北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【京都幕間旅情】東福寺,紅葉の木々に浮かぶ通天橋は厳しい修行に専念する雲水らを気遣う優しさが生んだ絶景

2022-11-30 20:22:55 | 写真
■ここが京都の紅葉その景色
 厳しい修行で知られる禅宗の、しかし厳しいのは修行だけであり目的と手段をたがえず目指すのは修練という中での心遣いが一つの風景を生みました。

 紅葉の季節だからこの東福寺は写真を掲載したいところ、なのですがここは午後一番を逃すと一番美しい通天橋の椛が太陽の陰りに覆われてしまい、しかも夕方前には三門が閉じられてしまう、何度か探訪しましたが遅すぎるか、椛が早過ぎ青椛か、と続きました。

 京都市東山区本町、ここは臨済宗東福寺派大本山であり本尊に釈迦如来を奉じる壮大寺院という。この壮大と云うのは誇張でもなんでもなく、JRと京阪の幾つかの駅から本堂仏殿まで、延々と塔頭寺院のなかを巡り至るという立地にありまして、これ歴史街道そのもの。

 東福寺、JRの駅でいえば奈良線として京都駅を宇治や奈良に向けて出発した際の最初の駅となります。京都、じつのところ歴史都市と考えられていますが、おもいきって歴史を紐解きますと常に日本史にあって最先端都市でありつづけた千年の首都でもありました。

 京都駅から電車で数分のところにここまでの大きな寺院が、こう紹介しますと、いやいや駅前に東寺と東本願寺に西本願寺、こういう応えもありそうですけれども、東福寺はそうした寺院の並びの中でも一つ思い入れのある寺院と思うのです、それはその名前から。

 興福寺と東大寺、奈良の古刹であるとともにわがくに仏教を象徴する寺院となっていますが、東福寺というのはその東大寺から"東"の一文字とそして興福寺からもう一文字の"福"とを冠しまして、東福寺という。奈良線で一駅というのも、なにか不思議に縁を感じます。

 嘉禎2年こと西暦1236年、開山に聖一国師円爾を招き開基が九条道家となりました寺院はもともと、天台宗と真言宗と禅宗の三宗兼学寺院という、新しい時代の寺院を目指し、時の鎌倉幕府の財政的援助を受け造営されたという、おくゆきぶかい歴史を有しています。

 三ノ橋川、東福寺は廃仏毀釈はじめ様々な歴史とともにその寺域はその最盛期よりもずいぶんと小さくなっている、とは聞くのですが敷地の広さでは京都最大という、そして広がった禅寺という経緯から、三ノ橋川という小川を挟むほどに大きくなりまして、そして。

 通天橋は雲水たちが修行に専念できるようにということでかけられたという。さて、ここ、コロナ前の紅葉の季節には人が多すぎて感染の心配は無くとも群衆雪崩の危険があり、撮影禁止の札が掛かっていました、いまはまだ無く、要するに観光客はまだ戻っていない。

 通天橋という、これこそ京都を代表と知るような情景と思うのですけれども、この風景は禅寺が大きく広がったとともに、禅寺では食事から就寝まで全て作法が定められており、呼吸一つまでふくめて修行という中、僧徒たちが移動に不自由しないよう、架けられた。

 椛はじつに二千もの多数が植樹されているという、なんでも禅寺ということで遊興の場として町衆が集うことの無いようにもともとあった桜の木々を伐採して、当時外来種であった楓と椛を植樹したようなのですが、まあ、遊興の場、転じて宗教とふれ合う場へ。

 禅寺が日本に入り始めました時代とは異なりまして、当時は桜花こそ謳歌するような遊興の場となったものの、当時を考えますと特に冬は食料移築など、簡単に餓死という単語が身近にあふれていた中世と近世には、とても紅葉を楽しむ余裕がなかったのではないか。

