北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

8.31アフガン撤退-アメリカの敗北:これは理念の敗北だ,全て打ち捨てたバイデン大統領の決断

2021-08-31 20:13:10 | 国際・政治
■アメリカ-次の敗北の始り
 アフガニスタン撤退を、アメリカ最長の戦争の終止符、と表現するようですが単に次に至る最長の敗北の始まりではないかと危惧する。

 8月31日の撤収期限、アメリカ軍最後のC-17輸送機が8月30日深夜にアフガニスタンカブール国際空港を離陸し、撤退期限前に撤退しました。それも多数の同盟国民や現地協力者を討ち捨て、しかもバイデン大統領はアフガニスタン現地協力者の名簿がタリバーンに渡った事も認め、見捨てるというよりは売り渡すように叩きつけ、撤退を前倒ししました。

 日本の戦いはこれから始まる、自衛隊は邦人輸送任務へ派遣した輸送機部隊の撤収を本日、岸防衛大臣が命令しました。しかし日本は500名の邦人及び現地協力者を残しています、こうした積み残しは、カナダが4300名、イギリスが1250名、インドも160名居るとのことで、今後は軍事的にではなく、国際信義と外交力によりこの人々を救わねばなりません。

 これは理念の敗北だ、こう糾弾したい。正義というものは時と往々にしてその定義が移ろうものですが、アメリカについてはその整備を、原初状態における平等と公正を基調とした自由、ロールズ的観念から正義を形成しています。故に国籍は出生地主義であり、競争も全てが平等を結果ではなく機会に記すからこそ人種融和や男女平等を掲げるのですね。

 アフガニスタンからのアメリカ撤退、軍事的な敗北ではないとしましても、アメリカがこれまでに掲げてきました自由と公正というものを根本から投げ捨てたという意味で、軍事的な撤退よりも遥かに影響は大きいのかもしれません、大統領が、アメリカの為の戦争は終わったとして、自ら同盟国友好国へアメリカへの奉仕を強要した事を自称したのだから。

 理念の敗北、まじめに考えればわかる事ですが、アメリカが正義だ、と提唱された際に何故なのかという問いは、理念しかありません、アメリカは間違えないからと答えれば一笑され過去の歴史を突き付けられるでしょうし、アメリカが正義だからと答えればアメリ第一主義以前にアメリカとは哲学なのかという禅問答以前の問題となる、理念が回答です。

 自由と公正、そして手段としての民主主義。アメリカにとり武器と云えるものは此れしかありません、F-22もドル札もイージス艦もハリウッド映画も、別のもので置換えられる余地はあるのですが、自由と公正、この理念はアメリカが推し続けるものであるとともに、これこそが代替の利かないアメリカの武器であり強みであったのですが、これを捨てた。

 理念の敗北は恐ろしい、何故ならばアフガニスタンでのタリバーン統治により既に音楽の禁止や即決裁判による処刑と対米協力者への報復が、タリバーン末端戦闘員により既に始まっている事を無視しての撤退は、今後アメリカが中国に人権問題で畳みかけるとき、そうはいっても、中国の方がアフガン程ではない実情を突き付けられる事となるでしょう。

 253兆円、アメリカの2001年からのアフガニスタン戦費は大きなものですが、同時にNATO同盟国の戦費も大きいもので、これが、アメリカの為の戦争であった事をバイデン大統領が自称した事は、同盟国との連携に楔を打ち込み、また、2009年から40000名以上のアフガニスタン人が戦闘に巻き込まれ死亡した事も、無駄になってしまったという構図になる。

 中国への国防資源集中の為に、というバイデン大統領の施策ですが、そもそもアフガニスタンはトランプ政権時代、旅団規模の部隊を張り付けておくだけで安定とは言えずとも充分均衡は採れていました、これさえ出来ない国が中国に充てるのかという問題とともに、アメリカの理念ではなく利益の為に、有志連合へ参加する国が多いのかは、今後疑問です。

 アメリカ第一主義を掲げたトランプ前大統領は、アメリカにとり全く利益の無い事は関与しないとしつつ、アフガニスタンやイラクにシリア、西太平洋に欧州正面とアフリカ、短期的な利益は無くとも長期的に利益が在れば関与するという、近江商人のような考え方で関与を続けました、これは側近やスタッフの助言の効果ともいえるものですが、留まった。

 バイデン大統領は調和を掲げつつ、結局トランプ大統領のような周りに的確な助言を、政治に反映させられる立場のスタッフが不在なのかもしれません。しかし、今回のような致命的な判断ミスと、20年間アメリカが築き上げてきたものを撃ち捨てたのですから、今後有志連合を各国と組む際、志が違う、と友好国や同盟国に突き付けられる覚悟が必要だ。

 日本。日本は今回見事にアフガニスタンで情勢変化の被害を受けた側、軍事作戦には参加していないものの現地協力者多数を置き去りとせざるを得なかった被害が在ります。しかし、憲法上一国平和主義を提唱し続ける我が国に唯一の同盟国がアメリカであり、アメリカの、今回の判断の長期的な大きな反発をどう受け止めるか、考える必要があるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦改修と空母プリンスオブウェールズF-35B着艦

2021-08-30 20:20:56 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今回は海軍関係の話題を12論点紹介します。最初はキーロフ級、前にスラヴァ級巡洋艦の迫力に驚かされましたがキーロフ級は更に巨大だ。

 ロシア海軍は近代化改修を実施しているキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦について改修作業の一年程度の遅延の報告を受けた事を発表しました。キーロフ級巡洋艦の近代化改修はセブマシュ社が担当しています。今回の遅延は関連部品供給の遅れが原因であり、当初は2022年内に完工の予定でしたが早くとも完工は2023年まで遅れる見通しとのことです。

 キーロフ級原子力ミサイル巡洋艦は1980年代に現代の巡洋戦艦として西側各国に重大な脅威とみなされた水上打撃力でしたが、2010年代にはイージス艦等新世代の艦艇に対し見劣りが指摘されていましたが二万トンを超える巨大な巡洋艦はロシア海軍の象徴とみなされてきました。今回の近代化改修では巡航ミサイル強化と多機能レーダー搭載が主眼という。

 キーロフ級の近代化改修はレーダーを超長距離用MR600と戦域用のMR700やミサイル火器管制用の数種類のレーダーを多機能レーダーに置換えるとともに、垂直発射機VLSに搭載されるミサイルを強化し、また航空機用エレベータ付近や前甲板へのVLS強化等が執り行われ、シリア内戦介入等で威力を発揮した巡航ミサイル搭載数が大幅に増大させます。
■プリンスオブウェールズF-35
 プリンスオブウェールズも一歩前進しました、本邦の護衛艦へのF-35B搭載もこのように順調に往く事を願いたい。

 イギリス海軍は空母プリンスオブウェールズ艦上に初のF-35Bライトニング戦闘機発着試験を成功させたと発表しました。これは6月6日にかけて空母プリンスオブウェールズがポーツマス軍港を出航した際に実施され、艦上にはF-35B戦闘機の他、WAH-64アパッチロングボウも3機が発着試験を実施しており、F-35B発着試験は成功裏に終了しました。

 プリンスオブウェールズ艦上でのF-35B試験には第207飛行隊のF-35Bが参加、着艦に続いてスキージャンプ台からの発艦も連続して実施しています。空母プリンスオブウェールズはクイーンエリザベス級航空母艦の2番艦で、今回の発着成功はローテーションを組むうえで必要な空母二隻体制へ目処が就いた、イギリス海軍史上で重要な一日となりました。
■イタリアが韓国空母建造支援
 韓国はGDP比率で3.5%を国防費につぎ込んでおり様々な装備品の国産化を進めています。

