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【京都幕間旅情】醍醐寺観桜,現代花見発祥は天下統一の先に日本を一つとした勲功の最後の栄華を飾った祭事

2024-04-18 07:00:05 | 写真
■空海所縁の寺院はいま
 今年の桜も四月半ばとなりますと八重桜が咲き誇るのみでありいよいよこのほかの桜花は青葉へと季節を進めているところですが。

 醍醐寺、歴史を見ますと空海所縁の寺院、とは言うもののその長い歴史の中には多くの紆余曲折がありました。例えば応仁の乱では五重塔が残り現存する、という事なのですがいいかえれば五重塔以外は全て破壊されたということもまた厳しいですが事実です。

 文明元年の農民蜂起、1469年には飢饉から醍醐寺の寺領でありました御境内の農民が年貢の半減を求める半済要求の暴動を行った際には僧兵が徹底した弾圧と首謀者呪殺を願う護摩祈祷を行うなど、次第に民衆の寺院とはなり得ず人心の離反を生んでゆきました。

 歴史、しかし寺院は、といいますか寺院以外の建物でも長い歴史を超えるには役割というものを与えられ、これを全うすることで新しい価値を見出さなければ生き永らえることは出来ず、これは平安朝の頃の壮大美麗な宮殿も中世の豪華な武家屋敷も消失した通り。

 観桜、不思議なものなのかもしれませんが醍醐寺が今日に永らえるのは、観桜という制度ではないにしても文化的な一つの出来事と共に新しい役割を担う事ができたからです、それは五重塔を残し荒廃していた室町時代もその末期、安土桃山時代のことでした。

 慶長3年3月15日、西暦では1598年4月20日となりますか。観桜といえば騒がしいものなのですが、宮中行事の延長での観梅のような季節行事としての花見ではなく、今日的な酒宴とともに大規模に行う花見の歴史上初めての事例が醍醐寺で執り行われた。

 醍醐の花見、天下人となりました豊臣秀吉は豊臣秀頼と北政所、そして淀殿を招くとともに諸大名から女房女中など実に1300名を集めまして準備を行い、徳川家康や伊達政宗など5000名を招待し、いや庶民さえ自由に参加を許しての一大花見を行いました。

 豊臣秀吉は応仁の乱により荒廃した醍醐寺の再建に助力していまして、この関係から醍醐寺第八〇代座主の義演は、秀吉の帰依を受けるとともに良好な関係を続ける中、その体力の衰えというものを見抜くようになり、天下人に相応しい観桜会を開いた、と。

 豊太閤花見行列、という祭事としまして醍醐寺では四月第二日曜日に歴史行列の祭事を執り行うのですが、これはその時の秀吉を再現したものといいまして、いよいよ末期も近い人生に花を添えるという醍醐寺の計らいとともに、実際その五か月後に最後を。

 花見が役割、というわけではないもののしかし、今風、というべきなのだろうか、騒がしいわいわいがやがやの擬音が混じる観桜の始発店は此処に見出すことも出来るものでして、いわば一人未だない天下統一の先に日本を一つとした勲功の最後の栄華の場で。

 花見、もちろん今は日本中津々浦々、観桜の名所は数多あるのですが始まりの地といいますか、今風の花見というものの始まりがここと考えるならば、醍醐寺の桜を眺めるのは文化的な意味で個々の観桜が壮大さを感じる所以、といえるのかもしれませんね。

 混雑は、一見して明白の通りそれほどではない、もちろん物凄い混雑していたという別の日に拝観された方のお話もありましたので全部が全部ここまで安穏としていたわけではないのですが、賑やかな観桜の原点の場所をこのように静かに見上げられた、という。

 しかし、観光過多が叫ばれる京都に在って、確かに端の方ではあるのだけれどもこのような桜花の季節に在って、それがそれほどでもない観光客という醍醐寺の情景、多くの京都観光の方々はいったいどこで時間を過ごしているのか、不思議にはなりましたね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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