漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「古コ」<祝詞の器を盾で守る> と「枯コ」「故コ」「苦ク」

2021年10月07日 | 漢字の音符
  コ・コ・コを追加しました。
 コ・ふるい・ふるす・いにしえ  口部

解字 甲骨文は、「盾たての形+口(祝詞をいれた器)」の会意。神への祈りである祭礼の祝詞を入れた器を盾で大事に守るかたち。この結果、祝詞はその内容がずっと保たれるので、「昔から」の意となる。一方、内容は昔のままなので、古い意となる[字統]。篆文から盾の形が十になり現在の古になった。
意味 (1)ふるい(古い)。むかし。いにしえ(古)。「古代コダイ」「古人コジン」「懐古カイコ」 (2)ふるい(古い)。ふるびた。「古参コサン」「古豪コゴウ」「古色コショク

イメージ 
 「ふるい」
(古・枯・姑・詁)
  原義の「祝詞の器を盾で守る」(故・做)
 「形声字」(沽・估・辜・苦・鈷・罟・蛄・鴣)
音の変化  コ:古・枯・姑・詁・故・沽・估・辜・鈷・罟・蛄・鴣  ク:苦  サ:做

ふるい
 コ・かれる・からす  木部  
解字 「木(き)+古(ふるい)」の会意形声。年を経て古くなって衰えてきた木。最後にひからびて枯れる。
意味 (1)かれる(枯れる)。ひからびる。水がかわく。「枯渇コカツ」「枯山水カレサンスイ」(水を用いず石や砂で山や川を表現した庭園) (2)おとろえる。「栄枯盛衰エイコセイスイ
 コ・しゅうとめ  女部
解字 「女(おんな)+古(ふるい)」の会意形声。ふるい(歳の経た)女。
意味 (1)しゅうとめ(姑)。しゅうと(姑)。夫の母。また、妻の母。「舅姑キュウコ」(しゅうとと、しゅうとめ)「小姑こじゅうと」(夫または妻の姉妹) (2)(仮借カシャ・当て字の用法)しばらく(姑く)。とりあえず。「姑息コソク」(①しばらくの休息。②転じて、一時の間に合わせ、その場のがれ)
 コ・よみ  言部
解字 「言(言葉)+古(ふるい)」の会意形声。古い言葉や文字をいい、その言葉を読み解くこと。
意味 よみ(詁み)。ときあかし。古い言葉を読み解くこと。古い言葉の意味やよみ方・解釈。「訓詁クンコ」(古言の字句の解釈)

祝詞の器を盾で守る
 コ・ゆえ  攵部

解字 金文第一字は、古。第二字および篆文は、「攴ボク(=攵。手に棒をもってたたく)+古(祝詞の器を盾でまもる)」の会意形声。盾で守っている器を攴ボクでたたくこと。攴ボクで、たたいて仕掛けるので、「故意に・わざと」となり、仕掛ける理由である「なぜ」となり、しかけた結果、盾と攴で争いが始まるので、「事故・わるいできごと」の意となる。現代字は攴⇒攵になった。
意味 (1)(古い・昔の意を強めて言う)昔から。もとから。「故事コジ」「故実コジツ」 (2)わざと。「故意コイ」 (3)わけ。ゆえ(故)。「何故なぜ」 (4)さしさわる。悪いできごと。「故障コショウ」「事故ジコ」 (5)しぬ。「故人コジン」「物故ブッコ
 サ  イ部
解字 「イ(ひと)+故(サ)」の形声。サは乍(つくる)に通じ、これにイ(ひと)がついた做は作る意。中国で近世になって作の俗語としてできた字。なぜ発音がサに変化したかは不明。現代中国では作る意で広く使われている。日本ではあまり使われないが、なす意から「見做す」などと書かれる。
意味 (1)なす(做す)。作る。やる。する。 (2)なる(做る)。成る。 (3)なす意から、「見做す」「看做す」と書かれる。