 韓国海軍が計画する四万t級航空母艦建造計画をイタリアのフィンカンティエリ社が支援する、MADEX海軍兵器見本市に向けてフィンカンティエリ社が発表しました。これは実際の建造を担当するDSME大宇造船海洋のMADEX海軍兵器見本市における展示にフィンカンティエリ社が支援するという方式で、同社はトリエステ級強襲揚陸艦を建造中です。

 フィンカンティエリ社の支援は、しかし展示内容の支援に留まらず契約には在韓イタリア大使館のフレデリコファリッラ全権委任大使とイタリア海軍参謀本部よりアントニオナターレ少将が立ち会い、韓国海軍の期待の大きさを示しています。韓国海軍航空母艦はF-35B戦闘機を艦載機として運用する、韓国建国史上初めての航空母艦を目指しているとのこと。
■CVX韓国海軍空母模型
 日米間と台湾の連携を考えてゆかなければ北東アジア地域の海洋自由原則にひびが入る時代も遠くありません。

 韓国軍はMADEX2021兵器見本市に計画中のCVX韓国海軍空母模型を出展する、CVX韓国海軍空母は韓国が導入予定のF-35B戦闘機を運用する航空母艦で、満載排水量は40000t前後、全長265m、F-35B戦闘機16機とヘリコプター8機の搭載を見込んでいる。韓国海軍が構想する建造費は20億ドル、航空母艦の他に強襲揚陸艦としての運用を見込む。

 CVX韓国海軍空母計画には韓国国内報道でクイーンエリザベス級航空母艦を建造したイギリスの技術協力が報道されているが、イギリス側により否定されている。ただ、韓国でのCVX韓国海軍空母イメージ図にはクイーンエリザベス級空母を思い浮かばせる二つの艦橋を有するものが提示されている。想定する排水量はクイーンエリザベス級の六割強程度だ。
■独ザクセン級がESSM初発射
 ESSMは日本では護衛艦へ搭載してかなり経ちますがドイツはRAMを初期に実用化している為にESSMに遅れが在る模様です。

 ドイツ海軍は初のESSM発展型シースパローミサイルの発射試験に成功しました。試験はノルウェー北方の訓練海域を航行するザクセン級ミサイルフリゲイト二番艦ハンブルクにて実施されました。ドイツ海軍ではザクセン級が艦隊防空用にスタンダードSM-2ミサイルを運用していますが、個艦防空用にはMk.49RAM簡易防空ミサイル発射機を搭載します。

 ハンブルクでのRIM-162-ESSM発射試験の意義はAPAR多機能レーダーとSMART-L長距離レーダーを搭載する防空艦であるザクセン級にあってVLSは32セルのみであり、スタンダードミサイルを32発しか搭載出来ない点です。しかし1セル4発搭載できるESSMと混載する事でスタンダードミサイル24発とESSM24発を搭載する事が可能となります。
■MQ-8用VLWT超軽量魚雷
 海上自衛隊もSH-60Kを補完する将来装備としてMQ-8導入を防衛大綱に記していますが、なかなか具体的な導入計画が進まないなかMQ-8は進歩を続けている。

 アメリカのノースロップグラマン社はVLWT超軽量魚雷の試験を本格化させています。これは一人で携行できる程に軽量をめざし、この試験ではジェットレンジャー規模の小型ヘリコプターに複数の魚雷とセンサー及びソノブイを搭載する事を目指しており、具体的にはMQ-8C無人ヘリコプターを自己完結の哨戒ヘリコプターとして運用するのが狙い。

 VLWT魚雷はアメリカ海軍のCRAW軽量即応攻撃兵器計画に基づき開発された装備で、Mk48魚雷もMD-500規模の機体に搭載はできますが、それ以上は積めません。無人機に対潜哨戒能力を持たせると共に、潜在的に潜水艦に長魚雷一発分の区画に複数魚雷を搭載するCAT対抗魚雷システムとして運用も見込んでいます。量産は2024年に開始を目指す。
■機動揚陸用ミゲルキース就役
 機動揚陸プラットフォームは前に観艦式の際に停泊する様子を間近で見る機会がありましたが日本にとっても将来の両用作戦を考える際の一つの選択肢ですね。

 アメリカ海軍は5月8日、機動揚陸プラットフォームミゲルキースを竣工させました。ミゲルキースはモントフォードポイント級の5番艦でジェネラルダイナミクス社によりサンディエゴにて建造されています。機動揚陸プラットフォームとは、洋上のLCACエアクッション揚陸艇基地であり、事前配備船からLCACに積み替える洋上での拠点となります。

 ミゲルキースは満載排水量34500t、全長233m、LCACを3隻搭載するとともに船体は前部と中央部を飛行甲板としています。用途は揚陸艦と似ていますが、作戦輸送に当る揚陸艦は艦内で車両はほぼ導線以外動く事が出来ません。そこで事前集積船の車両を載替える車両ターミナルとして設計されたのが本型です。ミゲルキースはサイパンへ配備されます。
■フィリピンが初の対潜航空機
 AW-159ワイルドキャットは日本のSH-60Kよりも小型ですが韓国海軍での運用実績があり、整備支援などの協力もあり得るのでしょうか。

 フィリピン海軍は同国初の対潜ヘリコプターAW-159ワイルドキャットを作戦運用状態に昇格させました。導入したAW-159ワイルドキャットは2機で初の対潜哨戒航空機であり、韓国から導入するフリゲイト、ホセリサールとアントニオルナの艦載機として運用される。ホセリサール級は韓国のインチョン級輸出型でフィリピン初の本格的水上戦闘艦だ。

 フィリピン海軍はその能力増強を進めているが、冷戦時代全般に渡り国軍の任務は国内の武装勢力掃討に従事する事であり周辺情勢への対応は在比米軍に依存、1992年のピナトゥボ火山噴火に伴う追い出しに近いアメリカ軍撤収ののちには北東アジア地域の防衛空白地帯が深刻となり、近年周辺で行動する中国軍や中国海上民兵への対応を迫られている。
■フィリピン潜水艦計画韓国支援
 フィリピン海軍の近代化への試みは今も続きます。造船大国の末席を担う造船力はありますが近代的な軍艦や潜水艦の建造能力はありません。

 フィリピン国防省は韓国造船大手デーウー造船との間でフィリピン海軍潜水艦調達に関する協力関係を協議しました。これはフィリピン国防省のジーザスレイ調達局次官補の5月27日の訪韓に際し協議されたものです。フィリピン海軍では中国による自国領域不法占拠や排他的経済水域内での海上民兵疑惑中国船長期泊地占領を受け海軍力を強化中です。

 デーウー造船はトータルソリューションパッケージとして韓国海軍などにも配備しているチャンボゴ級潜水艦と同程度の1400t級潜水艦そのものと装備運用に関する技術者派遣や予備部品の輸出、及び重整備や韓国国内での整備と、更に韓国海軍潜水艦部隊がフィリピン海軍要員の潜水艦運用教育支援を行うなど、潜水艦戦力化へ包括輸出を提案しています。

 チャンボゴ級潜水艦は韓国海軍の他にインドネシア海軍へも輸出されており、その輸出費用についてインドネシアは2011年12月にチャンボゴ級3隻を10億7000万ドルで導入しています。これに先立つ5月12日にはフィリピン国防省の視察団が韓国海軍潜水艦部隊を視察しており、フィリピン海軍は当面計画として潜水艦2隻を検討していると伝わります。
■パキスタンのアダ級コルベット
 あぶくま型護衛艦が満載排水量で2800tとなっていますので参考までに。

