北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都発幕間旅情】彦根城,北京陥落中国最後の日!金南下は朝鮮降伏と明朝の滅亡-日本に迫る危機は長崎へ急報

2022-08-31 20:20:17 | 旅行記
■開戦必至,そのとき大老は
 北京陥落中国最後の日、こう記しますと2020年代の出来事かと錯覚しますが江戸時代に日本にも非情な緊張が走った時代があったのです。

 大坂の陣。日本の中世は豊臣氏滅亡を迎え徳川幕府の時代となり、時代は近世を迎えます。豊臣氏滅亡は悲劇的な最期であった事は確かで、大坂城落城は遠く京都からも紅蓮の焔が望見できたという。しかしそれが全ての安定期、平和に繋がった訳ではありません。

 朱舜水。明の儒学者だ。日本から日本海や東シナ海を経て対岸の大陸中国では、長らく国を統治した明国が北方から侵攻した清朝により、まさに亡国の危機に曝されていました。そして日明貿易以来の長い二国間関係と共に明国は日本へ救援を求めるようになります。

 満州は女真族のヌルハチが強大な騎馬戦力とともに満州地域の遊牧民を統一し、1616年に新国家金を建国します。実に大坂冬の陣の四年後に当る、その金は1636年に国名を清と改めたのですが、北方民族の南下は当時江戸幕府も関心を寄せていた。その危惧はあたる。

 徳川家光治世の時代、日本には遥か昔の歴史ながら元寇、外敵の侵攻という厳しい認識が残り、また室町時代にも応永の外寇、李氏朝鮮の世宗大王が対馬に侵攻する一幕もありました。宗貞盛率いる対馬は700名の小兵力ながら30000の朝鮮軍を撃退には成功したが。

 宗貞盛つよい、と対馬の奮戦を評価したいところですが、応永の外寇は元寇の再来ということで室町幕府はかなり慌てたという。なにしろ情報がインターネットは勿論電話も電報もFAXも無い時代ですので、情報が来た時には戦闘の景況などわかるわけがありません。

 朝鮮半島侵攻、1627年に金のアバハイが満州から朝鮮半島に侵攻を開始しソウルを攻略します。豊臣秀吉の文禄慶長の役として朝鮮侵攻を行って以来、独自の情報網を半島に伸ばした日本は、北方からの侵攻経路がかつての元寇に至るモンゴル帝国と共通点を見い出す。

 仁祖、当時の朝鮮国王は金に降伏します。ソウルへ軍事視察団派遣、徳川家光は寛永5年こと西暦1628年に対馬藩主宗義成に金占領下のソウルへ使節団派遣を命じ、また朝鮮に対して幕府が火砲など軍事物資提供の用意がある事を伝えるよう付け加えた、という歴史が。

 宗義成からの使者、しかし仁祖は既に金に対し全面降伏した後であり属国ではないにしても善隣条約に近い力関係となっており、ここで再度反撃を行えば今度こそ武力併合される懸念があります。そして後の清朝作成の地図に李氏朝鮮は大清属国と記される事になる。

 大政参与。時は少し戻りまして寛永9年こと西暦1632年、将軍徳川秀忠は今際の際に二人の側近を呼びます、その一人は近習として将軍宣下前から仕えた井伊直孝でした、秀忠は井伊直孝に大政参与を命じ、継ぐであろう徳川家光、三代将軍の後見役を命じたのです。

 大老という役職は、この大政参与がはじまりというところであり、そして井伊直孝は大坂の陣での勲功を以て当時の家康から彦根藩主を命じられています、実兄は戦国気勢の家来衆を纏められず、転封されていた。譜代大名としては最大となる30万石に加増されます。

 徳川家光は真剣に大陸出兵を考える事となりました。いや、実は元和7年の西暦1621年に日本は武器輸出禁止を決定し周辺情勢への中立路線を画定しています、それは戦国時代に大量生産した国産火縄銃などが江戸時代に入り相当余っており、大筒なども余剰があった。

 細川忠利や大村純信に松浦隆信、大村や松浦という長崎の地名の元となった九州大名が大陸へ武器輸出を行ており、禁止しました。しかし、明朝が危機的状況、また清朝への敵対意識もあり、徳川家光としても決めかねた実情がある。その時の大老職に直孝は居ました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】彦根城,徳川家光中国大陸侵攻計画-日清戦争が三百年近く前に勃発しかねなかった危機

2022-08-31 20:00:24 | 旅行記
■いまなぜ彦根城かというと
 政治は責任というが責任ある政治を決断するには的確な情報とその精査の上での補佐を行う側近が必要です。

 いまなぜ彦根城かというと。彦根、滋賀県彦根市、そして東海道と北陸道の結ばれた陸上交通の要衝であり、そして琵琶湖の水運が中世から近世まで水上交通の要衝としても要諦を担った街なのですが、日本近世史をみますと彦根は傑出した人材を輩出していました。

 彦根の偉人、一人一人列記していますと辞書が出来てしまいそうなのですが、井伊直孝という一人の人物を通じて現代日本を少し考えてみたいと思うのです。なにしろ彦根城は広いですからね、物思いと共に散策するには最適だ、そして上った先の情景は一際に美しい。

 井伊直孝。今の時代にこの一人の歴史に学ぶべきところは、職責、つまり為すべき事が自分の保身の先に在ってはならないし、そして職責に文字通り懸命という、そんな人材の諫言というものを指導者、いまの価値観では上司上官か、軽んじてはならないという事です。

 中国大陸侵攻作戦。日本が江戸時代に大量の地上部隊を中国大陸に派遣しようとしていた事は、日本史を高校の受験日本史に留めてしまうと気付かずに終わってしまうのですが、こうなった的な結論だけの歴史事実の羅列を超えた段階まで調べを進めますと知るという。