 紅葉を楽しむと言うことは、冬の雪景色を美しいと感じる余裕が生まれたことを意味しまして、冬の入り口である秋に冬の蓄えを考えずとも、物流と社会支援と社会基盤に政治基盤が安定していることを意味するのですね。豊かな時代になった証左なのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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【京都幕間旅情】金閣寺/鹿苑寺,COVID-19という不思議な時代を生きる日常に不思議な紅葉の景色を添えよう

2022-11-30 20:00:50 | 写真
■北山文化は今も華やか
 金閣寺はコロナが増えすぎた観光客を少し間引きまして特に騒ぐ事が無くなったというのが拝観していてこころ落ち着く。

 金閣寺、実は避けてきた寺院でもあるのですが、これはコロナ前にそもそもWeblog北大路機関の創設当時は毎日のように掲載していました、これがある程度関心を誘う話題でもありましたし、実際きれいなものです、昭和に焼失し再建されたとはいえ、ここは美しい。

 北大路機関というほどですので北大路通沿いを中心に散策しているところですが、金閣寺は西大路通りの北辺、つまり北大路通りの終着点の近くにあります、見上げれば左大文字、この界隈の散策は楽しいのですが気づけばきぬかけの路に沿い遠出してしまう故注意を。

 避けてきたという割には写真掲載の回数が清水寺と並んで最も多い、いや実際この秋の紅葉散策でも久々の清水寺紅葉の拝観に続いて久々の金閣寺紅葉の拝観と巡り歩いたところなのですけれども、混雑する様子を強調するような状況には、まだ、至っていない幸い。

 北山の美しい情景ですが、しかし、これは体験としてそして実感したことなのです、年々といいますか写真として記録しますと明らかに拝観者といいますか来場者が増えているのですね、拝観ではなく単に京都百景を撮影というか物見遊山という人々が増えていました。

 衣笠山を借景に、撮影する機材はフィルムからデジタルカメラに移行します、最近ですとカメラにフィルムを装填したことのない方が増えているのではないでしょうか、そして写真がデジタルとなりスマートフォンとなり、誰しも撮影する機会は増えていったとおもう。

 金閣寺は、そしてWeblog北大路機関がその通りなのでしょうが、WeblogにSNSと個人が写真を発表する場所が、特に昔は写真を撮影しても同人誌を出すくらいしか個人に発表の場はなく、実際風景の同人誌を出している方との交流も増えているのですが、障壁は高い。

 京都であっても京都でなくとも、個人が写真を発表できるようになったということは、気軽ですし個人と個人を結ぶ手段が多様化したのは喜ばしいことです、繋がれば摩擦も対立も利用の悪意も増えるでしょうが、交流と交友に好意と厚意というものはそれ以上です。

 観光過多、ただ、写真を公開できるということは逆に公開の場にあわせるように撮影も盛んとなるわけでして、これは私自身もフィルムの時代と比べれば考えられないようなほどの写真を撮影しますし、撮影するべく散策する回数も増えています、これが全国規模に。

 金閣寺はその象徴的な印象の場所でして、これはコロナ前なのですが混雑が市バス並になっていた、ここで、もう撮影して薦められる状況ではないなあ、印象を持ったものでした。なにしろ、鹿苑寺そのものの伽藍は消して京都では大きくない、そこにあの大人数という。

 COVID-19は、この部分を劇的に変えた、というのでしょうか。いや実は身近な人で亡くなる方がでてしまいましたので、これも安穏とは出来ないのですが、混雑を避けるとともに静かに拝観する、感染症対策なのですけれども、混雑は整然、喧騒は静寂に、回帰する。

 不思議な時代なのです、いや2022年は既に三万名も我が国ではCOVID-19死者数が出ていますので、感染対策緩和によっても既に季節性インフルエンザの倍以上という概況となっています、ただ、強制力ある規制が無くともなんとかなっている不思議な日常の広がり。

