きの書評

備忘録~いつか読んだ本(読書メーターに書ききれなかったもの)~

(6of14)南禅寺~万事是修行の日々~(6/21/2020)

2020-09-27 00:48:06 | 怒涛の京都ホテルめぐり

今回は日曜日。8,500円 臨済宗の宿坊 2階#2018

 宿坊というと、なんとなく旅の僧侶かお参りの団体しか泊まれないような気がするが、最近は普通の人も泊めてくれるらしい。ただ、申し込みの項目に特異な(質問)「檀家ですか?はいなら、寺の名前は?」いいえ、にしといた。はい、と言うと安くなるようだが、うちは母方が真言宗と父方が浄土真宗で、祖母が禅宗で実家が神道。臨済宗には縁がない。マスクをして平熱で来るように言われた。

 食事は感染防止のため、今は提供しないようにしているとのこと。事前にいんちき旅行代理店(娘)が電話でコンビニはありますかと聞いたら、山を下りて15分の所にと笑いながら言われたらしい。それならば、二条の駅ビルのようなところで、トンカツ屋の隣で韓国料理の弁当を売っていたから、これは珍しいと思い、何気なく焼肉弁当を選んで買った。受け取る際に、よくわかっていないバイトの女子高生がただ渡してこようとするので(きの)「まだ払ってないよ」しっかりしなされ。

 メニューでキムチや匂いのしそうなものがないのを確認して頼んだのに、地下鉄に乗り込んでしばらくして、誰がこんなに食べ物を持ち込んだかと思ったら、自分だった。袋の中を見ると、サービスのキムチパックが弁当の上にそっと乗っていた。えぇ!?ありがたいが、しまった。どうしよう。と思いながら蹴上駅に着き、宿坊に到着。はからずも生臭ものを持って山門をくぐってしまった。荷物は持ってもらわないようにして、部屋に入って早く食べてしまおう。

 着いてまずロビーに線香の匂いがたちこめて、煙い。もうキムチもなにもわからない。さすが仏教。ホテルの建物は2階建ての近代的な外観だが、本当に宿坊らしく作務衣の従業員が数人いて、奥の事務所にボウズ頭が見える。あれはファッションのスキンヘッドではあるまい。スピードガンのような器具で熱を測られ(機械)「35.9℃」ちょっと低すぎないか。

 (宿)「夜9時になったらホテルの玄関を閉めます」思わず変な声で確認してしまった。(きの)「あふぇぃ?夕方、水路閣に行ってみようと思うのですが、見ているうちに寺院敷地の総門が閉まって、境内に取り残されたりは?」(宿)「ほっほっほ。しませんよ」本当だろうか。クツをぬいで下さいと言われ、スリッパもなし。靴下でひたひたと廊下を進む。こういうところでクツを取られると、少し不安になるのはなぜだろう。みんな優しく微笑んでいるが、無事に帰れるだろうか。

 部屋に入って大急ぎでキムチ弁当を食べ終わっても、まだ汁が大量に残っている。そんなものを置いて帰ったのでは悪いような気がして、一気に飲んでしまった。TVがない。テレビがないのはそんなに嫌ではないが、ないのならないと言ってくれれば、パソコンを持ってきたのだが。週末だし、もしかして山道を登ることになるのかと思って、置いてきてしまった。これでは、あのNHKの足軽がどうなったかわからないではないか(すっかりはまっている)。ベッドの上に、黄緑色の浴衣が置いてある。模様は「南禅寺 南禅寺 南禅寺・・・」とひたすら筆で全身に書いてある耳なし芳一デザインだ。歯ブラシやヒゲソリなどは、高そうな取っ手がついたものが置いてある。

 窓から覗くと、参拝客はちらほらいる。着物を着て山門の方へ上がっていく観光客らしき人達もいたが、5時頃にみんな帰って行った。水路閣に行ってみた。琵琶湖から水を引っ張ってきてローマの水道橋みたいにして、市内に渡している。明治にレンガで作ったのだそうな。ここは、京都のことをよく知らない時に案内を見ていて、晴明神社、貴船と共に行ってみたい場所だった。しかし、きっと遠いのだろうと思い、場所を調べようともしなかった。まさか街中から地下鉄で3駅とは。

 

