きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

Signs(Znaki)Netflix のヨーロッパ刑事ドラマ

2021-06-30 12:43:34 | ドラマ・映画

 急に思い立って見始めたが、どこの国だろう。説明にも特に場所は書いてなかったし、何語かもわからない。
ヨーロッパのどこかだろうとは思うけど、何もヒントがない。

誰かがチェコの森の方から入ってきたとかナチスの遺物がというような話をしていたが、ドイツではなさそう。Netflix 得意のスウェーデンか。
パトカーにはポリシアみたいなことが書いてある。
ちゃお!らしきことを言ってるが、どう見ても寒そうでイタリアではない。

こんにちはは、「じんだ - ぶれっ」。

聞いたこともない。フランス語みたいに、英語と語尾だけ違うような少しでも分かりそうな言葉がひとつもない。

調べたらポーランドだった。だったらそうとはっきり言えばいいのに。

 

ヨーロッパの人は足が長いなと思う。歩いてる姿などを見ると体の半分以上が足だ。
寒いと生物は大きくなるようだから、ロシアとか北極圏の人はもっと大きいのか。

明らかに北欧の白人という人たちと、まれに東洋系のようなのっぺりした薄い顔立ちの人がいる。

たまに出てくる、あの大総統閣下のような刈り上げのおかしな髪型はなんだろう。
違う文化は面白い。


そして、登場人物の一人で市長の甘やかされた娘の名前は「あがた。」

阿形さん?

彼女は透き通ってとても綺麗なのだが、どうも昔の007に出てくるジョーズの顔をした女の子という気がしてならない。北欧にはああいった顔立ちの人々が常に一定数いるのだろうけど、こっちは悪役でしか知らないので、もしかしたら冷酷なのではと思ってしまう。

しかし、わがままで派手好きな行動の中にもしっかりとした自分の意志が感じられ、すっかり気に入ってしまった。
そして、中盤では車いすとなってしまった父親の世話を、文句を言いながらもしぶしぶこなすなど意外に健気な娘さんであることがわかった。どうか幸せになっていただきたいものだ。


 流れている曲は、なかなか自分の好みに合っているが、どうせ知らないヨーロッパの曲だろうと思っていた。救いを求めるようなシーンで流れていたコーラスは非常に良いメロディーで雰囲気に合ってるなぁなどと思いながら、その多重音声のような上がり下がりを聞いていたら

(きの)「これ英語だ!」

ぎぃぃぃぃぃぃぃぃ み~~~~~~~~~   じ~~~~~~ ざ~~~~~~~~~~~ス♪と言っている。

神様くれよ、か。


朝起きて、ちょうだいよ。
すべてを持ってるんでしょ。
寂しい時、
死ぬ時もちょうだい


って、何がそんなに欲しいのか知らないが、歌詞はいまいち自発的でない気がして好きになれない。
有名な讃美歌なのかな。聞いたことないが、メロディー自体は非常に美しい。

まてよ・・・。
え?もしかして、ジーザスをくれと言っているのか?まさかね。
Give me, Jesus かと思っていたが。
誰に?ジーザスは神の子だそうだから、大元のLord(全知全能の方)に向かって頼んでるのかな。
ジーザスを寄越してくれって。
言ったらくれるのかな。


他の曲もよく聞いてみたら英語だった。わかる、わかるぞ!とどこかのムスカ大佐のようになって耳を澄ませてみたりしたが、言葉がわかるって安心するもんだね。アラビアとか全然知らない言語の国に放り込まれたら発狂しそうだ。

Won't you please calm me down という曲が良かった。最初はしばらく「む~~ん♪」しか言ってないので全編そんな曲だったらどうしようかと思ったが、シーンの動きに合わせてイントロ部分を引き伸ばしていただけだった。

イギリスの歌らしい。アフリカ音楽っぽいのとジャズのブルースが入っているような感じだが、元をただせば一緒か。

母親のようにいつもそばにいてくれとか、なだめてくれ、なぐさめてくれという気持ちはよくわかるのだが、
途中からチェーンソーで切ってくれとか、ロープで引きずり回してくれと言ってるような気がする。

??
なんでしょう。
この歌の主人公は大暴れのトロールのような状態になってしまったのか。

 

 ヨーロッパの社会は、焦りが少ない気がする。
例えるなら、うまいプロがやるサッカー。
前に中継で見ていたら、まるでジャッキーチェンのカンフーアクションのように、次の手をみんなわかってるから等間隔に離れて落ち着いてボールを受け渡し合ってる。

あれが、ヘタな高校生の素人とかがやると集団でボールを追いかけまわし、我先に奪い合ってその先どうするのか不明のままどこへとも知れずに行ってしまうようなところがあるが、ヨーロッパはそういう目先の気負いがない程に成熟しているような感じがする。


すごい田舎町でもスマホ決済をしてDNA鑑定も当たり前で、それでなぜ家はアンティーク通り越したようなガクガクの扉なのかよくわからないが。
一番謎なのが、就任してきた署長(男)親子を自宅の大きい農場に住まわせる部下(女)夫妻って、絶対嫌だと思うけどな。
あまりにもラフすぎる。

Ben Cocks - Calm Me Down

From the folk pop album "Songbirds" by Ben Cocks Listen and download h...

youtube#video

 

 

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中央図書館に行きたかった~古都探訪~という名のさまよい

2021-06-28 12:00:52 | 古都探訪

2021年 睦月

 都の北側からいつも乗らない系統のバスに乗ったら、どこで降りたものかわからなくなり、
こっちだと思う方向に曲がったら反対方向だったらしく、
そうと知らぬまましばらく歩いていると、遠くに城が見えてきた。
二条城だな。その手前の公園で一休み。

 ずいぶん広い公園だ。こんな街中にこの広さはすごい。
向こうの方ではサッカーなどをしている。
よく見ると公園の半分に曲がりくねった小川が流れている。
自販機とベンチがあったので、よしここで生ハムのサンドイッチを食べよう。
早速 Ziplock のタッパーを出してきて食べる。
隣のベンチには、10代らしき若者が一人で座って考え込んでいる。

 食後に散策していたら小さい社があった。
公園の外ではタクシーがいっぱい休んでいて、その近くの看板に

「鵺の池」と書いてある。もしかしてここは!