 日清戦争が三百年近く前に勃発しかねなかった危機的状況ともいえるのですが、当時日本の為政者は徳川家光、生まれながらの将軍と呼ばれる三代将軍に命がけ、文字通りであるとともに場合によっては転封さえ覚悟の上で諫言し留まらせた人物がいます、井伊直孝だ。

 彦根藩2代藩主井伊直孝、彦根駅前に銅像が建つ井伊直政の次男として天正18年2月11日、西暦1590年3月16日に生まれました。井伊直政は関ヶ原の戦いで島津軍からの銃撃により重傷を負い、家康はその猛将としての地位と養生を兼ね、彦根を領地として与えた。

 井伊直政はこうした歴史から彦根藩初代藩主として、当地を統治しますが銃傷はその寿命を大きく縮め、井伊直孝は齢12にして実父を失います。しかし、井伊直孝は12にして徳川秀忠の近習を命じられます。慶長10年こと西暦1605年、秀忠は二代将軍宣下を行う。

 従五位下掃部助に叙位された井伊直孝、上野刈宿5000石の領主となり、続いて慶長15年こと1608年には上野白井藩1万石の大名に任じられます、そしてその三年後には伏見城番役となります。実兄は井伊直勝、彦根含む佐和山藩2代藩主を井伊直政から継いでいます。

 上野白井藩と順調に出世しています井伊直孝ですが、若いころには失敗も在った、それもかなり致命的な失敗で大坂冬の陣という戦場での失敗です、慶長19年こと西暦1614年の大坂冬の陣、北ノ庄藩藩主松平忠直とともに井伊直孝は会心の突撃を敵陣に加えましたが。

 真田丸の戦い。井伊直孝と松平忠直は井伊の赤備えという深紅の甲冑が威勢を盛り上げますが、同じ赤備え、武田信玄から赤備えを継承した真田信繁の偽退誘敵、つまり挑発してキルゾーンに誘い込む戦法を受け、突撃し実に500名も戦死者を出す大失態を犯します。

 真田信繁の偽退誘敵、相手があの真田だから仕方ないよね、なんていう事は一切なく、井伊直孝の攻撃を責める声が幕府内に憤然と沸上がりますが、この失態から井伊直孝を庇ったのは、誰であろうあの徳川家康その人でした。全軍に先行し攻撃精神示し士気を奮った。

 徳川家康に救われた井伊直孝は続く大坂夏の陣にて八尾若江の戦いに先鋒を命じられ、強敵長宗我部盛親を相手に藤堂高虎と共に突撃を敢行、戦勝し汚名返上を果たします。ただ、この戦いで一時は捨てたと考えた命を長らえ、遥か後の歴史的事件に立ち向かう事となる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ボストーク2022演習-ロシア極東と北方領土及び日本周辺海域で明日から開始,ウクライナ侵攻下-参加兵力激減

2022-08-31 07:01:14 | 国際・政治
■臨時情報-ロシア極東情勢
 ロシア軍は演習と称し兵力を集中させたうえで半年前にウクライナへ侵攻しましたが、そのロシア軍はウクライナ侵攻後初となる次の大演習を開始します、その演習は日本周辺にて行われる。

 ボストーク2022演習、ロシア軍が極東地域において四年に一度実施している大規模演習が明日9月1日から開始されます。このボストーク2022は異例ともいえるウクライナ侵攻の最中での実施となりました。この為に異例な状況は演習にも様々な影響を及ぼしていますが、演習の名のもとに侵攻準備を行った事例は過去に数多あり、自衛隊も警戒しています。

 六分の一の規模に。ボストーク2022演習ではロシア軍を中心に13か国から5万名の兵力と航空機140機、艦艇60隻等が参加するとのことです。一見かなりの規模に思われますが、毎年行われている自衛隊統合演習よりも小規模となりました。そして実際、2018年に行われたボストーク2018では30万名の大兵力が参加しており、実に六分の一へ縮小しました。

 30万名から5万名へ規模が縮小した事は驚きですが、今回は中国軍やインド軍にベラルーシ軍など13か国の合計規模ですので、ロシア軍単独での参加規模は更に少ない。3月にロプチャー級戦車揚陸艦が北方領土駐留兵力を本土へ運ぶ様子が自衛隊に確認されましたが、演習縮小もウクライナ戦争へロシア軍の兵力抽出が深刻な規模となっている証左でしょう。

 13か国が参加している演習、ロシアは演習規模は縮小していますが参加国は13か国であり、しかもボストーク演習にはベラルーシが初参加し、アメリカと防衛協力強化を進めるインドが参加するなど、国際協力は強化しています。ただこれは、ウクライナ侵攻に際しても各国がロシア制裁を強める中、ロシアは孤立していないと誇示する目的もあると、いえる。

 インドの参加はアメリカに衝撃を与えました。ただ、インド政府は演習直前の30日になって、ボストーク演習の演習地として指定されている数カ所の内、日本とロシアの対立背景となっている北方領土での軍事演習には参加したいと日本政府へ通知した、これは30日に浜田防衛大臣が発表しています。演習はこうした政治的背景に左右されているようです。

 突然の延期。実はボストーク2022演習は8月30日から開始される予定でした、しかしロシア側が突如9月1日から開始と予定変更を発表しています。逆にこの日程では台風に直撃される懸念があるのですが、突然の変更の背景には、ウクライナでのロシア軍苦戦などが、ロシア軍の部隊移動にさえ影響を及ぼしているのかもしれません。演習は明日始まる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】ドイツのJFS-M共同火力支援ミサイルとブラジルアストロスⅡMk6輸出,韓国K-239天武ロケット