 水路閣は坂を上ったらすぐにあった。(きの)「これが!」レンガのアーチが美しいが、なんでお寺の入り口の真ん前にあるのだろう。はっきり言って邪魔じゃないのか。お寺の後ろに設置すれば良かったのに。明治に作った時には、家の前に高速道路を作られたぐらい嫌な気分がしなかっただろうか。まず下から眺めて水の滴り具合いを見る。次に上に登って橋の上を流れる水路の流れを確認する。早いしすごい水量だ。これが琵琶湖疎水か。さすが湖の水圧は圧倒的。ディズニーランドのスプラッシュ・マウンテンのようだ。ここを筏で下りたい。泳いで良いと言われたら嬉しいな。でも見るだけでもいいよ。

 しかし、琵琶湖の方向から考えると、逆向きに流れて行っているような気がするのだが。そして、さらに山道に紛れ込み、流れの始まりから追いかけて、ずっと流れに沿ってついて歩く。水が暗い暗渠に吸い込まれて行くまで見届けた。透明とは言えないが、力強く冷たい小川だ。京都市民は、全員これを飲んでいるのか。奥に人家らしき気配があり、道が続いている。

 三門に行ってみた。工事中で登れなかったが、巨大な柱にシロアリらしきボロボロした部分があるのを眺めていると、6時頃、疎水の上の山の中腹あたりから(音)「ブォ~ッ・・・ヒブォ~」と壊れたトランペットのような音が聞こえてきた。学校でもあるのだろうか。吹奏楽部の練習かな。寺院を見ながら下りて、住宅の方を歩いた。上品な家が多かった。この辺も哲学の道と言うらしいが、どこがそうなんだろう。銀閣寺のあたりではないのか。疎水記念館は、閉館時間を過ぎていた。

 まわりの店が閉まっている様子は、嵐山の比ではない。2、3軒で、しかも開いていたとしても結局湯豆腐だ。焼肉弁当は着くなり食べてしまった。夜になってお腹が空いた。持ってきた飴もスナックも全部食べてしまった。コンビニまで15分。しかもいったん出て締め出されたら山の中で一晩過ごすのかと思うと、気軽に出れない。こうなると食べ物がないことが、気になりだしてしょうがない。普段ならそんなこと気にしないのに。朝食セットは持ってきたが、それを食べてしまっては朝になって本当に何をしたらいいのかわからなくなりそうだから、ぜったいにそれらには手を付けるまい。

 窓の外の、京都市街の向こうの山に暮れていく夕陽を日食にならないかと眺めながら、おうちはあっちの方だなと懐かしく思う。わぉーん。わぉーん。

 机の上に仏陀の本が置いてあった。(きの)「パラリ」読み始めてしまったが最後、もう気になって途中でやめて置いて帰ることはできない。インドの村で苦悩するゴータマ。とにかく村々を歩き回り説法しまくる。宿坊の外の山の空気は涼しかったので部屋の窓を外に向けて全開にし、手前の網戸だけにして風を浴びながら一心不乱に仏陀の生涯を追い続ける。

 読みながら寝てしまった。ふと見ると外は真っ暗で窓が開いている。ハッ!しまった。ここは山の中だ。しかも水気たっぷり。疎水の湿った石のあいだにうようよ・・・。山のやつらはさぞかし長いだろうなど、余計なことを考えてしまい、もう眠れず。外に開いた窓を急いで閉めようとして、手前のネオ和風網戸を開けたら小さな(蛾)「ぶわあぁっ」部屋中が虫だらけに。小さい虫が飛び回るので捕まえることもできず、読んでる本や顔にたかってくる。ブローチのようにまとわりつかせながら仏の道を読み終える。仏陀もインドの森の中でこんなことになっただろうか。

 もう怖くて電気も消せないが、明るいと蛾が飛び回る。ここに何しに来たんだっけ。修行に来たのかな。やけくその気分で「真の行者は自ら苦役を作り出し」という川柳のようなものをこしらえて悦に入る。帰りたい。

 

 朝になると、猛威を振るっていた蛾はいなくなっていた。あれだけ居たのにいなくなる訳ないから、どこかベッドのかげに潜んでいるのだろう。窓を開け、逃げる隙を与えて散歩に。前庭の池の蓮が一輪咲いていた。宿の人が、今は食事も朝課の読経も大浴場も何もないから、せめてこの花だけは見てってくれと言わんばかりに、埋もれてやっと出た蕾を案内してくれる。(寺)「小さな声を聴くんです」蓮ということは、この下全部レンコンだろうか。雑念が多すぎる。

