きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

「薔薇の名前」は推理小説だった(含ネタバレ)

2021-02-27 10:22:07 | 書評

 タイトルは恋愛っぽいけど、まったく違うらしい。大昔のイタリアの修道院のお話だそうだ。

そこに異端審問官というのが出てくる。

キリスト教徒としてふさわしくない者を見極めにやってくるらしいが、昔この本の説明をしてくれた父が異様に怖れていた。

父が通っていた大学の先生がなぜか全員外国人の神父で、すごく怖いのだそうだ。

怒鳴ってくるわけではなく、(神父)「ではもう1年一緒に頑張ってみましょうね(留年)」とか、

(神父)「この課題(大量)を最初からやり直してみましょう」などと笑顔で言ってくる。

それを言われるのがたまらなく恐ろしいと。だったらちゃんと勉強すればいいのに。

だいたい家が神道でイキってキリスト教の学校に行くから、そんなことになるんだろう。

 

 (父)「いやだぁぁ異端審問官が来る!馬車に乗ってやってくる~~。ヒィィ」

(きの)「??」だからなに?全然怖さが伝わってこない。

そう言ってこの本を嫌がっていたが、今ふと思い出して、読んでみる時が来たかもしれない。

宗教の本かな。分厚いけど図書館から借りて来てみる。

ボッカッチオのデカメロンばりにまわりくどい表現。

古典かと思い奥付けを見てみると1980年。そんなに大昔ではないな。

イタリア人は普段からこのようにまわりくどいのか。

 

 

 中世の僧院に、ウィリアムという名前のホームズ役の修道士がやってくる。アドソという助手を連れている。

このホームズがそこで起きた事件をまかされるのだが、どうでもいい別件の謎解きの種明かしを得意げに披露したり、そうかと思うと館長に宗教上の議論で鋭く切り込んだり、

食えない奴だ。

閲覧禁止の理由について「尊いことと、すなわちそれを秘することに直接の関係はないのでは?」というようなしごくまっとうなことを言い、

後で「子供と狂人は本当のことを言う」などとのたまう。こういう発言がいちいち気になる。

 

 

「朝課:調査のため書庫に入る。館長と話し、先達と話す。そして、また書庫に入り、館長と・・・」

あれ?この前も読んだ。

??

 

もしかして、この本はドグラマグラみたいな迷宮の構造になっているのではないか?

だとしたら恐ろしい本だ。ちゃかぽこ、ちゃかぽこ。

 

と思ったが、よく考えたら寝る前に読み、(きの)「パタン。ぐ~っ。Zzzzz・・・・」

しおりを挟むのを忘れて、次に前回のところから読んでいただけだった。

 

何回目かに、ようやく見覚えのあるあたりを突破した。

(きの)「これは普通の本だ。」 

最初からそうだった。

 

自分の仕掛けた罠にはまってもがいて時間をロスした。

 

中盤にさしかかったところで、突如スケキヨが登場。

聖域では笑ってはいけないと言いつつ、

(ホームズ)「では彼が自分から樽に飛び込んで行ったのでないかぎり・・・」

などとマヌケな場面を想像させるようなことを言い、真面目な僧たちを苦しめる。

 

なぜこんなに笑いにこだわるのか。

 

 

この著者はベーコンが大好きらしい。博愛の目的で知を求めたからだそうだ。

富めるほど良いとは思わないが、貧しいほど良いとなると文化が衰退しないのかな。

 

清貧。

 

清貧の反対は「汚富」か?

「私たちの主が貧しかったかどうか」が問題だとか。

 

殉教と笑いは・・・もう、どうしたらいいのかね、これは。

 

このホームズ、途中でメガネを盗まれ実質何も見えなくなる。

不手際というか、無能・・・という文字がちらつくが大丈夫だろうか。

 

 

「書物は信じるためではなく、検討するために書かれる」 また気になるセリフがある。

これが本というものの本質をほぼ言い当てているようで、しばらく考え込む。

 

殺人の調査をしながら、関係ないと思われる教義に関わるような話ばかりしている。

これがもし、キリスト教の教えの解釈の微細な違いが動機だとしたら、

外部の探偵がいくら優秀でもわかりっこない。

 

「なぜかはわからないが、犯人はこうやった。それができるのはこの人物のみ」

という結論しか出せない。

 

 

そのうち、秘密を打ち明けようとしてきた人物をへマで殺されてしまい、証拠品を見逃し気がついて戻っても盗まれていて、そして犯人にも逃げられる。

金田一探偵ばりの後手後手だ。

 

「真の愛とは、愛される者の喜びを願うもの。本にとっての喜びは読まれること」 

それにしては、いいことを言う。

 

 

 結局、てっきり途中で出てきた農家の娘が薔薇で、その名前が知りたいとか、師が口八丁手八丁で救い出してハリウッドばりに逃げるのかと思ったらそうでもないし。

本もなにもかも消え行くのを黙って見守るだけ。

 

まるで、ないものにこそ何かがあるとでも言いたげな。

 

あの犯人が最も嫌った理由は、いつか見たなんかの番組で天皇の死因がガンだというのは、科学的な側面にすぎないとかを「医師」が言っていたので、

聞いた時は何だかわからずに驚いたが、それと近いものがあったのでは。

 

探偵役はそういう盲信に近い信仰は邪悪だと言っていたが、

一番純粋な宗教の人ということで、いいんじゃないのかなとも思うけど。

 

それにしても、本の乾燥防止の目的も兼ねて、各部屋に1バケツ置いといた方がいい。

 

あなたにとっての薔薇は誰?

 

ということなのかもしれないし、そうするとやっぱり愛についての話なのかも。

 

それと、異端審問官は現代にはいないと思うよ。明らかな法律違反だし。

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