北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】建仁寺,双龍図-法堂に描かれた壮大な龍の絵図をカメラにも開放する禅寺の精神真価

2023-05-31 20:22:10 | 写真
■禅寺のこころを考える
 拝観と観光の違いはどうあるのかと考える事はあるのですが逆に拝観の森厳な気持ちで探訪したのを物見遊山と例えば北区の御寺で寺院側にみられるのは少々不満に思う事がある。

 双龍図、京都には天井に龍を描いた堂宇が数多ありますが、格段に親しみを感じるのは何を置いても、相国寺や天龍寺の龍たちも確かに心を突き動かすものはあるのですが、建仁寺の双龍図ほどには感動というものを生まないとおもう。それは禅宗の真価を示すため。

 法堂に描かれた壮大な龍の絵図、そもそもこの法堂は明和2年こと西暦1765年の再建となっていまして、平成時代に日本画家小泉淳作により双龍図が描かれている、いわば絵図としては新しいものなのですけれども、それ故に撮影させてくれるというのはありがたい。

 勧進、という動きが末法思想の時代に起こった源平合戦による南都焼討と東大寺焼失、この頃には文治元年大地震や養和元年大飢饉など、遂にこの世界もこれまでか、という災厄災禍が続く中で、東大寺の再建を進める過程で重源などにより大きくわき起こしました。

 法然の浄土宗、親鸞の浄土真宗、一遍の時宗、日蓮の日蓮宗、栄西の臨済宗、道元の曹洞宗、末法思想とともに災厄の時代には阿弥陀仏の縋る他力本願の浄土宗と浄土真宗と時宗、天台宗から発展した日蓮宗、教義と修行による不立文字を掲げた禅宗が日本で定着する。

 禅宗の真価、というのは元々禅宗は仏教が民衆という大海に分け入って初めて成立しました背景があります、故に寺院は開かれているというものなのですが、なるほど仏教美術は昨今、禅寺もそうでない寺院も撮影禁止というところが実に多いという悲しい現実がある。

 建仁寺はこうした点で開かれている寺院であり、双龍図を見上げるだけではなく撮影できるという。好奇心もあるのかもしれませんが、何より双龍図というものを撮影出来たのですから、こうして禅宗と仏教の話題を広く分かち合う事が出来る、これは何とも、よい。

 末法思想、考えれば不思議なものでお釈迦様自身が末法思想をいつごろと示したものではなく、勝手に解釈して世界の終焉を悟り、その上で丁度うまい具合に災害と戦争が重なった事により、いよいよ世界は終わる、と自分で袋小路に迷い込んだ構図が平安朝末期です。

 ノストラダムスの大予言を、どうしても1999年7の月、という言葉と共に想いだしてしまう世代ではあるのですが、人類は進歩しているようで進歩したのが科学技術のみ、こころと哲学については、同じことを繰り返しているのだろうか、とも思ってしまうのだけれど。

 地球は終わらない、いわば末法思想そのものに反論したものが日本では禅宗というもので、このあたりから鎮護国家という、国家が主体であり、しかも国民国家という概念が存在しない時代のいわば“お上”の概念の信仰から大衆信仰へ舵を切った構図といえましょう。

 俵屋宗達の風神雷神図、この絵画こそは恐らく日本人ならば美術の教科書や風邪の感冒薬コマーシャルなどで一度は目にしたものと思うのですが、原本は京都国立博物館に寄託されていますので複製ではあるのですけれども、これをそのまま撮影する事が出来るのです。

 風神雷神図、原本は国宝であり建仁寺派寺院である妙光寺再興に際し描かれたものが建仁寺へ贈られたもの。妙光寺は右京区宇多野上ノ谷町という山奥の、そして特別拝観以外見る事の出来ない寺院とはなっているのですが、風神雷神図の複製をこう、みられるのだ。

 京都には数多寺院が有ります、もちろん善峰寺のように駅から遠い寺院もあれば鞍馬寺のように駅から近くとも駅そのものが中心部から離れている寺院、というところもあるのですが、交通が便利な中心部に、もう少し拝観者が集ってもいい寺院が、こう佇んでいます。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】建仁寺,末法思想の時代を経て南都焼討と鎮護国家の価値観から大衆信仰の時代への変容

2023-05-31 20:00:36 | 写真
■東山の建仁寺をめぐる
 熱い春と涼しい晩春を経て熱い初夏の前に台風がやってくるという妙な気候の時節ですに少し東山を散策しました。

 建仁寺。京都の東山と云えば高台寺や清水寺と八坂神社というように歴史を現代に伝える景観が続いているところではあるのですが、不思議とその寺院は高台に並んでいるように思えて、逆に“東山という山の名を冠するのだから当然だろう”と切り返されるところ。

 祇園の少し南側、建仁寺は寺院が高台に並ぶところにあって、しかし鴨川の川辺のようなところに、しかしくっきりと堂宇を広げていまして、歴史景観地区というのだからこういう壁が続くのは当たり前に見えたその先に、拝観者を迎え入れるよう扉をひらいています。

 京都市東山区大和大路四条下る四丁目小松町、ここは京都市東山区大和大路四条下る四丁目小松町という、八坂の塔もすこし山手に見えるような立地にあります。意外と広い堂宇と庭園を広げていますが、これでも小さくなったといい、実は八坂の塔もその塔頭という。

 創建建仁2年、西暦では1202年に創建された寺院です。堂宇は思いのほか大きいのですが、21世紀の京都の街並みは南座はじめ大きく成長していることから、特徴的な五重塔など仏塔を寺域に有さない寺院故にある種目立たないのですが、それゆえなにか静けさがある。

 最初禅寺、建仁寺にはこう大書されていまして、観光客がそれ程集まらない寺院はそう、臨済宗建仁寺派の大本山、という大きな役割を担っていまして、日本に臨済宗を伝えた栄西さんが、開山となっている。すると、観光客が素通りするのはもったいないようにも。