2022-08-30 20:01:08 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛最新論点
 今回はロケットシステムの最新話題を中心にお伝えしますが、冷戦時代におそれられたMLRSが新しい装備を備えて新たな悪夢へ敵に引きづり込むようです。

 ドイツ連邦軍ははMLRSに499kmの精密誘導弾を搭載するJFS-M共同火力支援ミサイル計画を発表しました。これは7月のベルリン航空ショーにおいて発表されたもので、これまでにMLRS用に開発されているロケット弾をGPS誘導するという精密誘導弾薬よりも、射程が改善されると共に多数を搭載可能で、加えて秘匿性が高いものとなっています。

 MLRSにミサイルを搭載する、この計画にはMBDAドイツ社とクラウスマッファイヴェクマン社及びESGエレクトロシステムズ社が担当しています。射程499kmの装備はMLRSから投射できる装備としてアメリカ陸軍がATACMS陸軍戦術ミサイルを射程延伸させ開発している陸軍プレジションミサイルがありますが、これはMLRSに2発しか積めません。

 JFS-M共同火力支援ミサイルはMLRSの場合は12発、HIMARS高機動ロケットシステムで6発を搭載可能、また発射後は上昇する事無く低空を巡航ミサイルのように飛翔する為にレーダー等で感知されるリスクを抑えています。この新型弾薬は既に開発されたMBDA社製RC100無人機の技術が応用されており、開発リスクの低さも特色といえるでしょう。
■JFS-M火力支援ミサイル
 ドイツの防衛計画はロシア軍のウクライナ侵攻を受け一挙に冷戦時代に戻ったような緊張感です。

 ドイツが発表したMLRSのJFS-M共同火力支援ミサイル計画についてですが、ミサイルは未だ概念段階のものとなています、ただ、開発にはMBDA社製RC100無人機の技術が応用され、これは全長1.8m、重量は120kgとなっているもの。ロケット弾は発射後上昇する為に即座に対砲レーダ装置に射撃位置が暴露しますがJFS-Mにその心配はありません。

 MLRSには12発が搭載可能で、特色の一つとして発射されたミサイル同士が連携し、特に空中衝突を避ける衝突防止機能を採用、飽和攻撃を可能としています。これは従来のATACMSには無い特色であり、データリンクにより発射後の目標変更が可能とされている。発射されるとその後に主翼を展開し低空を飛行、ロケット弾ではなく完全にミサイルです。

 冷戦時代に開発されたMLRSはM-26やM-30といったクラスター弾により面制圧を行い、戦車に対しても一定以上有効という撃たれる側には悪夢の装備でしたが、クラスター弾使用への国際的批判を受けGPS誘導型など新しい運用が模索されていました、しかしJFS-Mは長距離精密誘導弾の飽和攻撃という新しい悪夢を侵略者に突き付ける事となりましょう。
■アストロスⅡMk6
 ロケット弾はやはり射程なのだと再確認させられました。

 エジプト軍はブラジル製アストロスⅡMk6多連装ロケットシステムの導入交渉を進めています。アストロスⅡMk6多連装ロケットシステムはトラック搭載型のロケット砲ですが、1990年代に開発され、当時世界的に評価が高かったアメリカ製MLRSを意識し、無誘導型でも射程60kmと、MLRSのM-30/M-31開発前では世界最長の射程を謳っていました。

 アストロスⅡMk6多連装ロケットシステムとともにエジプト軍ではMk6から射撃可能となるAV-TM300マタドール地対地ミサイルを合せて導入を希望しており、これは射程が300kmに達します。なおエジプト軍仕様の車体にはメルセデスベンツ2028トラックが用いられています。エジプトではこれらのライセンス生産を希望しているとされています。

 アストロスはブラジルで1983年に開発されたもので、弾薬モジュール方式を採用、127mmで32連装型で射程30kmのSS-30、180mm口径で16連装型で射程45kmのSS-40,また300mm口径のものには4連装ですが射程60kmで弾頭威力を高めたSS-60と射程を重視した90km射程のSS-80などが開発、改良型から対地ミサイル発射が可能となりました。
■K-239天武ロケット砲
 HIMARSよりも高性能と主張する当たりはこの種の装備の基準点がHIMARSなのだと認識させられる。

 韓国国防省はK-239天武多連装ロケット砲の射程延伸を計画中です。K-239天武多連装ロケット砲は韓国版HIMARSを目指して2015年に開発されたもので、量産により取得費用はHIMARSの六割程度に抑えられ、また、射撃統制装置を新型としておりHIMARSよりも陣地進入から射撃までを10秒以上短縮、アラブ首長国連邦へ輸出実績もあります。

 K-239天武多連装ロケット砲は現在、その射程は85kmとなっていますが、韓国軍では北朝鮮の射程の大きな超大型ロケット弾射程延伸を深刻な脅威とみなし、ロケット弾に燃焼時間を延長させ射程を200kmまで延伸する事が可能かを検討中です。その手法としてロケット弾に吸気口を追加、ダクトロケット推進装置に切替える方法が検討されています。

 K-239天武多連装ロケット砲の利点は様々な弾薬を運用可能である点で、130mmロケット弾や230mmロケット弾と239mm型誘導ロケット弾が開発されています。韓国版HIMARSと呼ばれるK-239ですが、HIMARSはロケット弾6発コンテナを一基搭載するのに対して、K-239は6発コンテナ2基の12発を投射可能で、一両当たりの投射能力も高い装備です。

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IAEA国際原子力機関査察団ザポリージャ原発へ,ロシア軍の原発搬入重装備は"BM-21多連装ロケット砲"か?

