北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】中部方面隊創隊五〇周年記念祭【7】衛生隊と施設部隊と戦車(2010-10-17)

2021-01-31 20:10:22 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■74式戦車の観閲行進へ前進
 観閲行進が進むと共に轟々と一際力強いエンジン音が響き独特の排気がこちらへ伝わってきます。

 中部方面衛生隊は本部と第104野外病院隊に第304救急車隊を基幹とする。師団衛生隊と方面衛生隊、ともに同じ衛生隊なのですが、師団衛生隊と方面衛生隊では規模が違いまして、"隊編成"は、偵察隊や衛生隊や特科隊や機動戦闘車隊、便利だが階梯がわかりにくい。

 第304救急車隊の1-1/2t救急車が2両の車列とともに。担架4本と血圧計や生体情報モニタおよび応急処置医薬材やAEDと人工呼吸器や脊椎固定器などを搭載し、二段ベッド4床など重傷者を5名、着席できる軽傷者ならば8名を同時に搬送でき、高規格救急車なみ。

 第104野外病院隊の野外手術システムが2両続く。コンテナ4基により手術車と手術準備車に滅菌車と衛生補給車を構成、段列地区での延命に資し、1セットで10名から15名の外科手術、開腹などの大規模な外科手術にも対応、術後は病院天幕野外病院へ収容します。

 中部方面会計隊が隊長太田久光1佐以下進む。隷下各駐屯地に会計隊を派遣していましたが、2015年に会計隊の大規模改編が実施され、地域ごとに会計隊が置かれ、拠点駐屯地から周辺駐屯地に派遣隊を置くという、ある意味、駐屯地と分屯地のような関係になった。

 会計隊は2010年当時豊川308,山口322,金沢336,久居337,姫路347,善通寺348,福知山349,海田市350,今津351,千僧352,出雲357,松山358,大久保397,信太山398,守山408,大津409,鯖江417,、和歌山418,高知419,日本原421,春日井426,八尾429,青野原434,徳島440が。

 予備自衛官部隊、予備自衛官2佐とともに車両は第37普通科連隊のもの。予備自衛官は元自衛官を対象に募集され年間5日間の訓練を持って技量を維持し、有事の際には臨時編成される駐屯地警備隊や後方警備連隊と弾薬輸送中隊などに臨時配属される、最後の予備だ。

 予備自衛官部隊はODの65式作業服に66式鉄帽という大時代的な装い。2002年より陸上自衛隊では予備自衛官補という自衛官経験のな人材への登用が開始され、2016年には海上自衛隊でも予備自衛官補制度が開始、極端な人材不足の状況に対応すべく苦慮している。

 第6施設群が群長小田英明1佐以下、大久保第4施設団隷下で豊川に駐屯。第4施設団は大久保に本部を置き、豊川第6施設群と大久保第7施設群及び直轄部隊より成り、大久保、豊川、富山、鯖江、和歌山、岐阜、出雲、三軒屋の駐屯地分屯地に隷下部隊を置いている。

 第372施設中隊の81式自走架橋柱、8施群隷下だが鯖江駐屯地に駐屯する。地区施設隊の流れを汲みまして、群隷下に本部管理中隊と本部及び第371施設中隊が豊川、第372施設中隊が鯖江、第402中隊が岐阜に置かれています、岐阜は守山駐屯地の岐阜分屯地のこと。

 第102施設機材隊の92式浮橋、第4施設団の直轄部隊で大久保に駐屯する。戦車も通行可能な幅4mの浮橋を最大104mに渡り二時間強で展開可能、104m以上の川幅にはもう1セットを展開する。また橋節を艀のように用い動力ボートでプッシャーパージ運用も可能だ。

 92式地雷原処理装置、地雷処理用ロケット2基を搭載しており、各4kgの爆薬を26個ワイヤーで通す爆導索をロケットにより投射し、一挙に爆破することで地雷も一緒に吹き飛ばし、地雷原に幅5mと全長100mの戦車用通路を啓開する。その爆発力は極めて大きい。

 92式地雷原処理装置。元々は師団施設に配備されていたが方面隊へ集約配備されたもので、75式装甲ドーザなど後継装備施設作業車の配備が予算不足により進まない事で苦肉の策だ。方面隊とは実質、諸外国並みの人員を持つ師団なのではないか、と心配してしまいますね。

 戦車部隊の観閲行進、第3戦車大隊の大隊長高木清光2佐を先頭に74式戦車が堂々の観閲行進を行う。高木大隊長は翌2011年に1佐へ昇進します。大隊長に1佐、第3戦車大隊は滋賀県を防衛警備管区とする部隊である為、災害派遣など地区司令の役割を担う為です。

 第3戦車大隊は創設が1954年の第3特車大隊と自衛隊創設当時まで遡る伝統ある戦車部隊です。第3特車大隊は自衛隊草創期の師団にあたる第3管区隊が師団制度導入により縮小改編された際、第3戦車大隊となりまして今日に至ります。ただ2021年に解体予定という。

 74式戦車は戦後第二世代戦車として設計され、105mm戦車砲と機動力を重視した設計です。第2世代戦車が設計された1960年代から1970年代は戦車を構成する打撃力と機動力に防御力の内、二つを満たすまでが技術的限界となっていました。74式は前者二つを選ぶ。

 第2世代戦車は防御力を当時の技術で充分保持したならば車体重量が大き過ぎ当時のエンジン技術ではイギリスのチーフテンのように満足な速度を発揮できません。機動力を重視しますと機関砲弾程度の耐弾性能を持つレオパルド1やAMX-30のようになってしまう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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榛名防衛備忘録:検証-自衛隊ガンダム,"軍用人型ロボット"充分な実用性と当面の技術的課題

2021-01-30 20:21:46 | 先端軍事テクノロジー
■軍用人型ロボットの可能性検証
 横浜に実物大ガンダムが完成し話題となっていますが、古くて新しい話題"自衛隊のガンダムは被り物以外で実現するか"について。

 人型ロボットの軍事的な意義について。1990年代に本田技研工業が基本的な二足歩行ロボットを実現させて以降、技術的な模索が続いていましたが2020年代前後から徐々に軍事的な二足歩行ロボットが現実的なものとなってきました。将来的には技術次第で、現在試験的な配備が始まっている軍用パワードスーツの一部を置き換える事となるかもしれません。

 人型ロボット。等身大のもので、整備がある程度自動化され、内臓電源だけで12時間は可動出来、自衛隊体力検定4級程度の能力を出せるものが開発され、耐用年数がトラック程度は運用できるロボットが開発されれば、少子高齢化と予算難での非正規公務員化で人員不足に悩む自衛隊としては一基あたり高機動車位の費用ならば、多数を導入するでしょう。

 ガンダムやマジンガーZのような巨大ロボットにはまだ大きな課題があります、技術的に解決できる点は大きいと思われますが、最大の問題は物理的な問題で、地面は1cm平方に1kg以上加わると陥没を始めます、意外ですが戦車も50tや60tのものを含めて設計時には1cm平方1kgの加重を前提に設計されています、巨大ロボットとなると接地圧が問題に。

 1cm平方1kgを越えると地面にめり込みます、不整地突破能力が低くなるのですね。ガンダムにはバーニアという補助推進力があり、ホバーリングのように歩行時に噴射を続ける選択肢がありますが、この状況を十時間程度持続できる燃費の良い機関が完成すれば、現実的選択肢ですが、21世紀初頭の動力としてはなかなか考えつかないものがあるのですね。

 ドラえもんのように小型軽量で放射線を確実に遮断できる原子力機関を搭載するならば、多少は変わるのかもしれませんが、過去陸上原子力戦車というものは幾つか検討されたものの、破壊された場合の格納容器の安全な炉心冷却手段が無く、単なる歩行式ダーティボムのような放射性物質汚染兵器の隠れ蓑にしかならない事から、現実的ではありません。