 中世の時代、日本では仏教という宗教の存在は大きく転換を始めていました、いや仏教伝来、と飛鳥時代の歴史を小学校で学ぶ通り、確かに日本には仏教はあったのですけれど、これは国家宗教であり、単に国家鎮護を目指すことが宗教の役割ではないともいえるもの。

 勧進と作善、中世の時代には日本部仏教が国家宗教というものに大きな役割を求められる一方で、多様性を持ち始めます。それは奇遇なのかもしれませんが末法思想という、いわば仏教の時代の終末思想的解釈の時代に、哲学的な教義を持つ仏教が大衆へ向かい始める。

 末法思想は末法元年が平安朝後記、末法元年が永承7年こと西暦1052年となっています、建仁寺の創建からは150年も前ですが、末法とは最終戦争のような形で一瞬に終わるのではなく、日没と夜のとばりのように終焉が訪れると理解され、終わりの始まりとされた。

 信心を人々に求め結縁を求める、勧進は勧進帳のおかげで集金のような印象で受け止められていますがもともとは中世の頃に本格化しました布教の様式です、西行や重源の時代に本格化していまして、もっともこの頃から確かに集金は行われていた、特殊な事情により。

 南都焼討、源平合戦において平家の勢力が陰りを見せた転機の一つに奈良の東大寺など主要な寺院を平家側が焼討した事件がありました、これは軍事的な意味よりも政治的な意味が大きいものでしたが、同時に末法思想の時代に起こった大寺院の焼失は大きな意味が。

 鎮護国家、他方でこの時に政権は朝廷の権限と共に院政が続き平家の権限と二重権力三重権力状態が醸成されていたこともあり、末法思想とともに一種の世情不安を形成していた事も否定できないところです。そこに大寺院の焼失と再興されない状況は不安を高める。

 勧進はこうした最中にあって、東大寺復興等を求める新しい動きとして、つまり末法の段階を超えて新仏教を求める流れとして、形成されてゆきました。それは臨済宗を含む新しい宗派が日本に定着し始める流れとなり、建仁寺を拓いた栄西の活躍の時代となるのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-反撃開始をゼレンスキー大統領示唆,相次ぐキエフへの攻撃とモスクワでの無人機攻撃事案

2023-05-31 07:00:28 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 おはようございます、朝鮮半島からの飛翔体の打ち上げ動向が気になるところですが今朝はウクライナ情勢の最新情報をお伝えしましょう。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は30日に発表した声明で、いよいよ反転攻勢が開始される、と春季攻勢の開始を示唆しました。ただ、ウクライナ軍はあらゆる戦線において威力偵察と解釈できる攻撃を開始しており、既に春季攻勢が開始されている可能性もあります。もちろん大統領は大統領の職務に徹しており、実際に開始されるかは軍が決定します。

 バフムト、この冬から初夏にかけての最大の激戦地では攻撃の中心を担った民間軍事会社ワグネルが撤退を開始し正規軍である空挺軍の第30空挺旅団へ交代が開始されており、攻撃衝力が尽きたか、若しくは再編成の上で別の戦線へ投入されるのかに関心が集まっていますが、現段階で2月に言われたような、バフムトから次の都市へ侵攻はできません。
■100発以上のミサイル等
 キエフはまたしても大規模な攻撃を受けました。

 ウクライナの首都キエフは29日から30日にかけ、大規模なミサイル攻撃を受けています。空中発射巡航ミサイル40発、空中発射弾道弾など11発、自爆用無人機66機、実に三桁の攻撃を受けています。ウクライナ国防省は空中発射巡航ミサイル37発と無人機58機及び空中発射巡航ミサイルなど11発を撃墜したとし、こちらも三桁を撃墜した構図です。

 キエフに撃ちこまれた無人機は5月だけで200機を超えており、ゼレンスキー大統領はロシアが発射している無人機はイラン製シャヘド136無人機が大半である事から、イランに対する報復制裁などを行うとしています。他方、ロシア軍は無人機やミサイルを逐次投入しているようで、飽和攻撃が出来ない技術限界か、作戦の稚拙さなのかは、不明です。
■モスクワへUAV8機
 UAV無人航空機は何処から発進したのでしょうか。

 モスクワ、ロシアの首都モスクワが8機の無人機による攻撃を受けました。可搬式の無人機のようなものでは無くもう少し大型の無人機による攻撃と見られ、クレムリン攻撃に際し使われたような小型のものではない可能性が、爆発の痕跡や発見されている破片などから推測できます。ただどの経路から、またどこから発進したのかは現段階では不明です。

 モスクワは冷戦時代から地対空ミサイルの密集地域であり、SAMの巣と呼ばれるモスクワが従来、こうしたミサイル攻撃に対しては盤石であると信じられていましたが、低速の無人機に侵入された事が事実であれば、ロシア軍は相当数の地対空ミサイルを引抜きウクライナへ派遣しているか、若しくは現在配備中のミサイル性能に問題があると考えられます。

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【防衛情報】フランスM-51実験,アメリカLRHW長距離極超音速兵器と中国ABMミッドコース弾道弾迎撃実験

2023-05-30 20:21:44 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 今回はSLBM潜水艦発射弾道弾や極超音速兵器とミサイル防衛など戦略兵器関連の話題です。

フランス海軍は戦略ミサイル原潜ル・テリブルからM-51潜水艦発射弾道弾の発射実験に成功しました。フランスのセバスチャンレコルニュ国防相はM-51の実験について、発射は4月19日、オーディエルヌ湾から実施され、北大西洋上の目標海域に正確に着弾したとのこと。海岸線から遠く、今回は実験弾頭であり核爆発を伴うものではありません。