2022-08-30 07:00:04 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍がウクライナの原子力施設を盾として重装備を搬入、周辺地域を攻撃しているという状況ですが持ち込まれた装備について報道から推測してみました。

 IAEA国際原子力機関の原発査察団がグロッシ事務局長を団長として出発しました、目的は原発の現状を把握し原発所員等に不当な圧力がかけられていないかを確認する為です。ザポリージャ原発、戦闘地域の占領下という原発施設へのIAEA査察、特にIAEAに無局長自らの査察は異例中の異例で過去に例は無い、しかし事故の懸念を受けての緊急措置です。

 ロシア軍が占領しているザポリージャ原発では、ロシア軍重装備が配備され周辺をウクライナ軍が反撃できない原子力施設からの攻撃拠点として利用していと考えられています。BBCによればこの根拠として、ドニエプル河畔にあるザポリージャ原発、対岸はウクライナ軍が維持しているのですが此処への攻撃を挙げた。しかし、配備されている重火器とは。

 ドニプロペトロウシク州ニコポリ、ウクライナが維持するウクライナ本土のドニエプル川西岸地域はロシア軍の継続的なロケット弾攻撃に曝されていて、これもBBC報道によるものですが一晩で120発のロケット弾が撃ち込まれるという、このロケット弾はザポリージャ原発のある南東部エネルホダルから飛来しているのが、ロシア軍陣地化の根拠という。

 タービン建屋内に複数のロシア軍車両、原発タービン建屋内の映像としてSNSに18日頃から投稿された画像には、CNNがザポリージャ原発タービン建屋内であるとのファクトチェックを行った映像としてロシア軍の輸送車両と判別不能の車両などが少なくとも5両と天幕の様なものが確認されています。ロシア軍陣地化の可能性をどうみるべきでしょうか。

 BM-21多連装ロケット、考えられるのはニコポリへのロケット弾攻撃の規模で、“多い時で一晩120発”というものです。この120発、ロシア軍がソ連時代の1960年代から標準的なロケット砲として使用しているBM-21,これはトラックに発射筒を搭載したものですが、122mmロケット弾を40連装している、仮にBM-21が一両あれば一晩で120発は可能だ。

 衛星写真では確認が難しいザポリージャ原発のロシア軍基地化についてですが、要塞化のような無限の電力を悪用した砲兵旅団という大それたものではなく、またそれほど深い事を計画する程度でも無く、実際にはロケット砲兵中隊規模の部隊が駐屯し、しかし反撃を受けない原子力施設のいわば核の盾の中で攻撃している、こうした状況が考えられるのです。

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【防衛情報】45型防空駆逐艦弾道ミサイル防衛艦改修と沿海域戦闘艦SuW強化武装モジュール,ブラウンシュヴァイク級コルベットRBS-15

2022-08-29 20:00:09 | インポート
■週報:世界の防衛最新論点
 今週は空母から強襲揚陸艦にフリゲイトからコルベットに潜水艦と哨戒艦や沿海域戦闘艦まで海軍関係の話題を。

 イギリス国防省は海軍の45型防空駆逐艦を弾道ミサイル防衛艦へ改修する計画を発表しました、現在ヨーロッパには弾道ミサイル防衛に対応する水上戦闘艦は存在しません、スペイン海軍のアルバロデバサン級とノルウェー海軍のフリチョフナンセン級というイージス艦は存在しますが、イージスミサイル防衛システムへの対応改修は行われていません。

 弾道ミサイル防衛能力付与はイギリス国防省のMAWS海上対空兵器システム開発室とMBDA社が共同し実施されるもので、ミサイル迎撃にはアスター30block1NTミサイルが用いられます、アスター30block1は地上発射型の防空システムとしてイタリアとフランスに採用されていますが、このシステムを水上戦闘艦へ搭載する計画で、欧州初となります。

 45型防空駆逐艦はデアリング級とも呼ばれる艦隊防空艦で6隻が建造されました、満載排水量は7350t、A50-VLSにアスター30かアスター15ミサイルを48発搭載可能です。今回付与されるミサイル防衛能力は、近年新しい脅威として認識されている対艦弾道弾を視野に入れたもので、海軍のクイーンエリザベス級航空母艦を防衛する上で重要な改修です。
■SuW強化武装モジュール
 ヘルファイアミサイルをVLSから発射するようです。

 アメリカ海軍は沿海域戦闘艦として初めてのAGM-114Lミサイルによる対地攻撃試験を実施しました、これは沿海域戦闘艦モンゴメリーにより5月12日に実施されたもので、3発のAGM-114Lロングボウヘルファイアミサイルを発射、陸上目標を正確に破壊したとのこと。この試験は沿海域戦闘艦による対地攻撃という新しい任務を視野に実施されました。

 AGM-114LロングボウヘルファイアはSuW強化武装モジュールに24発が搭載、今回の私見ではMQ-8Cファイアスカウト無人ヘリコプターが索敵等を支援しています。軽武装が問題視されている沿海域戦闘艦ですが、海軍によれば2023年度予算からは対潜任務モジュールの追加が構想されており、沿海域戦闘艦は重武装へ大きく転換期を迎えようとしている。
■改サンジュースト級
 全通飛行甲板型艦艇というのは一昔は中堅海軍国でもなかなか手が出せなかったものですが。

 カタール海軍が導入する強襲揚陸艦改サンジュースト級の起工式がパレルモで挙行されました、カタール海軍では本型をドック型揚陸艦として導入します。サンジュースト級はイタリア海軍が導入したサンジョルジオ級強襲揚陸艦の3番艦で上部構造物が改良、満載排水量は8000tとコンパクトですが全通飛行甲板構造を採用、航空機運用能力を重視する。