 装甲材に、きわめて軽量な新素材、歩兵用ボディーアーマーに装着することで40mm機関砲弾にも耐えうるような新素材が開発されたならば、ガンダムのようなロボットに装着しても地面にめり込まないロボットは実現するでしょう。若しくは忍者が水蜘の術で足に履くような巨大な円形状のもの、実際には浮き輪だったようですが、あれを付けるか、で。

 しかし全く不可能ではなく、25mm程度の機関砲に耐えられる装甲を有した上で底部接地圧を1cm平方1kg以内とできる新素材、もしくは製造費用を装甲車と同程度の2億円規模に抑えられるならば12.7mm機銃への防弾性能、移動速度を45km/h以上、燃料満タンで航続距離200km以上、自衛用火器とセンサーの重量を搭載さえ実現すれば、用途はある。

 巨大ロボット、人間と同じ歩数を毎分発揮できるのであれば、例えば瓦礫の多い錯綜地形である市街地を装甲車よりも早く移動出来る事となりますし、今日まで、都市と森林は兵を呑む、として森林は戦術上の特殊戦場として避けられていましたが、現在の戦車でも踏破できない山間部を克服できるゲームチェンジャー、新しい装備となるかもしれません。

 マジンガーZやガンダム、基本的に匍匐全身する運用を基本として必要に応じて適宜立ち上がる、という運用ならば、地面センサーなどを用い荷重に強い岩盤地形や上下水道などのない市街地のコンクリート地盤を選んで立ち上がるという選択肢も無いには無いのですが、現在では立ち上がって視界を得るより、高さならば無人機を飛ばして情報収集すればよい。

 しかし、人型ロボットを巨大ロボットと解釈するのだから論理が破綻するのです、一人用小型戦車が消え戦車が基本的に主力戦車に収斂していったように、人型ロボットも適した大きさというものがあるはずです、常識で考えれば人型がもっとも適しているのは2m弱、人の身長でしょう。荷重についても200kg以内に軽量化できれば地面にめり込みません。

 現実問題として、巨大ロボットに固執したとして、戦車でさえ操縦手に砲手と車長の3名が必要なのですから、一人で操縦できるまで操縦を簡略化するには、まだまだ操縦支援用AI人工知能の技術は追いついていません。すると無理に巨大化させるよりは通常の人間規模、最近のアニメならばEX-AR,昔ならば、まほろまてぃっく、のようなものが理想だ。

 軍用パワードスーツはアメリカ陸軍が既にアフガニスタン山間部において試験的な運用を行っています。具体的にはM-777榴弾砲の155mm砲弾運搬やM-240軽機関銃に弾薬運搬を兼任させるなど、運用が模索されました。歩兵が携行できる重量は31kgを越えると長期的な戦術的非効率を生むとされていますが、パワードスーツが解決への試金石といえます。

 人型ロボットの軍用用途として、例えば兵站用に第一線での弾薬運搬、架橋など施設作業、センサーを搭載しての無人機などにたいする監視支援、特に小銃班に随伴して荷物運搬を行う、前方監視哨へ独立して進出しての監視、トラックの運転支援、戦車などの損傷車両の回収支援、野砲の装填支援、尖兵小隊でのポイントマン接敵の支援、こうしたものが考えられるでしょう。

 AIに殺傷任務を担わせることについては将来的に国際人道法や戦時国際法文民保護の制約が加わる可能性が高いのですが、上記任務では逆にロボットに殺傷される任務を担わせる、という用途となります。鈍重な動きを担う人型ロボットが撃たれている間に回避行動を取る、もしくは最初に撃たれる場所には先ず数m先を人型ロボットが進む、という形で。

 護衛艦のRWS遠隔操作式銃塔、方向性としては危険な銃座の執銃を機械に行わせるというもの。90式戦車や10式戦車の自動装填装置、重い砲弾の装填をロボットに行わせるもの。こうしたかたちでロボットは人型以外で既に採用されているものですので、実用性が伴えば、その延長線上に人型ロボットというものは充分実現の範疇にあるのかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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令和二年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.01.30-2021.01.31)

2021-01-29 20:02:54 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 行事予定は今週も無いのですが、ファントムの写真でも眺めつつ毎週恒例となりますか自衛隊行事再開に向けてのCOVID-19情勢を見てゆきましょう。

 アストラゼネカ製COVID-19ワクチン、日本国内でライセンス生産開始へ。1月28日に驚きの報道がNHKにより発せられました。ライセンス生産、日本ではF-15戦闘機など、優れた海外製製品を国内で安定的に供給させる、一種のお家芸というべきものですが、兵庫県内の製薬メーカーを通じ9000万回分を国内製造、輸入ワクチン不足を補完するとのこと。

 ライセンス生産は今年に入ってからの最大の朗報といえるかもしれません。このライセンス生産は日本だけの動きではなく、フランスもパスツール研究所による独自ワクチンを断念しライセンス生産に切り替える、としています。製造体制が整いいつ頃に供給開始となるかはまだ未知数ですが、将来的には世界のワクチン供給にも寄与できるかもしれません。

 一億の大台に。世界の感染者数が遂に1月27日、一億名の大台に乗りました。理解度の低い楽観論者には、世界中で毎年の風邪罹患者は一億くらい簡単に越えていると誤解しているかもしれませんが、14ヶ月前患者0号が確認された疾病が一億になった、つまり14ヶ月で感染者が一億倍に感染爆発し、しかもその致死率が2%という点が問題の骨子なのです。

 イギリス死者10万。同じ1月27日にイギリス政府はイギリス国内の死者数が10万を越えたと発表、全て自分の責任であるとしてジョンソン首相は国民に陳謝しました。僅か11ヶ月前、ハンコック保健相は"感染死者を2万人以下に抑えられれば成功だ"と発言しましたが、その数字は二ヶ月後に凌駕し、制御不能のままに10万、まだ増加は続いています最中だ。

 20万以下に死者を抑えられれば我々は上手くやったと言える。2020年3月の当時の米トランプ大統領発言ですが、そのアメリカはバイデン新大統領に政権交代した直後の1月23日に死者40万に到達、第二次世界大戦の死者数を越えました。米CDCは2月中に50万に到達するとしており、これはアメリカ史上最大の死者数を出した南北戦争戦死者数に並ぶ。

 COVID-19の感染、米英の事例をみればわかるとおり、制御不能となると文字通り軌道修正がまったく利かない事でしょう。日本の感染対策が大袈裟と批判する声がありますが、無感症キャリアが無意識に広範囲にクラスターの種をまき、ある程度まで感染を容認した場合に突然ニトログリセリンのように弾けて大爆発する点こそ、COVID-19の恐怖という。

 ワクチン国際争奪戦が本格化しています。欧州ではアストラゼネカが設備工事の必要から三月末までの供給量を8000万から3100万に大幅に下方修正、EUは反発している。日本国内でのワクチン接種開始は先進国の中でも大きく遅れており、未だゼロ、二月下旬からの医療従事者へのワクチン接種開始を目指して大車輪で準備が進められている実状です。

 日本でのワクチン接種の遅れは、それだけ感染者数が少ない点の裏返しといえるでしょう。死者数が最盛期にイギリスでは三日間で阪神大震災の死者数と同じ死者がでており、アメリカでは五日間で東日本大震災の死者数とおなじ死者が出ている状況、これではアレルギー反応など副作用の厳密な検証よりも死者を減らすこと、緊張感が違うということですね。

 日本でのワクチン開発の遅れも、それだけ感染者数が少ない事の裏返しです。市中感染者が一年間で37万6300名と死者5388名(NHK27日2359時)、それも冬になり急増した為で、2020年中頃に国産ワクチンを治験した場合でも、ワクチン接種者とプラシーボ接種者ともに感染者無し、と市中感染者が少ないために効力が確認できない成功者のジレンマが。