 パキスタンのカラチシップヤードは6月15日、トルコ設計のパキスタン海軍向けアダ級コルベット四番艦の建造を開始しました。アダ級コルベットは満載排水量2300tの水上戦闘艦で小型艦ではあるもののS-70ヘリコプターの運用能力を有し、76mm艦砲1基とハープーン対艦ミサイル8発、RAM近接防空ミサイルや324mm短魚雷発射管を搭載している。

 アダ級コルベットはトルコ海軍が1996年に初の水上戦闘艦国産を目指すミルゲム計画として設計、エーゲ海等での近海運用を主眼とするもののシーステート6の海象でも航行可能とされています。トルコではイスタンブール海軍工廠にて建造されていますが、パキスタンでは2018年に4隻の導入を決定、2隻はトルコ建造、2隻はライセンス生産します。
■CB-90強襲艇最新型HSM
 CB-90強襲艇は自衛隊も導入を検討すべきです、現在の地方隊警備隊の特別機動艇よりも運用の幅は広くなり敬意にも両用作戦にも不審船対処にも強い。

 スウェーデンのサーブ社はCB-90強襲艇最新型のCB-90HSMを発表した。CB-90HSMはサーブ社のドックスタバーベット造船所が動画配信サービス上で発表したもので、CB-90強襲艇は艇首部分に乗降扉を配置し、沿岸部や港湾施設へ40ノットの高速で接近し20名の完全武装兵を揚陸可能、スウェーデン水陸両用軍団を筆頭に世界中で250隻配備される。

 CB-90HSM強襲艇はトラックファイア戦闘情報管理システムと12.7mm重機関銃のRWS遠隔操作銃搭を搭載し、従来の操砲作業を大幅に効率且つ安定化させている。また艇内はポリエチレンによりNBC防護能力が追加されるともに、従来脆弱とされた操舵室は防弾ガラスにより防御力が強化された。ドックスタバーベット造船所は直ぐにも建造可能とした。
■イギリスがSLBM近代化
 核兵器の時代は当面続くという端的な事例といえるもの。

 イギリス海軍はロッキードマーティン社やミッチェルフィールド社との間でトライデントSLBM潜水艦発射弾道弾に関する1億9100万ドルの契約を結んだとのこと。この契約にはミサイル本体の慣性航法システムや多核弾頭再突入システムのアップデートとともにイギリス海軍の戦略ミサイル潜水艦に搭載する戦闘情報システムの更新も含めたものとなっている。

 イギリス海軍は1962年の米英ポラリス交換協定に基づき潜水艦発射弾道弾を半世紀以上に渡りアメリカから供給を受ける体制を維持している。イギリス海軍ではヴァンガード級戦略ミサイル原潜にトライデントミサイルを搭載、アメリカ海軍でもオハイオ級戦略ミサイル原潜に搭載するが、開発中のコロンビア級戦略ミサイル原潜は新型ミサイルを搭載する。

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【日曜特集】駒門駐屯地創設55周年記念行事(2)新旧戦車部隊の観閲行進(2015-04-05)

2021-08-29 20:01:51 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■最新鋭10式戦車を先頭に
 戦車部隊の観閲行進はエンジンの轟音と空気の振動が徐々に地面から伝わる振動に変り戦車が姿を現す、こればかりは本物を視なければ。

 第1戦車大隊観閲行進が10式戦車を先頭に。第1戦車大隊は10式戦車が配備された最初の部隊です。10式戦車も第1戦車大隊、第2戦車連隊、第4戦車大隊、第71戦車連隊、第8戦車大隊に配備、第4戦車大隊と第8戦車大隊は西部方面戦車隊に改編されました。

 大隊本部付隊の96式装輪装甲車と軽装甲機動車の車列が。戦車中隊には戦車が14両配備され、3個小隊に各4両の12両と中隊長及び中隊陸曹に戦車が配備されていましたが、現在中隊陸曹は軽装甲機動車に乗車、また特科前進観測員も軽装甲機動車により機動します。

 10式戦車を装備する第1中隊が絶妙に3両の車体を重ねて行進します。駒門駐屯地の撮影は、この入り乱れている構図が撮影し易いというのが嬉しいですね。戦車部隊が一列に進む様子も勇壮ですが、この戦車が入り乱れている構図は駒門ならではのものだ、といえる。

 満開の桜を背景に10式戦車が目の前へ次々とやってきました。本土防衛の主力が74式戦車、とは過去の話でして、もう第一線には10個中隊ほどしか残っていません、10式戦車と、そしてまもなく最新鋭の16式機動戦闘車の戦闘中隊のほうが数の上で上回ることでしょう。

 74式戦車を装備しています第2中隊の観閲行進と雨が本降りに。自衛隊行事で雨天は鬼門、ですが航空祭飛行展示と違い陸では行進などは中止しませんし、艦隊展示訓練と違い装備と撮影位置が近いものですから、案外良い撮影が可能で、土煙たたないのが嬉しいですね。

 旧式ではある74式戦車は雨に打たれ妙に輝き一種新車のよう。74式戦車、現在残る戦車のうち、防衛大綱が今のままであれば本土の戦車部隊は機甲教導連隊と西部方面戦車隊以外廃止の方針といい、偵察戦闘大隊として16式機動戦闘車と偵察部隊へ改編される方針だ。

 第1後方支援連隊第2整備大隊戦車直接支援小隊の96式装輪装甲車が。戦車直接支援小隊というのは整備支援部隊で、戦車部隊に連接して専門的な整備支援を行い故障車の復帰や稼働率維持にあたります。戦車とともに弾雨を進む、故に装甲車を装備しているのですね。

 11式装軌車回収車が観閲行進に進み地味ですが希有な装備です。90式戦車回収車は数が少なく、そして78式戦車回収車は38tの74式戦車回収を想定していまして、10式戦車も運べなくはないのですが、整備性も考慮し10式戦車車体を利用し開発された戦車回収車です。

 戦車回収車が目の前を往く情景は機械集合体故の不思議な情景を醸す。昔の怪獣映画などでも見た目が派手でごつごつしている戦車回収車がなぜかクローズアップされる描写もありました、1984年の映画ゴジラ等は昔TVでみた際、なにに使うのか全くわからなかった。

 第1機甲教育隊第4中隊の96式装輪装甲車が中隊旗を掲げ目の前を往く。この時点で第1機甲教育隊は現在の富士学校ではなく東部方面混成団、東部方面隊隷下の教育訓練部隊所属でした。教育訓練部隊が戦車5個中隊、五年前の情景とはいえ、考えてみますと凄い。

 90式戦車は新時代戦車の代名詞で第1機甲教育隊第1中隊所属の車両だ。90式戦車は日本第三世代戦車の具現で、自動装填装置により防御区画を局限し防御力と軽量化を両立、目標自動追尾装置と車長用照準装置により二目標同時射撃能力を持つ、打撃力を重視した。

 90式戦車の車列とともに後方には87式偵察警戒車の車列が見え始める。偵察戦闘大隊という昨今大車輪で編成が始まった新しい部隊ですが、無理に機動戦闘車を配備せずとも10式戦車と87式偵察警戒車で編成完結、ちょうどこの写真のような編成でも良いと思うのです。

