北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ウクライナ危機,侵攻はいつか?SWIFT除名経済制裁検討とNATO連携阻む天然ガス依存問題

2022-01-31 20:20:37 | 国際・政治
■冬季のウクライナ侵攻危機
 ウクライナ危機は放置するならば東欧全体へ緊張が及び第三次世界大戦へも繋がりかねない危機となっています。そこでアメリカ、イギリス、ドイツなどの対応を纏めました。

 アメリカはロシアのウクライナ侵攻が実施された場合の最大規模の経済制裁としてSWIFT除名を検討中と伝えられます。これはCNN等で繰り返し報じられる超党派の連邦議会議員らが提唱するアメリカによる経済制裁案で、SWIFT国際銀行間通信協会の送金網からロシアの銀行全てを除名するというもの。軍事力以外の制裁としては最大のものです。

 SWIFT国際銀行間通信協会とは、世界数千の銀行間を結ぶ送信網で、1973年に創設され本部をベルギーに置く。1973年以前は国際送金に銀行間のテレックス通信が用いられていたものを転換したもので、仮にロシアが除名された場合は、ドルを介した天然ガス輸出等が不可能となります。一方これはロシアの天然ガス輸出に依存する欧州には難しい課題だ。

 ロシアにはSWIFTを仲介しない銀行間送金は通信の安全性を考えれば現実的ではないもので、例えば仮想通貨等を用いる事も不可能ではないものの、ロシアには仮想通貨を大規模に扱う機構などは存在しません。SWIFT除名は現在、イラン経済制裁として採用されており、経済的な打撃を既に実証、問題はアメリカがSWIFT除名を真剣に推進するかです。

 イギリス国防省はウクライナ危機を受け欧州地域への兵力移動を強化しました。既に報じられた空母とBBC31日付報道によれば、本土からは東欧地域へ850名規模の部隊の空輸展開を開始するとともに、エストニアへ展開する機械化部隊についても警戒態勢を強化しており、また地中海の戦闘機部隊についても不測の事態に備えた強化を行うとしています。

 イギリス国防省によれば、2021年にもウクライナ周辺での警戒監視活動を行ったイギリス海軍艦艇に対し、ロシア軍による妨害行為が行われたとしており、艦隊に加えて周辺地域への展開部隊を増強しているかたちです。一方でイギリス政府は外交による危機回避にも尽力し、ジョンソン首相はロシア側とウクライナ政府との仲介を試みているとのことです。

 ドイツはNATO加盟国とウクライナからの再三の防衛装備供与要求にヘルメット5000個供与で応えました。ロシア軍のウクライナ侵攻が迫る懸念の中、NATOは過去最大規模の空母部隊を地中海に展開させ、小国であっても可能な戦力を東欧地域へ展開、こうした中でドイツに対してもウクライナへの防衛装備品提供要求が再三にわたり為されています。

 ヘルメット5000個、ドイツのランブレヒト法相はウクライナへ連帯を示す姿勢としてヘルメット5000個を供与するとしています。しかし、ウクライナの首都キエフ市長クリチコ氏は激怒し次は枕でも送るのか、と批判しています。戦車師団だけで4個を展開させるロシア軍に対し、バルト三国などはドイツが保管する東独軍用装備提供を要請し続けています。

 ドイツはウクライナ危機に際しロシアからの天然ガス輸入問題に国論が二分しています。ドイツは天然ガスの65%をロシアからの輸入に依存しており、ノルドストリーム2ガスパイプラインなどの巨額投資により国内のエネルギー依存度を高めており、これにより脱原発を実現するとともに、化石燃料以外の持続的エネルギーに天然ガスを含める主張を行う。

 ドイツはロシアのウクライナ侵攻へ制裁を行う場合は、ロシアが天然ガス供給を停止させる可能性、そしてドイツが経済制裁を行う事は自発的にロシアからの天然ガス供給を遮断しなければなりません。代替燃料は中東からの石油輸入やノルウェーからの液化天然ガス輸入が挙げられますが、ロシアへエネルギー依存度を高めた代償を突き付けられています。

 チェコ政府はロシアの軍事脅威に曝されるウクライナへ152mm砲弾の緊急供与を決定しました、緊急供与されるのは152mm砲弾4000発で余剰弾薬ではありますが150万ユーロ相当の供与になるとしています。チェコはNATO加盟後、野砲をソ連方式の152mmからNATO基準の155mm砲に切替えていますが、国内にはまだ砲弾が備蓄されています。

 ウクライナ軍はD-20牽引式榴弾砲や2A65と2A36に2S3自走榴弾砲などソ連時代の152mm榴弾砲が現役であり、ロシア圧力下の緊迫した状況で、152mm砲弾の供与は干天の慈雨となります。チェコでは国内法により同盟国以外への防衛装備品供与には煩雑な手続きが在りますが、今回は特別措置により緊急供与が実施されたという背景があります。

 プラハの春、NATO加盟国によるウクライナ緊急支援は多岐に上りますが、今回のチェコによるウクライナへの供与は、ウクライナが親ロ政権から親欧政権へ民主選挙を通じて政権交代した事を契機にロシア軍事圧力が増大し、1968年に民主主義政権がソ連の軍事介入により崩壊を強いられた“プラハの春”を彷彿させる過去の歴史の再来があるのでしょう。

 デンマーク軍はウクライナ危機に際し水上戦闘艦の三分の一と戦闘機の一割以上を派遣する、これはF-16戦闘機4機とフリゲイトペートーヴィルモエスをNATO常設部隊へ派遣するという決定ですが、人口583万人のデンマークにはかなり無理を通した派遣です、デンマーク空軍は戦闘機がF-16戦闘機30機のみ、水上戦闘艦は大型艦が3隻しかない。

 ペートーヴィルモエスが派遣するNATO常設艦隊は地中海に展開しており、国土がバルト海と北海大西洋を結ぶスカゲラク海峡に位置するデンマークには海軍を地中海に送る厳しい決断にほかならりません。これは小国であっても、NATO加盟国が今回ウクライナ危機に対して可能な限りの戦力を派遣し開戦を阻止する堅い決意を行っている証左といえます。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシア侵攻は懸念はあるが決定的ではなくパニックを起こさないようにと、国民に冷静を呼びかけています。これはアメリカやイギリスの大使館職員が国外脱出を開始した為、危機感が買いだめ等に発展している為ですが、もう一つ、大量のロシア軍は国境周辺の演習場に集結したまま、という実情もあるようです。

 ロシア軍は現在、演習場に集結していますが、これは対空疎開を実施せず兵力が宇宙空間から確認できる地域に展開している事を意味します。もちろん進発命令を受ければ短時間で進行する事は可能でもあるのですが、衛星写真に写る位置を維持する事で侵攻せず、ウクライナNATO加盟拒否など政治妥協を求めて圧力を掛ける証左ともいえるでしょう。

 ウクライナ危機は冬季以外は地形制約が大きい、ロシア軍による侵攻の脅威は昨年には一月中旬とされ、また一月末には二月中旬が危険であるとされています。しかしこれは根拠があるもので、今回ロシア軍は戦車師団の大半をウクライナ国境に展開させていますが、この戦車は地表が軟弱地形では行動が難しく、夏季の泥濘は行動を阻害する懸念がある。

