ガコガコ」おかしな音がしているな。(きの)「ハッ!!」開けてみると黒い水が回っていた。

 

 

これは・・・う~~ん。

 

 

 前日にベランダを掃除していて、余った園芸用土の袋を置く場所ないからって洗濯機の中にとりあえず入れた。それを言うの忘れてた。慌てて排水したところ詰まって止まった。(洗濯機)「エラー。エラー。」うわあぁぁ。

 

 

 ショックで無我の境地に入りしばらく佇んでいたが、やおら復帰してきて容器で中の水を汲みだし廃品回収の依頼をする。タオルや服が草木染のような色になってしまったので、絞ってコインランドリーへ。結局最初から何がしたかったのか。これではただ破壊してまわっているだけだ。

 

 最終仕上げで引き取りに来た業者が洗濯機を傾け(水)「ドバーっ」底の方に残っていた泥を部屋じゅうに撒く。(業者)「ふ、拭くもの・・・布とか?」さっき全部引っ越し荷物を積んじゃった。絶望の空気が流れる中、たった1枚残っていた雑巾で細々と吸い取る。パソコンの充電器にかかった。

 

 

 

 

 そして、この台所の下から出てきた数枚の銀色の板は何だろう。しばらく斜めにしたりして眺めまわした後で思い出した。これは来た時に(きの)「こんなダサいもんいらない」早速はずして戸棚にしまったガスレンジのネジとボード。IHヒーターなので使わなかったから、すっかり記憶から抜け落ちていた。

 

 (きの)「あ!!」しまった。ネジを締めるドライバーはさっき荷物に入れて(引越し屋)「じゃあ行ってきま~す。ブロロロロ・・・」持って行ってしまった。(きの)「・・・。」これぐらいは元に戻さないと、思いっきり部屋を破壊していった住人だ。今さらダイソーで買うのもねぇ。うちにはいっぱいドライバーがある。なら、なぜその1本でも残しておかなかったか!くそっ返す返すも口惜しい。

 

 夕方ホテルのフロントになだれ込み(きの)「工具を貸してくれ~」なんなんだこの客は。しかし粋なホテルは顧客の心地よい滞在をサポートする為か、大慌てで奥の部屋に飛び込んで引っ掻き回して出してきてくれた。そんなこと言って思いつめた夜逃げ野郎が最期だからと高層階の窓ネジをはずすとは思わないのだろうか。

 

 そんな客がいたら貸出禁止になってしまうだろうから、念のため「台所」と書いた風化したビニールに入ったネジを持ってきて、サイズ合うかなとか言いながらドライバーと比較して疑念を払拭というか、抱かせないように心がける。Economics 250の授業の中国系の先生も言っていたが、普段からプラムの木の下で帽子を直さないし、ウォーターメロンの畑で靴ヒモも結ばない。

 

 

 

 

 

 翌日は借りたドライバーを携えてまた家に戻る。カビキラーを撒きまくり床をピカピカに磨く。申し訳ないので、スリッパなどの元から用意されていた備品は新品を買って置いておく。何もない部屋を見渡すと、荷物がなくてずいぶん広い。そして、いつも思うのだが、家具がない部屋はなぜか肌寒い。北山も、もう見納めだ。

 

 いつまでも感傷に浸っていてもしょうがないので部屋を出る。不動産屋にカギを返し、さてとばかりに(きの)「ええとですね、掃除をしようとしたらクーラーのフタが取れました。それから網戸がぶよぶよになって崩壊」(不動産)「古いから?でしょうね・・・あの、私は営業だから私に言われても」(きの)「いいえ、ものを壊しておいて黙って立ち去ることはできませんよ。」(不動産)「はぁ」

 存分に礼を言って店を出る。やりきった満足感でいっぱいだ。罪の告白をしに行ったはずが、なぜか犯行声明のようになってしまった。(きの)「おかしいな。」駅のカフェで買った新しく出た「桜なんちゃらラテ」をじうじう啜りながら地下鉄へ。

 

 今知ったが、引っ越し先の不動産屋の都合で契約の日がズレることが判明。もう1泊ホテルを足してもらおう。(ホテル)「週末にかかると料金が高くなってしまうかもしれません」(きの)「それはかまわないけど、さすがにここで一旦払おうか」(ホテル)「それより同じ部屋が取れるかが問題です。お調べします」 お互いに変な 意地 誠意を見せ合う。

 

 

あこがれの不愉快な料理屋

 メシ。待ちに待ったほの暗いレストランへと入っていく。早速出てきた長いエプロンの若造(ギャルソン)「今日のワインが」(きの)「お酒は飲みませんが」(店)「でも聞くだけ聞いてください。まず赤はですね・・・」新人の研修だろうか。(きの)「なるほど」すべてにいちいち頷いて聞いていたが、何の銘柄かさっぱり。ちんぷんかんぷんだ。説明が終わって(店)「えっと、ちなみに今日だけ飲まないとか?うひょひょ」(きの)「いつも飲みません。」なんで人を呑んべえ扱いした?不愉快な店め。

 むかつくから、へんな混ぜたノンアルコールカクテルを2杯も注文してやった。こっちは1日中掃除してノドが乾いとんのじゃ。しかし、持って来たのはありがちなソフトドリンクやシロップを混ぜたカラフルなジュースではなく、本当にアルコールの味と匂い「だけ」を忠実に再現したノンアルコール飲料だった。不味い。こんなんだったら酒でも頼んだ方がマシだ!