 第三世代戦車である90式戦車は北海道に重点配備された。ソ連軍戦車が北海道に上陸する蓋然性が高かった時代の戦車で、北海道では第2戦車連隊の半分、第5戦車大隊、第71戦車連隊の半分程度、第72戦車連隊、第73戦車連隊、第11戦車隊に配備されています。

 戦車と偵察警戒車がひとつの情景に収まりました不思議な情景です。この87式偵察警戒車もそろそろ旧式となっていまして、もともと16式機動戦闘車は87式偵察警戒車の後継として開発されていたのですね。しかし実質的に74式戦車後継を担う事になり、後継は宙く。

 87式偵察警戒車が二両で角張った砲塔を重ねるように行進してゆく。設計思想は練られたものでして、車内には2名の斥候員区画がある。まれに思うのは八輪式として車体延伸型を開発していたらば、斥候員区画を6名用に拡張し、装輪装甲戦闘車とできたのに、とも。

 10式戦車は第1機甲教育隊の第2中隊に所属する21世紀の新型戦車だ。初公開されたのは2011年の富士学校祭でしたか、機動力がもの凄く、富士駐屯地をあたかも水面上を高速艇が滑走するがごとく高速で走り抜けていったのは今でも強い印象として思い出しますね。

 74式戦車も第1機甲教育隊は第2中隊に配備され混成運用されています。混成運用、第1戦車大隊も10式戦車の中隊と74式戦車の中隊とが並立しています。10式戦車は師団長最後の手札という戦略予備で74式戦車は普通科連隊へ直協支援用に充てられる、という話が。

 第5中隊の74式戦車が進みこれで5個中隊すべての行進が。この規模、一手に機甲科教育を担う大所帯故の規模だ。古くなった74式戦車ですがデータ通信可能である広帯域無線機、通称コータムが第一線車両には搭載されていまして、10式戦車とデータリンクを結べます。

 指揮官車が観閲行進を終えて式典会場を退場し訓練展示準備へ移行する。観閲行進はこうして終了しまして、間断無く今度は訓練展示模擬戦へ状況が展開しました。何処で撮影するか、位置に悩みましたが、無理に動いても良い場所はないため、観閲行進撮影位置から。

 萬代治第1機甲教育隊長が10式戦車の車上に精悍な顔つきを轟かせる。観閲部隊指揮官は観閲を終えてから、10式戦車の車上から、続行します観閲行進を直接指揮できる位置へ再度進、観閲行進が改良したために撤収してゆくのです。一仕事を終えた指揮官の顔つき。

 状況開始とともに87式偵察警戒車が想定戦場へ進出してきました。82式指揮通信車を原型とする六輪式装甲車は各種派生型を含め450両程度が生産されていまして、一つの車両体系を構築しました。当初この車両原型、四輪駆動式の汎用軽装甲車を開発する計画でした。

 FH-70榴弾砲が北富士駐屯地より火力支援へ陣地進入を開始しました。FH-70は国内道路状況から大胆に自走榴弾砲を導入できない自衛隊が自走榴弾砲に匹敵する性能を有する優秀火砲を探り、結果導入された欧州共同開発の火砲です。射程は39kmにも達するという。

 87式偵察警戒車は軽快な運動性を誇示して25mm機関砲を敵に向ける。威力偵察とは威力を以て推し量る、ということ。敵陣地へ25mm機関砲弾を大量に叩き込み、反応を探るとともに、可能ならば敵前哨陣地を突破して主陣地に迫り、陣容を解明するのが、任務です。

 第1特科隊のFH-70は射撃準備を完了し90式戦車も行進進入点へと進む。90式戦車が加わるだけで、意外と状況が引き締まるのは不思議です。74式戦車も優秀な戦車なのですが、明らかに一世代遅れている形状が、迫力とともに回顧されるべき装備なのかもしれません。


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【京都発幕間旅情】米子駅舎建て替え,国鉄米子鉄道管理局・米子駅総合庁舎在りし日の風景

2021-08-29 18:25:38 | コラム
■YONAGO-国鉄時代重厚駅舎
 鉄道というものを単なる電車列車好きに留まらずシステムとして俯瞰しますと、駅舎というものにも独特の文化というものを感じる事が出来ます。

 米子駅、旧駅舎が解体されてしまいました、2020年9月5日に仮駅舎へ移転、2021年3月8日に新駅舎建設にかんする安全祈願祭がとりおこなわれまして、あの重厚な、昭和らしい機能を重点としつつ風景にとけ込んだ米子、山陰の玄関口が建て替えられるという。

 映画八岐大蛇の逆襲において、怪獣に景気よく壊されることとなりました旧駅舎、あの特撮は非常によくできていましたが、実際には米子駅は当然ながら怪獣に破壊されるのではなく、時代の流れに取り壊され、映画と違いもとの大きさではなく小さく再建される。

 旧駅舎、新しくなるのだから良いではないか、と思われるかもしれませんが、確実に規模は縮小される、こういいますのも旧駅舎は国鉄米子鉄道管理局と米子駅とを統合した総合庁舎という位置づけで1963年に建設された駅舎で、自動化により小型化されることに。

 国鉄米子鉄道管理局庁舎、時代は移ろうものでして、もともとは鉄道省が明治時代に建設したのは境港と米子結ぶ、いまの境港線が日本海の海運を山陰の都市部へ輸送する基幹路線という位置づけで、路線は1902年に開業しています、しかし山陰本線の建設が進む。

 山陰本線は1909年に鳥取駅とここ米子駅を経由し松江駅まで開業します、この際に境港への路線は支線となるのですが、同時に山陰本線と境港線を連絡する米子駅が基点駅となり、のちにここ米子駅に国鉄米子鉄道管理局がおかれることとなります、そして昭和後期に。

 米子駅は旅客駅であるとともに国鉄貨物輸送も担う貨物駅としての機能を有し、これは1987年の国鉄民営化に際して西日本旅客鉄道JR西日本の駅舎であるとともに、総合庁舎の事務処理能力から日本貨物鉄道JR貨物の貨物駅としての機能を有するようなりました。

 JR時代の米子駅、しかし2015年に伯耆大山駅に貨物機能が集約されることとなります、すると長大な機関区と貨物区を兼ね備えた米子駅の構内と、そして重厚な米子駅の総合庁舎は如何にも過大となりまして、まさに駅舎はその役割を終えることとなったのですね。

 米子駅、さてその駅前には高速バスターミナルが広がっていまして、映画八岐大蛇の逆襲でもミニチュアに大阪へは特急やくも号で、と記された隣に大阪へは高速バスで、という看板が、昔は急行だいせん利用で京都から直通だった、今はバスのみ直通となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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自衛隊オスプレイ投入ならば成功か-アフガン邦人救出,空港テロと迫るカブール空港閉鎖

2021-08-28 20:00:52 | 国際・政治
■邦人1名救出,自衛隊一時撤収
 アフガニスタンでの邦人輸送による邦人救出はカブール市内の危険度上昇により全く進んでいません。

 陸上自衛隊のV-22可動翼機が作戦運用可能な水準まで達していれば、アフガニスタン邦人救出はもう少しまともに行えたのではないか、と考えてしまいます。なにしろアフガニスタン政府崩壊が予想以上に早く、日本が邦人輸送を立ち上げるにも先ずアフガニスタン国際空港の航空管制アメリカの中央軍が担っており、こことの調整から始めねばならない。

 江畑謙介氏がかつて“こうも使える自衛隊の装備”という著書を出されていまして、災害派遣や邦人救出に人道支援や環境問題まで、血税を投じて取得した装備品について、非常に考えさせられる視点を提示されていました。その視点は武器兵器云々ではなく、民を忘れた政治となってはならない、人命第一の原点にあります。これに照らせば今はどうか。