 イタリアのフィンカンティエリ社は戦力投射能力強化を望む中小国へ本型を提示しており、2014年にはアルジェリアも採用しています。改サンジュースト級は全長143mで艦内にはウェルドックを有していて揚陸艇1隻を収容しダビット部分には上陸用舟艇3隻を搭載、飛行甲板はNH-90多用途ヘリコプターの発着が可能、揚陸部隊550名を輸送可能です。

 全通飛行甲板型の揚陸艦は2000年代までは空母型として、いわゆる外洋海軍の装備という印象が強いものでしたが、ミストラル級強襲揚陸艦へのロシア輸出がクリミア侵攻になり破綻した事を受けエジプト海軍が導入、こうした潮流を受け低速で建造費を抑えたものを防衛造船各社が提示することとなっており、カタール海軍もこの潮流にのった構図という。
■ジョージワシントン騒音騒動
 アメリカ空母の居住性はともかく寄港できない為に休みの少なさは昔から常識の様になっていましたが。

 アメリカ海軍原子力ジョージワシントンで乗員の厳しい勤務環境が問題に。これはアメリカヴァージニア州のニューポートニューズ造船所にて原子炉炉心交換工事を行っているジョージワシントン艦内において、炉心交換という建設現場のような艦内に居住を余儀なくされる乗員が次々と自殺、精神衛生上の問題から乗員200名以上が一時退艦したという。

 炉心交換中は艦内が24時間堪えがたい騒音に曝されると共に、提供される食事についても質の低下がみられ、海軍上層部はこうした現状を無視していると艦内では不満が高まっている、CNNなどの取材で判明した。炉心交換工事は2017年より当初4年の計画で開始されたが、COVID-19影響等を受け早くとも2023年7月まで掛かる見通しとなっている。

 ジョージワシントンは、アメリカ空母運用の空母数縮小を背景とした激務という問題を浮き彫りとしている、冷戦時代には15隻が運用され半数が通常動力空母であった、しかし現在は11隻であり、全てが定期的に数年間の炉心交換工事が必要となっている原子力空母である、稼働空母の負担と定期整備空母への福利厚生のしわ寄せはいよいよ深刻といえる。
■シーキングミサイル搭載
 フランスのピューマヘリコプター等は昔からエクゾセミサイルを搭載出来る点を強調していましたが。

 インド海軍はシーキングヘリコプターからの新型空対艦ミサイル発射実験を成功させました、これはDRDOインド防衛研究開発機構とR&Dインド防衛研究開発機構が開発した国産ミサイルで、5月18日にインドのオリッサ沖に設定されたチャンディプールミサイル試験海域で実施、ミサイルはシースキマー軌道により低空から目標に命中したとのこと。

 シーキングヘリコプターはかつて海上自衛隊でもHSS-2シリーズとして運用されていたヘリコプターで、インド海軍において運用される哨戒ヘリコプターの中でも最大の機体であり、ミサイルの射程や速度といった性能などについては開示されていませんが、航空機としては設計が古いシーキングヘリコプターを当面インド海軍は運用を継続するのでしょう。
■コルベットからのRBS-15
 コルベットのミサイル運用能力が地上目標にも向くようです。

 ドイツ海軍はコルベット艦上からのRBS-15ミサイルによる艦対地射撃実験を実施しました。この実験には海軍のブラウンシュヴァイク級コルベットのオルデンブルクがRBS-15試験を担当しています、ブラウンシュヴァイク級コルベットは水上戦闘艦としては小型ながらゲパルト級ミサイル艇の後継として装備されており、水上打撃に特化した小型艦です。

 RBS-15は対艦ミサイルですが今回発射されたものは対地攻撃に対応するMk3であり、射程は200km以上となっています。試験はノルウェー沖で実施、ドイツ海軍の規模は海上自衛隊やイギリス海軍と比較した場合は限られていますが、バルト海における水上打撃能力は比較的高く、一定数が配備されるコルベットに艦対地攻撃能力は大きな転換点です。
■テマナ延命改修完了
 水上戦闘艦任務も担う哨戒艦という印象でしたが延命され更に長期間運用されるもよう。

 ニュージーランド海軍のフリゲイトテマナは6月6日、カナダでの近代化改修を終え出航しました。テマナはニュージーランド海軍がリバー級駆逐艦の代替艦としてオーストラリア海軍と共に導入したMEKO型フリゲイトANZAC級のニュージーランド海軍仕様であり1999年に竣工しました。ANZAC級とは10隻を両国が同時発注に安価に抑えるもの。

 テマナの近代化改修は3年間に及び、マストなどは新型レーダーの搭載に併せラティス構造から塔型に切替えられています。アンザック級は基準排水量3300tで満載排水量3600t、外洋で運用する水上戦闘艦としては比較的小型ですが、哨戒艦的な運用を重視した為です、しかし近年、中国脅威増大を受け水上戦闘艦運用が増大、改修を行う背景となっています。
■ニノックス103UW無人機
 潜水艦の情報収集手段にあたらしいが手軽なものが加わろうとしています。

 イスラエルのスーパーUAV社は潜水艦から発進可能というニノックス103UW無人機を発表しました。これは6月にオランダで行われた海洋防衛技術展示会で発表、潜水艦からカプセルにより発進し45分間の索敵が可能、水中には電波は届きませんが自律飛行により情報を収集しリアルタイムで送信が可能、同社によれば潜水艦用無人機は世界初とのこと。