 

 見ると壁や棚のいたるところに珍しそうなワインの瓶が置いてある。地震に弱そうな店だ。中に混じってサンペレグリノの炭酸の緑色の瓶もある。ずいぶん大きいな。本場ではあんなサイズもあるのか。あれを輸入したんだな。この店の照明もソファーも全部本場のを輸入したっぽい。オーナーのこだわりが見て取れる。壁の木の腰板に、またもや網目の通風孔を発見。あれも大昔の暖房設備だろうか。

 

 自家製サルシッチャ。綴りからいってソーセージではないのか。ソーセージは冷やして練らないとエマルジョン(乳化)の状態にならない。それを店とはいえ個人でできるのか?気になるので注文してみたらひき肉の固まりが来た。以前、自分が勇んで家でソーセージを作ろうとして失敗した時と瓜二つの見た目だ。

 ソーセージ・リンクスが食べたかったんだよう。結局、プロが作ってもこの程度なのか。というか、思い付きで見よう見まねで作って同じ味になった素人の調理センスの方がすごくないか?

 肉の塊を引きちぎりながら、あの仕切りは何だろうと思った。奥の宴会個室を仕切るシャレた白いドアがいくつも並んで天井から吊り下がっている。あれを移動させてプライバシーを確保したり使わない時は取っちゃえーということなのだろう。レールは要らなくて床はすっきりするが、天井の方が鉄骨みたいのでゴチャゴチャして大がかりなマジックショーみたいだ。

 

 

 娘が急に友達と大阪に漫才を見に行くという。ツインの部屋で1個しかないカギを持たずにもう1人が出かけると、中にいる方は事実上何もできない。いつ帰ってくるかわからないので風呂に入ることもできないし、他の場所に出かけることもできない。こんなオシャレなホテルなのに何て不便なんだ。ヒマなのでさんざんベッドの上を転げた後、おもむろに(TV)「ぷちっ」旅行先のホテルでは積極的に黒い板を見てみる。その地の天気予報やヘンなコマーシャルなど、特色があってなかなか面白い。

 

 白衣を着た沢口靖子が喋っている。これは・・・何だっけ?京都地検じゃなくて、科捜研?近くが舞台のはずだが一向に見たことはない。火曜サスペンス系は紋切型の水戸黄門みたいで見る気がしない。後半の謎解きの所だけ見たが、すごい内容だった。毎週こんなものを放送しているのか。

 

内容:

 校長を憎む教師が、休日の体育館で校長を金づちでチョイと殴って殺害。ステージにある幕で校長を包み、数本の釣り糸で釣って上の方に巻き上げて隠す。その後しばらくして戻ってきて今度は釣り糸を伸ばしながらバスケゴールの下をしばり、そこに片手でボールを仕掛け、台車にひっかけてから、そのまますごい力で体育館の出口まで糸を引っ張っていき、ドアを閉め外の花壇にちょこんと差してあった杭に結び付けてトリックは完了。後で誰か来たら糸が外れ、校長がダァーンと現われるという寸法らしい。

 

気になる箇所がたくさんあるんですけど。

 

  1. コンッて軽く殴ったぐらいで死んでしまうのか。
  2. 幕で包んだ大人1人を釣り糸だけで上に引き上げる腕力。
  3. 後で戻ってきたら幕から何かボタボタという最悪な見た目になっていないのか。
  4. そして、さらに今度はそれを片手で支えた上で工作もこなすとは。離れていくほどすごい重さにならないのかな。それらをすべて支える花壇の華奢な看板やピタゴラスイッチのような配置などは、事前に何度も動作確認したんでしょうねぇ!
  5. 校長にそんなことするなんてひどいっ校長もパワハラしちゃだめだよー。生徒みんなショックだったね。心のケアが必要だ。うんうん。

 

 こんな設定条件に難ありな内容を推理と謳っているのか。これはトリックではなくてただの「無理な工作案」だ。ミステリーとは高尚な論理パズルだと思っていたよ。トホホ。

 