 C-130輸送機によるアフガニスタンからの邦人退避は進みません、27日日本時間夜に最初の邦人一名が自衛隊機によりパキスタンへ移動、26日には日本政府が指定した現地職員のアフガニスタン人十数名をパキスタンへ空輸したとしていますが、邦人救出として法人のアフガニスタン国外輸送支援対象者は500名、現時点ではまだ5%も出国できていません。

 自衛隊と外務省職員はカブール国際空港から昨日の内に撤収、現在はパキスタン国内に自衛隊機が待機しているとのこと。NATOではアメリカ軍撤収後も相当数の出国不能者が残るとされ、タリバーンとの間でタリバーンの空港進出後もNATOの活動延長を求めていますが、タリバーンが許可したものは常に出国できると応じられ、議論がかみ合いません。

 バイデン大統領はカブール国際空港自爆テロ事件の実行犯に処罰を加える、しかし米軍撤収期限は変わらない、としました。自爆しているのに実行犯をどうとらえるのか不思議に思いましたが、今朝無人機によりアフガニスタン国内での攻撃を実施、実行したISILの殲滅に成功したとのこと。いよいよ、邦人退避まで時間が無くなっている事を示している。

 アフガニスタンへ自衛隊が輸送機を発進させる頃にはカブール市内へタリバーン武装勢力が浸透を終えたころであり、とてもではないが空港まで邦人自身が市内を移動できるものではありませんでした、例えばイギリスがカンダハル近郊で孤立したSAS特殊部隊員救出へ砂漠の真ん中へC-130輸送機を発着させ救出したような無理を強いるならば別ですが。

 カブールの状況は時間と共に悪くなっている、カブール空港外縁部で発生したISILテロリストによる自爆テロが発生しましたが、この自爆テロの時点で国外脱出する邦人がバス二十台にて移動中であったともいい、引き返しました。自爆テロ死者は100名を超え、更なる治安悪化の可能性から今後カブール国際空港までの安全な移動の見通しは立っていません。

 V-22であれば、パキスタンからカブール国際空港以外のホテルや日本大使館まで直接展開する事が出来ました、なにしろV-22は航続距離が長い、24名しか乗る事は出来ませんが、ヘリコプターの様に大使館屋上まで展開する事も出来ますし、パキスタンのカラチから、いや例えばアラビア海からヘリコプター搭載護衛艦の艦上より運用しても往復が可能です。

 空港が使えないのは判り切っていました、するとヘリコプターしかない、が、航空自衛隊には1000kmの航続距離を誇るUH-60J救難ヘリコプターがありますが、カラチからカブールまで飛行するには4000m級の山間部を超えて飛行するのは仮に空中給油支援があっても簡単ではありません。V-22の取得費用は17機と関連機材併せ3600億円、高い器材だ。

 木更津駐屯地に陸上自衛隊輸送航空隊が創設されたのは2020年3月、機体も5月には搬入されています。配備数は若干数ですので、訓練も千葉県外への飛行訓練が開始されたのはまだ最近、機材もまだ海外派遣できる水準ではないのかもしれませんが投入をもう少し真剣に検討できなかったのでしょうか。もっとも、特殊機材過ぎると反論があるでしょうが。

 特殊機材、なにしろ政治主導で導入され、陸上自衛隊には日米合同演習により乗る機会はあったのでしょうが、本格的に導入する教育体系や整備補給体系の改編などは、既存枠組の延長で行うほかない状況、結果的に実用化に時間を要したのかもしれません。しかしすると、運用基盤構築の費用を事項要求として、政治はもう少し調達後を考えて欲しかった。

 政治はもう少し調達後を、こういうのはパワーリフト機は未知の器材であり、航空学校には教官さえいません、しかし、政治主導で導入したのですから木更津に配備せず、岩国の第1海兵航空団隷下でOJT方式にて運用を、それが沖縄の負担増大に繋がるというならば、ミラマー海兵航空基地へ派遣してでもOJT方式で運用基盤構築を急ぐべきだったと思う。

 V-22を取得する費用があれば、既に運用基盤のあるCH-47輸送ヘリコプターならば70機取得できたし、UH-60JA多用途ヘリコプターでは108機分、全国の方面隊に20機からなる方面航空隊ヘリコプター隊を完全に置換えられる数で、そしてC-2輸送機ならば2個飛行隊分です。実際、契約が成立するまでは既存機で不足する機体を揃えるべきと考えた。

 しかし、V-22が導入された背景にアルジェリアガスプラント邦人襲撃事件を受けての邦人救出が用途に挙げられ、確かに自衛隊の既存装備では航続距離も不充分、またV-22はF-35用エンジンを空輸可能であり特殊作戦群の空輸にも活用できるという視点を考えると、高すぎるが、他のヘリコプター予算が確保出来るならば、全く的外れでもない、と納得した。

 アフガニスタンでは、現状の通りです。500名の邦人と日本関係者がこの後無事に脱出できる見通しが在るならばよい、しかし、V-22が手元に在りながら、その任務に派遣できていないのは現実だ。こうした緊迫した、救いようのない危険な地域での邦人救出が任務で在った筈で、ほんとうに真剣に邦人保護という重大任務と自衛隊や外務省が向合っていたのかという厳しい視点を敢えて示したい。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【榛名備防録】ミッドウェー海戦,その敗北の一視点-必至である南雲艦隊連戦連勝持続の限界

2021-08-28 14:44:06 | 防衛・安全保障
■現代の”働き方改革”に繋がる
 南雲艦隊がミッドウェー海戦に勝っていればという"if"を散見するのですが、ここで大切な教訓を学び取らねば現代の日本にも同じ失敗を踏襲します。

 ミッドウェー海戦、1942年6月、太平洋戦争開戦半年にしてアメリカ海軍との空母決戦となり、日本海軍は主力空母の内4隻、赤城、加賀、蒼龍、飛龍を失いました。ただ、多くの方のお話しに、ミッドウェー海戦に負けていなければ、悲惨な敗戦を避けられたのではないか、という考えをお持ちの方が少なくないようでして、この点は違和感を受けます。

 真珠湾攻撃、日本海軍は赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴という主力空母のほぼ全てを投入し、ハワイを奇襲攻撃しています、ここでアメリカの戦艦部隊に大打撃を加えたのですが、その返す手で空母部隊はそのまま今度は印度洋作戦としてインド洋のイギリス海軍を追って攻撃に出ており、イギリス海軍はアフリカへ転進を強いられる事となりました。

 印度洋作戦ではイギリス空母ハーミズを捕捉撃沈し日本海軍は太平洋戦争最初の空母撃沈という戦果を挙げ、ラミリーズやウォースパイトなど主力戦艦はインドを脱出しインド洋からアフリカ方面の泊地へ退避に成功していますが、逃げ遅れた形で重巡洋艦コンヴォールとドーセットシャーを撃沈しています、日本空母部隊の戦果はここでも挙げられました。

 豪州ポートダーウィン空襲、インド洋のイギリス海軍を敗走させた空母部隊はさらに続いてオーストラリア大陸を攻撃し、オーストラリアにおける連合国拠点を空襲し駆逐艦などの艦艇を破壊、既にマレー沖海戦やスラバヤ沖海戦などで被害の大きかった東南アジアの連合国海軍部隊はここで徹底的に叩かれることとなりました。さて、ここまで半年以下だ。

 赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴、お気づきでしょうか、強力な空母部隊ですが交代も無く半年間使いまわされています、空母部隊は四月下旬に帰港するまで大規模な戦闘を続けていました。つまりミッドウェー海戦で敗北するまで休息があまり考えられていないのですね。仮にミッドウェー海戦に勝っていたとして、次まで勝ちは続いたのでしょうか。

 翔鶴、瑞鶴、ミッドウェー海戦に先立って空母二隻は珊瑚海海戦に投入されています。この海戦は米豪遮断作戦としてオーストラリアを孤立化させる作戦の一環として行われていますが、当初軽空母一隻が投入されるのみであったため、急遽に翔鶴、瑞鶴、二隻を増強する事となりましたが、ここで軽空母祥鳳が沈み翔鶴が大破しました。疲労は積っている。

 戦争をスポーツに喩えるのは不適切と承知の上で挙げると、オリンピックとワールドベースボールクラシックと日本シリーズを延々と連戦しているようなもので、交代とローテーションというものを考えずに続けているのですから、問題の根底はそのまま、ミッドウェー海戦に勝利してもアメリカがこれで降伏するとは考えにくく、戦争はまだ続くでしょう。

 士気が無ければ戦争はできませんが、士気だけでは戦争は続きません。実際、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、この四隻は負けるまで、大丈夫だろう、まだ行けるだろう、今やるしかない、という運用を強いられた構図があるように思えてなりません、ミッドウェーでもし日本が勝っていても、ローテーションを組まない限り疲労と緊張とストレスは着実に蓄積する。

 ミッドウェーはこうした背景があるのですが、同時に忘れてはならないのは現代社会の日本も、ローテーションと休息を考えて長期運用を組んでいるでしょうか、これは自衛隊の話ではなく民間企業や社会全般と学生スポーツも含めての視点です。この部分を理解できなければ、ミッドウェーの失敗は形を変え、社会は何度も踏襲し続けるのかもしれません。

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アフガン崩壊,アメリカ失策二〇三〇年代へ影響【3】100時間以内の人民解放軍進駐はあるか

2021-08-27 20:03:17 | 国際・政治
■最後の退避先”中国大使館”
 アフガニスタンへの100時間以内の人民解放軍進駐はあるか。本論は昨日掲載予定でしたが運営上の諸事情から本日の掲載となりました。

 中国人民解放軍がカブールに進出する、それは中国政府がタリバーン使節と中国天津において会談を行い、カブール陥落後には主要国のなかで数少ない大使館を継続し、駐アフガニスタン中国大使がタリバーン代表部と会談を行っています。名目は人道支援でも外交会談でもよい、新鋭Y-20輸送機にて西部戦区の山岳戦用機械化部隊を空輸展開させればよい。

 大使館は、もっとも中国政府はカブールへ崩壊したアフガニスタンイスラム共和国大使館を置いているのであり、国家承認を行わず、全権委任大使の接遇も行っていないアフガニスタンイスラム首長国との関係は未知数ですが、人民解放軍が撤退を渋り得るアメリカ軍を牽制する為に一時進駐するならば、タリバーン側が受け入れる可能性はあるでしょう。

 名目はどうとでもなる。タリバーンには、中国からの人道援助受け入れ、現在カブール市内は物流が停止しており食糧援助などを受け入れる必要があるとともに、中国以外国交のない状態では、経済援助を受ける唯一の友好国となります。当面、タリバーンのアフガニスタンイスラム首長国を外交関係条約に基づき国家承認する国は中国の友好国一部くらい。

 日欧米は人権抑圧国家とは欧米諸国は取引を行わない為、中国には利点がある。例えばスーダンのような抑圧国家の天然資源取引を中国が過去独占した事例もあります、一方で中国は、アメリカがアフガニスタンから撤退した理由が中国への国防資源集中のためである現実と戦わねばなりません、しかし、その勝利への近道もアフガニスタンにあるのですね。

 アフガニスタンで中国がアメリカに勝つ、もちろん軍事力ではありません、外交的にアメリカが対中有志連合を組むのを阻害できればよい、役立つのは閉鎖されていない中国大使館だ。中国は大使館を閉鎖していません、すると、アメリカがアフガニスタンから撤退する、見放された人々を中国が人道上救う構図となるのです。このまま米軍が撤退すれば、だが。

 中国大使館。空港警備を終了し空港に緊急展開した数千のアメリカ軍があと20時間ほどで撤収を開始するため、大量のアメリカ市民とアメリカ友好国、邦人を含め、取り残される事となります。中国大使館は数少ない退避先となります、もちろん、自国民の海外脱出をとどめたいタリバーンの意志は働くでしょうが、タリバーンには外国人全員を抑留する必然性は薄い。

 人質外交はしない。タリバーンが外国人全員を人質のように維持しても、1990年に同じことを行ったイラクのフセイン大統領と同じ末路が待っています、2001年にアメリカ軍が大規模介入したようにアメリカは非対称の戦いは不得手ですが、対象が明確な場合は強い。しかし、人質とさせず、そこで中国が取り残された人々を帰国させた場合はどうなるか。

 空港は間もなく機能喪失します、日本時間26日深夜に空港周辺で大規模な自爆攻撃が行われました。この前後してアメリカとイギリス政府は自国民にカブール空港付近は危険につき近寄らないよう警告、そして18時間ほどでカブール空港でのアメリカ軍など有志連合の警備が終了します。すると、取り残された各国市民は中国大使館に駆け込むほかなくなる。

 中国政府が人道上、この人たちを保護しますと、今アフガニスタンから退避しようとしているのはアメリカ同盟国や友好国の国民が多く、アメリカに見捨てられた同盟国民や友好国民を中国が大量に救助したという実績が残ります。考えて欲しいのは、人命が危機に曝される瞬間、助けられる相手は誰でもよく、米軍でなければ中国政府の助け、となります。

 対中有志連合を阻害する。アメリカに見捨てられた同盟国民や友好国民を中国が大量に救助した実績は、アメリカに見捨てられた同盟国民や友好国に中国が大きな貸を造る事に他なりません、すると、アフガニスタンから中国正面へアメリカ軍が転進しようとした際、アフガニスタンでアメリカに見捨てられた同盟国民や友好国は、どう向うのでしょうか。

 アメリカに見捨てられても、そうだ中国を正面から抑え込もう、と呼号なるのでしょうか。バイデン大統領は、アフガニスタンでの戦争を、アメリカの為の戦争は終わった、として一方的に撤退し、情勢をここまで悪化させました。中国政府が、アメリカの戦争に載せられるな、欧州はじめ中国は領域外に手を出さない、と主張した場合はどうなるのでしょう。

 緊急展開能力から不可能ではない。人民解放軍にはY-20輸送機があり、これはC-17輸送機に準じる巨大な空輸能力を持ちます、山間部に特化した15式軽戦車や03式空挺戦闘車はY-20輸送機に搭載可能で、空挺部隊をアメリカと交代する形でアフガニスタンへ送り込む事は難しい事ではありません、展開する名目は人道支援でも一時的な混乱収束でもよい。

 タリバーンと連絡は出来ているのですから、そしてカブール国際空港で米軍を追い出す様子を見守る構図を組むことで、アフガニスタンでアメリカに勝利した中国という構図は完成します。アメリカの同盟国が中国に刃を向けぬよう離間できるならば、人民解放軍の展開費用などは第二次太平洋戦争に正面から取り組むより遥かに安上がりといえる。孫子だ。

