きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

20年経って印象が違って見えた本

2018-02-25 20:47:09 | 書評
 昔に読んだ新撰組の本を、最近になってまた読んでみたら、
土方歳三がこんなに得体の知れない人物だったかな?と、ふと思った。
 
 そういえば、東京ラブストーリーというドラマをやっていた頃は、
主人公の鈴木保奈美の髪型が流行って、
やることなすことオシャレでしょうがない感じだったが、
それから10年後ぐらいに見たら、織田裕二が後半何度も名前を呼ばれたり、
お決まりのテーマソングが流れると幻が見えたりと、
始終何かの生霊に悩まされてるような話にしか見えなかった。
 
 トップガンは、恋愛要素の付いた軍隊の勧誘映画で、
SPEEDは、こんなに頼りない大学1年生みたいなやつに、
乗客の命運を任せるのはちょっと嫌かなと思った。
タイタニックが、最初から遭難の記録フィルムなのはいいとして、
 
 楽しかったはずの共奏曲やロングバケーション、
数々のトレンディードラマが白けて見えたら大変なので、
今はまだ見ないでおこう。
 
 都会で新築のアパートに住み、団子の会社に勤めて、
帰って来たら待ち伏せとも思えるサプライズ訪問があって、
モノトーンの内装の思いもよらない位置にペッタリと座ってビールを飲み、
休みのたびに友人達とスキーやスキューバに行く。
 
 大人になったら当然みんなこのように生きるんだと思っていた、
あの沸き立つような感覚が、全否定されそうで。
 
 
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猫の旅館

2018-02-15 10:53:24 | 書評
 小さい頃に読んだ日本昔話シリーズだったと思うけど、
雪深い温泉宿に泊まったら仲居さんが猫で、
なんのかんのと言って旅館から帰さないようにしてきて、
最後逃げだしたら温泉のお湯を汲んだ桶を持ってみんなで追いかけてきて、
崖の上から次々とヒシャクで旅人にかけてきて、
ホウホウのていで逃げ帰った後も、
お湯がかかったところに毛が生えて治らなかったという。
 
 「雪国」といい、旅館の女の人は気まぐれな方が却って良いのか。
いつかの正月に見た能の舞台は、
最初は旅人らしき侍?を普通の小面みたいな顔でもてなしていたはずなのに、
気づいたら女官以下全員鬼に変わっていたり、
なんだか現代でもありそうな恐ろしい話だったが。
 
楽しく飲んでて気付いたら大変!みたいなのは恐怖の定番なのか。
 
 
 ところで、現代の猫旅館は猫カフェ併設だったり、
猫庭があったりしてとてもフレンドリーな雰囲気。
猫カフェで就寝もできると考えたら、もっと全国に増えてもいいんじゃないか。
好きな子を選ぶと部屋に連れてきてくれるそうだ。
どこぞの遊郭のようだが。
 
 猫ちゃんがパソコンに乗ってくるので、仕事は全くできないとのこと。
それは困ったものだ(ニヤニヤ)。
その子が布団から出ようとしないので起きれない、
ヒザに乗ってどかないので動けない、
チェックアウトの時間も過ぎて・・・って。
あれ?
 
ふりだしに戻る。
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話が全然かみあってない

2018-02-11 13:14:59 | いつかの思い出
 大学の英語学校に不思議な人がいた。
みんなからは晴春くん(仮名)と呼ばれていて、
まわりの噂では親は医者で、背が高くて空手が得意だそうで、
日本人の事務局の人からは、ジャニーズに応募したらいいのにと言われていた割に、
本人は着飾る気はないらしく、いつもランニングシャツにズルズルのルームウエアーとサンダルで教室に来ていた。
 
 全体的にチンピラのような立ち振る舞いで、
誰かを殴ったとかいう話が聞こえてきてはいたが、
人を馬鹿にしたり、荒んだ目で世の中を見たり、小狡く勝機を狙っているような暗い焦りは見られなかった。
大人に怒られてものん気な感じで、朝会うと爽やかな笑顔で挨拶してくる。
恵まれた人はこうも違うものかと、こっちは物陰から荒んだ目で見ていた。
 
 偶然授業で隣の席になった時に、話しかけてきた。
授業中に喋っていると注意されるので、ノートの端に書いてきた。
今度車を買うんだとかいう内容で、
(きの)「どんな車を買うのか」
(晴春)「丈夫なやつ」 
(きの)「何で?」 何に使うのか。
(晴春)「こわれへんの」 
字が汚くて「へ」がゆがんでた上に、関西弁がよくわからなかった。
 
はぁ? こわれてんの!?
 
最初から壊れてるやつを買うとはどういう料簡だ? さては改造でもするつもりか。
 
そういえば別のクラスの怪しげなダボダボファッションのラスタヒゲが、
ドアが反対方向に開く平べったい車を買ってきて、ジャマイカの国旗色に塗っていた。
 
ではきっと、そいつの友人である晴春くんも、改造した装甲車のような「丈夫な」車で、
そこらの駐車場をモンスタートラックのように乗り回して遊ぶにちがいない。
 
(きの)「ぜひ見せてくれ」
 
 
後日、彼が買ってきたのは小綺麗なアウディーだった。
確かにドイツ車は丈夫だが。
 
教訓:上品なやつはどこまでいっても無駄に上品だ!
 
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エレベーターガール

2018-02-02 17:28:29 | いつかの思い出
 日本に帰って間もなく、飛行機に乗せてアメリカから連れてきた小枝ちゃんの検疫を
空港でしていた。
 
2週間の検疫期間の間に、世話を頼んだ空港付きの業者が
(電話)「小枝ちゃんがご飯を食べてくれません!
しかもケージの下の狭い所に無理に逃げ込んで爪を負傷!」 
やれやれ、来たか神経質め。
 
 慣れ親しんだアメリカのキャットフードなら、食べるのではないだろうかと踏んで、
輸入ペットフードを置いている店を探したら、
高島屋の屋上にペットショップがあり、
アボキャットを売っていたので、買って持って行ったところ案の定、食べたじゃないか。
(小枝)「フンっ見知らぬ人からもらう異国の食事はイヤ」 だそうだ。
 
 結局、何度か買って持って行くはめに。
何度目かの買い物の時に、エレベーターに乗り、しげしげとよく見ると、
エレベーターガールがいた。
昔はいっぱいいたらしいが、近年は大都市の老舗デパートでしかお目にかかれないような
希少な存在なのでは。
 
 慣れたパネル操作の中にも品があり、白い手袋もとても良かった。
その時、エレベーター内は空いていたので、これ幸いと奥の方に陣取り、
ジロジロとその美しい所作を観察していた。
流れるような口調で説明が始まり、各階ごとに順に紹介していく。
(ガール)「2階、なんたらかんたら。3階は紳士服
      ・・・7階、特設会場は、私の部屋です」
 
え?
私の部屋?
 
 表示を見たら「私の部屋」という題の、手作り雑貨の展示会だったらしいが、
(きの)「ぐふっ」 私の部屋にご招待か。
 
 
ガラっと開いたらもろ私室!
見せてくれるか、お前の居室!
 
 
 などと、妙に韻を踏んだ余計なつっこみが、次々と頭をかすめてきて呼吸が苦しくなり、
こんなとこで笑い出したら不審に思われる、と必死で息をととのえようとするが、
どこにも止まらない上になかなか屋上に着かなくて、
清廉なお姉さんの後ろで、
不自然に姿勢を変えながらも、精神は極限まで張りつめているという、
地獄のような道行きだった。
 
忠告:罠はどこに潜んでいるかわからない。気をつけよう。
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