 向かいの道路に桜が1本だけ咲いている。3月の終わりの今にしてはちょっと早すぎるのではないかな。通行人が写真を撮っている。彼岸桜か?汎用のソメイヨシノや、奥地の葉つき山桜はもっと遅い気がする。向かいのビルの壁面に十字架みたいなバッテンのライトがいっぱい光っている。マンションだと思うけど、しかしこんなに建物が乱立していたら、いくら光らせたって向かいの人たちにしか見えない。ということで見ていたら、夜が更けるにつれて消された。

 

 TVも飽きたのでフロントに電話してカギがないと不便だと伝え、帰ってきたら開けてくれるよう頼んで風呂に入る。しばらくすると焼き鳥屋のような煙たい匂いをさせて帰ってきたので、クローゼットにあったファブリーズで撃退。大阪には芸人が来る居酒屋というものがあるらしい。

 

 

 翌日は市役所に行ったり、若菜屋で知り合いの不動産屋へのお礼の和菓子を大量に注文したり、銀行を探したり、小川珈琲の本店に入ったり、パンツをクリーニングしてもらうのも何だしということで洗濯機を借りるという名目で人生で初の漫画喫茶に入って行ったりして過ごす。本当にマンガがいっぱいあった。いつもの四条河原の交差点では、盛んに何かの演説が行われている。いつも誰かが宣伝をしていたりするので、ここが街の中心部なのだろうなと思う。

 

 夕食は有名な牛カツ弁当にアホほど並んでいるのを見て嫌気がさして、そこらの看板が出ていた澄み切った汁のラーメン屋に入る。具が鶏のササミのほぐしたのや旬の鰆で、珍しい黒七味がカウンターに置いてあった。変わったラーメン屋だが味は変ではない。

 

 横の大柄な学生らしき人物が、店に入った時からずっとつけ麺のソバを食べているなとは思っていたが、その後も長時間かけて悩みながら食べ続け最終的にお店のアルバイトの女の子に小声で理由(食べれると思って頼んだけどちょっと厳しかったとかなんとか)を述べて謝ってから残して出ていった。そんなに食べれない量でもないし、辛かった??律儀な若者だ。

 

 街を歩いているのは10代が多い。千鳥屋の支店があったので貯まっていたスタンプカードで挨拶用の和菓子を手に入れ、また新しいスタンプカードを渡される。カードの問題を片付けたかったから寄ったのに、これでは本末転倒というかいつまで経ってもこの輪廻の輪から抜け出せない。

 

 

 

 翌日の朝はお粥だ。またあの蒸気噴射弁当を頼んでしまった。ちらし寿司とお粥が日替わりで来るらしい。こちらはまだ食べれる。ピンクのカブの漬物が美味しかった。チェックアウト時に精算し、気になったので(きの)「朝食の分は足してあるのか」聞いてみた。(ホテル)「込みでございます」レシートにはひとつも朝食についての言及がなされていないし、元から朝食の付いたプランはない。電話で聞いた室料のみの金額のままであるように思うのだが。あまり詮索すまい。プチ常連&イトコ紹介&連泊サービスということでありがたく受け取ろう。

 

 ホテルを出発し京都駅へ向かう。旅の前に通年優良カスタマーからの陳情。(きの)「前回のような過酷な旅は嫌なんですけど」(娘)「今回は前とは違う会社ですってよ」うそだ!(きの)「子会社って聞いたぞ。息がかかっているんじゃないのか」(娘)「ふっ」やっぱりそうか。「メチャクチャ交通」という新しい社名を付けてあげた。

 

 

 なんだかんだ言いながら貯めてあった進々堂のクーポンでサンドイッチを買い、青い空に白い京都タワーがよく映える晴れた朝に、古の都を後にした。

 

 

 

 

 

 思えば4年前の4月初旬に来たときにはすでに桜が散り始め、高瀬川の川面をピンクに染めていた。家と家の隙間が10cmしかない狭い所だと思ったが、その割に住人達はギスギスするでもなく、家の前に置いた金のなる木を大株に育て上げ落ち着いた暮らしをする人が多かったように思う。思い立って急に来たが、去る時も急だった。

 

 小さいころから色々と引っ越してきたが、一度も前に住んでいた家に戻ったことはない。(父)「なぁに、すぐまた来れるよ」なんて嘘ばっかり。あまりに引っ越した先の環境が違うと、子供はそのうちあれは自分だけが見た夢だったのかもしれないなどと思うようになるんだ!