 潜水艦から発進させると対潜ヘリコプターや水上戦闘艦の潜望鏡探知レーダーに探知される危険がありますが、ニノックス103UWはカプセルにて発進後、最大24時間を海中で待機した上で飛行出来る為、発進後潜水艦は充分距離を置く事が可能、ニノックス103UWの行動半径は10km、敵水上戦闘艦の監視の他、特殊部隊潜水艦作戦の支援にも有用という。
■フィリピン外洋哨戒艦6隻
 日本よりも先にフィリピンの方が哨戒艦建造を進めている印象です。

 フィリピン海軍は外洋哨戒艦6隻を韓国の現代重工へ発注しました。これは6月27日に発表されたもので、建造費用は6隻で300億ペソ、邦貨換算741億円の調達計画となります。外洋哨戒艦の概要は76mm艦砲を搭載し船体はステルス性を意識した設計、後部には飛行甲板と航空機運用能力を有するものとなり、また複数の複合高速艇を搭載するもよう。

 外洋哨戒艦は満載排水量2400t、全長94.4mで最高速力22ノット、航続距離は15ノットで5500浬となっています。フィリピン海軍では近代化を進めているものの、同時に第二次大戦中の護衛駆逐艦などが現役であり、流石に延命改修にも限界を超えている状況があり、6隻の哨戒艦はこれら第二次大戦中の艦艇などを一気に置換える事が期待されています。
■沿海域戦闘艦オーガスタ
 沿海域戦闘艦という区分は今後どのように展開するのでしょうか。

 アメリカ海軍向けに建造されるインディペンデンス級沿海域戦闘艦オーガスタが5月23日、オースタル社にて進水式を挙行しました。この進水式は浮きドックから艀に載せてタグボートにより進水式用浮きドックに移送し、ここで浮きドックへ注水して進水式を行うという特殊な方法が採られました、本艦はインディペンデンス級では17番艦となります。

 オーガスタ、インディペンデンス級沿海域戦闘艦は特徴的な三胴船体を採用した水上戦闘艦で満載排水量は3104t、8万3406hpというガスタービンエンジンとディーゼルエンジンの出力により最高速力40ノットを発揮しますが、当初は武装が57mm艦砲とSEA-RAMのみという軽武装が問題視され、ミサイル用のSuW強化武装モジュールが開発されました。
■エジプトエルファテ型
 エジプト海軍のここ二十年間お海軍力増強は驚くべきものがありますね。

 エジプト海軍向けに建造されるコルベットのエルモエズが初の海上公試を完了させました。もがみ型を小型化したようなもので、これは2014年にフランスのナーバルグループとの間で10億ドルにて契約された4隻のエルファテ型コルベットの3番艦です。ナーバルグループとの契約では4隻の建造に加え2隻のオプション建造も見込まれているとのこと。

 エルファテは満載排水量2500t、ナーバル社が輸出用に建造するゴーウィンド2500型コルベットのエジプト仕様で、76mm艦砲やエクゾセ対艦ミサイル8発とVL-MICA艦対空ミサイル用VLSを16セル、そしてヘリコプターや無人航空機運用能力を持っています。ゴーウィンド型はマレーシアやアルゼンチンとアラブ首長国連邦にも採用されています。

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ザポリージャ原発が何故危険なのか,誰が事故を止めるのか-ロシア軍占領下で着々と進む核の大参事への階段

2022-08-29 07:01:16 | 防災・災害派遣
■臨時情報-ウクライナ情勢
 フクシマ50という映画が有りまして事故を止めた50名の英雄たちの苦悩と決断を描いた作品で、彼らがいなければ事故はより大惨事になっていただろうという。

 ザポリージャ原発が何故危険なのか。それは軽水炉が六基あることですが、仮に現在の状況で一基でも全電源喪失となれば確実にメルトダウンを引き起し残る五基も短時間で連鎖的に事故を引き起こします。そんな馬鹿なと思われるかもしれませんが理由は簡単、福島第一原発やチェルノブイリ原発のような事故対処を行う要員が不在で近づけない為です。

 外部電源喪失、先日一時ザポリージャ原発は外部電源喪失となりましたが、送電網をロシア軍が盗電しようとした際の事故が原因であり、29日時点では一系統の外部電源が確保されています。ただ、原発の原子炉は六基すべてが停止中、原発は発電できない状況ですが崩壊熱を放出する原子炉と使用済核燃料の冷却には絶対に電力が必要な状況に代わり無い。

 懸念されるのが外部電源喪失状態に陥った場合、非常用ディーゼル発電機により冷却を維持する事となりますが、発電用燃料の円滑な供給が妨げられた場合、福島第一原発のような事故に直結します、核燃料被膜のジルコニウム溶融から始まり解け落ちた核燃料は炉心底部を高熱で溶かし破壊するメルトダウンが発生する、そして事故対処要員は出動不能だ。

 六基の原子炉が全て、というのは一基の原子炉が制御不能となる事で致死量の放射性物質拡散が始り、隣接する他の原子炉にも原発職員が残る事が出来ないのです。恐らく与圧の管理棟は生存可能でしょうが、非常用ディーゼル発電機への燃料補給は大量被ばくが伴い、ロシア軍が身を挺し原発事故を止めるという確証は有りません、寧ろ非常に低いでしょう。

 ロシア軍は核戦場での対処能力を持つRHM-6化学防護車などを装備していますが、ザポリージャ原発占拠部隊にはRHM-6は確認できず、核事故を想定した装備ではありません。すると、核物質漏洩が発生したとしても対処どころか検知する能力があるのかさえ疑問なのです。そして事故発生時、ウクライナ当局の事故対処支援を行う可能性も難しいでしょう。