 ウクライナでは、冬はバケツ一杯の水がスプーン一杯の泥を生み夏はスプーン一杯の水がバケツ一杯の泥を生む、こうした諺があるほどに主要幹線道路以外の交通は21世紀の今日でも路面状況は影響を受けるのです。ウクライナでは日本の北海道の様な猛烈な積雪もありません、夏季侵攻の可能性が皆無という訳ではありませんが一つの指針といえましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【日曜特集】かしま-はるな雪景色と練習艦隊舞鶴寄港【1】北吸岸壁冬景色(2008-02-17)

2022-01-30 20:08:49 | 海上自衛隊 催事
■雪積る白銀の舞鶴基地
 雪景色を真夏の日曜特集に、こう考えたのですが気が疲れるだけで涼など感じられません、やはり雪景色は窓の外にも寒さ一際厳しいこの冬景色の最中に紹介したいものです。

 かしま。練習艦かしま、舞鶴基地に入港の様子です。近海練習航海部隊として舞鶴基地へ寄港していますが、その舞鶴基地は白銀の情景、日本海らしいといえばその通りですが、普段見慣れた情景も雪景色となりますと新鮮この上ない美しさを感じるものなのですね。

 うみぎり、かしま。あさぎり型護衛艦の8番艦うみぎり、が近海練習航海へ参加しています。今となっては平和な時代だった2008年、あさぎり型護衛艦が2隻練習艦へ転籍していまして、護衛艦隊も今とは比較にならない程に周辺情勢が安定しており余裕がありました。

 舞鶴基地も、COVID-19感染拡大と共に毎週末のお楽しみでした一般公開が中断していますが、2010年代に入りますと雪の天候では一般公開が中止されるようになりました、もっとも舞鶴の場合は雪景色というよりは雪害というほどに積雪が凄い事になる為なのですが。

 あさぎり、しまゆき。はつゆき型はこうした雪景色に似合う、のは名前だけでして。あさぎり、はこの写真撮影当時、練習艦となっています、よくみますと格納庫にコンテナのようなものがみえますが、このコンテナはプレハブ式の教場、やはり練習艦らしい構造です。

 はるな。遠景にかすんで見えますのがヘリコプター搭載護衛艦はるな。はるな、長く佐世保を母港としていましたが1998年に舞鶴基地に転籍しました、それは舞鶴に飛行場が無かった時代、艦載機を大村航空基地に配置していた為なのですが、舞鶴航空基地が出来た。

 第3護衛隊群の直轄艦はるな、折角舞鶴まで雪中行軍したのですから、はるな、正面から撮影したいなあ、こう考えるのは至極自然の流れなのですけれども、基地の隊員さん曰く、ここから先は危険です、と。北吸岸壁は海上自衛隊の岸壁では最長、除雪も大変なのだ。

 あぶくま。北吸岸壁は海上自衛隊の岸壁としては最長の長さを誇るのですが、一般公開の門扉はその中央部にありまして、その門扉の近くに近海練習航海部隊が接岸しています、そして総監視閲のために除雪されているのですが、あぶくま係留位置はその近くという。

 除雪の様子はこうした状況となっていました、放水で融雪しているという状況ですね。実は東舞鶴駅から舞鶴基地まで、全く除雪されていませんでしたので、この道中もかなり難儀したものでした。水を含みますと霙のようにはなるのですが、積るよりは、という訳ね。

 はやぶさ型ミサイル艇と除雪の様子、こうして除雪が進むのならば待っていれば護衛艦はるな撮影までたどり着けるかな、と思うのですが、この北吸岸壁は1km以上ある長大な岸壁です、そしてミサイル艇の停泊しているのは真逆の西端、はるな係留は東端にたたずむ。

 造船所側に、なにか停泊している、白い艦番号がみえて、8と、2、そして8かな。視力検査のようになっている、今のロービジ塗装では艦番号が読み取れない事は確実でしょうね、艦番号828はミサイル艇はやぶさ型のミサイル艇うみたか、それにしても吹雪がすごいね。

 うみたか、護衛艦と練習艦の狭間から見えました。ところで除雪が進む最中なのですが、また改めて降り始めたという。一方意外に思われるかもしれませんが京都府の積雪地である舞鶴は、真夏はフェーン現象で京都府一番の猛暑酷暑を誇る場所ともいう、なんて事だ。

 舞鶴の豪雪、気をつけねばならないのは舞鶴線と山陰本線の運行状況です、もっとも当時はCOVID-19なんていう恐ろしいものはありませんし、そして東舞鶴駅前にはサウナのカプセルホテル“赤レンガ”がありました、もう営業再開無く取り壊されてしまいましたが。

 あぶくまの滝、いや護衛艦あぶくま艦上から融雪されました水が流れているだけなのですが。あぶくま、この頃は舞鶴地方隊所属でした、そして1999年に海上自衛隊初の海王警備行動命令が発令された際、護衛艦はるな、みょうこう、あぶくま、が任務に当りました。

 みょうこう、対岸の造船所側に整備中です。こんごう型ミサイル護衛艦3番艦、満載排水量9500tのイージス艦あたご配備までは舞鶴基地最大の護衛艦であると共に、1998年に北朝鮮が長距離弾道ミサイルテポドン発射試験を実施した際、世界で初めて追尾に成功した。

 ユニバーサル造船、この頃の社名はこちらでしたか、舞鶴ではとうとう造船業が廃業し艦船整備専業となってしまいましたが、日立造船舞鶴工場以来の伝統ある造船所です。整備もさることながら造船能力は高く、例えば高速輸送船などもっと発注すべきだったと思う。

 うみぎり、うみどり。うみどり、というのはミサイル艇ではなくこちらの白い鳥さんです、うみぎり、のほうは海象ではなく護衛艦だ。舞鶴らしい情景、除雪が完了していないからこその不思議な情感を醸すこの写真は撮影から何年経ても見返すほどの好きな構図です。

 うみどり。改めてほのぼのとした情景なのですが、しかし雪の日と云うのは撮影していますと大変です、特に降っている最中は雪は舞い上がりますので、防滴カバーを掻い潜るようにレンズに付着し、しかも雨滴よりもカメラのレンズを曇らせてしまう、難儀するのだ。

 公用車が練習艦かしま舷門に横付けしています、舞鶴地方総監加藤耕司海将の表敬訪問です。この日に入港した練習艦隊、晴天や曇天と多少小雨ならば舞鶴水交会や隊友会と家族会が盛大な入港歓迎式典を行うのですけれども、この年はどうだったのでしょうか雪で。

 練習艦隊司令官は井上力海将補が務めていました。練習艦隊司令官の前には呉基地に司令部を置く第4護衛隊群司令として護衛艦ひえい、に居られたとのことですが、先代の戦艦比叡は練習戦艦となった歴史もあります。なお、かしま先代も先代は練習巡洋艦鹿島です。