源のなんたら言う平安時代の四天王に数えられたもののふが、
妖怪が内裏に出て天皇を不眠にさせたからって、矢で撃ち落として切った刀を洗ったという、
あれか。

 へーさすが京都。そんなの今でもあるんだ。ホントなんだ。
しばし感激してたたずみ、落ち着いて水源をたどってみる。
この川が池なのか?見たところ川しかないが。
ふう~んと思いながらたどっていくと、苔むして摩耗した古い石組みがあって、
そこから水が流れ出してきている。

(きの)「これ・・・もしかして井戸?」もうちょっとしたホラーだ。

のぞき込んでもいいのかな。それとものぞき込まない方がいいかな。

 鵺の池のほとりで浮かれたランチを食べてしまった。この広い整備された近代的な公園がねえ??
一瞬、もしかして湧いている水は、小川を作り出すためのデモンストレーション用の噴水ではないのかと疑ったが、
しかし、じりじり近づいて行って覗いて見ると
水が湧き上がってくる泡というか、水面が盛り上がってくる場所が中心だったり、
端の方だったり、そうかと思うとふいに途絶えたりして一定ではない。
すごく天然水っぽい。


第一、こんな不気味な噴水があるだろうか。


 地下水なのか、鵺の池というのは。
ここから湧き出した水が広範囲に溜まっていたのか。う~ん。
この水はきれいなのだろうか。
飲んでみたいとは思わないが、透明な器に入れて横からじっくり電気に当てて見てみたい。
さっき飲んだ炭酸のペットボトルは遥か遠くのフタつきゴミ箱に入れてしまった。
今さら戻ってガサガサあさる気にもなれない。

 そうだ。サンドイッチを入れていた Ziplock の容器がやたらに大きいから、あれに入れよう。
一応トイレの洗面所に洗いに行くと、さっきのベンチの悩める若者はもういなかった。
懊悩からは解放されたのか。
戻ってきて、一旦よく考えてみる。
こんなとこの水を持ち帰る人っているだろうか?

 京都は東山のあたりなど、綺麗な水を汲んで帰ってお茶を点てたりするらしいが、
鵺の水では人に勧めにくい。
じゃあ花瓶にでも入れるかと言うと、わざわざ汲みに来てまで花にやりたいだろうか。

 水道水の可能性も捨てきれていないので、「あの人公園の水持ち帰ってはるで~」
などとみやびな口調で笑われてしまったりしたらどうしよう。
しばらく迷って、側にあった巨大なすべり台で滑ってみる。
この石造りのすべり台はとてもなめらかで、脇に小さい子用のコースも備わっていて、
設計者の優しさを感じる。
後ろ側にはまっている岩も丸くて、有難い仏像の螺髪のような美しいフォルムをしている。
家の近くの公園の滑り台は、ガサツで岩も尖って大根おろし器みたいだ。
設計する人によって違うのか。

 すべり台に満足して戻ってくると、向こう側で遊んでいた親子がすべり台に興味を持ったらしく、
やってきて滑り始めたが、子供が階段を上がりに周って来るたびに、
見られているような気がして躊躇する。
が、あまり長い時間、真剣な表情で井戸を眺めたりしていても良くないので、
その女の子がシャーっと滑って向こう側に消えた瞬間、
ジャボッとすくってサッと蓋をして何食わぬ顔で立ち去る。

そういえば、図書館に行こうと思っていたんだった。

 迷った挙句に公園を発見して一生懸命水汲みをしてしまったが、
大きい図書館に行ってみたいと思っていたんだった。
たぶん二条城が向こうに見えたのなら下に来過ぎた。

もっと地図上で左上を目指さなくては。
気を取り直して歩き出す。

 ライヤー旅行社(娘)からの情報によるとパン屋の近くにあるらしいが、そこら中にパン屋がある。
大きな通りに出たら、渡った先の方にあった。
さっきバスを降りて自然に左に行ってしまったが、右に曲がれば良かっただけだった。

 図書館には、小さめの博物館が併設されていた。
見せてくれる題材は、昔、京都の御所がもうちょっと左の方にあった時の巨大ジオラマとか、
どこかの寺の今はない8角形の塔や平安時代の食べ物など、面白い展示がいっぱいだった。
見ていると、ボランティアらしいお婆さんが寄ってきて、
次のイベントは節分だから吉田神社に行けとか説明してくれる。

 8角形の塔は、今の東寺よりも高い中華風の綺麗な建物だったようだが、
度重なる落雷で焼失したらしい。そりゃそうだろうと思う。
何もない所にあれだけ出てたら、雷も好んで落ちようってもんだ。
避雷針もないし。あったとしても塔の上から燃えたら消せない。
今はどうだろう。東寺は。しかし、東寺より高い建物があるから大丈夫なのか。
もしかして、そのために京都タワーは建てられたのかな。

 千本通り(朱雀大路)の上の方に内裏があって、そのまま更に真っすぐ行くと船岡山で、
真下に下がると羅生門で、かなり向こうの城南宮に着くということがわかった。
貴族の屋敷は上から見て大きさがわかるくらい広かったんだな。
(きの)「このそれぞれの庭に書いてある∞や◎や、~こんなマークは何でしょうか」
(婆)「池です」なるほど。
鴨川から水を引いていたらしい。その鴨川は今よりも浅く、蛇行した幾筋もの川がよりあわさったものだった。
しかも橋は無しで、みんな飛び石で渡っていたというから意外だ。
今も飛び石がたまにあるが、その名残か。

 中央図書館は確かに規模は大きいみたいだ。
本は多いし殺菌する機械などもあり、複数階の建物まるまる1個が全部図書館だった。
喫茶室もあって普通の食べ物を出していた。
せっかくだから平安時代のご飯食べさしてくれればいいのにさ。
あの、どうやって食べるのか知らない、てんこ盛りのお米とか。
干したアワビとか。変な腐った牛乳の蘇?だっけ。デザートはあれを一口。

 その後、図書館を出て朱雀大路を歩き続け、ブランデーチョコの製菓材料を探しながら
商店街の店で大きなカブ(聖護院?)の煮物を買った。
京都の伝統野菜はどうしてこうも大きいのかな。
賀茂茄子も。有名な堀川ゴボウなんてブッシュ・ド・ノエルみたいだ。
てっきり京子町風などと言って、小さいほど良しとされる気がするが。