 教訓は、日本は上手くやっている、という事実を謝った視点で解釈して、だから単なる風邪のように扱い規制を緩めよう、と実施するならば即座に死者10万まで跳ね上がります。正解は現時点では恐らく、このまま感染を抑えてワクチンを待とう。一方、スモン、サリドマイド、非加熱血液製剤、フィブリノゲン、日本は過去幾度も薬害があったのですね。

 教訓は、管理できるリスクは最大限管理したい、という過去の薬害への反省があるのかもしれません。例えばシノバックのような不活性化ワクチンでは過去に京都ジフテリア予防接種事件のような不活性化不十分のワクチン事故があり、一方でmRNAワクチンというファイザーやアストラゼネカのワクチン方式は、新しい技術であり知識は広がっていません。

 mRNAワクチンは、しかし大元の開発国は日本であり、ジカ熱が大流行した2016年、つまりCOVID-19よりさかのぼること3年前に、核酸がもつ免疫賦活化効果を高める免疫獲得に危険なウィルスそのものを用いず情報だけを免疫細胞に獲得させる方式として示したものです。従来の不活性化ワクチン、危険なウィルスを弱らせ免疫に戦い方を教えていた。

 東京大学と東京医科歯科大学が開発しました。非常に残念なのは、大手マスコミを中心にコロナワクチンへの不安ばかりを報道していて、不安というものも副作用エビデンスなどに基づくものではなく、市民ひとりひとりの"わからない""漠然とした不安"というものを羅列のように報じているものが目立ち、これが世論でのワクチン接種遅延を助長する点です。

 mRNAワクチンは、わかりやすくいえば、危険な試験を前に本試験の問題用紙と模範解答を試験前に配付して備えさせるようなもの。模範解答をそのまま提出するのですから合格は約束されているようなものです。不活性化ワクチンは、とにかく練習問題と過去問で鍛えるようなものですので、mRNAワクチンの安全性と確実性は当然といえるものでしょう。

 日本ってこんなにスゴイ国!、ガイコクジンに云わせるようなテレビ番組が、個人的にはもう少し世界をみてはどうかといいたいのですが視聴率が取れるのか制作費を抑えられるためか、テレビ欄で案外あります。しかし残念なのはmRNAワクチンこそは、日本がスゴイと誇れる技術であり、しかも現在もっともタイムリーな話題でありながら、無視されている点かもしれません。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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日本造船業は防衛の根幹,LST&LSDを増強せよ【3】作戦輸送に拘らなければ民生技術で可能

2021-01-28 20:20:16 | 防衛・安全保障
■作戦輸送と業務輸送
 日本造船業の現状は発注しなければそのまま産業は縮小し、結果的にではありますが防衛装備品の調達費高騰に跳ね返るという状況です。

 おおすみ型輸送艦は優れた輸送艦です、アメリカのホイットビーアイランド級揚陸艦、イギリスのアルビオン級揚陸艦など、近年はドックを有する揚陸艦の設計は洗練されており、一隻での自己完結能力は高くなっている。しかし、この設計ももとをたどればイギリスが第二次世界大戦中に着想した浮きドックを利用したドック型揚陸艦というものでした。

 現代の洗練された設計のドック型揚陸艦を視ますと、その発想が応急的なものとはとても思えませんし、システムとして洗練されています、そしてその分だけ建造費の高くなっているのですが、それこそ電子戦やミサイル飽和攻撃を掻い潜り、太平洋を渡るとか中東アフリカまで展開する運用だけを基本としないならば、それほど高価なものとはなりません。

 浮きドックの構造を採用した揚陸艦ならば、安価に建造できないか。もちろん作戦輸送は難しいでしょう、電子装備や個艦防空装備を追加し、ステルス設計を行えば自ずと建造費用は増大してゆきます。しかし、韓国がインドネシアへ輸出したドクタースハルソ級やイギリスのベイ級輸送揚陸艦、用途を限れば安価に建造することは不可能ではありません。

 ドック型揚陸艦、大本は代用品、ではないにしても民生品を応用したものでした。浮きドックを揚陸艦に使う。なるほど当時の浮きドック設計者の視点に立てば、そんな無茶な、と思われたのかもしれませんが、ヴェトナム戦争中にフロリダの湿地帯観光用のホバークラフトが軍用と採用された際に設計者がこれは単なる観光用だぞ、と驚いた事を思い出す。

 イギリスは第一次世界大戦中のガリポリ上陸作戦でトルコの陸上要塞を戦い戦艦3隻を撃沈されたうえに肝心の上陸作戦が失敗するという散々な結果に終わっていますが、この際の上陸作戦もお粗末なものでした、小型ボートで浜辺に乗り付ける、幕末に長州藩と関門海峡で戦った際の方式とともに、艀に歩兵を満載して曳船で浜辺まで引く、というもので。

 プッシャーパージ方式、艀を引くのではなく船で押す方式が開発されましたが、とにかく結果は散々であり、このあたりから揚陸艦の研究が始まります。イギリスは航空母艦の設計でもアングルドデッキ構造により発着の同時実施やミラー式着艦表示装置、蒸気カタパルトという現代空母三要素を発明しており、技術的な裾野の広さを実感するものといえる。

 日本。参考までに日本では1930年代から1940年代初頭、世界でもっとも水陸両用作戦技術が開発されていました。上陸用舟艇である大発が開発され、その母艦として陸軍特種船の開発、海軍航空母艦による近接航空支援や駆逐艦の艦砲射撃支援を受けつつ、大発が戦車砲を搭載した装甲艇の護衛と直掩を受けつつ上陸する、既にこの域に向かっていた。

 イギリスは1940年に戦車揚陸艇を開発しましたが、小型すぎ、これをどのように敵前上陸作戦の両用戦部隊集結海域まで進出させるかが課題でした。このため、浮きドック、もともとは最前線に工作艦とともに進出し、艦艇を修理する際に用いる装備、ここに戦車揚陸艇を並べ直前にドックに注水し発進させる方式を研究しました、1940年代にこれをやった。

 浮きドック、基本的にこれは曳航してゆくものですが、イギリスはこの浮きドックを自航させることを思い立ちます、ゆえにドック型揚陸艦という。浮きドックは平底ですが、LST戦車揚陸艦と異なりこのまま上陸接岸するものではありませんので、平底の真下に機関部を設置し吸排気系統は舷側に這わせる事にて、かなりの速力で自航能力を付与できました。

 揚陸艦として。なお、ドックを航行させれば波が立ちますのでドックに波浪が入り込んで折角の戦車揚陸艇が流失してしまいます。このために前半分に船舶構造を追加することとなります、これで波は入り込まない。こうして世界初のドック型揚陸艦はイギリスが着想設計し、アメリカが建造したアシュランド級ドック型は1943年に竣工へたどり着くという。

 アシュランド級ドック型揚陸艦は基準排水量4790t、満載排水量は8700t、毎分83tの注水ポンプによりドック内に張水するのに所要時間90分、排水には150分を要しました。もちろんかなり苦労したものではあった、水を入れすぎて沈没という、なにしろ船舶ではないものを船舶とした無理が港内試験などで判明し、もし外洋ならばあわや全没、なんて事も。

 日本であれば浮きドックの建造技術を応用したドック型揚陸艦を安価に建造できるのではないか、作戦輸送ではなく業務輸送として割り切ったとしてです。日本の場合は揚陸艇母艦である機動揚陸プラットフォームのほうが早そうな気もしますが、過度な高速性能や防空能力などを断念するならば、これらはかなり安価に建造できるようにも、思うのですね。

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【京都発幕間旅情】三原城址(広島)小早川隆景造営の瀬戸内要衝海城は海軍三原鎮守府への夢