 舞鶴地方総監加藤耕司海将が表敬訪問を終えて総監部へ戻られます。総監部は鎮守府庁舎を受け継ぐ立派な建物ですが、ちなみに護衛艦はるな以下第3護衛隊群の司令部はこの北吸岸壁の端の方に小さな部屋がありまして、ちょっと落差に驚いたのを思い出すところで。

 みょうこう全景が見えてまいりました、日本海側の冬の天候は変わりやすい、こういわれるところなのですが、誇大表現では無く数分ごと一新します、すると撮影位置を移動する時機というものが短時間で変化しているのですね、そう、風を読み雪を読まねばならない。

 かしま、うみぎり、並びと共に風を読み雪を読まねばならないというのは、この日に雪景色のヘリコプター搭載護衛艦はるな撮影という主題が練習艦隊撮影と並んで目標としていましたので、積雪で正面に回れないのであれば、さてどこから撮影するか、決めねば、と。

 かしま舷門を前に、やはり一旦は北吸岸壁を、つまり舞鶴基地を出て撮影するべきかな、と。2020年代と違い、基地は手荷物検査により一般公開日は混雑せず出入りできました、すると舞鶴市役所のあたりから撮影する、そういう選択肢でも割と簡単だったのですね。

 はるな撮影を基地から文庫山など周辺の山頂に雪中を移動しようとしていたところ、そこを日本海側の厳しい冬将軍の寒波が襲おうとしていた、そんな事はありませんでしたのでご安心してお読みください。舞鶴線も山陰線もまだ大丈夫という事でしたから、大丈夫ね。

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【京都発幕間旅】榛名さんの総監部グルメ日誌(北海道)千歳空港ぶたさん焼き鳥とハイボール

2022-01-30 18:22:06 | グルメ
■北海道-戦車の写真で一杯
 北海道、北部方面総監部の置かれる遠い北の大地ではあるのですが関空神戸空港中空と旅客機の本数が多く早割旅割活用で東京よりも近く感じる立地でもある。

 自衛隊関連行事がここまで長期間中断するとは驚きなのですが、私事他事遠出する事がほぼなくなりますと、そういえばあのお店はどうなったのだろう、と考える事も多々あります。呑みニケーション、昔はそう思ってはいなかったが今は多少の重みを感じるという。

 北海道。こんなに何年も北海道に行かないというのは、なかなか。そしてCOVID-19が今後落ち着きをみせたとしても航空会社が軒並み大打撃を受けていますので、前のように、いや昔のように早割にて手頃に北海道というのも難しくなるのか、こう思うところです。

 千歳空港。北海道空の玄関口でして、個人的にはもう少し道北や道東にも旅客機の便が増えればともおもうのですが、この巨大空港の飲食店街はちょっと素通りするには惜しいほどに活気と発見が並びます、店の前も並ぶのですが文庫本を手に並び待つのもまた楽しい。

 空港で一杯、というのは旅客機が離陸する直前まで愉しむ事ができます、札幌駅では無理ですが空港ですと搭乗手続き後でも放送で呼んでくれますので、ね。もっともそれほど深酒を搭乗前につぎ込んだ事はありませんけれども、遅刻が無い分気軽に祝杯というわけで。

 焼き鳥。北海道で驚きましたのは焼き鳥です、焼き鳥で驚くものかと云われるかもしれませんが、鉄串、いや驚くところはそこではなく、ぶたさんのお肉なのですね。北海道ではぶたさんの串焼きを焼き鳥という、所も多い。いや、とりさんの焼き鳥屋さんもあったし。

 ハイボール。肴に焼き鳥といいたいところですが、自衛隊行事を撮影した後の一杯というのは、いちばんの肴は撮影出来た写真を見返しながら芳醇なウィスキーの風味を嗜むこと。ピンボケがありますと一寸残念に思うのですが、枚数が枚数ですので概ね肴に最適という。

 スープカレー。そういえばデジタルカメラ導入草創期に、師団祭で雹も降る程の豪雨に見舞われ、防滴装備導入が不充分であった事からレンズに水が入り曇ってしまい、残念な思いと北海道の雨の冷たさに悲しみながら啜ったのもスープカレーでした、あれは教訓に。

 焼き鳥丼もぶたさんだ。〆ものに焼き鳥丼は北大路では常識の一つだったのですが、焼き鳥がぶたさんという北海道のお店では焼き鳥丼はぶたさん丼になる、もっとも帯広名物の豚丼とも違うのですが。しかし、この日は北海道の広い駐屯地を走った後、丁度おいしい。

 祝杯をあげ終えまして、いや実は駐屯地で見かけた人と再開するのも千歳空港の不思議なところなのですが、そしてオシャレな土産物なんかを買い求めましたのちに空の帰路へと向かいます。一度くらい寝台特急も考えてみたかったところですが、次の師団祭を楽しみにしているところです。

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ウクライナ危機,ロシア軍ユニオンカレイジ演習とNATOネプチューンストライク空母戦闘群

2022-01-29 20:00:20 | 国際・政治
■NATO-ロシア緊張激化
 ロシアは日本にとっても隣国であり緊張は容易く太平洋正面へも波及するという前提で、現在の緊張を見てゆく必要があります。

 NATOは冷戦後最大の空母戦闘部隊ネプチューンストライク2022を編成しました。これはロシアのウクライナ侵攻兆候を受けてのウクライナ危機を前に1月24日に加盟国より空母部隊を参集させ編成、世界初の10万トン級空母であるニミッツ級後期型の原子力空母ハリーシップトルーマンも同日を以てアメリカ第六艦隊からNATO直轄運用へと移行した。

 ネプチューンストライク2022の旗艦はアメリカ海軍指揮艦マウントホイットニーが第六艦隊司令部共々NATOへ参加し、イギリスからは極東回航帰国間もない空母クイーンエリザベス、フランスからは唯一の空母である原子力空母シャルルドゴール、イタリアからはF-35B戦闘機運用能力のIOC初度能力獲得間もない空母カブール、空母4隻が揃いました。

 ハリーシップトルーマンはアメリカ海軍巡洋艦に加えて護衛へノルウェー海軍はイージス艦ナンセンを地中海へ派遣しています。ネプチューンストライクは2021年にもNATO図上演習において編成が研究されていますが、実際に編成され実任務に臨むのは今回が初めてで、当面は2月4日まで地中海において空母群による海上からの抑止力を行使します。

 ロシア航空宇宙軍は2月10日から20日まで実施するユニオンカレイジ2022“大規模合同演習”ベラルーシへSu-35戦闘機を演習に派遣を開始しました。Su-35戦闘機の派遣はロシア国防省の発表によれば二段階ある展開計画の第一段階となり12機が派遣されているとのこと。Su-35戦闘機はAESAレーダーにより400kmの索敵能力を持つ新鋭戦闘機です。

 ユニオンカレイジ2022演習はロシアのドマノフスキー演習場、ギジスキー演習場、オブズレスノフスキー演習場、ブレストスキー演習場、オシポビッチスキー演習場、そしてベラルーシ国内の演習場が演習地として予定されています。この演習は、ロシア軍のウクライナ侵攻への準備演習、若しくはそのまま軍事行動へ発展する事が警戒されている演習です。