 

 高速バスは淡路島の海沿いをひた走る。引っ越し自体は好きだ。船舶の関係で転勤の多かった母の一族は、新しい環境と海が大好きだった。新しい所には、新しい何かが待っていると訳もなく期待する。何百年も同じ場所に住んでる父方の方では、心のよりどころとなるはずの Home が浮遊し空母のように動き回るなんて考えられないことだろうけど。

 

 四国にたどり着き、絞った家の候補を2軒見て、途中で実際の通学を想定した「自転車で橋を渡ってみよう」のコーナーが設けられていた。貸自転車を用意され近づいて見上げると(きの)「・・・これを?」何でこんなに大きいんだ?これ瀬戸大橋じゃないのか?(きの)「鴨川にかかる橋ぐらいだと思ってた」(娘)「自分もそう思ってた」どこまで行っても橋のたもとが見つからない。やっと見つけて上っていくと橋桁の上には暑さで蜃気楼が立っていた。見おろすとはるか下にエメラルドグリーンの海水が。(風)「ビョオォォ」(娘)「・・・もう1軒の方にします」そちらにはバスもある。

 

 ほうほうの体で不動産屋との待ち合わせの場所に滑り込む。(不動産)「大丈夫ですか」(きの)「もうすでに死にそうなんですけど」そんな客を案内するのは嫌だろう。ペットボトルのお茶くれた。

 

 水分が来たら急に生き返り(きの)「こんないい景色なんでもっとアピールしないんだ!」(不動)「はぁ」そんなこと言われたって困る。話の途中に聞いてみた(きの)「セルフうどんて、どこからセルフですか」(不動)「う~ん。普通の。あ、でも自分で茹でる店とかありますよ」少なくとも生地はあるのだな。

 

 

 

徳島駅ビルのホテルへ。

 いつもプランに難アリのとんでも旅行社(娘)のはからいで、線路が見える高層階の部屋にしてもらった。JRホテル系列は頼めばそのようにしてくれるらしい。窓からは電車が行き交う様子が見える。

 

 またもやツインを頼んだらルームキー1個しかくれなかった。不便。しかもギンモンドは電気が壁のスイッチで点けられたが、ここは変な形のキーホルダーをドア近くの壁に埋め込まれた石鹸置きのような受け皿に置けという。それで電気が点くらしい。カードでないなら代替のIKEA方式も使えないじゃないか。

 出かける時にパソコンを切るのがめんどくさい。充電もできない。何がどうなっているのかわからないが同じくらいの形のものを置いてみてもダメだった。どういう仕組みになっているのか。同じ重さ、材質などを次々試してしばらく遊んでみる。赤外線?

 とうとうフロントに苦情。(ホテル)「これを使いなされ」満を持して出してきたのはマグネットだった。磁力!まったく思いつかなかった。やるなクレメント。クレメントって何だろう。三日月の感じがしたが、三日月というホテルはあるな。系列?三日月はクレセントだ。クロワッサンも。

 クレッシェンド(だんだん強く)やクライメート(気候)、クレメンス(ネットスラング?)とは違うのか。エスクレメント(イタリア語で糞)ではないことだけは確かだ。r だしね。クレメンタイン(温州ミカンの地中海の方に行ってしまったやつら)とは関係がないのかな。ハッここは柑橘王国。まさかね。マンダリン(温州みかん)ホテルでは香港にありそうだ。

 

 ここは朝はビュッフェがあった。鳴ちゅるうどんというヒワヒワの麺や何かの雑炊、甘いちらし寿司など見たこともないメニューが並ぶ。ここって西日本?北海道以上に奇異な感じがした。そしてやっぱりあったスダチゼリー。緑だー(感動)!その他スズカや木頭ユズ、ユコウなどこれでもかとそこらじゅうの土産物屋にある。温暖なのだな。駅前がヤシの木だらけだし。

 

 朝にぶらぶら散歩してたら駅前のデパートの地下に泉があって、赤い巨大な金魚が透明な噴水の中で泳いでいた。これは随分デカいがお祭り出身なのか。頭の形からコイではないとは思うのだが、この金魚は赤すぎるしコケも生えていないこの水はどうなっているのか。湧き水?

 駅ビルではスタンプカードを配っていて、1枚もらってどうせ使わないだろうとポケットに入れて次の店で出さなかったらまた新しいのをくれた。よく読んだら5個たまったら500円引!3個でも300円引だよ!て、そんな気前のいい話があるかい。

 上の階の中華料理屋に入って行き、本場の店主に(きの)「表にあった上海焼きそばの見本はこのメニューの中で言うとどれか」などと詳しく聞き(店)「この普通のだよ」という要領を得ないつっけんどんな返事の割に、海鮮の乗ったのがちゃんと来た。会計時にスタンプカードはあるかと聞くから、あぁそれなら2枚も持ってるゼ!と意気込んで出したら両方に押印。なぜだ。ちがう。そうじゃない。

 

 薬局で3個たまったので次に入った服屋で300円引になった。最後に別の店で当座の日用品を数点買い、(きの)「明日ここを出るんだけどさーこのカード最後に押してもらった店とは違う店で使うべき?」押した上に引いてくれた。ちがう。そうじゃなくて、聞きたかっただけだったんだ。みなさんの太っ腹加減に恐れをなして早々に部屋に帰る。