2021-01-27 20:18:58 | 旅行記
■山陽新幹線三原駅の城郭
 三原には過ぎたるものが3つある。こう謳われたのは三原藩三万石の三原城でしたが散策してみますとこれは興味深い。

 三原城。備後国御調郡三原を治めた城郭の城址公園です。城址公園は我が国に歴史の長さを誇るように各地に残りますが行ってみますと石碑だけ、意外と世知辛い世の中で役目を終えた城郭は破却されますと何も残らないハイテク時代の日本に三原城は健在といえる。

 山陽新幹線三原駅、三原城はその駅前に位置しています。新幹線駅前の城郭と云えば福山城の天守閣が駅前通りに、むしろ大手門が福山駅改札口と云えるほどの距離に位置し、一国一城の城主となるならば通勤便利が良いなあという浪漫を掻きたてたものなのでしたが。

 呉軍港。日本が世界に誇る海軍力の一大根拠地として造営され、中国やロシアとの戦いを勝利に導くと共にアメリカ始め世界を相手に四年間、太平洋とインド洋を狭しと戦った海軍の拠点はここ三原と同じ広島県です。そして此処は練習艦隊出航撮影後に寄ったところ。

 江田島からの帰路、いつもお世話になっている方にここ三原の駅前までお送りいただき感謝とともに散策してみたのですが、なんと此処は、呉軍港とともに明治初期、海軍が鎮守府を設置するべく土地を取得し、測量まで実施していた軍都の夢の跡であった、ともいう。

 三原鎮守府、可能性として呉鎮守府ではなく、三原に鎮守府が置かれていた可能性がありまして、考えてみますと瀬戸内海最深部にあり、外敵が侵入しにくい上に広い泊地と工廠用地という意味で、三原は一つの理想、江田島帰路に偶然寄ったのは凄い御縁といえます。

 浮城として永禄10年の西暦1567年に造営されました三原城は、新幹線駅前といいますか本丸跡が駅構内に在りまして、城郭遺構の真上が山陽新幹線、恐らく梅雨時でも暴風下でも駅が門扉さえ開放してくれるならば濡れずに行ける、最早駅が城址といえるほどの近さ。

 小早川隆景により造営された城郭は、元々天文年間に三原には山城の高山城が置かれていたのですが、防御拠点であるものの山陽街道から距離があり街道防衛という城郭の役割には果たせない故に緊要地形である山陽道は沼田川河畔に新たに築城された、新しい城郭で。

 新高山城という、元々は現在の三原城は本丸が北の内陸部に在り、現在の城址は瀬戸内海に近い南端にありました。山陽道に面した城郭ですが、海運の発達と共に城郭には街道と共に瀬戸内海に面した三原要害を護る、海城であり軍事拠点という意味が在ったのですね。

 毛利元就と正室妙玖の三男、中国覇者三男として生まれた小早川隆景は安土桃山時代、本能寺の変に際し豊臣秀吉との毛利家の和睦を仲介した毛利家と豊臣家を結ぶ忠臣であるとともに秀吉の信頼厚く、また村上水軍と毛利家の盟約を結んだ事で海防の覇者でもあった。

 梯郭式平城としての三原城完成は天正年間の1587年頃といわれますが、小早川隆景はこの頃に筑前国加増を受け、養子の小早川秀秋に三原を託すと共に筑前は現在福岡の名島城に本拠を移します。しかし隠居に際し筑前を秀秋に譲り慶長の1595年頃、三原城に戻ります。

 一国一城令が幕府より布告された元和元年1615年には一説には鞆城破却の際の天守閣を移築したといい、規模を誇りました。既に隆景は1597年に没し、福島正則養子福島正之、福島氏改易後は紀伊新宮の浅野忠長が入城し、広島藩支城として一国一城令下でも存続する。

 海軍鎮守府の候補地として。元々は瀬戸内の海上防衛を念頭に置いた海城として立地された三原城は三原港にも近く、鎮守府造営が計画されました。ただ、沼田川河口に近く堆積懸念から鎮守府は呉に置かれる事となり、今では新幹線と共に城址が静かに佇んでいます。

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榛名防衛備忘録:MCM機雷戦艦,オランダ&ベルギーに視る海上自衛隊掃海艇&哨戒艦の将来像

2021-01-26 20:14:41 | 先端軍事テクノロジー
■自衛隊哨戒艦の一つの理想形
 自衛隊の掃海艇が機雷掃討能力強化により建造費が高騰し数が揃わなくなり久しいですが、新しい動きが。

 海上自衛隊の掃海艇が、えのしま型掃海艇はつしま竣工の2015年以降建造が止まっていまして、今後の掃海艇整備がどうなるのか、注視しているところですが、この試金石となり得る新しい掃海艇の建造が欧州で始まります。MCM機雷戦艦、三番艦えたじま、が来たる三月に竣工する海上自衛隊が建造を進める掃海艦あわじ型よりも大きな機雷戦艦艇です。

 掃海艇は将来更に高価に且つ希少となり得る。MCM機雷戦艦、これはオランダ海軍とベルギー海洋軍が12隻を調達する将来掃海艇ですが、遠くない将来に掃海艇という概念は根本から転換する事となるのかもしれません。MCM機雷戦艦の外見は艦砲と上部構造物に後部には飛行甲板と多数の無人機が搭載された特異な艦容となっており、一見して掃海艇というよりも外洋哨戒艦というべき艦容です。

 外洋哨戒艦というか掃海艇としてはかなり大型に思えるMCM機雷戦艦。艦砲として40mm機関砲のようなものと幾つかのRWS遠隔操作銃搭が搭載されるとともにタレスNS-50多機能レーダーが搭載、これは巡航ミサイルや無人機飽和攻撃等を識別できる掃海艇用としては破格の高性能レーダーで、明らかに水上戦闘艦との連携を考慮しているもので、飛行甲板はV-200無人ヘリコプターを運用しレーザー機雷探知戦を行います。

 MCM機雷戦艦はステルス性を考慮した船体を採用し全長81.4mと、自衛隊の掃海艇すがしま型全長の54mよりもかなり大きなものとなっています。そして小型無人掃海艇を左右両舷から展開可能であり、機雷処分弾薬を搭載した無人小型掃海艇と機雷探知用無人艇やレーザー機雷探知装置搭載無人機を搭載、管制するという水中無人機母艦というべきもの。

 MCM機雷戦艦に搭載する無人小型掃海艇は複数の種類が想定されているもので、機雷探知装置一基を搭載した小型のもの、そして機雷処分弾薬を5発程度搭載した中型のものが搭載され、掃海隊単位で行う機雷掃討任務を一隻で対応するとともに、従来船体規模である掃海艇には搭載が難しかった機雷探知能力を持つ無人機を運用できるものです。その分、建造費は更に高騰するのですけれども。

 機雷掃討艦。海上自衛隊OBの方や海上自衛隊の展示訓練をご覧になった事のある方々ですと掃海艇による掃海展示をご覧になられた事は幾度かあるでしょう、文字通り掃海艇から掃海器具を曳航し、また解説として、音響掃海器具で音響機雷を、磁気掃海装置で磁気機雷を、それぞれ掃海する、と説明されていた事を思い出されるでしょう。が、今は無い。

 展示訓練そのものが2014年を最後に無くなってしまったではないか、と反論があるかもしれませんが、現在の主力である掃海艇すがしま型以降は、実は区分では掃海艇であっても実態としては機雷掃討艇となっており、むかしながらの掃海器具を曳航する掃海はほとんど行っていないのですね。機雷掃討艇というのは機雷戦装置により機雷を掃討するもの。

 機雷掃討艇は掃海艇よりも前方に在る機雷を攻撃し破壊するもの、掃海艇は基本的に自分は機雷に探知されないように機雷上を通過し曳航する掃海器具が機雷を掃海する、というものでした。海上自衛隊の掃海艇は長らく木造を採用してきましたが、これは磁気機雷に探知されない様に磁性を帯びない素材として木材が用いられてきた、とは有名な話ですね。