 OSCE全欧安全保障協力機構は、ロシア軍からの演習実施通知を受けていません。ロシア国防省によれば、演習の規模はOSCEの2021年ウィーン文書に基づく通知が必要な演習規模を下回る為としていますが、遠州地域付近には別名目の演習で展開したロシア軍部隊が展開しており、複数の演習が同時多発的に並行して行われる可能性も憂慮されています。

 ロシア極東の東部軍管区からベラルーシウクライナ国境地域へ軍用車両を積載した貨物列車が到着した、フランスF2ニュースが26日付で報道しています。ベラルーシはロシアの友好国であるとともに、ウクライナの首都キエフ最寄りの国境はロシアウクライナ国境よりもベラルーシウクライナ国境地域であり、ロシア軍のキエフ首都侵攻が懸念されます。

 アレクサンドルフォミン国防副大臣の発言によれば、今回派遣された装備はS-400地対空ミサイルシステムとパンツィーリ複合防空システムからなる2個部隊で、任務は友好国であるベラルーシへ敵対的航空戦力が及んだ状況に対応するとしています。S-400ミサイルは射程が極めて長い地対空ミサイルであり、その射程は400kmに達するとされています。

 ロシア東部軍管区は旧極東軍管区であり、中ロ国境及び太平洋沿海地域を防衛する重要な部隊ですが、中ロ関係の良好化と、北京五輪2022を控えた緊張緩和の情勢があり、ベラルーシへ展開する余裕が生じたのでしょう。この東部軍管区部隊到着前にもロシアウクライナ国境地域に展開しているロシア軍は10万規模に達しており、今回更に増強された構図だ。

 エストニア政府はドイツ政府に対しウクライナへの旧東ドイツ軍装備譲渡を要請しました。エストニア軍は旧東ドイツ製のD-30榴弾砲を49門運用しています。これは元々、東西ドイツ統合により余剰となったものをフィンランド軍が取得したものですが、フィンランド軍でも余剰となったことから2009年にエストニア軍が導入し現在も運用中の火砲です。

 D-30榴弾砲は122mm榴弾砲で通常榴弾射程は15.4kmとRAP弾では21km、設計は1960年ですが堅実な設計と確実な作動で定評があります。エストニアがウクライナ防衛協力を求める背景には、ロシア軍侵攻の恐れのあるウクライナは、スバルキラインというロシアの想定侵攻地域上に隣接するエストニアも運命共同体との認識があり緊張下に在る為です。

 アメリカ政府はウクライナへ対戦車ミサイルジャベリンなどを供与しこの程搬入されたとのこと。これは26日付アメリカABC報道で、今回搬入された装備はジャベリン対戦車ミサイル240基とAT-4個人携帯対戦車弾800発。空輸によりウクライナ軍へ配備され、ウクライナ軍は先行供与されたジャベリンによる訓練を既に開始していると発表されている。

 ジャベリン対戦車ミサイルは射程1500mの携帯式対戦車ミサイルで赤外線画像誘導方式により戦車等から発する赤外線を認識し撃ち放し式にて戦車の弱点とされる上部装甲を狙う。AT-4はスウェーデンが開発したグラスファイバー製発射筒に装填された84mm無反動砲弾です。ただロシア戦車はシリア内戦の戦訓を反映し対戦車兵器へ防御が強化されています。

 ウクライナ軍はトルコ製バイラクタルTB2無人機による黒海上空哨戒飛行を開始したとのこと。バイラクタルTB2は2020年にアゼルバイジャンとアルメニアとの間で勃発したナゴルノカラバフ紛争においてイスラエル製ハーピー徘徊式弾薬とともに猛威を振るった無人航空機の一つで、150kgまでのセンサーや弾薬を搭載、自爆攻撃も可能というもの。

 バイラクタルTB2無人機はウクライナ軍がロシア軍によるクリミア併合を受け2019年に防衛力強化の一環として12機を導入、運用実績の高さから2020年に5機を追加しており、また開発メーカーであるトルコのバイカル社はウクライナへ更に48機の現地生産を目指す合弁会社を創設しています。ロシア圧力が高まるウクライナの防衛への新しい一歩です。

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【榛名備防録】いま輸送機が熱い!傑作輸送機DC-3/C-47はC-130輸送機の源流-その歴史

2022-01-29 14:41:18 | 防衛・安全保障
■横田からは日米空挺合同演習
 コロナ禍下で行事全面中止となると名神でMCVを見たとか名古屋港に北海道の師団がとか、舞鶴基地に護衛艦が居たとか情報を寄せてくれる友人が多く話題が愉しい。

 東京の友人が横田基地が凄いと知らせてくれました、なんでも24日から第1空挺団参加の日米合同演習を実施しているとのことで、アメリカ空軍第374輸送飛行隊などが13機編隊のC-130にて東富士演習場に空輸、降下後は空挺隊員がバスで横田に戻り、また空輸、450名という空挺大隊340名丸ごとと特科中隊等支援部隊をC-130から降下させたもよう。

 輸送機が今話題だ。アフガニスタンのカブール陥落、2021年8月の騒擾は今なお記憶に新しいものですが、アフガン脱出民を乗せた米軍C-17は、しがみついての出国を試みた若者たちをなぎ倒し振り落した衝撃的な報道映像が印象的でした。一方、2022年は1月のトンガ大規模噴火に際してオーストラリアや日本の輸送機救援物資輸送が希望を繋ぎました。

 DC-3,戦術輸送機というものを辿ってゆきますと、様々な名機に珍機が並ぶのですが、たどり着くのは偉大なる凡庸というべきアメリカのダグラスDC-3が一つの分岐点となります。この原点は、1932年、世界恐慌の影響が残る当時にアメリカの国内航空大手TWA社が航空各社に要請した“全金属機で12名乗り航続距離1700km”の新型機開発がその始まり。

 ジャックノースロップ、エドモンドアレン、ジェームズキンデルバーガー、アーサーレイモンド。当時ダグラス社には20世紀のアメリカ航空開発を牽引できる程の人材が揃っていまして、この要請に応える事となるのですが、なんと納期は五カ月後という、今では考えられない厳しい開発期間でした。しかし、そこは天才たち、ボーイング247が生まれた。

 ボーイング247は三発機、これが後にDC-1輸送機と発展します。この改良型DC-2はアメリカ大陸横断用に翌年開発され、給油経由地を経て東回り12時間45分西回り15時間45分というダイヤグラムでの飛行が可能となりました。この機体の評判は良く、日本の中島飛行機も輸入し、AT-2輸送機など国産輸送機開発の参考となる程の完成度を誇りました。

 DC-3は1935年にアメリカン航空がDC-2の胴体幅拡張型要請により開発されます。これは今のジェット旅客機よりも時間を要する当時の旅客機に、寝台旅客機というサービスを提供する新機軸を盛り込むために要請されたものですが、アメリカン航空のスミス社長がドナルドダグラス社長へ40機購入の直談判を行い、即決したというアメリカらしい逸話も。