 途中のスーパーでタコスのようなものを買い、挙句の果ては船岡山に登っていく。
頂上で暮れていく夕陽を眺めながら食べた惣菜の美味しかったこと。
家に帰ったら、もう真っ暗だった。

帰って袋から(きの)「これがぬえの水(ずるり)。」

取り出すと(娘)「!!!」

なぜかタッパーが白濁している。どうしたのだろう。

発酵?汚濁?石灰質?太古の呪いなど様々な可能性が瞬時に頭をかすめたが、よく考えたら生ハムサンドの脂分が洗っても落ちてなくて、水を入れて長時間振り回して歩いたので撹拌されて油の分子が細かくなったのだろうというまともな結論に達する。

 

もしも有害だったら困るが、せっかくだからエビ水槽にはスプーン1杯ほどあげた。

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北野天満宮~梅、橘、桜、藁~ 2021 2月中旬

2021-06-22 17:42:57 | 旅行

 アメリカへ帰るオッサンがもう梅が咲いていると言っていたので、
休日にひとりで散歩がてら歩いて見に行ってみる。
頭の中の京都の道がだんだんできあがってきたので、もう地図なんかいらない。
ここを曲がると、あの黒い町屋が続く通りだと思われるところを曲がって、
歩いて行くと、真ん中辺に前から狙っていたうどん屋「ふた葉」があった。


まずは腹ごしらえだ。


(きの)「ガラリ」入ってみる。壁にお品書きのある由緒正しき「うどん屋」だ。
出かけた先ではぶらりとうどん屋に入り、七味のかかったもつ煮などを食べたい。
決してワンプレートランチなどという妙ちきりんな木の板に乗った異国の食べ物など口にしない。
メニューは、どれどれ。こないだあんかけで大変な目に遭ったから、そうでないものを選ぼう。
しかし、メニューをよく読んでいくと、たぬきうどんがなんか違う。
天カスがない上に、魔のとろみがかかっている気がする。


??


え?関西って違うの?


 これは、どうしたものか。では、ソバ屋のカレーうどんというものは、
カレーとは言っているがカレーをそのままかけて出してくるわけではなく、だし汁にカレーを溶くようなものだからサラサラしているはずだ。
普通のうどんは危ない気がして、カレーうどんを頼む。


 奥の方を見ると、厨房の調理台がレンガでできている。
あれが京都の古い台所「おくどさん」というやつか。
あれで昔から今までやってきたということか。リフォームもせず、すごいね。
なんだかコップの水が消毒液のような匂いがするが、それもご愛嬌だ。
天井にお経のような文字がずらっと書いてある。そういう壁紙かな。


 しばらくして出てきたウドンは(きの)「あぁ(倒)!」カレーのあんかけだった。
食品サンプルかと思うような固定された麺に、熱々の透き通ったカレーがみたらし団子のように乗り、もう誰も動かせない。
慎重に1本ずつ引きずり出して食べる。
食べている最中に、ふと見るとトレーの上の箸袋の絵が


(きの)「ぬらりひょん?ごふっ」


 頭が1mぐらい伸びた老人が提灯を下げて、ソバ屋の屋台の横から帰ろうとしている。
彼は頬かむりをしているが、頭がそんなに長いと全然隠せていない。
仙人だろうか。提灯や屋台には「ふた葉」の文字。
客?それとも店のマスコットキャラクター?

 


 七味がかけたかったのでうどん屋に入ったんだった。
ちょっとかけてみる。もう舌もマヒしてよくわからない。
中に甘いキツネが切って入っていたと思う。おいしかったが熱い上に辛いので早々に店を出る。
京都のうどんは、あんのかけすぎではないのか。

 


 天満宮に行くと確かに咲いていた。白とピンクと紅のような種類がある。
(きの)「ふんふんふんふん」匂いを嗅いでまわると、
ピンクの八重のようなやつが何か匂いがする気がする。
花屋のような匂い。花屋に梅酒が置いてあるような。


 梅園の入場料が千円て。高い気がする。
そんなに梅をじっくり見たいわけでもないから入らなかったが、
ここの天満宮の気前の良い所は、梅園に入った人だけが梅を見れるのではなくて、
そこらへんにもちらほら咲いているので、ちょこっと見たい人はそちらをどうぞということなのだろう。
さらりと見て回る。


 手水の水が溜まっているところに、ユリやダリアなどの花がいっぱい浮かべてあった。
花手水(はなちょうず?)とかなんとかいう名前の、そういう技法だかなんだかよく知らないが、
正月もどこかの神社がそうなっていた。
あれは綺麗なのだろうけど、大きな首だけの花がいっぱい浮いていて何だろうという気がする。
みなさん盛んに写真を撮っていた。
澄んだ水が見えないし、ごちゃごちゃして華やかを通り越しているように思える。
和風の椿などが少し浮いていたら、風情があって良いだろうに。


 菅原道真の母親の社に来た時に、古い石の鳥居に寄りかかるようにして小さい柑橘の実がなっていた。
金柑にしてはずいぶん背の高い木だなと思って近づいて行ったら橘だった。
鳥居の裏に回り、鎌倉時代の作だという薄れた台座の蓮模様などを見ていると、地面に実が1個落ちていた。
しかも半分腐っている。
これは拾得物だろうか、ゴミ拾いだろうかと考えながら、人生で初めて手に取った橘の実に感動して、ありがたく頂戴した。

 もらって帰るだけでは申し訳ないので、天神様だからこの時期梅干しでも売ってるだろうから、それでも買って帰ろうと思い、売店に行ったら
(袋)「必勝!たっぷり1kg」そんなにいらないんですけど。
大宰府では小パックを売っていたぞ。(出店)「名物・長五郎餅。甘い!」うぅ。
(お守り)「長い枝にヒョウタンがついて中に玄米がいっぱい入っています」
それを振り回しながら帰るのか?