 ル・テリブルはル・トリオンファン級戦略ミサイル原潜の4番艦として2010年に竣工、フランス海軍が装備する戦略ミサイル原潜4隻のうち最新となっています。そしてル・トリオンファン級は元々M-45潜水艦発射弾道弾を搭載、これは100kt核弾頭6発を内蔵する多核弾頭式ミサイルですが射程が6000㎞でしかなく、北京や平壌まで大西洋から届きません。

 M-51潜水艦発射弾道弾は2010年に開発され、ル・トリオンファン級戦略ミサイル原潜に順次M-45を置き換えるミサイルとして搭載回収を進めています。射程は10000㎞でフランス近海から北京にも平壌にも届きます。M-51そのものは2010年にル・テリブルへ搭載されていますが、今回発射されたのは改良型、ミサイル防衛を突破する能力向上型です。

 アメリカ陸軍はマルチドメインタスクフォースへLRHW長距離極超音速兵器システムの部隊配備を開始しました。MDTFマルチドメインタスクフォース部隊となったのは第3砲兵連隊第5大隊で、部隊配備とともに実働訓練サンダーストライクが実施されワシントン州ルイスマッコード基地からフロリダ州ケープカナベラルまでの展開などを演練しました。

 LRHW長距離極超音速兵器システムは共通極超音速滑空体として開発されたアメリカ軍の新時代装備であり、従来の中距離核戦力全廃条約下では中国やロシアの技術開発にミサイルギャップが生じていたことから、条約を脱退し開発を開始したもの、最大速力はマッハ12に達し、マッハ8の極超音速で一定時間を滑空、防空システムを突破し目標を叩く。

 ロッキードマーティン社が開発を担当しており、射程は2775km以上、今回配備されたのは車両により2連装発射装置が牽引され、発射時に垂直にたてて射撃するものですが、共通極超音速滑空体の名の通り、海軍のミサイル駆逐艦や攻撃型原子力潜水艦などからも運用を想定しています。なお、現在開発されているものは通常弾頭型のみとなっています。

 中国人民解放軍はABMミッドコース弾道弾迎撃実験に成功しました、これは4月16日に実施されたもので、弾道ミサイル実験としては通算七度目となります。中国人民解放軍は2010年に最初の弾道ミサイル迎撃実験を実施しており、2013年と2014年及び若干間が開いて2018年と2021年、最近では昨年2022年にも弾道弾迎撃実験を実施しています。

 ミッドコース弾道弾迎撃は大陸間弾道弾や潜水艦発射弾道弾など水爆弾頭を搭載した弾道ミサイルに対して、着弾直前の最終段階での迎撃には失敗時の大きなリスクがあり、多層ミサイル防衛としてミッドコース弾道弾迎撃は実施されるものです。ただ、ミッドコース弾道弾迎撃には中間地域での迎撃が必要で、中国本土で実施できるものではありません。

 中国政府は今回のミッドコース弾道弾迎撃実験について、防衛的なものでどの国を対象としたものでもない、としています。ただ、例えばアメリカ本土からのICBMをミッドコース弾道弾迎撃するには、ロシア東部で迎撃しなければ中国東北部に配置したのでは間に合わない可能性があります。この点について中国国防省はなにも発表していないのです。

 アメリカ海軍はHIIハンティントンインガルスインダストリーズ社との間でコロンビア級戦略ミサイル原潜建造下請けに関する5億6760万ドルの契約を結びました。コロンビア級戦略ミサイル原潜はジェネラルダイナミクス社が建造していますが、ブロック工法により建造される船体モジュールの一部をHII社が下請けにより建造することを意味する。

 オハイオ級戦略ミサイル原潜、長らく海軍の第二撃核抑止力を担った戦略ミサイル原潜も老朽化が進み、コロンビア級戦略ミサイル原潜はその後継艦です、そして現在コロンビア級原潜として現在建造されているのは一番艦コロンビアと二番艦ウィスコンシン、このうちHII社はビルド1と呼ばれる最初の区画のモジュール建造を担当するようです。

 コロンビア級戦略ミサイル原潜は水中排水量20810t、これはオハイオ級戦略ミサイル原潜の18750tよりも大型化しています、他方トライデントD5潜水艦発射弾道弾24発を搭載したオハイオ級に対して、コロンビア級はトライデントD5を16発搭載するのみ、一方で炉心交換が42年間不要の新型原子炉を採用する等新機軸を有する潜水艦となりました。

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北朝鮮人工衛星打ち上げ期間発表-東シナ海と太平洋上へ危険海域,浜田防衛大臣-落下時備え破壊措置命令発令

2023-05-30 07:00:47 | 国際・政治
■臨時情報-ミサイル防衛
 危惧されたG7広島サミットの期間は、ゼレンスキー大統領訪日と併せ今撃てば世界の敵、という一種の圧力が功を奏したのかもしれませんが結局発射そのものを抑止させることはできないもよう。

 北朝鮮は5月31日から6月11日の期間に人工衛星の発射を行うと発表、日本政府にも通知があったと発表がありました。人工衛星の発射は過去にも二度実施されており、このうち一度は東北地方上空を通過し、深刻な脅威と認識されることとなりました。また沖縄上空を飛翔する経路が過去に発表され、自衛隊が沖縄救援隊を派遣する事となりました。

 我が国政府の対応として、岸田総理は関係省庁に対し、情報の収集分析に万全を期し国民に適切に情報提供を行うこと、国連安保理決議に違反するものだとしてアメリカや韓国などの関係国と連携し北朝鮮が発射を行わないよう強く自制を求めること、不測の事態に備え万全の態勢を取ること、などを指示し、万一の国土への落下に警戒を強めています。
■危険海域の概要
 国連安保理決議により北朝鮮は核兵器運搬手段となるミサイル開発を禁止されており、過去に長距離弾道弾実験を人工衛星打ち上げと称し強行したように今回も認められるものではありません。

 北朝鮮の通知によれば、落下物の危険があるとされたのは北朝鮮の南西側の黄海上の2カ所とフィリピンの東側の太平洋上の1カ所、北西部のトンチャンリ発射施設から南方400kmから490kmの黄海上、同じく630kmから720kmの黄海上、それに距離を隔てて2760kmから3180kmのフィリピン沖の太平洋上で、切り離しタンクなど落下するもよう。