 うわじま型掃海艇までは後部甲板が多数の掃海器具を搭載出来るように広く採った設計となっており、文字通り掃海器具を曳航する展示訓練の展示は中々に興味深い展示だったと思い出します。すがしま型掃海艇からは上部構造物が非常に大型化した一方で掃海器具を搭載するべき後部甲板は狭くなっている事を思い出されるでしょう、すがしま型も掃海器具を曳航する事は出来るのですが、実は掃海器具の大半は平時、陸上に揚げられています。

 すがしま型は掃海軽視なのか、と思われるかもしれませんが真逆です、機雷の性能が高性能化しすぎた今日、掃海器具を曳航した掃海艇が機雷の真上を航行した場合には機雷がコンピュータにより掃海艇と掃海器具を識別し、掃海艇の方を狙うように設定されているのですね。音響掃海装置や磁気掃海装置の特性を分析、その前方を進む僅かな推進音を狙う。

 機雷は第二次世界大戦前こそ係維機雷という昔ながらの水中に錘とともに浮く突起に付いた爆発物が主流ですが、第二次大戦緒戦にドイツ軍が磁気機雷を開発、大戦末期には航空機雷として磁気機雷や音響機雷が日本への飢餓作戦へ多用されるようになりましたが、日本はこうした機雷を戦後掃海するべく掃海能力を高めていましたが、機雷も高性能化した。

 MCM機雷戦艦、建造費は高いものとなりますが、機雷に接近せず航法から無人掃海艇と無人航空機を駆使するという発想は、言い換えれば搭載無人機を切り替える事で性能が陳腐化せず長期間運用できる事を意味し、長期的に運用できる事を意味します。そして一隻で対処出来る海域は当然広くなりますし、船体も大きい為、掃海任務の他に、センサーを駆使し、周辺国のフリゲイトに威圧されても押し返せるような哨戒艦のように運用も可能となります。

 自衛隊の掃海艇、すがしま型掃海艇は木造船体を採用している事から遠くない将来に船体老朽化から除籍が必要となります。海上自衛隊は30FFMとして護衛艦くまの、を筆頭に機雷戦にも対応する新世代護衛艦を建造しているところですが、海上自衛隊は続いて艦型未発表の哨戒艦、という新区分の艦艇を建造します。これはMCM機雷戦艦に近いものでは成り得るのでは、とも考えているのですが。

 哨戒艦は機雷戦装置を搭載しない掃海艇えのしま型派生となるのでは、とは過去に掲載したものです、有事の際には掃海艇として運用するという意味で。しかし、MCM機雷戦艦というものから将来の機雷戦というものを考えますと、特に哨戒艦は掃海隊群に配備されるということですので、案外、無人機母艦のような多機能艦に掃海任務も哨戒任務も、更には複合高速艇を多数搭載して水陸両用作戦も担わせる可能性はあるかもしれませんね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】米海兵隊ACV1.1納入とボクサー重装輪装甲車輸出筆頭に進む装輪装甲車高級化

2021-01-25 20:00:55 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 陸上自衛隊の装甲車両体系を見ていますと不安となるのはもう少し予算を掛け将来展望を考えるべきだという切迫感です。

 アメリカ陸軍は今秋、現代のルイジアナ演習として、アリゾナ州にて最大規模の長距離打撃実証実験を実施しました。アメリカ陸軍は陸軍航空隊の空軍への独立と共に固定翼航空機等運用を空軍区分としており、陸軍無人航空機体系を阻害している問題がありましたが、今回ではER-MP拡張型多目的無人航空機としてリーパー無人攻撃機が参加しています。

 ER/ MPAUS自律型兵器システムやXM-1113型155 mm砲弾が主として試験され、無人機による人工知能AIを用いた超長距離目標への目標情報の索敵と投射に関する一連の実証実験を実施、実証演習は6週間に渡り900名参加、演習はジェイムスマコービック陸軍参謀総長はじめ陸軍将官が多数視察、参謀総長は過去40年間で最も重要な演習と総括しました。
■米海兵隊のAAV-7後継車両
 自衛隊がAAV-7の運用に漸く一定の目処を建てた最中にアメリカ海兵隊では次の一歩が。

 アメリカ海兵隊は10月15日、イヴェコスーパーAV海兵隊仕様ACV1.1最初の量産車輛18両を受領したとのこと。これはAAV-7両用強襲車の一部を代替する装輪水陸両用戦闘車両構想として進められていたもので2023年までに204両を取得する計画です。SUPERAVは八輪式装輪装甲車で海上を6ノットで19km、陸上を105km/hで320km機動可能です。

 イヴェコスーパーAVはイタリアが開発した装輪装甲車で元々は外洋での航行を想定したものではありませんが、13名が搭乗可能であり大口径機関砲を含む砲塔を搭載可能である事から選定、試作車は2015年に納入され2016年より本格的な試験が実施、これらの試験を経て正式に納入される事となりました。ただ、全てのAAV-7を代替する訳ではありません。

 AAV-7両用強襲車と比較し、イヴェコスーパーAV海兵隊仕様ACV1.1の収容人員は如何にも少ないが、一方で開発中止となったEFV海兵遠征車輛などは収容人員が同程度となっており、これがイヴェコスーパーAV海兵隊仕様ACV1.1の車体規模に影響したとも考えられるが、一方で24名を主要可能な両用装輪装甲車の要求が非現実的であったのかもしれない。
■フランスVBCIに40mm砲
 自衛隊の次期装輪装甲車も大口径機関砲の搭載を真剣に考えねば単なる防弾車に留まってしまうかもしれません。

 フランスのNEXTER社は同社がフランス軍に納入するVBCI装輪装甲戦闘車についてコッカリル社製3030砲塔の搭載型を発表しました、VBCIはフランス軍のAMX-10P装甲戦闘車や機械化歩兵部隊に配備されるVAB軽装甲車の後継として開発されたもので、戦闘重量は最大28t、25mm機関砲を搭載していますが、現在では威力不足が指摘されていました。

 3030砲塔はモジュラーコンセプトに基づき設計された自動砲塔で、機関砲部分をより強力な40mmCTA機関砲や50mm自動砲に切替える事が可能であり、近年に重装甲化が進む装甲戦闘車に対しても有効な打撃を発揮可能です。3030砲塔型VBCIは車体部分の一部を再設計し、全備重量が32tに達しています。今回の車両は実証車で量産の予定はありません。
■豪州軍ボクサー211両導入
 ボクサー重装輪装甲車、自衛隊も一応は関心を寄せていたようではありますが96式装輪装甲車の後継にこんなのがあれば、理想的でしょうね。

 ドイツラインメタル社は10月11日にドイツ国内において製造されるオーストラリア軍向けボクサー重装輪装甲車の社内試験映像を公開しました。オーストラリア軍ではボクサーCRVとして本車を装甲偵察車として運用する予定です。オーストラリア軍は211両のボクサーを導入しますが、ドイツ製造されるのは25両、装甲輸送型13両と砲塔型12両のみ。

 ラインメタル社では現在、OCCAR統合装備協力計画としてオーストラリアクイーンズランド州に合弁会社工場を1億7000万豪州ドルにて建設中であり、186両のボクサーはオーストラリア国内にて製造されるといい、ボクサー重装輪装甲車導入を検討する諸国へ技術移転や採用国国内産業振興に寄与するとして、その有用性と共益性を映像にて広報しました。