 悩んで、しばらく外の駐車場のベンチに座って人々の往来や遠くに見える梅園の全景を見ていた。
日曜だし、やけに混んでいる。
どんどん車が入ってきて兵庫や名古屋からも来ている。
そうか受験シーズンだから、みんな願いに来ているのか。
また神社に戻る気も失せて、そこら辺のゴミ拾いをして帰った。
 
 駐車場でエネルギッシュに車の誘導をしていた若い作務衣の坊主が、
ゴミを拾っている場にちょうど出くわし、「ちっ最近の観光客は散らかしやがって」
みたいな目で一瞥していったが、こっちにはこっちの事情があるんだ。

 

 


平野神社


 北野天満宮の湿った北側の出口から出て川を越え、
歩いているとまた神社がやってきて入ってしまった。
平野神社という聞いたこともない神社だが、入ってみたら全体が白砂の感じで明るかった。
右側に枯れ沢の庭があって、夏みかんが植わっていて、隅に宮司さんちで飼ってるメダカの鉢があったので、しばらくしゃがみ込んで見ていた。
後ろのドラム缶で木を燃やしてて温かい。
向こうに手水があって、ずいぶんだだっ広くて、自由奔放で楽しいところだ。


奥に行くと、パネルがあって、台風被害の様子が写真入りで説明してあった。
数年前の台風21号で築400年ぐらいの拝殿が倒壊。
柱が全部折れてヒノキの屋根が地面に被さっている。
(看板)「貴族が植えた古い桜が何本も根こそぎ倒れ・・・」
何ということだ。さっそく桜基金の箱に寄付。
あの台風は、京都の古い建物や背の高い木に甚大な被害を及ぼした。


 さらに奥の方に、大きな楠だろうと思うが、ご神木があった。
ものすごく大きい。もしかして、この神社は相当古いのではないか。
この神社も奥の本殿らしき建物は出雲型だ。
その手前に右近の橘と左近の桜があって、橘の樹形が傘のように均一で、
今まで見た中で一番きれいな枝ぶりだった。
実も少し大きい。
四角い囲いの中を覗くと、根元がかなり土から出ていた。
あんなに出ててもいいものなのか。
あと、街なかだからか、柑橘の天敵カミキリムシに気をつけているようにはとても見えない。
さっきあった夏ミカンも、自然な姿で生えている。


 10月桜と書いた細い木には、2月だというのに花が咲いていた。
10月に咲いて、また咲くのだとか。どうなっているのだろう。
確かに珍しい種類がそろっている。
ここには、魁(さきがけ)というしだれ桜があって、それが咲くと京都のお花見の目安となり、
それから後に人々が続々と見にやってくるそうだ。


 平野神社の駐車場から出て歩いていると、大きな生協があった。
入ってみると、「花良治(けらじ)喜界島の島みかん」と書いた柑橘が売っていたので迷わず買い、隣のしまむらに入る。
京都ではめずらしい。関東にはいっぱいあった。
入って感動して一周まわって出てくる。


 そのまま住宅街を歩いていると道の角に「わら天神参道」と書いた石碑があった。
わら天神て、よくバスに乗っているとそこに行きたい人はここで降りろとかアナウンスで言っている、あの神社なのかな。
 通りの向こうにある鳥居がそうなのか。
しかし、ここから信号もないあんな大通りを突っ切ったら危ない。
昔は通じていたんだろうな。車を通して道をふさぐとは、近代ならではの問題だ。
そうだ!歩道橋を付けたらどうだろう。
今度は逆に現代の技術でしかできない天の道だ。
とりあえず、行ってみよう。大回りして横断歩道を渡り、細い坂を上がってみる。
そのまた上の方に本殿がある。

 


わら天神


 わらって何だろう。(笑)みたいなものか。
登って行ってみると、頂上の奥に出雲型のバッテンの屋根が見えた。
先が平べったいので、ここには女神様がいるんだなと思いながらベンチに座り、
誰もいないのをいいことに、さっき買った花良治ミカンを剥いて食べてみる。
何とも得体の知れない香りがした。


 座ってくつろいでいると、白い袴を穿いた老神職が足を引きずりながらやってきて、
順繰りに巡って摂社の細長い賽銭箱をのぞき込んでは、長い棒で念入りにつついてまわっている。


新しい儀式だろうか。


 そういう衣装の賽銭ドロだったらと思い、後ろからニヤニヤ笑って見ていたら、
気配を察してそそくさと社務所へ帰って行った。
たぶん入り口で詰まっていた小銭を落としてまわっていたか、
奥の方をザクザクやって確かめていたから、
だいぶたまったら開けて回収しようとしていたのではないかと思われるが、
その所作からは深い思慮など感じられず、いやしくも神に声が届く人のようには見えなかった。


 前に、歩いていてふらりと迷い込んだ千本釈迦堂では、夕暮れの本堂の前にたたずんで建物のひさしの1300年前の造作などを眺めていたら、
私服の老人がやってきて机の上に置いてあったロウソクと線香を数本やおら手に取り、
立ち去ろうとしてハッと気付いたらしく、弁解するように
(ジイ)「いやぁこれはゴニョゴニョ」などと唱えながら敷地内にある小さな建物に入っていった。
別に何も言ってませんけど?
社務所で使うロウソクが足りなかったんだろうけど、みなさん堂々としていればいいのに。
ミカンも食べたので、頂上の裏口から出る。

 


 後で知ったが、祭神は木花之佐久夜毘売(このはな-さくや-ひめ)だそうだ。
そして安産の神社らしい。稲藁で占うんだとか。だからワラ天神なのか。
それと北山の神々も祭っていたそうだ。
北山の神々って何?ずいぶんアバウトな。
その神々とさくや姫はどう関係があるんだろう。北山の神の母なら玉依姫ではないのか。
そして、天神と言うからには、菅原の道真と関係があるのか。
それとも、本来の意味での「天の神様」なのか。
それにしても、この花咲くや姫も桜の化身と言われている。
平野神社は桜の神社だった。梅を見ていたはずが、橘をもらって、桜の道に入ってしまった。