 北朝鮮の通知海域三か所、いずれもわが国EEZ排他的経済水域の域外が視程されています。これを受け海上保安庁は航路警報を発令し、当該海域への船舶航行を避けるよう警告しています。もちろん、飛翔体はその上空を一直線に進むこととなります。発射された場合には落下想定地域へJアラートなどを通じて警戒情報が発表されることとなるでしょう。
■破壊措置命令発令
 この種の報道とともにホークミサイル後継となる新地対空ミサイルには弾道弾迎撃能力と充分な射程の付与という必要性を痛感する。

 浜田防衛大臣は29日、落下物などが予想される場合には撃墜する破壊措置命令を自衛隊へ発令しました。既に北朝鮮の人工衛星打ち上げ方針が示された段階で防衛省は南西航空方面隊や西部航空方面隊へ準備を命令、迎撃ミサイルの配備されていない陸上自衛隊の与那国駐屯地や石垣駐屯地、航空自衛隊の宮古島分屯基地へミサイルを派遣しています。

 イージス艦も洋上に展開しており、地上に落下被害が想定される場合にはペトリオットミサイルPAC-3やスタンダードSM-3により迎撃が行われる事となります。北朝鮮ミサイルによる日本国土への着弾被害はまだありませんが、繰り返されるミサイル実験によりミサイルの一部が日本へ漂着する、テレビカメラに映るなど年々深刻度が増しています。

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【防衛情報】イタリア陸軍NH-90多用途ヘリコプター60号機とBvS.10全地形車両436両英独瑞典共同購入

2023-05-29 20:21:52 | インポート
■■■防衛フォーラム■■■
 今週は陸軍関係9の話題ですが、自衛隊のUH-60JAを見ているとNH-90は運用コストがユーロファイター並だという泣き所さえ我慢すれば良い装備なのかなとも思えてきます。

 イタリア陸軍はNH-90多用途ヘリコプター60号機を受領し導入計画を完了しました。NH-90の60号機納入式は11月25日にレオナルドヘリコプター社のベニステッセラ工場において行われています。NH-90多用途ヘリコプターはイタリア陸軍ではUH-90として運用されており、これらは3個のヘリコプター連隊に20機づつが配備されています。

 NH-90多用途ヘリコプターはUH-1多用途ヘリコプターの後継としてレオナルド社の前身であるアグスタウェストランド社やエアバスヘリコプターズの前身ユーロコプター等欧州共同開発により完成したヘリコプター、20名の人員を空中機動させるとともに後部カーゴハッチを有しており物資輸送や医療支援任務などにも広い用途を有しています。

 NH-90多用途ヘリコプターの特色は、従来の多用途ヘリコプターよりも大型化させた点で、戦術空中機動と共に比較的遠距離を飛行させる能力を付与、また兵員輸送に留まらない多用途性を付与しています。しかしその一方、UH-1などに付与された武装ヘリコプター、所謂ガンシップとして用いるには機体が大き過ぎ、また実際に派生型も開発されていません。
■ZMA-15装甲戦闘車
 APCとIFVの違いは火力の方では無くて防御力と機動力の面で戦車に随伴できるという点が重要なのだけれども。

 トルコのFNSS社はM-113派生型となるZMA-15装甲戦闘車を完成させました。M-113装甲車は1980年代から側面などの防御力を強化し機関砲などを搭載したAIFV装甲車が開発されています、トルコ軍もFNSS社がライセンス生産し更に改良したものをACV-15として採用していますが、大型のNEFER-25mm機関砲を搭載したものがZMA-15です。

 ZMA-15は機動力ではM-113の水準にあり第三世代戦車の機動力に随伴することは難しいのですが、不整地突破能力を有するという点だけでもこの種の装甲車には用途があることがウクライナ戦争におけるウクライナ軍M-113装甲車により確認されています。NEFER-25mm砲塔はトルコのアセルサン社が開発した無人式の機関砲塔となっています。

 M-113装甲車は、しかしインファントリーパーソナルキャリアとしての用途に限定してウクライナでは成果を上げている分析があり、機動力が劣るために敵戦闘部隊とは視程外の地域で運用されています、ここに来観桜を搭載する試みは1980年代から各国で進められていますが、近接戦闘部隊としてこの種の車両を最前線に投入する性能は未知数です。
■ピオルン地対空ミサイル
 NATOの備蓄も心細くなっている印象です。

 ノルウェー陸軍はポーランド製ピオルン携帯地対空ミサイル調達を決定しました。ノルウェー軍ではNASAMS中距離防空システム最低射程の内側を担う携帯地対空ミサイルを模索しており、今回迅速に納入できるという点も加え、ポーランド製地対空ミサイルを採用する事となりました、なおポーランドはノルウェーと同じNATO加盟国となっています。

 ピオルン携帯地対空ミサイルはポーランドのMESKO-SAが生産しており、射程6000mで有効射高4000m、今回の契約は3億5000万ノルウェークローネ規模であり、ドル換算では3500万ドル規模となります。全体的な形状は旧ソ連製9K38/SA-18グレイル携帯地対空ミサイルと酷似しており、実際SA-18を近代化改修したものでNATOでは異色の存在です。

 9K38/SA-18グレイル携帯地対空ミサイルは広くライセンス生産が行われてきたという背景があります、しかし今回のノルウェー軍によるポーランド製装備導入という背景にはもう一つ、所謂西欧諸国が冷戦終結後に軍需産業と防衛力を局限化してきました一方、東欧はロシア脅威を見続け、防衛力整備とともに軍需産業維持に取り組んだ結果といえます。
■スバルベル412EPX
 無難なのはわかるのですが輸出に全然注力していないこの装備が売れているのは驚きです。