 ボクサー重装輪装甲車はモジュールを置き換える事で多種多様な用途に対応する新世代の装甲車として開発、この為に車体に余裕を持たせたことが設計開始当時の1990年代には考えられない程の製造費用の高騰を生んでいますが、結果的に余裕を持たせたことが30mm機関砲塔などの将来発展性に繋がり、装輪装甲戦闘車として各国への輸出が進んでいます。
■リトアニアのボクサー装甲車
 リトアニア軍もボクサーを導入している所を見ますと陸上自衛隊もやはり300両程度揃えなければ陸上防衛が画餅に帰してしまいそうで。

 リトアニア陸軍ではドイツから導入したボクサー/ビルカス装輪装甲戦闘車による訓練が9月には初の大隊規模の練成訓練が実施、順調に推進しているとのこと。リトアニア軍ではロシアからの脅威の増大に併せ2015年にドイツよりボクサー重装輪装甲車の取得を決定、取得数は91両、イスラエル製30mm機関砲塔を搭載し装輪装甲戦闘車として整備される。

 ビルカスとはリトアニア語でオオカミを意味し、2017年に一号車が納入、2021年までに91両全てが納入されるとのことだ。ロシアの飛び地カリーニングラードからの軍事脅威にさらされるリトアニア軍であるが国力の限界から主力戦車を有しておらず、ビルカス装甲戦闘車に搭載のイスラエル製スパイクLR対戦車ミサイルは貴重な対戦車打撃力となる。
■JLTV,ハンヴィー後継装甲車両
 JLTV,ハンヴィー後継車両は自衛隊も高機動車の野戦機動車輛としての陳腐化が進む中で興味を持ってみていましたが、お値段は高いですね。

 ベルギー軍は旧式化したイヴェコLMV軽装甲車の後継としてオシュコシJLTV統合戦術車輛322両を取得するとのこと。オシュコシJLTV統合戦術車輛はアメリカ軍が軽歩兵主体の歩兵旅団戦闘団へ配備する装甲ハンヴィーの後継車両であり、MRAP耐爆車輛と同等の防御力を有すると共にハンヴィーの機動力を兼ね備える新世代歩兵用装甲機動車輛です。

 オシュコシJLTV統合戦術車輛322両の取得費用は1億4200万ユーロ、アメリカ軍に採用されるM1279 JLTV-UTL多用途戦術車輛とM1280 JLTV-GP多用途車両重機関銃搭載型およびM1281JLTV-CCWC多用途戦術貨物輸送車等がベルギー軍にも採用される。何れも四輪駆動で車高は若干高いが防御力と共に、転覆限界など不整地踏破能力は比較的高い。
■アーチャー自走砲をアピール
 アーチャー自走榴弾砲は巨大ですが19式装輪自走榴弾砲があんなのだと分かってしまいますと自衛隊もFH-70後継にこちらの方がいいのでは、と思う。

 BAEシステムズ社はアメリカ陸軍が選定する将来自走榴弾砲計画にスウェーデン製アーチャー自走榴弾砲を提案している。アーチャー自走榴弾砲はアメリカ陸軍のシュートオフ計画に基づく射撃実験へ陸軍ユマ試験場にて7月から既に評価試験が行われている。過去、ストライカー装甲車にM-777榴弾砲を搭載する研究を行ったが芳しい結果が出ていない。

 アーチャー自走榴弾砲はボルボ製装甲トラックに全自動砲塔を搭載したもので、行進中でも射撃命令から30秒で初段を発射でき、砲塔には21発を搭載し180秒以内に21発を射撃可能、52口径の長砲身を有しており通常榴弾の射程は40kmに達し、またエクスカリバー誘導砲弾を用いた場合は射程50km以上に達する。そして乗員3名で運用可能である。

 アメリカ陸軍では野戦砲兵と防空砲兵の位置づけが伝統的に戦車や歩兵戦闘車よりも後回しとされた経緯があり、牽引式榴弾砲は漸くM-198から画期的な軽量火砲であるM-777に置換えられたが、自走火砲はいまだにM-109系統を改良し続けている、改良により命中精度は向上したが39口径火砲であり、各国の52口径火砲と比較し、射程は低いままである。
■エストニア軍K-9自走砲採用
 自衛隊も数に上限があるのでなく予算枠内ならば揃えられるだけ数を揃えられるならば99式自走榴弾砲のような高性能に走る必要はなかったのかもしれない。

 エストニア軍は10月8日、韓国製K-9自走榴弾砲の受領を開始しました。エストニア軍は近年、ロシアからの軍事圧力増大に曝されており、これに対応するべく2018年、12両のK-9自走榴弾砲調達で韓国政府と合意しました。K-9自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲であり、アメリカ製M-109自走砲よりも新しく、ドイツ製PzH-2000よりも安価です。

 K-9自走砲はエストニア軍仕様として通信装備等はNATO標準規格となっており、当面は整備訓練や運用基礎訓練を行い、2021年より部隊配備となります。欧州ではフィンランド軍が採用していますがNATO加盟国では初の配備となります。比較的高性能である割に安価なK-9自走砲は順調に採用国が増えており、エストニアも6両の追加を検討中とのこと。
■コングスベルク,二万のRWS
 RWS,日本の場合は陸上自衛隊よりも海上自衛隊の方が採用が早かったのが不思議ですが。

 ノルウェーのコングスベルク社は2020年10月、20000基目の遠隔操作銃搭RWSを出荷したとのこと。コングスベルク社製遠隔操作銃搭RWSは1999年から製造を開始、暗視装置を有し従来の装甲兵員輸送車に搭載するだけで車内からのタブレット型照準装置により照準可能でスタイラスペンを用い見越し角の計算を省き正確な射撃が可能となっている。

 コングスベルク社製遠隔操作銃搭RWSの優れた点は、当初こそ12.7mm重機関銃を遠隔操作するものであったが、需要の拡大と共に各種機関砲の無人操作銃搭へ発展し、現在では30mm機関砲塔も開発、これにより例えばアメリカのストライカー装甲車等は単なる装輪装甲車から30mm砲搭載により装甲戦闘車へ対抗できる火力を備えた車両となっている。
■ガーナ軍シンガポール装甲車納入
 テレックス2装甲車、やはり取得費用が高いのを見ますと日本の場合はもう少し国内防衛産業を大事にしてほしい。

 ガーナ陸軍はテレックス2装甲車をセンチネル装甲戦闘車として19両を8610万ドルで取得するとのこと。センチネル装甲戦闘車はイスラエルのエルビットシステム社が開発したものでUT-30型30mm遠隔操作砲塔をシンガポール製テレックス2装甲車に搭載、データリンクシステム等と共に装甲戦闘車としたもので、国境地域での対テロ任務に用います。

 テレックス装甲車はシンガポールのSTキネティクス社が開発したもので砲塔を含まない戦闘重量は25t、今回供給されるテレックス2は八輪式装輪装甲車、増加装甲により14.5mm機銃弾への防御力を有し12名の人員を乗車させるもので、エルビット社製砲塔搭載型はオーストラリア次期装甲車選定へも提案、トルコのオトカ社はライセンス生産もしている。
■トルコ軍,エーゲ海の緊張激化
 ロケットサン社製TRG-230誘導ミサイルシステム、射程を見ますと自衛隊のMLRS水準の射程ですね。

 トルコ軍は新型のロケットサン社製TRG-230誘導ミサイルシステムを今夏にエーゲ海へ配備した、10月に入り発表しました。これは射程70kmのレーザー誘導式多連装ロケットシステムで口径は230mm、レーザー誘導は観測ヘリコプターや歩兵携行型のレーザー照準装置は勿論、バイラクタルTB2無人航空機からも実施可能で移動目標に対しても有効です。

 TRG-230誘導ミサイルの重量は50kg、命中精度は最大射程70kmの場合で半数命中界10mとされており、加害半径を考えればソフトスキン車に対して極めて強力な打撃力を有するといえましょう。エーゲ海では現在、トルコによる海底資源調査を背景としたトルコとギリシャ、NATO加盟国同士の緊張があり、TRG-230配備は緊張を高める可能性もあります。