 昨日、夕方に駅から宿に来るときにトンネルの入り口があった。レンガは良いのだが、唐突に「ねじりまんぽ」と愉快な謡曲みたいなタイトルが書いてあって、どこに続くのか意味不明だし、曇っていて暗くて誰もいなかったので、虫は湿ったトンネルの天井に貼り付く習性があると聞いてからは、うかつに入らないようにしている。

 朝なら、光り輝く太陽がすべてを浄化してくれる気がして、見に行ってみた。宿坊の近くと繋がっていたようで、逆側にたどり着いた。トンネルの中から高校生がいっぱい出てきて、今度は入れないほどの大盛況だ。どうしたのだろう。登校?しかし、こんなに居れば、嫌いなアレも、どの頭に落ちていいか迷うはずだと思い、入ってみたらすぐ出口に着いた。

 達成感でいっぱいになり、ついでに駅の近くの自販機で飲み物を買って飲んでみた。歩道の真ん中で腰に手を当てて飲んでいると、まわりに等間隔で暗い顔の疲れたような大人が数人いることに気づいた。高校生の流れとは相容れない立ち位置で、なんだか横入りしないでくれと言わんばかりの雰囲気で見てくる。バス停もないのにと思っていると、マイクロバスがやってきて、みんな乗り込んで走り去っていった。どこかの介護施設の名前が書いてあった。

 あのトンネルは、蹴上インクラインという坂道を走るトロッコの線路の下を無理やり通したので、強度を増すために線路に対してトンネル自体を斜めに交差させて設置した上に、レンガもナナメに並べて積み上げたらしい。確かに有機的なラインで下から上がってきて天井を越えて向こうに降りて行ってる。もはやアートの域に達したような、すごい技術だ。だから「ねじり」で、「まんぽ」は昔の言葉でトンネルという意味だそうだ。和名は斜架拱(しゃかきょう)だそうだが、そんないかにも Buddhism みたいな名前よりも、「斜構隧道」とかにした方がカッコイイのでは?坂道を上がる列車の振動もあっただろう。今は線路は使ってないが、長年よくその重みに耐え、この姿を保っているかと思うと、いたわるような気持ちでいっぱいになり、しばらく歩道の真ん中に立って眺めていた。

 よし、寺に戻ろう。また高校生たちと一緒にトンネルを潜る。前を歩く3人組は、高校生なのに別荘の話をしていて、受け答えも頭が良さそうで、後で聞いたら進学校の男子校だったらしい。そのまま南禅寺に入って行くかに見えたが、彼らは門を越えたところで先生に誘導され、左にそれて寺の敷地から出て行った。高校はあっち側にあるのか。ということは、昨日の吹奏楽の練習は何だったのだろう。まさか・・・法螺貝??6時だったから、法螺貝の時報?

 

 水路閣に再度訪問。また来た。宿坊に泊まった人は、居る間じゅう南禅院やら庭やら無料で見せてくれるらしいから、ずいぶんサービスが良い。参拝時間までレンガに座って待つ。朝の水路もまた良い。下から見上げると水がしたたりすぎて鍾乳洞のような地肌になっている。シダに朝日が当たって風情がある。こんな古いの、よく現役で使うよなー(感動)。絶対に壊してほしくない。リュックの若い人がふいに山の方からやって来て、寺の階段をひょいひょいと上がって行った。

 寺が開いたので、宿から渡された冊子を見せて庭に入る。庭園に滝が流れ込む池があって1周まわった頃、係の作務衣を着た小柄な若い女性が、あちらにカエルの卵がありますよと教えてくれた。あんたさっきリュック背負って登って来なかったか?近所の人?そして、池にはイモリが多数生息しているという耳寄りな情報がもたらされた。さっき周ったときには全然気づかなかった。というか、なぜカエルやイモリが好きだとわかった。イモリは、イトコが飼っていたという話だけを聞いて、前からうらやましいと思っていた。ヤモリもいいが、それが水中にいるというところに格別の魅力がある。

 指さされた方向を見ると、池の中に地味な黒っぽいものがモタモタと泳いでいた。あんな遅い動きではコイが1匹でも居たら食われてしまうだろう。他のやつは流れが急な所で、慌てふためきながら流されていった。ヤモリも遅いが、やつらは水中だからかもっと遅い。腹が赤いらしいが毒もなく、ただ赤いだけだという。今までよく生き残ってきたなと感心する。しばらく橋の上に陣取り、モタモタ具合いを眺めていた。