 グアテマラ空軍はスバルベル412EPX多用途ヘリコプターの受領を開始しました。これは2022年12月19日に引き渡し式が行われ最新型のスバルベル412EPXが2機就役しています。いわゆるUH-1シリーズの最新型であり、グアテマラ空軍では旧型機としてUH-1シリーズ初期型にあたるベル206から比較的新しいベル412までを運用しています。

 スバルベル412EPXのグアテマラ空軍でも運用は強襲ヘリコプターとしての運用も想定してはいるのでしょうが、白地に青色のラインを描き上部を白色という、救難用や患者輸送用の迷彩色ではない塗装を採用しています。この機体は2022年にベル社とアメリカ陸軍多国間航空計画局によりグアテマラ空軍に提案され、採用が決定したという背景があります。

 スバルベルのなの通り、この開発には当時の富士重工がベル社と共同開発したものです、現在社名を富士重工からスバルへと改名したためにこの名に。滞空時間が3.8時間あり、人員15名を輸送可能であるとともに武装ヘリコプターへの転用も可能となっています。そして陸上自衛隊でもUH-2多用途ヘリコプターとして採用されている機体と同一のヘリコプターです。
■M-136ボルケーノ
 陸上自衛隊では87式地雷散布装置とヘリコプターを使うところですね。

 中華民国台湾はアメリカからM-136ボルケーノ地雷敷設装置を導入します、アメリカ国務省は1億8000万ドルで、その対外供与を認可しました。M-136地雷散布装置は巨大なM-977-HEMTT重貨物トラックに搭載される地雷散布装置でM-87地雷敷設装置を搭載、AP対人地雷やMP対戦車地雷を短時間で広範囲に敷設、対戦車生涯を構成する装備です。

 M-136地雷散布装置は対人地雷6発と対戦車地雷1発からなるコンテナを複数搭載しており、高圧空気で遠方まで地雷投擲、特に対人地雷は単純な触発式ではなく地面に落下後12m先まで罠線となるワイヤーを張り、広範囲の地雷原を構成、対戦車地雷も触発式ではなく磁気検知方式ですが、地雷処理装置を見分ける機能があり車両を標的として起爆します。

 M-87地雷敷設装置には地雷を撒く機能だけであり埋める性能は含まれていません。しかし、一見して地雷が敷設されている事を示すだけでも相手の行動を制約する性能があり、これには更に実地雷に複数の擬製地雷を紛れ込ませる運用でも、相手にどれが実地雷かを把握させない意味があり、時として有効な地雷原として機能するという研究もあるようです。
■BvS.10全地形車両436両
 防弾で浮航能力もあって傾斜地は勿論山間部も湿地帯も大丈夫というこの装備は自衛隊に絶対必要な装備だと思う。

 イギリスとスウェーデンおよびドイツは共同でBvS.10全地形車両436両を取得します。これは近年NATOが新しい最前線として認識している北極圏での戦闘に備えるもので、BvS.10は雪上はもちろん北極圏の厳しい低温においても、機動力とともに一定の防御力を確保できると機体されていて、436両のBvS.10は7億8000万ドルにて取得されるという。

 BvS.10はBAEシステムズ社が生産、開発国のスウェーデンが236両を取得、ドイツが140両を導入しイギリスはすでに海兵隊がBvS.10を運用しているところにさらに60両を追加配備します。この引き渡しは2024年からはじまるとのことですが、汎用車両としてBvS.10の非装甲型であるベーオウルフ全地形車両についてもこの436両に含まれるとしています。

 全地形車両は連節式の車両で前後に動力伝達装置を通じて履帯を駆動させるとともに前後の車両に人員や物資の輸送能力があります、これは雪庇などを踏破する性能に繋がりますが、積雪地域では設地圧を広くする必要があり、一方この方式は橇などによる物資の牽引能力が高くなるという利点もあります。BvS.10は雪上車のBV-206を改良した装備です。
■RCH-155装輪自走榴弾砲
 99式自走榴弾砲の砲塔を無人化して16式機動戦闘車に搭載した様な凄いのだけれども採用されなかった装備の初陣がウクライナという。

 ドイツのクラウスマッファイヴェクマン社はウクライナへRCH-155装輪自走榴弾砲18門を納入します、このRCH-155はドイツ連邦軍において運用されているPzH-2000自走榴弾砲の砲塔システムを軽量化し、またドイツ連邦軍において多数が運用されているボクサー装輪装甲車に搭載したもので、連邦軍の装備ではなく独自開発した自走榴弾砲です。

 ウクライナへのRCH-155供与はドイツ政府の連邦軍能力構築基金から費用が捻出されており、これにはPzH-2000自走榴弾砲14両の供与資金も含まれています。ただ、RCH-155は第二次世界大戦後、ドイツが初めて開発した装輪自走榴弾砲となっています、興味深いのはRCH-155は砲塔システムであり、ボクサー装輪装甲車以外にも搭載可能ということ。

 RCH-155はMLRS多連装ロケットシステムの車体部分などへの搭載も可能となっていますが、モジュール方式装甲車というボクサー装輪装甲車が選定、ボクサーは増加装甲など38.5tまでの車体重量を想定しているということですが、RCH-155は39tに達するとのことです。乗員は車体内に位置し砲塔は無人化、エンジンは804hp型を搭載しています。
■韓国新型分隊機銃K-15
 日本は日本特殊金属を受け継いだ住友がやる気を出さず駄目な機関銃ばかりつくるので警告したら逆に撤退されたという。この位はやってほしいけれども小さな陸上自衛隊の国内需要のみと巨大な陸軍の輸出用込みとの違いか。

 韓国陸軍は新型分隊機銃K-15の導入を開始します、5.56mm分隊機銃としてSNI-S&T社により開発されたK-15は先行して配備されている旧型のK-3分隊機銃を置き換えることとなりますが、もともとK-15はK-3を近代化改修したものであり、軽量であるが華奢というK-3の難点を、部品単位で強化したもの。K-1小銃の弾倉をそのまま装填可能です。