 

 部屋を出る時に、ルームサービスで他の部屋を掃除していたから話しかけて飲み物だけもらったので、Do not disturb プレートはぶら下げなくてもいいかと思いきや、帰ってきたら全てがきれいになっていた。ベッドの上にちらかしたパソコンはベッドメーキングをしたあと再び同じ場所に置いて掛布団をぴらっと斜めに避けて「最初からそこにありました」と言わんばかりに再現されていた。複数台のスマホが等間隔に並べられている。掃除するなら言ってくれたら片付けておいたのに。

 昨日、紙に「掃除は結構。ほうじ茶とコーヒーと水だけくれ」と書いてドアに吊るしておいたら、本当に書いたものだけがビニールに入ってドアノブからぶら下がっていた。え?タオルは?粉ミルクやヘンなかきまぜ棒は「いらない」とか言うのもどうかと思ったからこのような書き方になってしまったが、本当にそれしかくれないとは。「食品では、ほうじ茶とコーヒーだけ下さい」と書けば良かったのか。

 

 夜にコンビニに行ってみた。前から思っていたが7/11のバスタオルは分厚そうだ。ルームサービスでくれなかったので、ちょうどよかったから新居用に5セット買おう。と思ったら右側のコンビニには3枚しかなかった。夜の駅前には誰もいなくて、車もいない。端の方にスェットのジャージを着たような数人がいたが、こうもギャラリーがいなくてはオシャレしてたむろする意義が見いだせないのではないか。

 

 タオルを選んでいたらそのスェット集団が次々と店に入ってきてレジの前にひしめき合い、邪魔なことこの上ない。店長も困惑。幸い通りの向こうにも7/11があるから行ってみよう。店を出て横断歩道を渡ろうとしたとき後ろの暗がりからやにわに走りだしてきた人物がいて、こっちはすわ!強盗か!?と思ったが、ただ信号がチカチカしたので渡りたかっただけらしい。よく見たら塾帰りの学生で本人は怪しいふるまいだとはつゆも感じておられないご様子。信号しか見ていない。平和な国の無防備さを、物騒な国ではぐくまれた危機意識で断じるのはどうなのかとは思うが。う~~ん。

 

 先日、実家の空き地にボロい軽トラが停めてあった。荷台に転がるバットとほどけたロープ。しばらくすると作業着に書類入れを持った威勢のよさそうな持ち主が帰ってきたのでどこの誰か聞いた上で(きの)「なんでこんなに怪しいのか」(作業)「?」 指さしたら(作業)「えっ?・・・えぇーっ!!ちがう。これは」などと指摘されて初めて他人の眼で見たらまことに怪しかったようだ。

 

(作業)「これは、ただ・・・家から持って来ただけ」もう説明も意味不明。設計士か大工で近所の顧客のところに改装工事の説明に行った帰りらしかった。どうせ自分の高校野球のバットだろう。つっかえ棒に使っていたとか、そんなくだらない理由だ。見るなりこっそりプレート込みの証拠写真を撮るこっちが考えすぎなんだ。その他チェーンソーが壊れたからってむき身でホームセンターに持ってくる近所のおじいさんなどに道で会っても、どうしたらいいか迷う。

 

 翌日、ホテルの近くのセルフと書いてあるうどん屋に思い切って入ってみた。丸亀製麺のようなところであった。皆さん並んでお店の人に(客)「並!」とか叫ぶと温めた麺とツユを入れてくれるので、自分で天ぷらやネギをつまんで乗せる。これならできそうだ。満席かと思いきや作業着の集団がものすごい勢いで食べては出て行く。見てると鏡餅のように結い上げた麺をザルの上に乗せてうやうやしく運んでいく学生などがいるが、あれはちょっと炭水化物の取り過ぎではないのか。そして、後日国道沿いでますます謎が深まる表示を発見する。

 

 

(看板)「うどん フルセルフ」

 

 

 

 

 

四国に着いてみてわかった不具合がいくつか。

難点その① カギがない。

その② 電気が点かない。

その③ 夜半に漂う黄泉の船。

 

 

 

難点その① 年度末は業者が混んでいるのか、カギ交換の工事が終わらないのでいつまでたっても駅前のホテルにいるだけだ。荷物は不動産屋の倉庫に厚意で置いてくれてあるから、好きなだけ城跡の公園を散策したり洗濯をしたりしよう。

 

② 電気が点かない。

 翌日やっとカギの交換が終わり部屋に入る。初日は文字通り何もなく、静かに過ごす。翌日ガス屋に来てもらい、開栓したはいいが(ガス)「これは電気で屋内スイッチが入りますんで、使用は電気が来てからですね」(きの)「(絶望)うわぁぁ今日も電気もつかないしガスも来ない!」どうした。