 ザポリージャ原発が何故危険なのか。それは過去の原発事故では原発所員と官民一致となった事故対処が被害拡大を防いだのに対して、今回はロシア軍が事故対処を妨害し、しかも原発事故の危険性を充分認識せず事故拡大を傍観する可能性が高い事です。そして国際社会はロシアを非難するでしょうが、非難に応じる国であればこの戦争さえ起きていなかった、ということです。

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【日曜特集】百里基地航空祭二〇一二【12】F-2,F-15,F-4三機種とALE-45チャフフレアディスペンサー展示(2012-10-20)

2022-08-28 20:09:03 | 航空自衛隊 装備名鑑
■群青の大空背景に戦闘機
 本日は三年ぶりの松島基地航空祭が雨天と共に行われ午後から飛行展示が叶ったという朗報がありましたが、やはり航空祭は青空が似合う。

 F-2戦闘機にF-15戦闘機と奥のF-4戦闘機、一時代の百里基地を象徴するような情景ですが、2020年代の百里基地はF-2戦闘機の基地であり、考えてみますと未来をも見通したような情景、というのは言い過ぎでしょうか、云い過ぎですね。しかし順光で素晴らしい。

 戦闘機の機動性、これを最適化するという研究は次第に27tもの重量は必要なのか、という根本の問題に展開してゆきます。またF-15を最強の戦闘機と仕立て上げる背景にエンジンバイパス比の研究がようやく低バイパス比で合意に至ったというものがもうひとつ。

 バイパス比、なにをバイパスするかといいますとエンジンの燃焼室です。エンジンに入る空気の内で燃焼室に入る空気との比率です。燃焼室をバイパスする空気が多ければ大きいほど、なにしろエンジンは通るのだから、燃焼量を抑え燃費が向上する、するとどうか。

 高バイパス比のエンジンでは戦闘機の場合は航続距離が伸びるのです。当時はバイパス比が2.2程度が望ましいとされた。実際、旅客機などのエンジンではバイパス比は高い。しかし、戦闘機は航続距離も重要ですが先頭の際には加速する必要があります、すると逆に。

 高バイパス比エンジンは、アフターバーナーを点火する場合に空気流量が燃焼室よりも大きいために一挙に燃費が悪化し、極端な話ですが、時計の秒針のように燃料計の針がフルからエンプティに傾く。バイパス比については極論で0、となるとどうなのでしょう。

 バイパス比0とはエンジンに入る空気がすべて燃焼室を通る場合は、しかしエンジン負荷が大きく、なにより高温に曝され続けることでエンジン耐用が悪く、一回限のミサイルではなく繰り返し飛行する戦闘機には整備間隔が短くなると稼働率を下げ逆に非効率という。

 こうしていったんはバイパス比を1.5として議論を重ね、いったん0.6とした。そして検証したうえで、現在の0.7に収斂してゆきました。FXは、この時点で航続距離よりも運動性能という視点が加味されたため、戦闘機らしい戦闘機を目指すことが既定方針となります。

 さて戦闘機の話題の最中ですが装備品展示、ALE-45チャフフレアディスペンサーが展示されていました、戦闘機がミサイルに追われた瞬間に高熱源体を発して赤外線誘導ミサイルを欺瞞し、プラスティックコーティングされた金属片を撒いてレーダー誘導を妨害します。

 ALE-45チャフフレアディスペンサー、展示されるのは中々無いなあ、と思っていましたら、ダミーではあるのですがチャフ弾とフレアーの中身を抜き出してくれまして、ちょっと大きめの羊羹やチョコレートというところでしょうか、面白い展示だったと記憶するのです。

 F-4戦闘機の油圧機動展示、戦闘機は油圧で動きます、その為の油圧用作動油の管理は不純物が僅かでも混合すれば即座に致命的な事故に繋がる為に定期的な全点検を行っています、そして操縦桿をラダーペダルをどう操作すると如何に作動するかの展示をおこなっている。

 一眼レフで撮影しているのですが、こういうときばかりは動画で撮影しないと作動展示は伝えられない、こう思う一方で動画とカメラを二つ同時に操作しますと共に隔靴掻痒となり、カメラに戻ってこれないか動画を手放すか、となってしまうものでして、なかなかね。

 格納庫での撮影は、しかし注意して撮影時間を確認しなければ飛行展示の際に天井が在って何も見えません、なんていう事にもなります。音に注意していても、しかし油圧動作展示というものも中々の興味深さ、どちらを撮るか、さてさてここでも迷ってしまいますね。

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【京都幕間旅情】山陰本線舞鶴線の綾部駅に発着する特急きのさき号と特急まいづる号

2022-08-28 18:11:32 | コラム
■赤字ローカル線を考える
 山陰本線と舞鶴線の綾部駅にて特急きのさき号と特急まいづる号の写真とともに赤字ローカル線の話題を。

 上下分離方式、鉄道にかんして日本が長期的な持続可能性を考えるならばそろそろ真面目に検討すべき命題かもしれません。上下分離方式というのは、線路を国が国有財産として管理し、列車運行や駅業務を民間などに委託するという方式です。いまは線路も民有地だ。

 鉄道は繋がってこそ意義があるのですが、繋がるという意味をかなり限定して考えているように危惧するのは、例えば第三セクターなどに経営移管したもと本線などが、これは全てではないのですが重量のある貨物列車など通過に対応です、貨物路線として切れる例が。

 もちろん、新幹線併走区間の旧北陸本線のように貨物列車が通行可能という路盤を維持するところはあるのですが、西日本では国鉄宮津線の第三セクター移管では貨物列車通行能力が省かれていますし、JR線でも小浜線などは待避施設一部撤去により実質貨物に制約が。