 

 お次は、南禅院。ここが南禅寺の本体らしい。建物の入り口でクツを脱いでビニールに入れて持って歩く。盗まれなくていいし、持ってれば安心だけど、何か味気ない。かと言って、三十三間堂の学校みたいな下駄箱もやだしな。広い廊下をどんどん進む。途中で平安調の不思議な扉があった。御所にもあったが、上ががら空きの戸板で何を防ごうというのか、という感じのどこでもドアみたいなものが廊下の途中についてて、妙に気になり写真に収める。

 豪華な文化財みたいな襖などが沢山あって、廊下を進んで蔵のあたりに来た時に、懐かしい匂いを嗅いだ。夏の実家の朝の木の板の匂いだ。ただ、その後シロアリの駆除をしたから、湿った木の匂いなのかもしれない。何回行ったり来たりしても、そこだけ、その匂いがする。奥の滝の方は、跳ね返った水が粒子となって舞い上がるのかもしれないが、何だか古い水のような気配がして、あまり好きになれなかった。

 その後、南禅院を出て反対側を歩き、素晴らしい建物だと思って木の間から写真を写して、後で調べたら納骨堂だった。大勢のお経が聞こえたので、そっちを見たら、ガラガラと雨戸を閉められてしまった。この暑いのに。修行をしているのか。南禅寺をチェックアウトし、疎水記念館に行こうと思ったら今日は定休日だった。縁がない。缶入り琵琶湖ウォーターが買いたかった。急に見覚えのある市バスが走ってきたので、それに乗って帰る。何だよ、近くだったじゃないか。

 帰って(きの)「ノドが痛い」山の湿った空気か?それとも線香か、蛾の鱗粉か、シロアリの匂いか、キムチ一気飲みのうちのどれかか、もしくは複合的な作用だろう。(きの)「街ってありがたいね。ゴホゴホ」自分がこんなに弱しだとは。

コメント

プラザ・ホテル~東寺・五重の塔は50m~(5of14)

2020-09-12 23:02:55 | 怒涛の京都ホテルめぐり

6/12/2020 本館#910 4,700円 雨。

 ギャッツビーの古い映画で、昔は夏にクーラーもなく暑いので「皆で街一番のホテ~ルに遊びに行きましょうよ」と言って、オープンカーで暴走して橋を渡って出かけて行くホテルと、同じ名前だ。

 フロントで海外研修生が一生懸命やっている姿が、とてもほほえましい。質問票に答えウェルカムコーヒーと菓子をもらい、新館の最上階展望エリアで東寺を真横からながめてから部屋へ。部屋の電気は、カードキーならぬキーホルダーのようなどちらかというと棒状の部分を壁のソケットに差すと点く。パソコンをコンセントに差して使っている場合、部屋を出る時にカードを抜くと電源が切れるからIKEAのカードで代用しているが、これはさすがに代用物がない。ある意味唯一無二だ。

 

 日が暮れた頃、近くのショッピングモール横のアメリカ料理の店へ。店員のアニーは英語を喋っているが多分フィリピン人なのではないか?と思いながら席に着いてリブとカジキマグロのステーキを注文し、家を出る時にポストにはさまってた実家から転送されてきた手紙の束を見ていると、なんと隣の家のクロネコ不在伝票が。しかも品名:生花。(伝票)「電話は8時まで」いま金曜の7:30pm。これはいけない。(きの)「ちょっとそこのロビーで電話していいでしょうか!」早くしないとリブが来る。

 電話を終え、席に戻るとちょうど料理が来た。(きの)「おお、これこれ」ナイフとフォークをチャンチャン鳴らしながら食べていると、パトカーが来て店の前に止まり、制服がショッピングモールの方へ入って行った。その内もう1台来て離れたところに止まった。その間に3~4台のワンボックスワゴンが止まり、辺りは赤い光がピカピカ点灯する騒然とした空間に。野次馬が興味本位にワンボックスカーのナンバーを写真に撮っている。何だろうと思いつつ食べていたが、事件が起きているかもしれない横で平然と食事をするなんて、都市の弊害だなぁ。