 K-15分隊機銃はK-3を堅牢化したことで重量が増大しています、これは韓国版MINIMIと称されたK-3分隊機銃が二脚込みで6.8kgであったのに対してK-15は本体重量だけで7kgとなり二脚を加えると更に重量は大きくなります、しかし、全体重量としてはMINIMI分隊機銃よりも軽量に押さえており、また射撃性能の信頼性も向上したとされている。
■SISU-GTP軽装甲機動車
 こういう話題を見ると日本の軽装甲機動車はそろそろ初期の車両が老朽化するのだけれども後継装備をどうするのかが不安です。

 フィンランド軍はSISU-GTP軽装甲機動車を増強します。SISU-GTPはフィンランドのSISU社が2019年に開発した四輪駆動の機動装甲車両でMRAP耐爆車両よりも機動性が高く、RWS遠隔操作銃塔を搭載可能、5名定員の貨物輸送型と10名を機動させる歩兵輸送車が開発されています、機械化部隊用装備としてフィンランド軍は2020年に調達決定する。

 SISU-GTP軽装甲機動車今回追加調達されるのは25両で取得費用は1910万ユーロとのこと。フィンランド軍では六輪式装輪装甲車であるXA-180装輪装甲車の老朽化に直面しており、XA-180ほどの多用途性能はありませんが、小型車両が求められる状況では軽装甲機動車のほうが有用であるとして採用されました、車輪が大きく積雪地でも行動可能です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ海軍USV無人水上艇の活躍,海上自衛隊はUSV無人水上艇とどのように向き合うべきか

2023-05-29 07:00:12 | 先端軍事テクノロジー
■もがみ型などで搭載
 エクゾセショック、対艦ミサイルの重要性が認識された1982年のエクゾセショック程ではありませんがUSV無人水上艇の戦果から考えさせられるものが有ります。

 ウクライナ海軍のUSV無人水上艇によるロシア海軍情報収集艦攻撃、USVからの撮影では、目標至近距離へ到達したところで情報が途切れており、目標へ損害を与えられた可能性が高くなっています。さて、USV無人水上艇、要するに震洋のような特攻兵器の無人版として見て取る事が出来るのですが、この装備体系は今後どのように展開するのでしょう。

 対艦ミサイルの代替と考えるべきではありません、USVは情報取集や遊弋の時間的余裕が大きく、キャプチャー機雷の発展型か、一種の徘徊式弾薬と情報収集用装備の特性を兼ね備えた海上兵器であると考えるべきです、具体的には、目標の位置を特定しなければ発射できない対艦ミサイルに対し、USVは数日間から数週間、目標を索敵する事が可能です。

 キャプチャー機雷というのは、魚雷を内蔵した機雷ですがUSVは自ら行動する事が可能で、きわめて少ない数でも広範囲を索敵できるほか、機銃弾などが命中した場合は破壊されるものの、掃海艇などの機雷探知装置に掛かる事は無く、逆に機雷原等を防衛するべく掃海艇などを駆逐する能力を備えているともいえるもので、新しい装備体系を構築し得る。

 海上自衛隊としては、USV、もがみ型護衛艦へ艦載型のものが開発されているほか、今後建造する哨戒艦についての無人運用が模索されており、自衛隊としてはこの装備体系について、導入を進めると同時に対策を構築しなければなりません。例えば、南西諸島の島嶼部防衛に陸上自衛隊がUSVを運用する可能性などを考慮し開発を進めるべきでしょう。

 無人ヘリコプター、もう一つはUSV対策について。欧州やアメリカでは無人ヘリコプターの艦載運用基盤構築が急がれています、この点についてUSVは非常に小さく、勿論護衛艦の潜望鏡探知レーダーとCIWS水上射撃モードを応用するならば撃退は充分可能なのでしょうが、USVは今でこそ数隻で運用されているものの、飽和攻撃が研究されるのでしょう。

 MQ-8無人ヘリコプター、海上自衛隊はSH-60哨戒ヘリコプターの補完に高性能であるMQ-8の導入を内定していましたが、一向に進んでいません。いやS-100のような小型機でもよいので複数機を護衛艦の艦載機として搭載し交代しつつ、いわばセンサーを空中に置く方式で常時滞空させる、こうした能力構築を急がなければならないように、考えるのです。

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【日曜特集】小牧基地オープンベース2019【5】C-130H輸送機とKC-767空中給油輸送機の着陸(2019-11-09)

2023-05-28 20:05:47 | 航空自衛隊 装備名鑑
■飛行展示ひと段落へ
 C-130H輸送機とKC-767空中給油輸送機の飛行展示はいよいよ終了するもよう。

 飛行展示を終えたC-130H輸送機2機がアプローチしてきました、C-139H輸送機は自衛隊では小牧基地に集中配備されているもので、それも国際協力任務や邦人救出任務へはC-2輸送機が配備開始されるまでほぼ唯一の選択肢と云える装備、こうやってみると多い。

 四発機の迫力、というのでしょうか、勿論飛行している様子も迫力があるのは確かなのですが、地上に在って数機が並んでいるだけでも、早い話5機のC-130Hが並んでいるとエンジンだけで20基あることになり、その翅の数も多いのですから、妙に賑やかです。

 C-130H輸送機は滑走路上空をローパスしてと、その先に漸く着陸態勢へと入ってゆきます。そのまま着陸すればいいじゃあないか、と思われるかもしれませんが、この編隊でローパスする様子一つとって飛行展示であったりします、民間の旅客機と戦術輸送機の違い。

 戦術輸送機、小牧基地は平和ですが、戦術輸送機は先日のスーダンのような危険な地域へ飛行しなければなりません、すると着陸するまで航空機が旋回し滑走路に接近する経路は決まっています、滑走路に向かうのだからその延長線上しか飛行経路は無いわけです。