 DST,ダグラススリーパートランスポートと称された新型機は寝台上下16寝台と畳めば座席28席、大型化で旅客運賃を一席当たり35%から50%低減できたことで一挙にアメリカでは空の移動時代が組まれます。傑作機は量産され、アメリカの国内線シェア80%に達し、1941年9月、その性能に目を付けたアメリカ陸軍がC-47輸送機として制式化しました。

 C-47は空挺部隊に重宝され、特に大型化に合せてエンジンを強化した為、グライダー曳航も兼用でき、1943年7月9日のシチリア島侵攻作戦では4400名を落下傘とグライダーにより空輸、欧州で空挺部隊と云えばクレタ島空挺強襲のドイツ軍、というお題目を一日にして奪った実力を発揮、1944年6月6日のノルマンディー上陸では二日で6万名を運ぶ。

 第二次世界大戦に投入されたC-47/DC-3輸送機は戦後も4000機が生き残り、民間航空に払い下げられ、一機二万ドル、分りやすい定価で民間に払い下げられたDC-3は大量の操縦手と共に空の交通を世界中に開拓し、これは第二次世界大戦後の復興に寄与してゆきます。そしてベルリン封鎖のベルリン空輸など、戦術輸送機を空軍力に内部化してゆきました。

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令和三年度一月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2022.01.29-2022.01.30)

2022-01-28 20:00:21 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 第1空挺団の情景と共に昨今の厳しいCOVID-19の情勢を見てゆきましょう。

 横田基地から第1空挺団がここ数日、東富士演習場へ大規模な空挺降下訓練を行う日米合同演習が行われているとの事で、富士山ろく上空を覆う落下傘は軍歌“空の神兵”を思わせる風景、このCOVID-19感染拡大さえ無ければ即座にカメラとレンズを担いで撮影を準備するのに、こう考えるところではありますが、現状の感染拡大は予断を許しません。

 日本の医療機構が耐えられるのはオミクロン株一日感染者が7万8000名まで。これは昨年真夏に医療崩壊直前まで追い詰められたデルタ株感染拡大に対して、デルタ株と比較したオミクロン株の重症化率が三分の一という数値を元に逆算すると、昨年最も感染拡大した感染者数の三倍が日本の医療が支えられる限度となり、その人数が毎日7万8000名という。

 7万8000名。この数字の前後を行き来していますが、東京都の感染者数は1万7631名、大阪府で1万前後、しかしまん延防止等重点措置の施行、また感染拡大の進む東京都は緊急事態宣言布告も視野に感染抑制を努力しており、倍々の増加状況からはやや増加率が抑えられており、強い施策さえ取れるならば一気にピークアウトの可能性は、出てきました。

 COVID-19オミクロン株は、アメリカCDC疾病対策センターの暫定数値によれば、季節性インフルエンザと比較し、感染力は15倍から28倍、致死率は12倍程度とのことです。感染率と致死率を加えますとやはり季節性インフルエンザよりもリスクは三桁、三倍ではなく三桁上のリスク、と云わざるを得ず、ただの風邪というには少々無理がある印象です。

 季節性インフルエンザは感染力で感染1名に対して1.3名まで。また致死率は感染者十万名あたり1.8名となっています。感染率は実行再生産数からの算出で死者数は純粋に十万あたりの数字です。仮にCOVID-19がインフルエンザと同程度、ここまで弱体化するならば、社会的リスクも許容されるのかもしれませんが、現実をみればそれほど甘くはありません。

 COVID-19オミクロン株は感染者1名に対して20名から36名、この数字の違いは地域差ということです。そして死者数は感染者10万あたり23.1名という。COVID-19の原株が致死率2%という、感染者10万あたり2000名の死者でしたので確かに大幅に下がってはいますが、これは麻痺というもので、致死率がもう少し下がる変異を待たねば危険でしょう。

 重症化リスクは低い、これは理解できるのですが、逆にCOVID-19前にインフルエンザが重症化して入院した方をまわりに探してみましたが、別の病気で入院加療中に、という例こそあるのですが、もともと季節性インフルエンザでは入院による医療崩壊は中々起きえません、また血中酸素濃度が90を切る状況や発熱が40度まで上がる事もまた稀でした。

 インフルエンザとの最大の違いは、ワクチン効果の問題で、そもそも新型インフルエンザを除く季節性インフルエンザは、ワクチン効力が低いものも含めて全国民の接種率が70%を超えているのに集団免疫が構成されない事例は聞かないのですよね。効力あるワクチンが普及しているならば接種していない方の自己責任となる訳ですが、効力がないのだから。

 ブースト接種。期待するところは、ワクチンが重症化回避ではなく感染予防に効果を発揮するという三度目の接種、ブースト接種ですが、岸田内閣は前の菅内閣のようにワクチン担当大臣を置かず業務過多となっている厚生労働省と厚生労働大臣に一任した事で、ワクチン確保に大きな問題も生じています。これはもう少し菅政権時代の対策を学ぶべきです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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ミサイル防衛戦!アラブ首長国連邦-中距離弾道弾攻撃をTHAADで阻止と策源地攻撃を実施

2022-01-27 20:01:49 | 先端軍事テクノロジー
■厳しいミサイル防衛の現実
 2022年1月にミサイル防衛の実任務という注目すべき事例がありました、場所は中東、日本のミサイル防衛についても参考となる点はあり一つ情報を纏めてみました。

 北朝鮮によるミサイル実験が繰り返され、弾道ミサイルを低高度で極超音速飛翔させる低軌道弾道試験や、超低空を飛翔する巡航ミサイルを、これまで北朝鮮が実験してきましたミサイル防衛システムを上昇限度外から掻い潜るロフテッド軌道と併用して運用した場合、日本のイージス艦とペトリオットミサイルによる防衛システムを突破する懸念があります。

 イージス艦が日本海上に展開していない状況での突発的なミサイル攻撃が在った場合はどう対応するのか、陸上配備型ミサイル防衛システムイージスアショアの建設中止など、日本ではミサイル防衛の難しい判断が迫られる状況となっていますが、こうした中、1月17日に、アラブ首長国連邦のミサイル防衛戦という重要な戦訓が展開される事となりました。

 イージスアショアの建設可否という日本の問題がありますが、アラブ首長国連邦は世界にさきがけアメリカよりTHAADを導入した一方、専守防衛で相手に犠牲者を出さず防衛するミサイル防衛には膨大な予算を、防衛力整備は勿論ミサイルそのものにも要するという現実と、しかし策源地攻撃という日本も検討した選択肢での人道問題も、表面化しました。

 アラブ首長国連邦軍は1月24日、THAAD高高度ミサイル防衛システムはフーシ派の弾道ミサイル攻撃を迎撃し阻止したと発表しました。これはイエメンの武装勢力フーシ派がアラブ首長国連邦のエミラティ石油施設に向け発射した中距離弾道ミサイルを迎撃したもので、THAADは実任務における中距離弾道ミサイル迎撃を成功させた初事例となりました。