 そのまま奥の頂上出口から出て、歩いて行くと金閣寺に出たが、
有名すぎて逆にあまり興味がわかないので通り過ぎてどんどん歩く。
正式名称は lock-on みたいな名前だが、いつも覚えれられない。
中国茶の店があった。お盆の大文字の2つある内、左側の「大」の字が山肌に大きく見える。
着火台まで見えている。
いつかこの川を渡れたらいいなと思いながら、天神川の左に沿って歩く。
しかし、あにはからんや、どこまで行っても川は渡れず、渓谷は深くなるばかり。
はるか遠くの向こう岸には、仏教大学らしき建物が見えているが、
ここの住民は川を渡ろうという気がないのか、一向に橋などは見えてこない。


 いったいここはどこなんだ。と思いながらだらだらと続く住宅街を歩くこと数十分。
公園に着いた。ちらりと見ると、坂の上の方には
「しょうざんリゾートこちら」というような看板があり、車が入る道に柵があった。
いつか地図で見たことある。それはかなり街はずれの施設だ。
このままどんどん離れて行っても、街中に戻れる保証はない。
引き返した方が良さそうだ。金閣寺まで戻り、疲労困憊で家に着く。
疲れた。やはり人間は迷うと疲労するらしい。
スマホに付いてる万歩計には2万歩と表示されていた。
よく歩いた。そんなに歩いたのは比叡山に登った時ぐらいだ。


そういえば、最初は梅を見に行ったんだっけ。

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「常世論」についての覚え書き~楽園の探索~

2021-06-13 17:23:34 | 書評

橘の木は常世に生えていたそうで、どんなとこか気になる。

 

 作者の常世への想いが「沖縄に通っている内に南風に当てられて熟していった」という表現や、南の島で感激して「砂浜の砂にくるぶしを埋めてみた(渚に裸足で入って行った)」という言い方がすんなり心に入ってきた。文学だ!文学だ!

補陀落渡海(ふだらくとかい)は、虚ろ船のような西方浄土を目指す方法だそうな。

「懐橘談」という本を読んでみたい。と思って探したが、どちらかというと個人の家の覚え書きのようなものなのかな。

 

 だいたいみんな海洋民族。南の島では・・・というとで途中から沖縄の話になった。

まぁ確かにニライカナイとかあるしね。八重山では死んだらサフの国に行く。宮古の池間島ではカマの世(ゆ/夜)。
イラビジはエラブ島のことで、その先にニッリヤがある。魂はイーに行く、イーは北で、魂が墓に行くことをイーノヤに行くと言う。

何いってるのかぜんぜんわからない。一つ一つ丁寧に説明してほしい。

 

 イーノヤは北の家という意味らしい。ハイノヤーは古い言葉で墓(おそらく南/昔は南に墓があった)。

宮古島では、魂は池間島(北にあたる)のウハルズ(大主)のウタキ(御岳)に集まる。

 

 など全部調べてまわりたいような記述が沢山あるが、このあたりから読もうと思って本を開くと沖縄民謡の「安里屋ユンタ」という曲がテーマソングのように頭の中に流れてきて困る。そんなに夏を満喫しようとは思ってない。まだ梅雨も来てないのに。

曲の内容はかぐや姫みたいな歌詞だった。さぁ~ゆい~ゆいっと♪

 

 常世って結局:「常世」という名のアトランティスのような摩訶不思議な世界があるわけではなくて、somewhere over there(向こうの方のどこか)とか、out there(あっち)みたいな漠然とした空間らしい。

しかし、どうやら the remotest(最果て)や、edge of nowhere (地の果て)みたいな「はじっこ」のイメージではない。

 

どれも気になる参考文献:
「続探神記」中国の怪奇小説。探し出して借りてきたはいいが中国語で書かれてたらどうしよう。

「洛陽伽藍記」二巻。僧が座禅を怠け「十人の青衣の人に連れられて、西北の門に送りこまれた」その先は、みな黒々とした所で、あまりよいところではなかった。
「おもろさうし」なにかわからないが、おもしろそうなので読んでみたい。
バッカスの宴という言葉も気になる。

平田篤胤「霊能真柱(たまのみはしら)」

 

 八丈島で粟(あわ)で黒酒を作る場合、なぜか上にオオタニワタリの葉を乗せたら黒麹ができるという箇所があるが、なぜオオタニワタリ?
あれでしょ?あのジュラ紀みたいなノッペリしたシダ植物。なにか有用な細菌とかアミノ酸でもついているのかな。それともおまじない的な。

 

ムルルン:宮古の来間島の虫送り。竹豊島ではネズミを芭蕉の船に乗せて「この島は小さいし食物も少ないからパイノウラノシマ(南の浦の島?)へ行ってください」と言って海に流す。帰ってもらうのか。全然関係ないがゴジラへの対応もそんな感じではないのか。

https://bookmeter.com/users/767067

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出雲 again

2021-06-07 18:25:26 | 旅行

 出雲にはひときわ深い思い入れがある。
5年ほど前、愛猫が死んでから初めての遠出だった。
アメリカの旧知の友人が(友)「出雲に行きたい。日本人ならルーツを探るべきだ。」と言ってきた。ホントに人類のルーツが探りたいならアフリカはどうだろう。


 そして真の目的は(友)「最強パワースポットでご利益を得たい」 
別に?神様からもらいたいもんなんかひとつもないわ!

 

ほしいものは全部自分で手に入れるのだ。


 あっ、でも人知を越えたつながりを管轄するというなら、
唯一、小枝ちゃんと出会ったことへのお礼を言ってやってもいい。


 不遜な参拝者は「スーパーおき」に乗り意気揚々と出かけて行った。
途中から人が増え、日米総勢6人で向かった。
着いたはいいが、人が多いしあまりに広い敷地で
隅の方から入ってどこに行ったらいいかわからずうろついていた。


 後で知ったが、その時ちょうど本殿の真横にさしかかっていたらしい。
唐突に電話が鳴り、何か月も審判が出なかった母の後見人が決まったという弁護士事務所からの知らせがあった。
(弁)「たった今裁判所からFAXが来ました。つつしんでお引き受けいたします」 
ありがとう、このことをみんなに知らせますというようなことを言って電話を切って、
そのあと疲れがどっと出てきて、考古学館でひとりぐったりしていた。


 なぜあのタイミングなのか知らないが、興味本位で礼をしに行くだけのつもりで、
またなんかもらってしまったような。


 あのような山陰の行きにくいところにもう二度と赴く機会はないだろう。
その当時は御朱印帳がまだなかったので、返す返すも惜しいことをしたといつまでも思い出すのであった。
 