 米軍が撤退を撤回しない限り、中国はアフガニスタンでアメリカに勝利するのです。例えば邦人救出が致命的に遅れている日本、中国政府がタリバーンに働きかけ、数百の邦人をC-2輸送機でなくY-20輸送機が救出したならば、少なからず国内進駐世論が強まり、例えば海兵隊や陸軍が将来装備する地対地ミサイルの日本搬入反対世論の醸成にも繋がります。

 中国はアフガニスタンでアメリカに勝利する、この構図は、バイデン大統領が、撤退は無しだ!自国民同盟国民を救う責務の為に最後まで留まる、と決断すれば、タリバーンに接近し過ぎた中国は外交的に敗北しますが、今のままですと中国が勝利する。欧州からNATO海軍が来なければ、日豪が支援しなければ。太平洋でアメリカ軍と戦う際に非常に有利となるのは確かでしょう。

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令和三年度八月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2021.08.28-2021.08.29)

2021-08-27 18:20:11 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 コロナ拡大、アフガン邦人救出進まず、緊急事態宣言下でのパラリンピック開会、なかなか厳しいの世の中ではありますがいつもよりも少し早い時間に行事予定のお知らせです。

 富士総合火力演習に例年ならば盛上るこの季節ではありますが、COVID-19感染拡大により今週末も自衛隊行事は執り行われません。そして緊急事態宣言が本日27日より拡大され、北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県に発令されます。これらの地方ではお盆休みなどを通じて人流が増大、結果、爆発的な感染拡大を招きました。

 緊急事態宣言は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、静岡県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県、沖縄県に対し発令されているものはすべて継続し、北海道、宮城県、岐阜県、愛知県、三重県、滋賀県、岡山県、広島県、ここへの追加は、まん延防止等重点措置からの拡大となります。感染拡大は微減地域もありますが、まだ続く。

 まん延防止等重点措置は新たに、高知県、佐賀県、長崎県、宮崎県に追加、既に発令されている福島県、山梨県、富山県、石川県、香川県、愛媛県、熊本県、鹿児島県、こちらの発令も継続されます。全国の重症者数は遂に本日27日に2000名を超え、重症者は自発呼吸不能など高度救命措置が施されなければ一時間と生存できません、いま病床がたりない。

 COVID-19感染拡大、デルタ株の感染拡大は非常に懸念されるもので、昨年一年間の成功体験はほぼ役に立ちません、医師は防護機具だけで感染を凌いでいるではないかと反論されるかもしれませんが、既に二度のワクチン接種を受け、それでも感染が生じています。家族全員と職場全員が二度のワクチン接種を受けていたとしても、デルタ株は感染します。

 ワクチン接種、兎に角未接種の方には接種を急いでほしい所ですが、ワクチン接種と接種希望者を結ぶチャンネルが余りに不足し、本日から東京都は新しい試みとして予約不要接種会場を設営しましたが、初日は受け付け開始四時間半前に定員に達してしまい、都は明日以降は予約用接種は当日抽選制とする、却って人流が増大する悪手で対応するとのこと。

 予約については、自治体接種が各地で遅れる中、掛かりつけ医接種が電話予約対応限定が多く、兎に角総当たり戦で電話をかけ続ける他ないのですが、これが個別医院の医療事務機能を阻害している状況にあります。ただ、接種を諦めてしまう事は根本問題を悪化させるだけです、昨年一年の感染対策努力の熱意を、予約への熱意に転換させねばなりません。

 非常事態宣言、政治はそろそろこの部分に踏み込む時ではないかと考えます、緊急事態宣言と異なり非常事態宣言として、政令により平時法制の一部を停止させ、強烈に感染抑制への厳しい措置を取る必要への痛感です、こういいますのも、結局最早個人での感染対策では限界に達しているのですね、社会で危機感を共有していても認識の温度差は否めない。

 政令により平時法制の一部を停止、政治はこれにより私人の権利が制約される事での反発や責任を問われ、国家賠償法に基づく裁判となる可能性もあります、ただ、お願い基盤、自粛要請基本、これでは、人間は社会的動物ですので他社が営業している中での営業自粛は不可能、会社で一人テレワーク全面実施を主張しても余程のことが無ければ実現しない。

 万全の感染対策、こう言いましても危機感を共有しつつ、その具体的対策を視ますと、マスク手洗い徹底程度であったり、パーテーション設置と机の間隔を空ける程度で、デルタ株を防ぐ事は出来ません。すると、非常事態宣言、政治は当然最初は批判され、それでも効果が無ければ更なる批判に曝されますが、人流抑制と罰金の政令を決断すべきでしょう。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・今週末の行事なし

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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【京都発幕間旅情】石山寺(滋賀大津)聖武天皇勅願寺院は波乱激動の天平年間に安寧の願い

2021-08-26 20:02:56 | 旅行記
■聖徳太子念持仏奉じる寺院
 令和は疾病に大変な時代となりましたが、日本史を視ますと更に上には上が在るという時代の気風を基点とした寺院がお隣大津にあります。

 石山寺、ここは琵琶湖が大阪平野に向け流れ出す瀬田川の右岸の少し奥まった大津市石山寺1丁目に鎮座する寺院です。東寺真言宗大本山というお寺は枕草子や蜻蛉日記、そして源氏物語と古典文学との所縁も深く、春夏秋冬日々刻々日夜晴天曇天と風景も美しい。

 西国三十三所第13番札所というお寺は、京阪石山坂本線の終着は石山寺駅が最寄りながら徒歩では若干苛々の距離があり、毎回石山寺道駅と改名してはどうかと思うものですが、実はJR東海道本線石山駅から路線バスが一番疲れない拝観への道なのかもしれません。

 天平19年こと西暦747年、聖武天皇勅願により建立となりました寺院で、聖武天皇が聖徳太子念持仏である如意輪観音をこの地に奉じるべく良弁を開基として開山させた、遡る事千二百余年の長い歴史があります。聖武天皇は国分寺建立の詔を発布した事で知られます。

 良弁は奈良時代の仏僧で、かの東大寺開山として知られます。それは聖武天皇との縁から始まる、華厳宗の奥義を授けられ奈良東山に自ら彫刻した執金剛神像を安置する庵を組み、厳しい修行と共に金鐘行者と讃えらていた頃、時の聖武天皇に知られる事となりました。

 聖武天皇より離宮の羂索院を下賜された良弁は、ここを金鐘寺として寺院とし、この敬虔な仏法の修行ぶりから、続いて天平勝宝8年こと西暦756年にはかの鑑真とともに大僧都に任じられることとなります。聖武天皇が仏教を保護した背景には時代の荒廃があります。

 天平時代、聖武天皇の御世は天平9年こと西暦737年の天然痘大流行により、行政中枢にあった藤原四兄弟全員を筆頭に政府高官の大半が死亡し行政機構が無政府状態に陥るという救いようのない時代で火山噴火も頻発、災厄から逃れるべく度重なる遷都を行いました。

 聖武天皇は第45代天皇で、その在位は神亀元年こと西暦724年から天平勝宝年間の西暦749年までとなっていますが、頻繁な遷都は例えば5年間で平城京から恭仁京遷都、恭仁京から難波京遷都、難波京から紫香楽京遷都、そして平城京へ帰京という凄いものでした。

 聖徳太子念持仏である如意輪観音を奉じる寺院の建立は、こうした救いようのない世の中での一種の公共事業であったと見るべきかと思いましたが、天平時代の天然痘は中世欧州のペストにも匹敵、社会を維持するには公共事業、無ければ無政府状態だったのでしょう。