 THAADはアメリカ陸軍が中距離弾道弾までの迎撃を念頭に開発したもので射程は250km、世界で広く利用されるペトリオットPAC-3の30kmよりも迎撃範囲は大幅に強化されています。今回迎撃したのは二発の中距離弾道ミサイルに対してで、このエミラティ石油施設び近傍にはアメリカ軍およびフランス軍が前方展開するアルダフラ空軍基地もあります。

 THAADの迎撃成功は朗報ではありますが、この日ミサイル攻撃を受けたのはエミラティ石油施設だけではなく、同時にアブダビの空港施設へ無人機による自爆攻撃が実施、弾道ミサイルと無人攻撃機による同時攻撃について、無人機攻撃に対しては撃ち漏らしが在り、被害が生じたとのこと。防衛に徹する難しさを端的に示した事例ともいえるでしょう。

 アラブ首長国連邦軍は1月17日、イエメンフーシ派によるアブダビの空港施設へ無人攻撃機による攻撃を受け、迎撃戦を展開しました。この迎撃にはペトリオットミサイルなど10発が使用されましたが、数基が防空システムを突破し空港施設周辺で爆発、民間人死傷者がでたとされています。亡くなったのはパキスタンとインドからの外国人労働者という。

 迎撃はもう一つの課題を生んでいます、ペトリオットミサイルが迎撃に用いられましたが、アラブ首長国連邦軍によれば迎撃費用はミサイルだけで5000万ドルの費用となりました。産油国ではあっても国防費に上限はあり、無人機自爆攻撃は安価な機体を使い捨てとしている方式であり、いわば児戯のようなガラクタを相手に膨大なミサイルを用いた事となる。

 無人機攻撃は、巡航ミサイル程の速度を有さず、また慣性航法装置も民生用のものを流用しており、非常に安価です。本格的な電子戦環境では運用できるものではありませんが、平時から電子妨害を広域で行えば民間携帯電話網やインターネット、民間航空機運航が不可能となります、命中精度も無差別攻撃ならば必要はなく、迎撃する側には頭痛の種です。

 アラブ首長国連邦軍はフーシ派からの弾道ミサイル攻撃を受けF-16戦闘機による策源地攻撃を実施しました。弾道ミサイルはエミラティ石油施設へ2発が発射、このミサイルは命中前にTHAADミサイルにより迎撃されていますが、弾道を描いて飛翔する弾道ミサイルの発射施設はこの際に標定され、イエメンのジャウフ県に発射基地があると判明します。

 策源地攻撃には空軍が装備するF-16block60戦闘機が投入、作戦は弾道ミサイル攻撃が実施された1月17日から一週間後の21日、現地時間未明の0410時に実施され、アラブ首長国連邦国防省公式発表では、弾道ミサイル発射装置2基を破壊したとしています。THAADによるミサイル防衛の成果はりましたが、策源地攻撃の重要性も示しています。

 アラブ首長国連邦への弾道ミサイル攻撃は、同時にサウジアラビアのダーランアルジャヌブの石油施設に対しても攻撃が行われており、サウジアラビアも策源地攻撃を実施しています。更にアラブ首長国連邦のアルダフラ空軍基地に接近した弾道ミサイルはアメリカ軍がペトリオットにより迎撃しており、これは1991年湾岸戦争以来の実任務とのことです。

 アラブ首長国連邦軍とサウジアラビア軍など有志連合は両国に対するミサイル攻撃への策源地攻撃とともに一部が報復攻撃を実施していますが、この攻撃による死者が国連により問題視されています。策源地攻撃はイエメン内戦の反政府勢力フーシ派支配地域において実施したとされていますが、同時に北部サアダ県ではミサイル施設以外は空爆された。

 サアダ県への航空攻撃はフーシ派の声明によればフーシ派の拘束した民間人収容施設へも被害が及んだとしており、91名が死亡したと発表しています。この空爆について、国連も声明を発表、過去三年間で最も大規模な空爆であり多くの犠牲者が出たと非難しています。ただ、国連はフーシ派による攻撃でも死者が出ている事実を指摘、停戦を呼びかけました。

 イエメンからのミサイル攻撃に対しては、THAADなど最高度の防衛システムにより相手国を攻撃せず防衛できる可能性を示した一方、簡易な無人機自爆攻撃と併用した場合、その迎撃への費用は短時間で数千万ドルと天文学的なものとなる財政上の問題を示す一方、策源地攻撃であっても人道危機に繋がるという難しい問題を突き付ける構図となりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】三井寺(円城寺)智証大師円珍貞観元年の再興と平安朝中期"千年戦争"の勃発

2022-01-26 20:22:08 | 旅行記
■再興と千年戦争の始まり
 大友氏の氏寺から一時の荒廃を経て智証大師円珍による再興を迎えた三井寺は、続く千年戦争というべき激動の時代へ進みます。

 千年戦争、こう表現しますとどういった印象を受けられるでしょうか。なにかSF的と云いますか現実性を感じないでしょう。しかし、この三井寺という寺院は千年に及ぶ対立を経て、そして驚く事に対立構造が残っていたものが平成時代に入り和解した歴史を持つ。

 天智天皇所持の弥勒菩薩像。もともと三井寺は氏寺となっていますがその本尊は天智天皇所持の弥勒菩薩像となっています。これは官寺であることを意味するものではありませんが、東寺や神護寺はもちろん、延暦寺とも並ぶ格式を元々備えていた寺院であったのです。

 三井寺の伽藍は、三重塔を始め華美を敢えて排した質実剛健的な美しさと規模を広げていますが、しかし拝観にさいして一つ一つをじっくりと観察しますと、何れも近世の建築物である事に気付かされます、しかし創建は奈良時代の氏寺である事は前述しました通り。

 円珍。中国から最澄が密教をいち早く導入したものの、その内部化よりも導入を急いだことで解釈と研究に限界がありました密教を、改めて深層理解するべく唐より帰国した円珍は比叡山延暦寺より園城寺初代長吏として任じられ、こうして氏寺から先端寺院となる。

 唐院。この際に清和天皇より御所は仁寿殿の建物を賜り、三井寺に移築した際に唐より請来して得ました経典や法具を奉じる延暦寺の書庫となります。経典や法具は最澄と空海、延暦寺と神護寺の温度差に繋がりましたものでもあるのですが、今度は三井寺に置かれる。

 貞観元年こと西暦859年の三井寺新しい門出となるのですが、この貞観は千年前の東日本大震災や古富士噴火という富士山史上最大の噴火を筆頭に災害が相次ぐ時代、円珍は研究に邁進するとともに、延暦寺の修行は千日回峰行を筆頭に修験道のような苦行をつみます。

 密教というものは、しかし苦行に徹するものでは必ずしもなく、こうした中で最新の研究を積むと共に延暦寺との温度差が自然醸成されてゆくのですね。智証大師円珍としまして、円珍は後に比叡山の最高位である座主へと上り詰めてゆくのですが確かな温度差もあった。