 スーダンは幸い無事であり、また自衛隊機は過去に戦闘に巻き込まれて輸送機が撃墜されるような事は幸いありませんでしたが、編隊を組んで滑走路上を一回飛行し、そのまま編隊を説いて短時間で着陸するのは、部隊が相手の攻撃を受けかねない時間を限定する。

 イラク派遣、航空自衛隊の空輸支援は私などは開始されるところから終了するところまで、リアルタイムで見守っていた世代なのですが、考えるとイラク戦争開戦の頃、今の大学生の子たちはまだ生まれたばかりだったのか、と思うと少々衝撃を受けるところですが。

 バクダッドへの輸送支援では、携帯地対空ミサイルを何処からか入手したテロリストにより旅客機転用の貨物輸送機等が破壊される事件が相次いでいました、ここに自衛隊も物資を運ぶ必要があり、小牧基地のC-130Hが派遣されていた、無論準備はしていました。

 硫黄島で模擬地対空ミサイルを用いて実際に輸送機へ発射、この熱源に対してIRフレアーを発射してミサイルをかく乱すると共に回避軌道をとる、という訓練も行われていた、現在の機動飛行のようなものはその前からやっていましたが、その基礎があってこそ。

 レーザー機体自衛装置など、しかしIRフレアーだけでは危険を排除できない時代ですので新しく開発されている装備があります、アメリカ空軍が横田基地へ配備しているC-130J輸送機は、そうしたものを機体の各所に装備していまして、自衛隊も必要な改修だとおもう。

 KC-767空中給油輸送機のローパス、なのだ、けれど、も、ねえ。やってしまったと思われるかもしれません、その通り、直前のC-130Hの編隊を追う為にレンズを望遠レンズにしていましたので、二機で迫るKC-767のうち、かたほう一機しかフレームに入らない。

 二機編隊で飛行しているのだから、ちょっと残念に思った。いや、EOS-7Dmark2とともに予備のEOS-7Dの方も担ぎ出して広角レンズ用と望遠レンズ用で二台もちにしていれば、とも思うのですし、実際昔やっていたのでしたけれども、この日は一台体制でした。

 28-300mmという便利なズームレンズがありまして、これをEOS-7Dmark2に装着していれば一台でもなんとかなった。けれどもKC-767は編隊を開いていましたので、28mm広角で映らなかったのです、15-85mm広角レンズにしていれば、と失敗してしまった。

 C-130の着陸が始まる、時間帯は間もなく航空祭の幕間、というところか。航空祭で忘れてはならないのは、お祭りという事ですので飲食屋台が意外に頑張っているという事で、飛行展示の合間を縫って美味しいものを食べるところでもありますし、その時間が近づく。

 補給というか食事は重要なのですが、そしてもう一つ忘れてはならないのは水分補給できる場所と、もうひとつはお手洗いという。水分補給、いちおうミネラルウォーターなんかは持って行くのですが、晴天ですと極度に乾燥していますし水分がどんどん抜けてゆく。

 脱水症状にならないように木を点けねばならないのだけれども、この航空祭を撮影している時に撮影位置の周りには基本飲料水を売っているところなんてものはありません、格納庫の裏側とか、遠い場所まで転進しなければならない、一人で撮影すると不便ですよね。

 美保基地航空祭でしたか、飲食販売スペースとは別に、土産物販売スペースしか無く、ええい何かあるだろう、とおもって駆け込んでみると、大山の水、でしたか、あとは梨の飲み物が土産用に、なぜか冷やして、売られていまして三本衝動買いしたことがありました。

 大山の水、美味しかったです。干天の慈雨という言葉が有りますが、慈雨という以上に元々美味しいお水を、そういう時に頂いたのだ、蟹も鮨も美味しかったですが、水も美味しかったですね。いや、ノドグロの刺身も美味しかったんですよ。でもあの時の水は、ね。

 名古屋飯、というんですか名古屋の大衆料理、小牧基地航空祭では見かけないものが多い。皆さん発汗して塩分が不足しているでしょうから、味噌煮込みうどんとか、模擬店で販売してくれればなあ、と想ったりするのです。あとは味噌カツでしょうか、これはあるか。

 きしめん。思えば航空祭ではおうどんはあってもきしめんを視ないような気がします、名古屋駅のきしめんは名古屋の玄関口というのですが、ホームごとにきしめん屋さんが有り、例外なく美味しかったですね。小牧基地でも県営名古屋空港に隣接、名古屋の文化圏だ。

 味噌煮込みうどん、航空祭で売られていないのは、やはりこぼしたときのダメージなのでしょうか、それとも使い捨て容器では熱すぎるのでしょうか、それでも噛み応えのある麺と滋味というか塩分と出汁の利いた味噌煮込みうどんは、食べてみるとおいしかったなあ。

 モーニング、航空祭では見かけないのですが、例えばアイスコーヒーと小倉トーストのセットを売店で売ってほしいなあ、と思ったりもする。岐阜県と愛知県の喫茶店では、コーヒー一杯を注文すると午前中の時間ではトーストやおぎぎりや、鮨がつくサービスが。

 小倉トーストは、小倉餡をバタートーストの上に載せたもので、カロリーの爆弾のようなものですが、モーニングで供されるトーストは半分にカットされており、まあ、カロリーが半分ということか、甘くておいしい。鮨のつくモーニングは、実際食べた事がある。

 鉄板ナポリタンは、流石に無理ですよね。マウンテンという名古屋の喫茶店では、あんかけパスタという、小倉餡をスパゲティに掛けたとんでもないメニューがあり、これを仮に航空祭で出してみたら、話題になるのかなあ、美味しいには美味しいという話も聞く。

 航空祭はお祭りなのだから、らしさ、というものを食べ物でも味わいたいものだと思いつつ、結局は手堅くヤキソバとかタコヤキとかを食べる、もっとも小牧基地では焼き牡蠣が売られていた事もあり、それからホタテもあった、これはもうトクベツな美味しさでした。