(ガス)「えええ・・・と!?電気会社は?」(娘)「一日中話し中。」(ガス)「チラッ」台所のシンクの上には防災用のロウソクの残骸が3個。(ガス)「こ・・・こういうとこに電話してみては?」玄関のポストに入ってたいつかの停電の点検のお知らせに書いてあったフリーダイヤルの隣の「直通」の方の番号を指さしている。

 

 (きの)「う゛~~~!!」ダメで元々かけてみる。(きの)「番号が違うのはわかっているんですけれども、このままでは充電もなくなり電話をかけることもできなくなってしまう。どうしたらいいのか」現場一筋といった(オジさん)「こちらから関係部署に伝えます。番号は?」話がわかるじゃないか。(オジ)「そもそも最近は電力自由化で、いくらでも他社にかけることだってできたんじゃないのか」どっちの味方だ。(きの)「グスッだって不動産やさんがごごがい゛い゛っで・・・」(オジ)「わかった。わかったから切って待つように」グスッ。

 

 10分後(電話)「先ほどの者だがブレーカーを上げろ!」(きの)「は?」「ブレーカーだ!どこかにあるから!」さぁ・・・。暗い風呂場を進んでいき(きの)「これかな。ガチャ」(照明)「パラリーーー!!!」全部点いた。(オジ)「そこねーそのビル全体ですでに契約してあったから。休止中だっただけ。ハハハ」(きの)「・・・」

 

 試しに上げてみれば良かっただけなのか。見に来た時に不動産屋が(不動)「風呂場は・・・と。真っ暗ですね。ここ窓ないし」と言っていたので、この部屋は電気を申し込むまで点かないと思い込んでいた。クソッ。

 数十分後にカスタマーセンターからかかってきたので(きの)「うん、今日から。いや~昨晩暗闇で過ごして電話かけまくっちゃいましたよはははは」嫌味をいってやった。(電力)「すみませんでした」こんなことでは新規獲得望むべくもないとオジさんに指摘されたのだろう。

 

 

③夜中に目が覚めると、家の前の川面にポツンと黒い小舟がいた。バスクリンのような黄色い泉に浮かび上がる船は音もなく進み、舳先を後ろにして細い櫓を巧みに操るひょろ長い船頭が体を折り曲げて、何かを探しているような不気味な動きで行ったり来たりを繰り返す。

 

なにあれ?密漁?

しかし船を逆さ向きに漕ぐなんて不吉!

これはきっと死神系の何かだ。

 

拾い残した魂を連れて行こうとしているんだ。

もうだめだ。迎えに来てる。

引っ越したばかりでうちには防ぐべきカーテンもない。

 

こっちを見ないでほしい。こっちからはぜひ見たいのだが。

 

疲れてるだろうから早く寝た方が良い。そう思ってもう1回寝た。朝になったらいなくなっていた。魂は取り終えたのか。

 

 昨日電車にお遍路さんが普通に乗っていて驚いたのも影響していると思われる。それとも来る前に予習として映画の「死国」を見たのがいけなかったのか。

 死国は巡礼をめぐる話で、ふつうは右回りだが、禁忌とされる逆打ちをやるとすべてが逆になり、死者も蘇り・・・という内容なのだが、仏教の葬式の時にはすべてを逆にするらしいから、その設定にも「なるほど!」とあっさり納得した。四国は恐ろしい所だ。

やはり霊場と生活が一体化しているようなよもつ国をなめてはいけなかった。

 

 

 

 

 後で調べたら、この地方で有名な春の風物詩・シラスウナギ漁だった。彼らは探していた、希少なウナギの稚魚を。そういうのやるならやるって誰か先に言っといてくれないかな?

 

 

 

 

 

 

 保護者は入学式の会場には入れないという話だったが、記念写真でも撮ろうかととりあえず一緒に行ってみる。道中、海辺の街が珍しいのか(きの)「フグだっ」あそこにも向こうにも(娘)「早く行きますよ(怒)」(きの)「フグ~~」問答無用で連れていかれる。

 ずいぶん静かな敷地だ。駐車場の(案内係)「まさか入学式じゃないでしょうね・・・え゛?じゃあ早く!!」急かされ会場へ。(娘)「じゃあね」しょっぱなからよくわからない理由で遅刻してきた新入生は、ひとりで長い階段を登り後ろも振り返らずに行ってしまった。

 