 智証大師円珍は門宗という天台宗に新しい流派を構成してゆくのですが、智証大師円珍の没後、天台宗総本山の延暦寺に対して、天台寺門宗という新しい宗派を立ち上げ、慈覚大師円仁時代の比叡山と対立構造が醸成されてゆくこととなります。彼らは比叡山を降りる。

 三井寺は比叡山を降りた天台寺門宗宗徒たちの拠り所となります。すると、比叡山も座視する事無く僧兵を募って三井寺を攻撃する。実際、比叡山の門徒による攻撃により、三井寺は七回ほど全焼する被害を受け、伽藍が全て近世以降のものというのはこうした歴史が。

 不死鳥の寺とも称される三井寺は、全焼七回、半焼五十数回という比叡山からの攻撃や戦乱の巻き込まれ戦火などを含め幾度も攻撃されつつ再興しているためというのですが、すると、延暦寺と三井寺の宗教の違いというものを考えてしまいます、故に調べてみますと。

 延暦寺と三井寺の宗教の違い、それはそれほど大きくは無く、修験道と密教の調和という延暦寺に対して、修験道など日本古来の修行は否定しないが密教の温和性に重きを置くのが三井寺の天台寺門宗という。こうして千年以上前、焼討から対立がはじまり、繰り返す。

 近江を代表する二つの寺院の対立は、実は根本から和解に転じるのは平安時代でも鎌倉時代でも室町時代でも江戸時代でも無く、明治でも無理で戦後も終わりと称されるようになりました平成時代のことなのですが、実に千年戦争が、日本でも実際続いていたのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】三井寺(円城寺)近江,滋賀県は寺院の県である-大津は琵琶湖畔に不死鳥の寺

2022-01-26 20:00:28 | 旅行記
■不死鳥の寺-円城寺探訪記
 大津京は遷都短期ながら平安京よりも先んじていまして、京都市内からは舞鶴は勿論宇治市よりも隣県の大津市は近しさを感じます。

 滋賀県は寺院の県である、こう表現しますと驚かれる方が多いのですが、平安遷都の頃から国家宗教として重要視された比叡山延暦寺は大津市の寺院であり、まさに京都洛中を眼下に収めているという立地でもありますが、寺院の総数は滋賀県の方が京都府より多い。

 不死鳥の寺。大津市には不死鳥の寺と呼ばれる寺院があります、これは平等院鳳凰堂や鹿苑寺金閣のような鳳凰を祀った寺院という訳ではなく、何度戦火に焼かれても復興する、という雄々しい寺院といいまして、COVID-19に蹂躙される世界では是非とも見習いたい。

 三井寺、ここは滋賀県大津市園城寺町の山一つ隔てて京都市と隣接する近江の古刹です。オーバーツーリズムという観光過多、COVID-19感染拡大前にはこうした言葉が在りまして、京都と云えば観光客過多、寺院よりも観光客を眺めに来ているような状況を指すもの。

 琵琶湖畔の大津。東京はじめ多くの観光客の方には京都市内は京都市役所前駅から地下鉄で直通と説明しますと驚かれます、そしてオーバーツーリズムという言葉が嘘のように、古刹の気風を満喫できる程度の静寂と人の少なさがあり、水面の様な情感を湛えている。

 三井の晩鐘。琵琶湖畔の高台に鎮座します寺院は日本百景に三井の晩鐘として謳われた古刹ではあるのですが、その風情ある山門は勿論、三井寺まで至る京阪電車は石山坂本線という路面電車然とした出で立ちもありまして、なるほど大津京の気風さえ感じるものです。

 天台寺門宗である寺院は弥勒菩薩を本尊として奉じ、その開山は朱鳥元年こと西暦686年の奈良時代、大友与多王が開基となりまして創建、大友氏の氏寺として始まりましたが、長い時を経て民衆の寺院へ移ろい、また意外な程の壮大な伽藍を琵琶湖畔に広げている。

 大友与多王は大友皇子の子、大友皇子は天智天皇の皇子であるのですけれども、壬申の乱にて後に天皇となる大海人皇子と戦い敗れ自害した歴史がある。大海人皇子は後に天武天皇となりますが、実はこの悲しい歴史が三井寺の名の所以となっています。どういう事か。

 園城寺とも称しまして、三井寺とどちらが正統な名称であるかを古文書に辿りますと三井寺も円城寺も単に“寺”とされていまして、これは延暦寺にも重なるてんなのですけれども、寺に行くと云えば洛中では延暦寺か三井寺に行く事を示した程の歴史の古さがあった。

 天智天皇と遠い所縁がある氏寺であるのですけれども、当地は大津京という平城京から臨時首都となりました歴史がありまして、皇子の産湯に用いられました御井は、後に、天智天皇、天武天皇、持統天皇、その産湯となりました御井が此処に在る事から三井寺、と。

 天武天皇、園城寺といいますのは天武天皇が贈った名といい、大友与多王が開山に際し荘園も城塞も全て寄進し寺を起こした事から荘園城塞の円城寺とした勅額を送っています。もっとも開祖の父大海人皇子を自害に追い込んだ歴史があり、負い目からか重用している。

 西国三十三所第14番札所。現在ではこうして壮大な伽藍が広がる寺院は、しかし氏寺の悲しい点で、大友氏の衰亡とともに廃寺の様相を呈してゆきます。しかし、天安2年こと西暦858年、延暦寺から唐に留学の途に就いていた僧侶が帰国しました、名は円珍という。

 円珍はのちに智証大師として延暦寺第五世座主となるのですが、延暦寺の開祖最澄が日本に取り入れた天台宗と密教について、拙速に日本に取り入れた故に研究が不充分であり、その研究道場として廃れつつあった三井寺を延暦寺の塔頭とし、再興する事となりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ危機,ロシア軍集結と米英仏空母打撃群地中海へ-NATO東欧へ兵力集中急ぐ緊迫状況

2022-01-25 20:05:46 | 国際・政治
■冷戦後最大の危機
 欧州では東欧を中心にバルト海から地中海、かつて鉄のカーテンと称された地域を思い出させる広い範囲において冷戦終結後最大と云える危機が進行中です。

 新年早々第三次世界大戦の危機はご容赦願いたい、こう考える今日この頃、何故ならばウクライナ情勢が緊迫度合いを増しており、このままでは東欧地域全域をも巻き込んだ大規模紛争へ展開する可能性が徐々に高まってきました。2021年12月よりロシアウクライナ故郷地域へロシア軍が大部隊を展開させ続けていますが、導火線は様々な火点へ延びる。

 ウクライナのアメリカ大使館は不測の事態の懸念があるとして、大使館員とその家族にウクライナ国外への脱出を開始させ、またイギリスなど欧州各国も同様の施策を採りました。我が国でも外務省は渡航安全情報について、民間航空機が飛行出来る間にウクライナからの出国を呼びかける危険情報を発表、ウクライナは極めて深刻な緊張状態となっています。

 冷戦後初めてNATO指揮下にアメリカの空母戦闘群が編入され地中海に展開、東欧地域に米軍緊急展開の準備が開始され、これは故トムクランシー氏“レッドストーム作戦発動”やラリーボンド氏“CARDRON-ヨーロッパ最終戦争”でも再現しているかの様な緊張です。共に第三次大戦に直結しかねない大規模武力衝突を題材としていますが、今は2022年だ。