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【京都幕間旅情】近鉄新エースカーと親しまれる22600系特急電車と奈良と京都結ぶ近鉄京都線の電車たち

2023-05-28 18:22:07 | コラム
■二つの古都結ぶ京都の近鉄
 撮影しましたのは近鉄大久保駅というすぐ隣に陸上自衛隊大久保駐屯地が広がる立地、これも京都散歩なのだ。

 新エースカーと親しまれる22600系特急電車、撮影は宇治市内です。ローレル賞を受賞した車両ですが、個人的には早い電車だけれども車内施設は中途半端というか、後ろに連結されているビスタカーのような個性が欲しかったなあ、と特急券を手に思う電車でした。

 近鉄特急は速達性を痛感させるサービスなのですが、伊勢志摩ライナーやアーバンライナーが走る1990年代からは、もちろん二両編成の特急も重要なのだけれども、JR西日本のタンゴディスカバリー号のような車内施設で特急のプレミアム感が欲しかったと、おもう。

 3220系電車、近鉄のシリーズ21電車として1999年に運用開始された電車です。多数運用されている印象があるのですが、聞けば3編成だけということで、しかし京都市営地下鉄に乗り入れていて、国際会館から近鉄奈良までの直通急行として存在感を示す電車です。

 奈良、こういいますと実は京都からはかなり距離があるのだけれども、地下鉄烏丸線に近鉄が乗り入れる事で、京都の中心部から奈良とを結ぶ電車というのは、京津線の京阪電車が大津と京都を結んだように、かなり奈良という地名、観光地を身近にした印象がある。

 8000系電車、近鉄の普通列車と云えば、色々新型車両が開発されているのだけれどもこの8000系電車とその派生型という印象があります、ただ、355両も製造されましたこの電車が運用開始となりましたのは1964年、つまり1960年代という60年近く前の電車という。

 新生駒トンネルが開通した1964年に運用を開始した、といいまして、しかし東京五輪1964の同じ年にデビューし、大阪万博1970のころには近鉄で一定の存在感を有していたというものですので、東京五輪2020と大阪五輪2025を考えれば、凄い長生きの電車と痛感する。

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【撮影考察】いい写真ってどうやってとればいいのか?豊川駐屯地祭写真と共に考える

2023-05-28 07:01:44 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■豊川駐屯地祭
 豊川駐屯地祭の写真と共にありきたりな話題を紹介したいと思います。

 いい写真ってどうやってとればいいのでしょうか。わたしは一応複数台のカメラとそれっぽいカメラバッグを持っているせいでしょう、こうした質問を稀に受けます。質問する方は初めてカメラを持ったという部隊広報の腕章の方であったり、一般の方であったり。

 良い写真とは何か、哲学的な命題ですが、こういう質問を受ける場合には、もう部隊が整列してしまっていることが多く、数十秒くらいしか時間のない時だったりする、一時間前に聞いてくれれば違うのだけれどもね、こう思いましたのでWeblogに書くことにします。

 EOS-KissNを使われている方から先日こうした質問を受けまして、聞けば北関東から京阪神地域まで来ているという、EOS-KissNは良いカメラで、2005年から2008年までのWeblog北大路機関の写真は二台のEOS-KissNにより撮影された写真であったりします。

 FUJIFILMの一体型ネオ一眼で撮影されている方から同様の質問をされたことがありました、FUJIFILMのカメラはほぼ例外なく写真愛好家が撮影の視点から設計しているものですので使いやすいものが多く、実際FUJIFILM-X20はわたしの予備カメラだ。

 EOS-5DmarkⅢで撮影されている年配の方からも聞きました。EOS-5DmarkⅣを持っていますが、なかなか虎の子のように私は外でバシバシ撮影するには躊躇する印象がある高い機種なのですが、せめて200㎜レンズくらいは必要だよなあ、とも思ったりした。

 Nikon-Z6で撮影されている方からも聞いた、いやこの場合ミラーレス一眼はあまり詳しくないので、長時間行事を撮影していてミラーレスの電池消費量は行事を最初から最後まで乗り切るのにバッテリーがいくつ必要なのか聞きたいとも逆に思ってしまうのですが。

 適当に、いい感じで、という他ないのですが、考えてみると、その人の立場でいい写真の定義は変わってしまうのだよなあ、と気づかされます。すると、誰に見せる写真なのか。誰に見せる写真なのかで、良い写真の定義は大分変わってくる、この点が重要かなと思う。

 こういう写真を撮りたいな、そんな印象を持つことが大事なのだと思う。これは例えば映画の話ですが、樋口真嗣監督がアニメのフレームで映画の画角構成を行ったことで、映画平成ガメラシリーズにて成功したものと似ているのかもしれない、影響というのは大事だ。

 誰に見せる写真なのか。依頼を受けて撮影しているならば、依頼した方ということなのでしょうが、広報誌に載せるためなのか、近況報告で活用するためなのか、居間に飾って来客に自慢するためなのか、部隊のOBという関係の方なのかで、見せる相手はかわります。

 いつまで見せる写真なのか。北大路機関が撮影する写真は、なにしろ2005年7月29日に第一号の記事を掲載したものが今でも見ることができますので、一種資料的な価値として公開されているものです、ただ、写真全て必ずしも永遠に公開する為のものではない。

 どのように見せる写真なのか。これは専門誌にカラー写真で特集のように載せるのか、広報誌にモノクロ写真で載せるのか、紙焼きして大きく引き伸ばして展示するためのものなのか、Web上で公開する為のものなのかで、撮り方というものは大分変わってきます。

 もちろん自己満足のために撮影するという場合には、これはもう、撮って撮って、この角度好きだな、という水準で深めてゆくのも王道といえます。ただ、独りよがりではなく、敢えて見る相手を意識すると、写真の構図というものは、変わってくるのかもしれません。

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