 
 
 今年になって急にちょうど下見の用事ができて、山陰を訪れることになった。
実家から京都に行く途中に寄ればいいや。
場所は、
 
(娘)「出雲」


 こうも簡単に戻ってくることになろうとは。
前はグリーンリッチなる新築ビジネスホテルに泊まったので、
今回は由緒ある旅館にしてみよう。
ホテルと書いてあるが和風の(名前)「武志山荘」 (きの)「ぶし山荘?」 
(HP)「たけし山荘」
たけしね。ふうん。

 大人2名で12,320円。朝食付き。夕食のチョイスが「おろち」「すさのお」何が入っているのだろう。夜はホテルの外に出て出雲の街をさまよってみたいので、夕食は頼まなかった。


 行く道すがら、ついでになじみの湯田温泉に寄ってから行く。
駅舎に無料の足湯がある。
乗っていた電車からぶらりと降りて、次の電車まで浸かって待つ。
近所のおじさんがいるばかりの静かな駅だった。


 途中からぶらりとやってきたギタリストが
ヒマだからって楽譜を広げ(ギター)「♪ポロロロロン~」
演奏が始まってしまい、良い心持ちで電車を待つ。
通りかかった知り合いらしき爺さんが(爺)「これでも飲んで」 
演奏のお礼かジュースを置いて行く。

 このギタリストは地元のおなじみさんらしく、
弦をつまびきながら(ギタ)「そうすると獲得免疫が・・・」 
爺さんと雑談をしている。すごい技能だ。
脳内の動きはどうなっているのだろう。


 「それでね、ジャララン♪」などの合いの手のような演奏ではなく、自身の世間話のBGMに
自身が弾いている楽器がずっと鳴っている。


 お湯が熱くなったのでコンクリートの上に出て、
足跡をつけながら貨車の通貨を眺める。
手すりにもたれて線路ぎわの錆びた石を見ていると、
日陰に優しい風が吹いてきてノスタルジックな感覚にひたる。

 


何でもかんでもやりたい放題の大きな湯田温泉。大好きだー!

 


 充分温まったので、やってきた次の電車に裸足の靴を引っかけて乗り込み
一路出雲へ。


 山陰の山を越えるから、途中から川の流れが逆向きになるということを、
いつか遠い日に伯母に教わったことを思い出した。
津和野の赤い連鳥居を過ぎ、岩場に打ち寄せる青い波を見ながら、快適な車内で4時間かけて出雲に到着。
ホームに降り立ち、


(きの)「寒い!!」


 なんだこの刺すような風は。サマーセーターの網目から風が全部入ってくる。
さっき温泉に入り油断して裸足で来てしまった。
上着と靴下はどっかに行った。
これが俗にいう寒の戻りというやつなのか?
山陰おそるべし。
震えながらスーツケースをゴロゴロ引っぱりホテルへ。


(きの)「ここ?」 (坂)「グヮーッ!!」 
吹きさらしの長い坂を登ったものしか泊まれないのか。
と思って登ったら今度は下り!?同じ量だけ登って降りて、なんなんだよもう。
熱を測り書いた住所と同じ記載のある証明書を見せよか。
厳しいねぇ。


 部屋は5階で窓を開けたら庭園の松しか見えなかった。
(きの)「・・・」 施設は平均して2階で8mだと消防のオッサンが前に教えてくれた。
×2で16m。
5階の窓から見えるのは松の「途中」だから、×3+ちょっとぐらいだとしても、
30mの木が生えた庭は手入れが大変だろうに。


 鍵は風情のあるアメジスト色がかった傷だらけのアクリル棒。
その傷が今までの長年にわたる地元に愛された経営を物語っている。
それを入り口の壁の穴に挿せと書いてある。
これささないと電気つかないし、運よく代わりの直方体の棒など持ち合わせていない。
イケアのカードが活躍することができなかった。
しかもこういうとこは、ゼッタイ出かける時に鍵を預けていけとか言われるんだ。


 マットレスが柔らかい。古いのだろうか。
アメリカのハイウェイ沿いにある家族経営のモーテルの古びたベッドを思い出した。
古いとバネがヘタるが、アメリカ人は重いし、
そういうモーテルには古いマットレスがよくあって、
寝ている時に体がくの字になるのを嫌う人が多かった。
特にシングルよりキングサイズの方が中央に支えがない分、真ん中に寄りやすい。
張りのあるベッドこそ至上という認識で当たり前なのだと思っていた。


 デスクの上にあった(パンフ)「按摩さんは雪で来られない場合があります」
半七捕物帳の世界だ。
前に来たときは夏で台風が来る前だったから蒸し暑かったが、ここの冬はどんなだろう。

 博物館に行き、ハタハタが食べたかったのでホテルの近くのそこらへんの寿司屋を探す。
あったが住宅街の人んちみたいな店構えだ。
2軒隣には店らしい店があったが、窓に(貼紙)「どじょう入りました」 
もし入ってドジョウ料理しかなかったら困るので、やはりさっきの店に入る。


 しかしこっちも手書きの文字だけの(メニュー)「にぎり ちらし 蒸し寿司 造り 今日の一品」こんなんでは何かわからない。
さよりという魚が聞いたことなかったので食べてみたが、どうやら青背の小魚のようだ。
サワラとまちがえた。海藻の入った茶わん蒸しをすすり、
大きなエビを噛みながらハタハタのことはすっかり忘れていた。

 食べ終わって店を出て、夜の街を歩く。上着は着てきたが寒い。
商店街の居酒屋を出てきた集団の女性が、ハエのように熱心に手をこすり合わせていた。
やっぱり寒いんだ。
連泊可能なホテルを探しがてら、思い出のグリーンリッチを眺める。


 作業車のようなワンボックスカーで満車だそうだ。盛況で良いことですな。
前も思ったが露天風呂の手前が駐車場で、こうワゴン車が多くては
いつか侵入者や覗きが出ないとも限らない。
などと犯罪の手口ばかり次々と思いつくのは、安全面への考慮ではなく人間性の問題か。