 ロシアの要求は冷戦後、NATOが東方に拡大しすぎた為に元の状態に戻すよう主張し、先ずウクライナのNATO加盟拒否に関する国際合意の条約を要求、また東欧のNATO加盟国についても元の状態に戻すよう要求しています。NATO東方拡大、実際1990年代にはロシアをNATO加盟させようとの動きもあり、敵対的な関係では元々無かったのですが、今は。

 ウクライナ危機。この危機がウクライナ有事に発展する懸念というのは、2021年のバイデン大統領発言、“ロシアがウクライナに侵攻した場合に米軍は参戦しないが最大規模の経済制裁”という発言が、逆に既に経済制裁を受けているロシアとしては、米軍が介入しないならばウクライナ侵攻に勝算有り、こう解釈させた可能性がある、外交の失敗というもの。

 アメリカでは戦闘機部隊など機動力の高い部隊を欧州地域へ増派し、その緊張を緩和させる抑止力を検討していると伝えられますが、これはいい方を変えれば、米軍航空部隊がロシア地上部隊を空爆する、この選択肢を強いる訳ですから、反撃に戦術核兵器が検討される、検討と云うのはロシアが有事に際して日常的に用いる用語、こうした緊張にも繋がる。

 ロシア軍は10万規模の部隊をウクライナ国境の三カ所に張り付けています。ウクライナ首都キエフに隣接する北方国境地域、そしてウクライナ東部紛争において親ロシア派勢力がウクライナからの分離を主張しウクライナ施政権が不透明なまま停戦となった地域に隣接するウクライナ東部国境、そして2016年にロシア軍が武力奪取したクリミア半島周辺に。

 ロシア軍の地上軍作戦単位はBTG大隊戦術群が中心となっていますが、10万のロシア軍は地上軍が保有するBTG大隊戦術群の半数に近いものであり、現在は集結地域に戦車などの重車輛を並べている様子が衛星写真で確認可能です。この集結地は航空攻撃に脆弱ですが示威的でもあり、もしこの部隊が対空疎開へ分散を開始したならば、開戦の信号です。

 ウクライナへの防衛協力をドイツが拒否。もう一つは1月18日の米独外相会談とウクライナ問題にかんするドイツ政府の姿勢として、ウクライナへの防衛装備品提供をドイツ政府が拒否し、冷戦時代にNATO副司令官を伝統的に輩出したドイツがウクライナ危機への不関与を間接的に示した事も、ロシア政府にはウクライナ侵攻への勝算を高めたといえます。

 冷戦後最大と云える緊張にNATOは警戒を強化している。1月24日、地中海に展開するアメリカの原子力空母ハリーシップトルーマン空母打撃群がNATOの指揮下に入りました。空母戦闘群がNATO指揮下に最後に入ったのは冷戦時代、空母打撃群に改編されてからは2022年1月24日、空母打撃群がNATO指揮下に入るのは今回が初めてとなります。

 ハリーシップトルーマン空母打撃群がNATOの指揮下へ。しかし間の悪い事に、アメリカ海軍の稼働空母はハリーシップトルーマンとカールビンソン、ロナルドレーガン、エイブラハムリンカーン。この内、カールビンソン、ロナルドレーガン、エイブラハムリンカーンの3隻は極東地域に前方展開しており、地中海へ増派するには時間が掛かり過ぎます。

 ネプチューン2022合同空母打撃群。NATOではハリーシップトルーマンにイギリスが空母クイーンエリザベス戦闘群、フランスが原子力空母シャルルドゴールを加えた米仏英空母打撃群を編成し地中海へ展開させる方針ですが、これをうけ、ロシアバルチック艦隊と北海艦隊の行動が活性化しており、地中海と大西洋の海峡を護るスペイン軍も警戒を強める。

 しかし、新しい問題が。果たしてロシア軍がウクライナ侵攻に踏み切った場合、戦域はウクライナの一部に留まるのかという懸念があるのです。前述のロシア軍集結地域でキエフに近い地域に展開しているとしましたが、その地域にはロシアの友好国であるベラルーシ領域内が含まれており、このベラルーシはNATO加盟国であるポーランドと国境を接する。

 東欧地域への事態拡大。考え過ぎだろうと反論があるのかもしれませんが、ウクライナと同じ様にCIS独立国家共同体として、ロシアがウクライナに対する行動と同様の措置を執る可能性のある地域に、飛び地であるカリーニングラードがあります。ここにはロシア海軍バルチック艦隊が配置され、地政学的にも政治的にもクリミア半島に近い条件が揃う。

 スバルキギャップという戦略上の要衝があります。カリーニングラードはロシア本土からベラルーシとバルト三国を隔てている飛び地なのですが、ベラルーシはロシア友好国であり、ベラルーシ国境までロシア軍が展開できるならば、ベラルーシを進発するとカリーニングラードまで100kmという距離で、しかもこの100kmは舗装された高速道路が通る。

 スウェーデン軍は先々週、バルト海の離島であるゴトランド島に機械化部隊を緊急展開させました。ゴトランド島は鳥取県と同規模の離島ですが、バルト海の要衝に位置し、仮にロシア軍がバルト三国に隣接する飛び地カリーニングラードを経由し、東欧地域へ侵攻する際には、ゴトランド島が兵力集積地に適地であり、先手を打って防衛を強化したかたち。

 第三次世界大戦の危機。こう表現しましたのは、バイデン政権がここ48時間、手のひらを返すように軍事介入の可能性を示唆した点です。NATOは24日、緊急に欧州東部への兵力強化を決定、アメリカ国防総省も24日に、必要に応じて8500名を欧州へ緊急展開させる待機態勢を完了したと発表しました、恰も冷戦時代のリフォージャー作戦を彷彿させます。

 リフォージャー作戦リターンオブフォーストゥジャーマニー、要するに冷戦時代のドイツにソ連軍中心のワルシャワ条約機構軍が侵攻した場合に、第二次世界大戦手戦時の規模まで米軍をドイツに再展開させるという冷戦時代のNATOドクトリンに基づく準備体制で、リフォージャー演習として米本土から十万前後を展開させる演習を毎年実施していました。

 ウクライナへ侵攻した場合は強い措置を執る、アメリカと欧州各国、そして日本やオーストラリアなどは一致してこうした姿勢を続けていますが、ウクライナの首都キエフを占領するか、親ロシア系住民の多い東部のハリコフに限定侵攻するのか、このままロシア軍が兵力を引くか、こう問われますと最後の可能性も残りますが、時間の問題ともいえます。

 オリンピックは平和の祭典、その北京五輪開会式はいよいよ2月4日に迫っていますが、思い出すのは2008年北京五輪開会式に世界が湧く中、ロシア軍とグルジア軍の北オセチア戦争の火蓋が切られた事を思い出さずにはいられません。強力な力で圧力を掛ければ、一時的に事態を鎮静化させる事は出来ましょうが、導火線は第三次大戦へも繋がっています。

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