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【日曜特集】航空自衛隊60周年小松基地航空祭(7)小松救難隊の航空救難展示(2014-09-20)

2021-01-24 20:04:11 | 航空自衛隊 装備名鑑
■UH-60J救難ヘリコプター
 救難飛行展示は戦闘機一辺倒の航空祭に彩りを盛上げてくれます貴重な瞬間ですが、撮影位置が戦闘機機動飛行よりも難しい。

 小松救難隊の救難員がUH-60J救難ヘリコプターよりロープ降下する。先頭救難を想定しますので、空挺レンジャー課程を受ける際には89式小銃など武装して敵の抵抗を排除しつつ航空搭乗員を救出する、誤解を恐れなければ一種、特殊部隊的な訓練も行っています。

 UH-60J救難ヘリコプターを正面から、ホバーリングして姿勢を維持する。ヘリコプターにとってこのホバーリング姿勢維持は驚くほどに燃料を消費するといいますが、エンジン出力の余裕あるUH-60Jは空中に静止して救難が完了するまで、待機することも充分できる。

 小松救難隊の救難は肝心の場がこの位置からはなかなかみえません。よみがえる空、2006年に放映されました小松救難隊を舞台としたアニメーションがありました、護衛艦はるな出演のアニメーションですが、私のいう平和な時代というものはああいうものなのですね。

 UH-60J救難ヘリコプターにストレッチャーをホイストで上げる。よみがえる空、あの作品は航空遭難はすべて事故だけでしたし、ロービジ迷彩もありません。そして今は普通の女性パイロットも当時は非現実的と空幕広報の助言もあり原作を改編しました、昔の話だ。

 F-15J戦闘機がコンバットピッチで三機編隊を解いてゆく。あれから十年と少しを経て、戦闘機パイロットに女性が進出する時代なのですから時代というものは変わるもので、そして防衛、という視点からもかなり戦闘の蓋然性は高まっています、これも一つ現実として。

 コンバットピッチで二機の編隊も解かれて着陸態勢へと。航空自衛隊創設がこの航空祭で60周年、しかし思い起こせば自衛隊創設は朝鮮戦争により進駐軍だけでは北東アジア地域の防衛が担えず、日本の防衛は日本に行わせるべきだ、という視点があったのですね。

 F-15J戦闘機のコンバットピッチは灰色から順光の青空へ。戦闘の蓋然性といいつつ、自衛隊は常に備えてきました、そして1950年に始まった朝鮮戦争は休戦状態のまま推移しているのですね、自衛隊は備えている、朝鮮戦争は続く、するとあとは法整備か、と考える。

 小松空港ターミナルビルを背景にF-15J,展望デッキも混雑してきた。憲法問題に国民が当事者ではなく"お上"の"まつりごと"として当事者意識がないまま放置され、反対だけで代案は出さない、日々日常に政治を日常の討議とすることへの忌避感、一方で状況のみ進む。

 F-15Jが滑走路から誘導路へと進み始める、二機の絡みの構図が良い。憲法改正に賛成なのか、と問われますと現状では改正に国民が参画する意志が薄いだけに、改憲よりも、現行憲法の限界を見極めながら自衛隊法を最大限実情に即すべき、と思うのですが、いかがか。

 小松基地と小松空港は滑走路を共有しておりF-15はこちら側をゆく。自衛隊行事を撮影する度に毎回のように思うのですが、これは洗練された格好いい何か、というものではなく、明確にこれは兵器なのですね。仮に憲法上の軍隊ではなくとも国際法上では、軍隊だ。

 F-15Jの操縦席をアップに、キャノピー越しにターミナルビルがみえる。徴兵制として国民が防衛に参画することが軍隊の暴走を押さえるという考え戦後ドイツにあり、そもそも徴兵制はフランス革命にて国民が参加する権利という認識があった。しかし日本はどうか。

 誘導路を進むF-15J戦闘機、その奥に救難展示を終えたU-125が着陸した。日本の場合は、結局のところ"お上"の"まつりごと"なので任せようとしつつ、しかし主権者としての義務を放棄できる権利と同一視していないか、逆だろう、そんなことはよく痛感するところ。

 UH-60J救難ヘリコプターも滑走路上を着陸し空港ビルを背景に。自衛隊は職業軍隊ですので、公務員であり公僕、従って国防に参加する権利という概念ではないのですね。まあ一つマックスヴェーヴァー的にいえば職業としての政治ならぬ職業としての防衛、という。

 小松救難隊のUH-60JとU-125が誘導路上で仲良く並んで進入する。北大路機関の創設は2003年、Weblog北大路機関創設は2005年、一貫して防衛問題を扱っているのですが、世界政治の多極化と北東アジア情勢と防衛力整備は進んでいますが、主権者の認識はどうか。

 UH-60J救難ヘリコプター、地上でも機能的な形状と紺色が映えるもの。なかなかに優美な形状、無駄をそぎ落とした機能美、というものを感じるのですが、これは紛れもなく兵器でありまして防衛の現実、というものを考えさせられるのですね。常に何かは有り得る。

 地上誘導員がUH-60J救難ヘリコプターを定位置へと誘導してゆく。たとえば3.11以降、災害派遣を通じて自衛隊への理解が深まった、とありますが、災害派遣ではなく自衛隊の任務は防衛、そして抑止力維持による軍事侵略を阻止することが忘れられていないか、と。

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【防衛情報】火災のボノムリシャール除籍決定!2024年までARG強襲揚陸艦運用に空白

2021-01-23 20:21:43 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 ワスプ級強襲揚陸艦ボノムリシャールは佐世保に前方展開していた時代もあり、なじみ深いフネでした。

 放火火災に見舞われたアメリカ海軍強襲揚陸艦ボノムリシャールは廃艦となる決定が12月2日、正式に決まりました。ボノムリシャールは2020年7月12日にサンディエゴ基地に停泊中、大規模な火災に見舞われ船体の重要部分が五日間にわたる延焼により大きく破損していました。しかし強襲揚陸艦は重要で海軍は修理の可否を慎重に算定していました。

 ボノムリシャールは廃艦とした場合、サンディエゴ基地から解体地への搬出や部品の改修と解体には期間にして9カ月から12カ月、費用にして3000万ドルを要すると算定されました。しかし修理する場合には費用では30億ドル以上を要し、また期間も5年から7年間を要すると算出され、この費用と期間では新造艦を建造するよりも非効率だ、とのこと。

 しかし、海軍は強襲揚陸艦の不足は現実問題であり、ボノムリシャールも火災直前までの定期整備中にF-35B戦闘機の運用性能付与に18カ月間の期間と2億5000万ドルの費用を要していた為、最後まで修理の可能性を模索していた構図です。アメリカ海軍の強襲揚陸艦が用途廃止による除籍以外で廃艦となるのは、ボノムリシャールが初の事例となります。

 強襲揚陸艦運用に深刻な空白が生じる、ボノムリシャールの除籍には大きな意味があります。アメリカ海軍の揚陸艦は強襲揚陸艦が9隻、輸送揚陸艦が11隻、ドック型揚陸艦が12隻、以上32隻から構成されます、数は少ないですが強襲揚陸艦は満載排水量4万5000t規模、輸送揚陸艦も2万7000tに独型揚陸艦は1万6000t、大きさからは充分に見えます。

 特にいま、この9隻、という数字が需要な意味を持っているのです、強襲揚陸艦と輸送揚陸艦が同じ数であるのが偶然ではなく、揚陸艇タスを搭載し迅速に上陸させるドック型揚陸艦、主要資材の巨大な輸送能力と揚陸艇を運用する輸送揚陸艦、ヘリコプター部隊の搭載母艦となる強襲揚陸艦を加えて、この3隻でARG揚陸即応群を構成しているのですね。