 前は初めてのお出かけで舞い上がり、夜に抜け出してコンビニに行って、
思い付きでヨーグルトを買ったはいいが砂糖がなくて、
そのままグリーンリッチのフロントに引き返し(きの)「アメニティーの砂糖ちょうだい」
などと客でなかったら追い出されそうな要求をしてみせたりした。


 その他津和野のコイに触ったりと、生まれたての子猫のような好奇心満々の振る舞いが多々見られたが、
最近では落ち着いてきて他者を気遣う余裕もある。旅慣れたものだ。

 


 今日の映画はゲド戦記だと、さっき寿司屋のTVでやっていたので
ホテルの部屋の黒い板を見てみる。
久しぶりに見たが、主人公のアレンがすごく病んでゐる。
例えて言うならコロナ対策を頑張っている首相を刺す息子か。う~ん。


 後半、クモ様に追い詰められる孤高の大賢人ゲド。
(クモ様)「一番ひどい死に方にしてくれるわ」 例えば?
(きの)「クモ様に言い寄ったので処刑されましたという噂を言いふらされる」 
(娘)「最悪だ。」


 昼間も思ったが、このベッドのマットレスは柔らかすぎるのではないか。
スプリングがたまにキシキシ言ってるし。こういうのはチャックを開けて油さしたらいい。
分厚い羽毛にくるまれ早々に眠る。

 


 朝起きたら肩がすっきり良くなっていた。
最近右肩が痛くて悪霊が憑いてるのかと思っていたが、
このぶあぶあのマットレスが良かったのか。
それとも日頃よほどひどいベッドで寝ているのか。
 
 朝食会場は庭園が見えるレストランで、行ったら誰もいなかった。
昨日から薄々思っていたが、宿泊客は自分達だけではないかという疑念が確信へと変わった。
なぜグリーンリッチは大繁盛でこっちには来ないのか。一駅隣で静かなのに。
ホテルの制服を来た品の良いご婦人がサーブしてくれる。


 朝食は策を練って洋食と和食を頼み(きの)「そのソーセージをちょうだいよ。うひひひ」 
最高の朝食だ。 
さっそくソーセージとご飯を食べてしまい、あとこれどうするつもりだ。
すごすごとカウンターに聞きに行く
(きの)「すいません。あの、ご飯お代わりしていいでしょうか。
その、あまりにおかずが美味しくて。えへへ」


(ホテル)「例えばどれが」(きの)「ぐっ」 鋭い質問。
(きの)「ええと、これかな(柴漬け)」 不正解。
(ホテル)「コチラが島根名産です」(きの)「塩辛?」
(ホテル)「イカの麹漬け」 ははーっ(陳謝)失礼しました。


 味噌汁のシジミは宍道湖産だな。
しかも殻が小さくて丸く反ってて傷だらけで砂が抜けきっていないものもある。
駅で真空パックで売ってる養殖の気配がする粒ぞろいの薄い殻とは違って、
すごく荒々しい天然ものではないのか。
あぁこの神代の貝殻が欲しい。


 しかしね、よくある紫色の柴漬けでなくて、地味なアーミー柄の細切れの漬物が、
最初わからないで食べた時に「これはおいしい、何の漬物だろう?」
と思ったのだから本当に美味しかったのだと思うけど、
ただ単に色がなかったらわからないという味音痴を証明しただけかもしれない。


 自慢の庭園を散策。
離れの会食所のような庵があり、池があって紺色のコイが泳いでいた。
ここは結婚式などもやるらしい。
太い松が生えていた。これが窓から見た幹の根元だな。
舞鶴の松栄館でも思ったが、松はいつか手入れができずに巨大化してしまうと、
もうそれによじ登ってまで葉を摘むことはできなくなるから、
ますます手に負えなくなるのではないか。
てっぺんを切ったら枯れるし。針葉樹だから何十mでも伸びる。
そして台風でゴムホースのように折れるのだ。


 部屋に帰って早速アンケートに記入。
(きの)「せっかく地元のいいものを使ってるんだから、
島根の和朝食というネーミングにしたらどうか」 うんうん。 
よけいなお世話だ。


 いざ、出雲大社へ。
電車に乗って行ってみる。途中の駅でうろうろしていると(駅員)「あんたたちどこ行くの?」わざわざ聞きに来てくれる。地方の駅のこの優しさよ。

 無事乗り込んで広い畑の中を走っていると途中で「武志」という駅があり、地名らしいということがわかった。武志さんという人が作った山荘かと思っていたが。なるほど。

 大社駅に着いてみると、こんなところだっけ??
前は車で駐車場のようなところから入って、こんなに坂はなかったように思うが。
奥がガラ~ンとした大きな土産物屋で勾玉キーホルダーを買ったように思う。
参道の途中の風呂敷屋の店頭で海の砂を売っているのを発見。


(きの)「なになに、稲佐の浜?これを本殿裏に納めないとご利益ありません、か」 まぁいい。
うちのエビちゃん達に日本海のエッセンスをあげよう。
袋代10円を箱に入れて巨大なアワビの殻ですくってありがたくいただく。
今回は鳥居をくぐって真正面から入る。雲一つない青空。
松が全部一方向を向いているが、普段は風が強いのだろうか。
神主らしきおじいさんが切符を持ってうろうろしている。
落とし物だろうか。雨どいの有り様などを見学。


 なんだあれ?と思うほど巨大な日の丸を写真に収め、念願の御朱印。
(貼り紙)「お代はお気持ちで」 そうか。では(札)「バァーン!!」
(巫女)「あの、おつりありますよ(ヒソヒソ)」 
(きの)「いいえ、結構!」 
気持ちをどうぞ。


あとは池の鯉を見て帰る。

 

(きの)「大国主バイバイ。」 また来ると思わなかったよ。

 


 さぁて、来るときに気になっていたお土産横丁だ。
ノドグロを焼いて出してくれるそうだ。
ノドグロがあるくらいならハタハタもあるのではないかと思って見てみたが、ないようだ。


 道で出雲のチョコレートの宣伝をさんざんしていたが、
何か他にないありがたい特徴でもあるのだろうか。
チョコは素通りして日本海の幸!
(きの)「宍道湖のシジミに神西湖のシジミ!どっちを買おうか。
でも前に宍道湖は出雲駅で買ったから。しかし大粒!?う~~~ん悩むな~」
うるさい客だ。