 金峯山、もともと石山寺は吉野の金峯山に造営される事となっていましたが、伝わるところによれば良弁が立地を探していたところ、金剛蔵王が顕現し近江国志賀郡の湖水の南に適地が在るとお告げが在ったという。流石に当方は金剛蔵王とお会いした事はありません。

 良弁、しかし聞いてみますと吉野よりも当地が考えられていたようで、もともとこの地は、東大寺建立への近江国産出木材を集めておく貯木場であり、そして琵琶湖から唯一流れゆく瀬田川水運の要衝でもあったのですね、故に当地の方が民衆負担少なく造営できる、と。

 造石山寺所、天平宝字年間後期に淳仁天皇治世下の時代に入りましても聖武天皇所縁の石山寺への国家による保護は続きまして、造石山寺所という行政機関が置かれる事になり、指呼の距離には離宮である保良宮も造営される事となりました。堂宇も広がってゆきます。

 本尊として現在奉じられていますのは塑造如意輪観音像と脇侍の金剛蔵王像、この中に聖徳太子の念持仏が治められているとされますが、これらは天平宝字5年こと西暦761年あたりに彫像されたと記録があり、小さな庵に始まる寺院は徐々に伽藍を整え今に至ります。

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アフガン邦人救出:自衛隊今夜にも開始へ,カブール国際空港は現代のディエンビエンフーか

2021-08-25 20:10:02 | 国際・政治
■C-2輸送機-カブール緊急派遣
 アフガニスタン情勢はバイデン大統領が当初示唆した米軍駐留延期の可能性を撤回した事で混乱混沌の極みに在ります。こうした中で自衛隊が昨夜現地へ入りました。

 邦人救出へ日本政府の先遣隊が昨夜のうちにアフガニスタンの首都カブールに入り、早ければ航空自衛隊に織る邦人救出空輸は日本時間今夜にも開始される、NHKが報道しました。航空自衛隊は一昨日C-2輸送機を先行させ派遣、続いてC-130H輸送機2機が昨日出発しました、カブールから一旦隣国パキスタンの航空輸送拠点へ空輸させる事となっています。

 先遣チームは自衛隊員を中心としており、退避を求める人を乗せる為のカブール空港において調整を行っています。C-130輸送機は日本時間の今夜、パキスタンの首都イスラマバードに到着するとの計画ですが、防衛省は自衛隊による邦人輸送をアメリカ軍の駐留している期間に限るとしており、当初は支援用であったC-2輸送機の投入も視野に入れました。

 政府専用機が今日にも救出の空輸能力増強へ派遣される計画でしたが、今朝千歳基地を離陸し必要な機材と人員を乗せるべく小牧基地に到着したものの、その後昼過ぎに離陸し、パキスタンへはむかわず千歳基地へ引き返しています、防衛省は、運航に必要な準備がととなわない為、と説明していますが、カブールの混乱か、パキスタン政府との調整なのか。

 ディエンビエンフー。カブール空港は現代のディエンビエンフーとなりつつあります。ディエンビエンフーとはインドシナ戦争におけるフランス軍最後の拠点で山間部の盆地に飛行場と陣地を構築し、鉄壁の防御を期していましたが、ベトミン軍は野砲を分解し飛行場を射撃可能とする砲兵陣地を構築、この陥落がフランス派遣軍の崩壊へ繋がっています。

 カブール空港は現代のディエンビエンフーか。タリバーンはアメリカ軍の撤収を月末までに完了するよう要求しています。実はこれも変な話で、月末の撤退はアメリカが一方的に切り上げたものでバイデン大統領が当初示した撤退予定は同時多発テロ20周年となる9月11日でした、これをバイデン大統領が月末に繰り上げたのを、タリバーンが守れ、という。

 タリバーンは、しかし既にカブール市内の交通統制を行っており、空港外縁部にも進出しています。どの程度の野砲や重火器を装備しているかは未知数ですが、アメリカ軍が撤退を開始し空港外の警戒を実施していない事から、現状では空港にタリバーンが組織的攻撃を開始する事は不可能ではありません、滑走路なども砲弾落下の危険が生じる懸念がある。

 時間が無い。アメリカのバイデン大統領はアメリカ軍のカブール空港撤退完了を8月31日に完了させる予定に変更はないとしました、しかし、これは当初タリバーンのカブール侵攻が行われる前の円満撤収ならば問題はないのかもしれませんが、現在はカブール空港警備へアメリカ軍が最低でも4000名規模の部隊が増派、この撤収が間もなく開始されます。

 明後日。バイデン大統領の月末までに撤退を完了させる方針を実現するには、少なくとも4000名のアメリカ軍部隊も月末までに、カブール国際空港の警備を終了し撤退しなければなりません、すると明後日からカブール警備部隊の撤収が開始され、当然ながら空港を警備するイギリス軍やドイツ軍などNATO各国からの緊急展開部隊撤収が本格化する事に。

 自衛隊の邦人救出作戦は、当初の今週末開始予定を前倒ししました、そもそもアメリカ軍の撤収完了が来週火曜日、アメリカ軍の警備が徐々に終了する中の自衛隊派遣となりますので、カブール空港の混乱は今まで以上に厳しいものとなり、攻撃を受ける事はないでしょうが、自衛隊機が銃撃を受ける可能性、邦人近くでの威嚇発砲の可能性は否定できない。

 空港の危険。時間と共にカブール国際空港の危険度は増してゆきます、何故なら、アメリカは現地米軍関係者をタリバーンの報復から守るべくアメリカ本土へ受け容れる計画であり、これにはカブール国際空港外縁部を警備するアフガニスタン現地警備員500名も含まれ、それは即ち、カブール国際空港へタリバーン戦闘員の浸透が始まる事に他なりません。

 ADS-B停止。カブール周辺の困難を象徴するのは本日日本時間午後のADS-B停止です、ADS-Bとは旅客機の機体位置や飛行情報を自動共有させるシステムで過密空域では旅客機同士の衝突防止に重要な役割を担います、これがアフガニスタン上空で一時的に停止してしまいました。それだけ多数が飛来しているとも、地上航空管制へ影響が出ている構図だ。

 カブールからの邦人輸送が前倒しされ、日本時間今夜にも開始されるという発表は、心強いものですが、タリバーンはこれ以上のアフガニスタン国民出国を認めないと表明しています。タリバーンはアフガニスタンイスラム首長国、そして今旅券を有している国民はアフガニスタンイスラム共和国の国民ですので、その権限はありませんが、妨害の可能性も。

 日本がアフガニスタンより退避させる邦人救出作戦は、当たり前ですが邦人だけではなく、人道上、日本大使館など在外公館現地職員や日本政府のアフガニスタン復興計画現地関係者もその救出の対象で、既に海外メディア関係者家族殺害等、懸念すべき状況が現実のものとなっていますので、見捨てる事は今後の禍根に繋がります、この方々の移動は可能か。

 タリバーンの主張は、技師などが難民として出国した場合は此れからの国家運営に関わるとして、出国させない方針を示しています。しかし、残った場合の人道危機が予測でき、そしてすでに現実のものとなっているのですから、一旦出国し、本当に残った方々が人道被害に見舞われないかを精査した上で、帰国か否かを判断してもらうのが妥当でしょう。

 時間が無い、治安は悪化、米軍基地警備終了間近、空港外縁での散発的な銃撃、楽観的な要素は何もありません。時間が掛かれば、場合によっては駆け付け警護、自衛隊法78条に基づく治安出動や、一時的に自衛隊管理区となる空港施設へ自衛隊法81条2項に基づく警護出動、またはそれよりも厳しい状況もあり得ます、救出を、急がなければなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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