 置いて行かれた。何しに来たんだろう。つまらないのでそこらを散策。コーヒーでも飲もうかな。どこまで行っても似たような建物がずらりと並び、どうしたらいいのかわからない。誰もいないし。すると、向こうから旧日本軍のような姿の小柄な女性が近づいてきた。ゴルフのキャディーさん風の垂れのついた帽子にモンペのようなズボン。大きな荷物を背負った彼女はきっと掃除のおばさんだ。失礼のないように話しかけたい。(きの)「すみません、少々道をおたずねしたい・・・ん?」

 

(モンペ)「英語しか喋れない。」

 

 そんなんでどうやってここで暮らしてるんだ!よく見たらイスラム教の布と同系色の野球帽をかぶった留学生だった。この人シンガポールとかか?まぁいい。(きの)「カフェテリアを探している」(モンペ)「あの建物」(きの)「ありがとう」聞いてよかった。あのままさまよい続けてどこまでも行ってしまう所だった。

 

 メシメシ。すごい勢いで突入していったら広い割に誰も居なくて、ポツンと券売機があった。ようしこれだな。券を買いカウンターに(きの)「たのもう!(券バァーン)からあげ定食1個」(エプロン)「あの、すみません。こう・・・何かお盆とかですね、箸だの何がしかの物をそこから持ってきてくれないと」(きの)「えっ?」見たら入り口にトレーや湯飲みが山と積んであった。おおそうか。洗って干してあるのかと思った。

 

 誰か前に居たら倣ってそうするのだが。急に来た部外者が定食をバラバラに手渡されるところであった。食べていると学生がどやどや入ってきて満員な上に長蛇の列。全員で喋りまくり有象無象がイモ洗いのごとし。さっきの静けさが嘘みたいだ。

 

 ヒマなので帰る。帰りに横断歩道で待っていると、なぜか外国人が数人後ろにびっしり並んできて、しきりに何か喋っている。国際色豊かな学校だ。アフリカ人だな。しかも大人だ。わからないと思って(アフ)「前の人物はジャポーネなのだろうか」などというようなことを言っていたからマリなどのフランス語圏から来たのだろう。国費留学かな。だとしたら相当のエリートだ。こっちはな、英語学校時代に何人もアフリカ人の友達がいたのだよ。

 

 ニヤニヤしながら立っていると、向こうから来た親子の生意気そうなクソガキが開口一番(クソ)「わーアメリカ人達だ!」と大声で叫び(親)「ゴインっ」脳天を殴られていた。すごい教育方針だ。親子は自転車でどこかに消え、アフリカ人も三々五々散っていった。夕暮れの知らない街の国道沿いを歩いて帰る。なじみのチェーン店があるが、どう見ても知らない街だ。風が出てきた。

 

達・・・?

 

 さっきアメリカ人「達」と言っていたが、きっと子供にとって外国人はみんなアメリカ人ということで、黒人と呼ばなかっただけまだましな方か。・・・気のせいか、なんか一緒くたにされていたような気がするのだが。このサングラスがいけなかったのか。

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横暴旅行社 本領発揮

2022-07-09 21:32:47 | 旅行

 娘がどこぞに良い学校を見つけてきたとのことで、再びご入学なされたのでそれを機に京都から四国に引っ越した。その前に、冬頃、実家から京都に帰る途中に下見に行った。先に一度訪れたことのあるツアーガイド(笑)が先導する謎の行程だ。もう不安しかない。

(娘)「四国には新幹線はありません」神戸で降りて高速バスに乗るらしい。(きの)「お昼?お昼は?たこ飯~タコ壷の明石限定版~~~」(娘)「行きますよ!」そもそも神戸で新幹線の駅を降りて(きの)「・・・これ神戸?」

 初めて神戸で降りたが、なんか思ってたのと違う。神戸って海辺のオシャレな街ではないのか。小さな地方駅のすぐ後ろに山が迫り、駅前も閑散として無機質なビルディングが直前までひしめき合ってロータリーと呼べるような見渡せるものもなく全体が殺伐としている。

 高速バスが発着するなんとかホテルという駅前の大きなホテルを探す。これは名前からして見たらわかるパターンだと思ったが、いかんせん駅前に高速の巨大な高架がデーンと構えていて視界を遮っている。(きの)「そこの看板に高速バスこちらって書いてあるよ?」(娘)「それは違います」高速バスは路線も会社もいっぱいあるそうだ。

 高架をコの字に避けて横断歩道を渡って地図が示す建物に入るが、地階がバカンスみたいな浮かれたショッピングモールの集合体のようになってて、どこに何があるかわからない。しかもお店ほとんど閉まってないか。こんなとこに大型バスが何台も入って来れるとは思えない。映画館もあるようだ。吹き抜けの2階に行って聞いてみよう。と思ってエスカレーターを上がって行ったら(看板)「高速バスこちら」2階で??受付ってこと?とりあえず行って聞いてみたら、こここそがホテルの正面入り口で、ここから出るそうな。どうやって??