 なんとなく、アニー達がこっちを気にしてる。えぇ!?違う。あの電話で通報したんじゃない!まったく違う。全然関係ないし勝手に来た。まさか自分で呼んでおいて、むしゃむしゃ食べれるほど無神経ではない。アニーはこっちのテーブルに来てくれなくなってしまったので、他の店員に会計をお願いして店を出て、ショッピングモールの方に向かった。ホテルに帰るためには、モールを突っ切って裏の方の出口から出る。

 入口から入ってみると、制服の警官たちの間に、最初は最近見なくなった中国人観光客がいっぱいいるのかと思った。5~6人の厚みのある体型のあまりファッショナブルでない男達が、数か所にかたまってまわりを見ながら斜に構え、力強く立ち話をしている。それにしては小柄だ。大陸の人は全般にもっと大きい。これは全員が私服警官なのかな。みんな同じ名前を口にしている。入っていいのか危ないのかよくわからないまま突っ切ってきてしまったが、ほんとに何だったんだろう??

 

 ホテルに帰って大浴場で泳ぐ。製氷機から氷を取ってきてモールのダイソーで買ってきたプラスチックのシャンパングラスでCCレモンを飲みながら外の景色を楽しむ。さすがにホテルに勝手にガラスの容器を持ち込んで割ったりしたらいけないので、パーティー用品のコーナーを眺めまわしてたらあったから買ってきた。これくらいならいいだろう。飲み物は何でも薄い飲み口の入れ物で飲むとおいしい。アイダホのお気に入りの開拓時代を模したレストランで、どうしてそんなデザインなのかわからないが、まるで土器かと思うような分厚いマグカップで出してくるコーヒーが、どうしてもおいしく感じられなかった。不思議なものだ。

 部屋のTVでNHKはやっていたが、若君と足軽の話はやっていなかったように思う。朝食はバイキング形式で、和食と洋食が何だかんだとついてきた。マスクと手袋をして取り分ける。他に10人以上客がいたが大きなホテルである以上、普段はもっといるのだろう。コーヒーが、ファミレスによくある機械で無理に圧縮して濾した粉だらけのまずいのではなく、フィルターで淹れた感じだった。牛乳もあったのでおいしくいただく。卵に完全に火が通っていたのが良かった。半熟の卵とじのようなイギリス風スクランブルエッグは、どうも食が進まない。

 コーンフレーク・マシーンがあったので寄っていく。(きの)「ガラガラ・・・?」おかしい。出ない。出口にフタがはまったままだ。さっそく研修生を呼んで外してもらった。今まで他の人もダイヤルを回した分が、一度に全部出てきた。さぁそれをどうするか研修生よ。(研修生)「サッ」と出してきた新しい受け皿と替えて出てきた山盛りを奥に片付けに行こうとするので(きの)「あっいいよ。これ全部いただきますわー。わははは。むしゃむしゃ」おいしい。ホテルの接客としては正解だが、もったいないではないか。

 

 朝の東寺散歩。真下から見ると、上層階の屋根の下枠の方が広いような気がするのだが。遠近法かな。まさかそんなコマみたいな状態で立ってるわけがない。骨董市もない雨の東寺は静かで、広い敷地を歩いていたら蚊に刺された。蚊もせっかく来た獲物を逃すものかと必死だったのだろう。常識的な時間になったので隣家に電話。(きの)「花はどうなった!」(隣)「その日の夜に電話があり受け取った。今どこにいるの?」(きの)「えっ東寺?」(隣)「??」なぜ早朝から真言宗の寺院にいるのか。謎の人物だ。

 チェックアウトし、建物を出て歩いていると追いかけてきて(ホテル)「ゼェゼェ500円クーポン。また来てね」このホテル儲けはあるのでしょうか。4,500-(500クーポン+200コーヒー&菓子+朝食約700+アメニティー500=1,900)では、実質2,600円ぐらいしか払っていないのでは。

 

 

コメント

清水寺~テラキヨ茶わん坂の怪~(4of14)

2020-09-04 10:06:00 | 怒涛の京都ホテルめぐり

6/5/2020 #318 4,700円

 清水寺に至る坂道の突端にある新しい宿。ホームページも、なんだか外国人向けといった雰囲気がした。嵐山のあたりまでは快適だったが、数日で急に蒸し暑くなり、遠回りしていくバスに乗った為、換気の窓から入ってくる熱気でクーラーが効いてない。感染予防と熱中症対策とどっちが急務だろう。早めに着いてドアに(張り紙)「予約した人しか泊まれません。玄関も開いてません。」なんか厳しい。書いてある番号に電話したら、出てきて入れてくれた。