 ARG揚陸即応群はイージス巡洋艦を中心とするイージス艦数隻からなる水上打撃群とともにESG遠征打撃群という作戦単位を構成します。その任務はMEU海兵遠征群という海兵大隊を中心とした戦闘団を水陸両用作戦に供する事で、海兵隊は海兵師団などから即応できる人員のローテーションにより、本土西海岸東海岸と沖縄にMEUを待機させています。

 ボノムリシャール除籍、そして当面は代替となる強襲揚陸艦が建造されないという事実は、ARGの編成が9個から8個に減退する、という事に他なりません。即応待機しているMEUは3個ですので、実は整備や訓練を考えますと9このARG揚陸即応群というものはそれほど余裕が無いものなのですね。しかし、するとこの視点に疑問を持たれるかもしれません。

 ペリリューを現役復帰させることはできないのか。ペリリューは一時期アメリカ押印軍事委員会が日本への供与を検討したとも報じられ有名となったタラワ級強襲揚陸艦です、満載排水量39000t、ボノムリシャールのワスプ級よりは若干小さいですが、海上自衛隊の護衛艦いずも型よりも遥かに大きく、解体していないのだから使えと思う、が実際は難しい。

 タラワ級が全て除籍された背景には甲板強度の不足があります。タラワ級はAV-8Bハリアーを搭載し航空支援に充てるとともに多数のCH-46E中型ヘリコプターにより海兵大隊を運び、重装備の空輸にはCH-53D重輸送ヘリコプターを駆使していました。しかし、これらはいずれもF-35B戦闘機やMV-22可動翼機に置換えられています、これらは非常に重い。

 AV-8Bの最大離陸重量は13tです、ところが後継のF-35Bは32tもあるのですね、そしてF-35Bは主翼を折畳めませんので格納庫ではハリアーの2.7倍もの面積が必要です。CH-46も10tに対してMV-22は22tと倍以上に増大し、格納庫の収容面積も2.2倍の面積を必要とします。つまりタラワ級では、飛行甲板強度も格納庫容積も相当補強せねばなりません。

 エセックス級空母のSCB-125改修、アメリカ海軍は第二次大戦中のエセックス級空母を戦後もジェット機用に運用すべく甲板の拡張改修を行いました。MV-22の搭載は飛行甲板の拡張によりまったく不可能ではありません、飛行甲板を横に張り出すように左舷に8m、右舷に2m拡張するならばMV-22は定数搭載可能です、F-35B用に強度強化も可能でしょう。

 しかし、飛行甲板の拡張改修、エセックス級空母では3年を要していましたし、F-35B搭載には運用試験が必須、今からそれ程の大改修を実施を行う費用対効果が40年前の1980年に竣工したペリリューに在るかは疑問で、強襲揚陸艦の不足はアメリカ級強襲揚陸艦三番艦のブーゲンビルが就役する2024年まで、続く事とならざるを得ないのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
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令和二年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.01.23-2021.01.24)

2021-01-22 20:12:31 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 河野太郎元防衛大臣がワクチン担当大臣へ任命されましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。今回も空挺降下訓練始めの写真とと共に、こちらは2020年の河野大臣時代のもの。

 今週末の自衛隊関連行事は行われません。最後に行事実施を紹介して以来、一年を経た事となりますがCOVID-19による影響が顕在化した後に全く再開のめどは立たず、僅かに招待者限定の行事や募集対象者に限定した部隊一般公開、艦艇広報が行われるのみとなっています。ワクチン接種開始、大きな朗報といえるところですが、新たな新型コロナ攻勢が。

 ファイザー社ワクチン供給は遅れる見通しです。厚生労働省は1月20日にファイザー社との間で漸く正式契約となった旨を発表しました。今まで仮契約だったのか、と驚かされるものですが、供給期限は仮契約では6月末までの供給という内容だったのですが、田村厚生労働大臣の発言では、ファイザー社は納入完了が年内までと半年近く遅延するもようだ。

 イギリス変異株の日本国内市中感染確認、新型コロナ攻勢に。資源も食料さえも自給できない我が国としては、一般家庭が完全外出禁止を一週間持続できないように国の経済も完全な鎖国一ヶ月というようなものは想定していません、故に商用や留学はじめ人の移動は抑えても最小限度生じるのですが、感染力が七割強とされる変異株は遂に入り始めました。

 COVID-19変異株、変異したのではなく変異株ですので別にCOVID-21が出現した訳ではなく、既に二万近くに上る変異株の一つではあるのですが、イギリス変異株は感染力が強い点が特色です。この脅威が認識されたのは昨年後半、出現し始めた変異株の感染者に占める比率がイギリス南部で一挙に増大、変異株の中でも高い感染力があると認識されます。

 ワクチン接種は日本ではまだ開始されていませんが、変異株について、ワクチン効力はあると暫定結果が出ています。暫定結果、臨床試験はしていないのか、と思われるかもしれませんが、暫定でも結果を出さなければ接種後三カ月でどうなるか、という治験結果は三カ月を要するので、それまで時間の猶予は無く暫定でも結果が必要、との証左なのですが。

 実効再生産数が2の場合と3の場合の違い。七割の感染力増大と云われますと実感がわかないのですが、実効再生産数という数値が分り易くその危険性を示してくれるでしょう。実効再生産数というのは、一人の患者が二人に感染させる場合は2で三人に感染させる場合は3です。なんだ、一人の違いか、と思われるかもしれませんが、感染は続く場合には。

 127名か1093名、実効再生産数が2の場合には1ヶ月後の感染者数は127名ですが、実効再生産数が3となりますと一か月後に1093名に増大するのです、すると重症化率を5%とした場合、127名の場合は6名強でなんとか集中治療室が収容できますが、1093名となると55名、都市規模によってはこれだけを収容する難しさがあり、溢れた分が死者にはいる。

 イギリス変異株というものの感染力七割増大とは、実効再生産数が2から3に上昇する、と考えれば、その意味が分かるでしょう。ただ、致死率に大きな変化はありません、概ね2%で推移しており、医療崩壊さえ起きなければ1%台となります。自宅療養の場合はカロナール解熱剤とアスピリン鎮痛剤でひたすら病床が空くのを待つほかないのですから、ね。

 欧州では対策を強化しています。ドイツとフランスは相次いでN95やN90医療用防護マスク着用義務化を進めています。これはフィルターのない布製マスクや不織布アスクでは感染対策には対応できないとして、サリンなども防ぐ事が可能なN95マスク、フランスではUNS1というN90相当の規格マスク着用を義務化する動きがあり、ワクチンにも影響が。

 イギリスは二回必要なファイザー社製ワクチン接種の二度目接種延期を決定しました。これはファイザー社製ワクチンは一回目の接種で50%、三週間後に行う二回目の接種で95%の効力を発揮するという事ですが、言い換えれば一回目の接種だけでも50%の効力があり、例えれば中国のシノバック社製ワクチンを二回接種したのと同等の効力があるのですね。

 ファイザーワクチンの接種回数を一回に抑えるのは、二回必要な接種の医療資源を兎に角一回だけでも接種させ、毎日都市封鎖をおこなっている最中でさも4万5万という感染拡大が続く状況を少しでも抑えたい苦肉の策でもあり、収束後は再度終息に向け二回の、つまり二回目三回目、ワクチン接種が必要となり、無駄遣いなのですが、仕方ない、という。

 日本の接種開始が一ヶ月ほど要するなか、世界のワクチン不足は進み、塩野義製薬等国産ワクチン開発は、開発本格化の時期に感染拡大が収まった事が治験や臨床データの遅れに拍車をかけた事もあり、未だ。ワクチンリスクを呑んで早期接種という選択肢は、しかし過去の薬害の反省もあり進みません、自粛頼みの感染対策は当面、続くのかもしれません。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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