 貨物列車などはトラックに積み替えれば、こう思われるかもしれませんが、その手間がないからこその鉄道輸送であり、積み替え費用を切れている区間で二度手間とするならば、その費用負担の大きさから鉄道離れが加速して仕舞います、だからこそ繋がる点が重要だ。

 国に余裕がない、こういいましても、それならば地方切り捨てを制度化させ、鉄道貨物路線から切り離された路線の脱製造業や脱農業というような施策を示すべきですが、これをなしに地方創世というような活性化策を行っては、制度として矛盾しているのではないか。

 予算はないといわれるかもしれませんが、埋めるための穴を掘るような施策を予算内で行うよりは、必要な予算というものは存在する、矛盾した施策こそが無駄だ、こういう認識が必要なのかもしれません。鉄道は道路と同じインフラであり、採算だけではない。

 難しい論点は、受益者が沿線民ではないことが多い、また産業が潤うことで沿線にも利益があったとしても間接的な受益である場合には自治体単位での負担というものは理解を得られないでしょう、ここに公共の領域があるために、上下分離は国の所管であると思う。

 現代では、こうした視座を長期的に、つまり短期的な反発があり長期的にも評価されるかは一概にいえない事業評価を、政治的に主導権を決断できる為政者が少なくなっているように危惧するのですよね。そして制度に矛盾があっても前例踏襲であれば批判が来ないのです。

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かが空母化改修と台湾海峡情勢-艦隊を離れるヘリコプター搭載護衛艦長期改修と周辺情勢への対応能力を考える

2022-08-28 07:00:12 | 先端軍事テクノロジー
■かが空母化改修を考える
 空母化という言葉が良く用いられるのですがDDVとなるのかDDHのままなのかは発表はありません。

 F-35B新田原配備開始は護衛艦かが第一次改修工事完了翌年の2025年からとなります。F-35B戦闘機は航空自衛隊に既に配備されているF-35A戦闘機が空軍型であり滑走路を必要とするのに対し、F-35Bはアメリカ海兵隊のF/A-18C戦闘攻撃機やAV-8B攻撃機の後継であり、特にAV-8B攻撃機の強襲揚陸艦からの運用能力を継承する戦闘機となっています。

 海上自衛隊ではF-35Bの垂直離着陸能力を最大限発揮するべくヘリコプター搭載護衛艦からの短距離発進垂直着艦能力を構築する方針であり、既に全通飛行甲板を有する護衛艦いずも型の飛行甲板耐熱改修を順次進めています。ただ、この海上自衛隊のF-35B運用能力付与は、我が国周辺情勢に影響を与え得る事は無いでしょうか。例えば台湾海峡情勢です。

 台湾海峡情勢を考えるならば中国海軍は航空母艦建造を進めており、電磁カタパルトを搭載する003型航空母艦福建の進水式を2022年に挙行しました。しかし、海上自衛隊がF-35Bを運用する護衛艦部隊の整備を進めるならば、西太平洋地域におけるアメリカ海軍以外の巨大な艦上航空戦力が整備される事を意味し、タイムリミットを示した事になるでしょう。

 護衛艦かがF-35B搭載改修は台湾海峡情勢に影響を与えるのでしょうか。2022年3月より海上自衛隊はヘリコプター搭載護衛艦かが、の改修工事を開始し呉で入渠中です。既に2021年に海上自衛隊は飛行甲板耐熱改修工事を完了した護衛艦いずも艦上へF-35B戦闘機発着試験をアメリカ海兵隊の支援とともに岩国基地沖および高知県沖にて実施しました。

 かが改修工事は大規模なものとなり、この改修工事により護衛艦いずも型の識別点でもありました独特の台形型艦首飛行甲板構造は全長を最大限戦闘機の短距離滑走に対応させるべく全通飛行甲板全体を長方形形状に変更する、つまり飛行甲板形状を造り変える大規模なものとなります、この為、飛行甲板耐熱工事実施よりも格段に改修工事の時間を要する。

 2024年にひと段落する、この規模の期間で艦隊から海上自衛隊最大の護衛艦が離れるという事は、はるな型護衛艦FRAM工事以来のもので、単なる全体修理と異なり飛行甲板の設計変更は完熟訓練を必要とするものです。一方、台湾海峡情勢を鑑みますと、2024年以降まで海上自衛隊の抑止力を現状のまま対応できるか、真剣に情勢をみなければなりません。

 F-35B戦闘機艦上運用と護衛艦F-35B戦闘機運用は法整備の面で踏み込んだ自衛隊法改正が求められるのかもしれません。それは航空自衛隊のF-35B戦闘機がアメリカやイギリスなどの航空母艦や強襲揚陸艦の艦上での共同訓練強化が見込まれる為で、これはイギリスの空母クイーンエリザベス艦上にアメリカ海兵隊機が展開した様な運用も考えられる。

 航空機の訓練展開は、既にSH-60K哨戒ヘリコプターやMCH-101掃海輸送ヘリコプターが行うような自衛隊以外の艦艇での訓練が行われていますし、アメリカ海軍やオーストラリア軍などの航空機が海上自衛隊護衛艦での発着訓練を実施しています。この現状を見る限り、航空自衛隊のF-35Bが外国艦へ訓練展開する可能性はある種当然といえましょう。

 法整備、しかし忘れてはならないのは、有事の際にSH-60Kが燃料補給を受ける場合とF-35Bが再発進の補給を受ける場合とでは、戦闘、特に集団的自衛権行使への関与の度合いが大きく異なる事を留意しなければなりません。現行法のまま法の運用で対応できるのか、法改正が必要なのかを含め、問題となる前に充分な検討が必要といえるでしょう。

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