 よそんちのお母さんのような風情の受付の人が、一人でやってるらしい。ウェルカムドリンクを飲み一息つく。入浴剤などを勧められたので「椿のなんたら」と書いたやつをもらった。ロビーに座って窓から外を眺めていると、ちらほらと清水寺の方に人が歩いていく。

 チェックインは宿帳記入のみ。渡航歴はありません。早めに部屋に入れてくれたので早速探検に。カップルらしき滞在客とすれちがった。エレベーターはカードをかざさないと開かない。有名観光地だと、次々に通りがかりの人が入ってきて大変なんだろうな。名前にもなってる屋上のテラスが開放感があって良い。ソファーもある。以前に住もうと思って狙っていたシャトー清水という古いマンションが、隣に立っているのを感慨深く眺める。

 テラスの端にランドリーがある。見に行ってみよう~っと。おっと荷物を忘れずに。この行為が後で功を奏する。洗濯機の向こうには下りの階段がある。もしかして部屋までここから降りて行けばいいのでは?降りてみると部屋の階の扉は閉まってる。引き返しても洗濯室へ続くドアが開かない。また戻って一番下のドアも開かない。今日は曇り空で蒸し暑い。他に客はいない。このままずっと出れなかったら!?恐ろしくなりスマホの履歴をたどって電話をして(きの)「先ほどチェックインした者です。度々すみませんが、洗濯機のとこから降りられると思ったらドアが開かない。助けてぇぇ」今忙しいんだからといった風情で、苦笑いで開けてもらってすごすごと部屋へ。お母さんありがとう。

 とにかく嫌な汗で汗だくになってしまい、部屋の風呂に入り落ち着く。家に伝わる昔話の中に「東山椿木」というおばけが出てくるので、椿の入浴剤はちょうどいい。粉を入れると(湯)「真っ赤!」なぜ!?一瞬びっくりしたが、これは椿の花の色らしい。ボルシチになった気分で赤いお湯につかる。もうちょっとマシそうな若竹のなんちゃらの方を選んでおけば、無難だったかもしれない。ドキドキ。

 広い部屋だが眺望が悪い。隣のシャトー清水の部屋が丸見えで、別に住人の私生活を覗きに来たわけではないのでカーテンを閉めて過ごす。デスクの上に直筆のメモ。これをすると部屋を汚すことに抵抗が生まれるからなのか、なんて下世話な計算はしないようにして素直にありがたくいただいておく。用事を済ませ夜になってなじみのコンビニへ。(張り紙)「今トイレは貸していません」きびしい。晩飯に冷やしうどんを買って帰る。こんな湿気でなければ屋上テラスでシャトー清水を見ながら食べてやるのに。くそっ。

 部屋に帰ってもTVは変なBSしかやってない。NHKもやってない。これが今流行りのNHKが映らないTVなのか?小さい頃、東京から地方に帰省するとテレビ番組が違うので、それに少し怯えていた記憶がある。同じ日本語で、四角い箱の見た目も同じなのに、少しだけ違う内容をやっている。チャンネルも違うし違うチャンネル同士で同じ番組を放送している。東京でそんなことになったら、テレビが壊れたと思う。なんとなくパラレルワールドに来たみたいで怖かった。

 外国人が多いからかBBCのようなものばかりだ。民放もやってない。ローカルテレビには誰も見知った芸能人もいない。知らない国の知らないテレビみたいだ。その中で唯一芸人のヒロシに見覚えがあったので、外国の食堂を食べ歩きしている番組を見た。BSだからか民放のバラエティーみたいに何かハプニングを起こそうという気もなく、本人は言葉も通じないのに、あまり苦にせず入って行こうという姿勢はえらい。ワインで有名な駅で降りておいて堂々と(ヒロシ)「酒が好きではない」やレストランで「おいしいけど、何の肉ですか?」というコメントは、もはや暴言ではないのかと思うが、自然体でこのキャスティングよく発掘したなと思った。

 見ていると画面に(表示)「お休み3分前です。」テレビの音声が消えた。何だろうと思っていると10時ちょうどに(TV)「ブツッ」画面が消えた。場所がら外国人旅行客が多く近隣への配慮もあってホテル側がそういうプログラムにしたのかもしれないが、こんな窮屈な刑務所みたいな施設はいやだ。

 