形声字
 コ  イ部
解字 「イ(ひと)+古(コ)」の形声。コは賈(売り買いする)に通じる。売り買いする商人。
意味 (1)うる。あきない。あきんど。「估価コカ」(ねだん。売買の価格) (2)ねうち。あたい。「估券コケン」(沽券とも書く。①人の値打ち。体面。②土地や家の売り渡しの証券。)
 コ  氵部
解字 「氵(水)+古(コ)」の形声。コは賈(売り買いする)に通じる。水上交通での売り買いをいう。
意味 (1)うる。かう。売り買いする。「沽酒コシュ」(酒の売買。また、その酒) (2)あたい。ねうち。「沽券コケン」(估券とも書く。①土地や家の売り渡しの証券。②人の値打ち。体面)
 コ  辛部
解字 「辛(刀)+古(コ)」の形声。コは固(固定する)に通じる。辛は針の意であるが、宰サイ(廟で刀を持ち犠牲獣の肉を切る人=主宰する)のように刀の意味にもなる。辜は人を固定し刀で切り裂く刑で、重い罪をいう。
意味 つみ(辜)。重い罪。はりつけや八つ裂きにされる重罪。「無辜ムコ」(罪のない)
 ク・くるしい・くるしむ・くるしめる・にがい・にがる  艸部
解字 「艸(くさ)+古(ク)」の会意形声。クという名の草。食べるとにがいので、苦い意となる。また、苦いものを食べて苦しくなること。
意味 (1)にがな(苦菜)。キク科の多年草。食べられるが苦味がある。 (2)にがい(苦い)。「苦汁クジュウ」 (3)にがにがしい。「苦言クゲン」「苦笑クショウ」 (4)くるしい(苦しい)。くるしむ。ほねおる。「苦境クキョウ」「苦労クロウ」「苦心クシン
 コ  金部
解字 「金(金属)+古(コ)」の形声。コという名の金属製のインド仏具の名。
意味 インドの護身用の仏具の名。基本的な形は棒状で、中央に柄があり、その上下に槍状の刃が付いている。「独鈷トッコ・ドッコ」(独鈷杵ドッコショの略。両端の突き出た刃が分岐していない法具)「三鈷サンコ」(両端の刃がフォークのように三本に分かれたもの)
 コ・ク・あみ  罒部   
解字 「罒(=网あみ)+古(コ)」の形声。コは固コ(周囲を囲みかためる)に通じ、周囲を囲んで魚をとる網をいう。 
意味 (1)あみ(罟)。うおあみ。「罟師コシ」(網で魚をとる漁師)「数罟ソウコ・サクコ」(目の細かな網)「罟網コモウ」(あみ)「罟目コモク」(網の目) (2)法のあみ。おきて。「罪罟ザイコ」(法のおきてにより罪(つみ)となる)
 コ・ク  虫部
解字 「虫(むし)+古(コ)」の形声。コという名の昆虫や甲殻類に用いられる。
シャコ(蝦蛄)
ブログ「ふぃっしんぐっど!」より
意味 (1)「蝦蛄シャコ」に用いられる字。「蝦蛄シャコ」とは、シャコ目の甲殻類の総称。「青竜蝦シャコ」とも書く。体長は12~15cm前後。多くは、内湾や内海の泥底や砂泥底に生息し、海底の砂や泥にU字形の巣穴を掘って生活する。(2)「螻蛄ロウコ」に用いられる字。螻蛄ロウコとは昆虫の一種で、「けら・おけら」をいう。バッタ目ケラ科のコオロギに似た昆虫。前肢は大きく、土を掘るのに適している。(3)「蟪蛄ケイコ」に用いられる字。「蟪蛄ケイコ」とは、夏蝉なつぜみをいう。短命のたとえ。「蟪蛄は春秋を知らず」
 コ・ク  鳥部
 コモンシャコ(ウィキペディア)
解字 「鳥(とり)+古(コ)」の形声。コという名の鳥。「鷓鴣シャコ」に用いられる字。
意味 「鷓鴣シャコ」とは、キジ科の鳥のうち、ウズラとキジの中間の体形をもつ一群。中国ではこの中の一種コモンシャコをいう。「鷓鴣斑シャコハン」(陶釉の一つ。釉(うわぐすり)中に鷓鴣の羽毛の斑紋に似た模様が表れているもの)
<紫色は常用漢字>

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