 次に漬物屋に入り勾玉の形をした伝統野菜「津田カブ」の漬物を買い、
向かいの鳥屋さんで銀山のセセリから揚げと、日本海の茶色い藻塩を注文。
ふと見ると財布がない。


 さっき漬物を買い、しょっぱいもののオンパレードに
感無量で座ったベンチにポンと置き、すっかり忘れていた。
隣で無関心に鶏を食べている他の客。慌てて取りに戻る。
日本て平和だな。(店)「あっぶね~な」 その通りだ。
真摯に反省する。


 油淋鶏弁当とコーラを注文し、食べている最中に(きの)「ちょっと失礼」 
さっきの土産屋で気になっていた日本海の塩ソフトクリームを買いに走る。
(店)「寒くないんですか?今日は朝から・・・風がさぶっ(手)しょりしょり。うぅ・・・」 
ダウンジャケットを着てガクガクしている。お店の人でも寒いのか。
へ~今日はちゃんと着てきたから大丈夫。
奥の風の来ないベンチに座ってベロベロ喰いまくる。


 健康とは程遠い食事を終え、満足して立ち去る。
出雲からは「まつかぜ」という特急に乗る。途中で海岸線のようなものが出てきた。
しかし対岸に建物がある。わかった。


(きの)「これがシジミ湖だな!」(娘)「しんじ湖!」 いやしすぎる。


 広々とした良い景色だ。途中で出て来る風車が巨大すぎて不気味だが。
大きい山がだんだん近づいてきた。鋭く切り立って青くなめらかで静謐な姿。だいせんと読むのか。京都のスーパーで売ってる牛乳はここから来ているらしい。電車は鳥取に着いた。途中下車して駅弁でも買おう。
鳥取には初めて来たが、砂丘で有名だ。


 土産物屋で(きの)「シジミの生姜煮にホタルイカの山椒煮!砂丘の砂で焙煎したコーヒー!!」 好みの物が多くて困る。
英語学校で一緒だったサウジアラビア人が「Sandy コーヒー」なるものがあると言っていたが、
ほんとにあるんだ。
椎茸弁当などを買い込み「特急・白兎」京都行きに乗り込む。

 


 弁当の椎茸は115号という巨大品種で、ものすごい分厚くて含んでいる煮汁の量がすごい。
パッケージに「すばら椎茸」などとダジャレのようなことが書いてあって
(きの)「けっ。な~にが素晴らしいものか」と思っていたが、たしかに素晴らしかった。
針葉樹林が続く。


 さっきから、この電車は発車する度に黒いモヤがひとかたまり現れて列車に並走して消え、
指さす頃にはもういないというしょぼい霊感がある人みたいな状態だったが、
いつか気づいた(きの)「これディーゼルでは?」
地元の山あいを走るディーゼルカーと出発の時の力強い感じが似ている。
前方のライブ画面を見ると電線はなかった。やはりか。
林業と雪が多くて電気ではパワーが出ないのか。


 途中の放送で「JRですが今は智頭急行という私鉄の線路を走っています」というような紹介があった。
昔から木などを運んでいた鉄道なのだな。
岡山の辺りの針葉樹林の中にたまにポツポツとピンク色の花が咲いている。
遅咲きの桜かな。それとも山あいは寒いから今が咲き時なのかな。
ソメイヨシノは挿し木しかないから、あんなに山中に誰かが植樹してまわったとも思えない。
山桜なのかな。

 関西 - 九州間は色々なルートがあって楽しい。
海から上がってきたり(船)、はたまた空から降りてきたり(飛行機)
という移動はもうやったから、今回は特急を駆使して
後ろから山づたいに近づいて京都に入る。
これは盲点だろう。


備中高松通らないかな。修学旅行の思い出の駅とは違う線を走っているらしい。


 白兎は前面のガラスも広く取ってあり、先頭車両に付いたビデオカメラで前方の景色を撮影し
リアルタイムで全車両のモニターで流すという素晴らしいサービスがある。
景色を楽しんでほしいという気持ちが伝わってくる。

 大変面白くてよい企画だと思うが、しかし、電車というものはよく京都 - 大阪間で止まる。
理由は「お客様との接触」という、ほがらかなふれあいのような説明だが、
実際は人身事故であると思われる。
杉林の中なら風情があっていいけれども、街中でお弁当を食べながら見て
トラウマとなってしまうことにならないか。

 大阪で停車したので息を潜めていたら、ただでさえ少ない客が降りていくばかりで
誰も乗り込んでこなかった。
ドアが閉まり、京都に近づくにつれて、恐ろしい速さで加速しだした。
線路の音もなめらかで、もうディーゼルで走っているようには思えない。


 なにも人が多い駅に入る前に思い切ってスピードを上げるべきではないのでは?
と思うくらいの猛スピードだ。大阪と京都の間を20分で走る。
JRが誇る謎の揺れない新快速が35分で新幹線が15分だから、
在来線を新幹線並みの早さで走っているようなものだ。


 誰か指摘しないのだろうか。「危ない」と。
日も暮れて、画面の映像も光がぶれるようになり、
スターウォーズのワープする時や、ドラッグ映像のような爽快感のあるものになっていった。
ラストスパートと言わんばかりの狂気のランで古都に走り込み、
なじみのタキイ本社のビルを見た時には、ほっとした。


結論:日本海最高!ここを山の裏みたいに呼ぶのは良くない。
なにかこう、山の向こうに素晴らしいものがあるというような漢字がいいのではないか。
「山凛」というのはどうだろう?厳しく涼しい様。
星取県みたいなどうでもいいネーミングよりよっぽどいい。


 帰って淡水エビの水槽に(きの)「さぁ、出雲の砂ですよ~」 
よく洗った国引きの浜の砂に天橋立の石、神西湖のシジミ殻を足して
(きの)「神代の恵みを・・・ブツブツ」
(娘)「そのエビ達をどうしたいの!」 
霊的に強く仕上げたい。


(きの)「いやー武志山荘良かったねー武志。武志」
わいわい言っているとポストに入ってた通販の不在伝票に
(ヤマト)「いませんでした。担当:〇〇武志」
(娘)「えっ・・・?」


さぁ、シンクロニシティーの世界へようこそ。キヒヒ

 



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