物理と数学:老人のつぶやき

物理とか数学とかに関した、気ままな話題とか日常の生活で思ったことや感じたこと、自分がおもしろく思ったことを綴る。

pun(駄じゃれ)

2011-01-21 13:36:26 | 日記・エッセイ・コラム

いつものことだが、今朝眼が覚めるか覚めないかののときになんだかpun(駄じゃれ)という語が頭に浮かんだ。このpunにはいろいろあるのだろうが、私の覚えているのは科学に関係したことである。

湯川中間子論が提唱されてまもなくの頃にアメリカで流行ったpunはHeadache Yukawaであったとガモフの通俗科学啓蒙書で読んだ。

これは注釈が必要ではないだろうが、Hideki Yukawaという湯川博士の名前にひっかけたpunである。もちろん、湯川の中間子論の論文が難解でそれを読むと頭が痛くなるという駄じゃれである。

また、これは日本人にしかわからない駄じゃれだが、Weylという数学者がいたが、彼の書いた本は難しいので、「ワイルには参る(まいる)」と言われたとか。こちらの駄じゃれは広島大学理論物理学研究所の教授だった、竹野兵一郎先生から聞いた。

竹野先生は相対論の数学を専門とする数学者であったから、ワイルの「空間、時間、物質」なども読みこなした方だとは思うが、そういう話は一般に流布していたらしい。

この話は今回がはじめてではなく、前にも書いたことがあるかもしれない。というのは人間は自分の書いたことでもすべて覚えていることは難しいからである。

ところで、こういうpunを思いついたのにはきっかけがある。

昨夜のドイツ語のクラスで医師の I さんがある駄じゃれのドイツ語の記憶法を話されたからである。これは I さんが旧制の高校生のときに授業で聞いた話だと思う。

ドイツ語のSeeには海という意味と湖という意味がある。ところが、このSeeの性が湖か海かで異なるのである。それで、どちらがどちらかわからなくなる。

高校のドイツ語の先生は「男はこすい(湖水)」と覚えればよいといったらしい。すなわち、男性のder Seeは湖であり、女性のdie Seeは海であるというわけである。また、海にはMeerという語もあるが、このMeerはdas Meer と中性である。

「男はこすい(ずるいの意)」は一般にいうとそうかどうかは異論のあるところであろうが、その男性の性質としての「こすい」という語を「湖水」とを結びつけた感覚はすばらしい。が、これはまったくの駄じゃれである。

私も一瞬 I さんが何を言われようとしたのかわからなかったが、考えてみるとどうもこういうことだった。

Immenseeというテォードル・ストルムの小説があるが、このImmenseeはみずうみであるから、der Immenseeであり、die Immenseeではあり得ないという I さんのおまけの解説までついていた。そして日本ではこの小説の題名の訳は「みずうみ」である。

小説を読まないと日ごろから称している私でもこの小説をラジオのドイツ語講座で一度ならず読んだことがある。これはもちろん、入門講座ではなく、応用編の講座で聞いたのである。

ドイツの北海沿岸に近いフーズムという町がストルムの生まれた町であり、E大学のドイツ文学者のMさんは何十年か前に始めてドイツに出かけたときにフーズムを訪れたはずである。

私自身はフーズムに行ったことはない。


2 コメント

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駄じゃれに関連して,朝永先生の秀逸な逸話があり... (中西 襄)
2011-01-22 15:31:41
駄じゃれに関連して,朝永先生の秀逸な逸話があります.亀淵さんからうかがったので,多分実話と思います.ご存知のように,朝永先生は若い頃ドイツに留学されました.早速アパート探しをされたのですが,ドイツの家は窓が小さくて暗いですよね.案内された部屋に入った朝永先生,思わず「暗いなあ」と言ったら,もっと小さい部屋に案内されたとか.ドイツ語の駄じゃれです.
中西先生 (あおやま)
2011-01-22 17:20:08
中西先生

そうですね。そういうのもありましたね。ちょうどうまく思い出せなかったです。

「暗いな」はkleinerでしたね。klein(小さい)の比較級ですね。

いい例を指摘頂き、有難うございます。

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