 だいたい、洋室の部屋の入り口で靴を脱げ?みたいな造りは珍しい。その代わりスリッパあげるよと書いてあった。折りたたみのようなスリッパは便利かもしれない。前に出かけた途中で突然ゾウリのヒモが切れ、不吉な予感というか、もうその時点で歩けないのでそれが最大の不幸という大変な目に遭ったことがある。何しろ大阪の金融街のようなところで、裸足で代わりの靴を買いに行く店もない(なぜ金融街にゾウリで行った!)。

 呆然としていると、ビルのテナントに東レのショールームが入っていて、なぜか新開発の素材で作った靴をサンプルで売っていた。右足を極力自然に地面に着けながら近づいて行き、いいですねぇと言いながら買って裸足で履いて帰った。その靴はその後何年も経ったが今でも壊れていない。確かにすばらしい素材だ。東レよ、ありがとう。

 そのようなことになった時に、カバンからスッとそのスリッパを出してきて履けば、そんなに焦らずに帰れるのではないか。というか壊れそうな靴を履いて出かけるからではないのか。とにかく、旅先で困ったことがあっても、忍者の七つ道具のように鞄からいろいろ出してきて危機を乗り切ればいいのではないか。ということで旅行鞄の底に凸レンズや各種ドライバー、ヒモ、ハサミなどを忍ばせているが、そこにこのスリッパも加えてみよう。いいことを思いついた時はいつも晴れ晴れとした気分がする。

 思いついただけでそれをベッドの上に放り出してすっかり忘れ、寝たら夜中にカサカサ音がして恐怖で目が覚めた。何かいる!断続的ではないこの数十分に1回ほどランダムで動く有機的な音は虫だ!人が寝静まると動き出すところなど、いかにも虫らしい狡猾さだ。もし呼んだらあのフロントのお母さんは一緒に朝まで起きててくれるだろうか。寝てるのをずっとそばで見守ってほしい(迷惑だ)。そうこうしている間も、清水寺の裏の鳥辺山の墓地から湧き出してきた由緒ある個体群がうようよ迫ってくる。う゛~~ん。

 しばらく苦しみ、起きてゴミ箱やその他のビニールを抜き打ちでチェックしてみたがいない。しかし寝るとカサカサ言う。寝ぼけた頭で考えた結果、あのスリッパの包装ではないのかという結論に達して布団の端にからまっていた袋を見つけ出して部屋の隅に放り投げて寝たら静かになった。全部自分のせいだった。

 

 早朝に目が覚め、ロビーに降りて行ったがあのお母さんはいなかった。シフトが終わったのか。コーヒーをもらってあたりを見回すと、代わりにお爺さんのような人が掃き掃除をしていたので聞いてみた(きの)「あの、有名な・・・その、ベランダのような部分はどこにあるのでしょうか」(爺)「え?ベランダ?八坂神社の方?」清水の舞台のことを言いたかったのだが、説明がうまくなかった。

 清水寺は中学の修学旅行で来た。そして滝が3本流れているところで、級友たちが願いをかなえようと選びに選んで並んでいる浅ましい姿を見て、アホらしくなって一番空いてる列のあたりによけていたら、どんどん押されて出たところが「美人の水」。他の人から見たら自分で並んでここまで来ておいて(きの)「いらん」と言うのも変な話だろうから、しょうがないと思って厳かにヒシャクを頂戴したが、嫌味な女の担任に遠くから発見され(藤野)「あなたには必要ないんじゃな~い?クスクス」などと大声で笑われ、学年中が注目する中飲むという難行を果たした。

 しかも、2種類飲んだら効果は相殺されるらしく、もう他のは飲めない。いや、いっそのこと全部飲んでクリアーにして、その呪縛から解き放たれたらどうか。あとは何だっけ、金と頭脳だっけ。超能力とか霊力が授かる水とかないのか。

 6時半になり、飲料水を携えて茶わん坂を駆け上がり、清水寺に行ってみた。門は開いていたがロープが張られていたりして、早すぎたのかいまいちやってなかった。恨みがましく眼下に広がる墓地をながめる。飴を買う幽霊が埋葬されたのがこの鳥辺山だ。坂の手前にある飴屋から買って、ここまで歩いて来たんだな。今同じ地面に立ってるぞ!やったー!ついに来た!そして次は、近所の小野の篁が地獄と行き来したといふ冥界の井戸を訪れ、あとはその飴の店(未だに飴を売ってる)に寄ってから帰る。忙しい。

コメント