 通路付近にいた外国人と思しき案内人に連れられて見てみると、あの邪魔だと思っていた高架が2階まで伸びて建物にくっついて巨大3D車寄せみたいになっていた。今日は風が強くて寒いので内側で待つようにとの案内係の温情で、フロントで静かに待つ。しかし他に客らしい団体もいないので置いて行かれては困るから、5分前になったらエントランスの前面に踊り出て乗る意思をアピールしなければ。来たバスは何もかもが新しく、大型バスってこんなに進化したんだーと感動しきり。乗客は数人しかいなくて、三宮を過ぎたらどこに座ってもよいとか言ってた。

 淡路島を過ぎ、ひたすら山道を走って四国に入る。四国は因縁の修学旅行以来だ。あの時は瀬戸大橋の方から入ったから、淡路島の方から入るのは初めてだ。途中のサービスエリアから見た海の景色はキレイだった。最終的にどこかの道の駅のような駐車場に着いて降ろされた。

 

近くに(看板)「セルフうどん」

 

 ?? セルフ? さすが讃岐うどんの本場とは思うが、何がどうセルフなのだろう。ひなびた木の外観の店は外から容易に全貌をうかがい知ることはできないが、もう頭の中では粉とのばし棒を渡されて(店)「ハイッもっと力を入れて!」などと励まされながら下手くそなぶつ切りうどんをゆでて食べる姿しか想像できない。

セルフサービスのガススタは入れるところから。セミセルフのレジは払うところから。うどんはどこからが始まりなのだろう。

 

砂埃の舞う海辺の砂利道を、スーツケースを引きずって強風の中どこへとも知れずさんざん歩かされる。

 

 

 

 

 やっと着いて寒い空き教室の横で書類がそろわないなどの理由で待たされ、用事を済ませた後は遅れてきた路線バスに飛び乗って飛行場などを見学。(娘)「次は無料のとせんじょうです」(きの)「はぁ?古戦場!?」(娘)「渡船場。」

 

 市営の連絡船が出る時間ぎりぎりに発着所まで走らされる。日も暮れてきた。もうだめでは?何度も思ったが、長い桟橋の先に到着した小舟が待っていてくれている様子なので引き続き酸欠状態で走る。乗って3分で向こう岸に着き、降りると小さい鳥居のある古い住宅街だった。

 真っ暗になった国道沿いをさまよいながら歩く。巨大なコンクリートの建造物(たぶん橋)を見上げ、ちらっと横を見ると暗闇に食堂の薄れた看板と無数の墓石が。今日は無事に帰れるのだろうか。

 

 

 

スロッピー

 このあたりに高速バスの停留所があるらしい。旅行案内の横に細長く伸びている坂道を延々と登らされる。(きの)「ゼ~ッゼ~ッ(スーツケース)ゴロゴロゴロゴロ・・・この横のレールは何でしょうか。坂はどこまで続いて#$%&・・・」(娘)「あと少し」というからマスクはしたままでいつまでも登り続ける。するとレールからなにやら機械音がして遊園地の観覧車のようなものが上から降りてきて去っていった。(きの)「今横を通り過ぎて行ったものは何でしょうか!あれに乗れば良かったのでは?」(娘)「到着した時点で行ってしまっていたので、戻って来るまで待っていては遅れる」

 その他エレベーターに乗ったりトンネルを歩いたりして、ヘロヘロになって停留所にたどり着く。すごいなこれは。高速道路の途中に普通のバス停のようなものがある。巨大なトラックが次々と猛スピードで通り過ぎて行く。四国の人にとっては、これはただの道路の扱いなのかな。旅行案内所の人も「向こうに小さい橋があって」などと言いながら巨大な橋を指さしていたから感覚が違うのかもしれない。さて座ろうと思って近づいたベンチは何と大理石の石造り。立派でよろしいが冬の寒空に非常に冷たい。地元のライオンズクラブ寄贈と書いてあった。

 そして、なぜか予約してないらしい。そういうのっていきなり行って乗れるものなのかな。時刻表によると発車時間をもう4分ほど過ぎているらしいが、前回の下見の経験から時間通りには来ないと踏んでしたたかに待つ。そのうち大型バスが本当にやってきて停まった。なぜいつも遅れるの前提?

 混んでいるようだ。どうするのかと思って見ていると高速道路の途中でバスの運転手とスマホ片手に交渉し始める始末。大阪行きの最後の2席を確保しご満悦。こんな満員の引き揚げ列車みたいな旅行はいやだ。最後尾のトイレの横の席に座り、死力をふりしぼって渾身の嫌味を言ってやった。

 

 

(きの)「過酷。」

 

 

 

 

(娘)「どう?生きてるって感じがするでしょ」

 

 

 

もう脱力して返事もできない。

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