 金閣を中心に鹿苑寺の拝観経路は一本道です、それ程滞留することもなく、そして元々屋内の建物は一般公開されておらず拝観経路に含まれていません、どうなることかとおもったこの時代ですが、不思議な時代の不思議な日常を、それなりに愉しむ事が、出来ている。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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岸田総理-防衛費2%増額を鈴木財務大臣に指示,防衛力崩壊の危機ではなく一部瓦解している現状の建て直しへ

2022-11-30 07:00:15 | 国際・政治
■防衛予算GDP比2%政策
 災害派遣を自治体土木系公務員と警察消防に移管できるだけでもずいぶん違うのですが今の自衛隊は任務が増えすぎている。

 岸田総理大臣は防衛費について、令和9年度にはGDP2%に達するよう予算措置を行う指示を浜田防衛大臣と鈴木財務大臣に示しました。これは28日夜総理大臣官邸で行われた浜田防衛大臣と鈴木財務大臣との会合において示されたもので5年以内に緊急的に強化を進める必要があるとし、財源がないからできないということでは許されない、としました。

 ミサイル防衛と島嶼部防衛、国際貢献任務の本来業務格上げと災害派遣要請の増加、日本の防衛予算が逼迫しているのは、新しい任務が増大に対して既存の枠組みと予算体系の延長線上で、予算を増額させなかった為であり、特にミサイル防衛は予算規模的にこの任務単体で海上保安庁の予算と同規模以上が必要、これを無理に既存予算に押しこめていた。

 自然崩壊に近い状態となっている装備や部隊が多い、師団は定員割れのまま、戦車は未だに74式戦車が本州の多数派を占めていますし、戦車を新型に置換える事無くそのまま廃止している。ヘリコプターは2011年の東日本大震災災害派遣の時点と比較し、陸上自衛隊は老朽化したヘリコプターを新造機で置換えられない為に機数では四割削減されています。

 自然崩壊は防衛産業にもおよび、なにしろ予算はそのままでミサイル防衛始め新しい任務をつぎ込んでいる為に、装備調達予算にしわ寄せが及び調達数が縮小され長期的な必要数も明示されないまま、赤字を当然のように民間企業に国が迫る事を常態化しており、赤字か撤退かという判断を迫られ、民間企業は当然撤退の選択肢、既存装備の維持費も上がる。

 予算増額というよりも、今のままでは破綻してしまい建て直しに膨大な予算を必要とする、という引き返し不能の線を、実はすでに超えてしまっていて、建て直しの予算を求められたことがGDP比率2%という状況となっているのかもしれません。この状況に陥る前に、例えば鳩山内閣時代にせめてGDP比1.3%としていれば、避けられた可能性はありました。

 ただ、安易にGDP比2%という数字が独り歩きしている印象が無いでもない。例えば、現在死活的に重要なのは、全廃されつつある観測ヘリコプターと定数割れが度を越している戦闘ヘリコプター、装甲車両全般、航空機では輸送機と練習機全般、そして弾薬備蓄です。人件費も不足していますが、装備については例えば基金を構築して、建て直しを行う今年ドイツが実施した方式という選択肢も、あるかもしれません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【防衛情報】エアバスA-400M輸送機,消防航空機改良キットと空中無人機母機やSAF代替燃料試験と異機種協同

2022-11-29 20:11:41 | 航空自衛隊 装備名鑑
■世界の防衛最新論点
 先日C-2輸送機のライバルであるKC-390を特集しましたが今回はもう一つのライバルであるA-400Mの最新情報です。

 フランスのエアバス社はA-400M輸送機を消防航空機とする特殊器材試験を実施しました。欧州地域では乾燥した時期に頻発している大規模な山林火災を背景に消防航空機の需要が高まっています、しかし水上飛行機や小型機など消防用航空機にも散られる機体は概して小型であり、輸送ヘリコプターと比較しても、その空中放水能力は限られていました。

 A-400M輸送機からの放水試験は時速210km/hの低速で20tの放水を10秒間で行うというもので、この試験にはスペイン空軍第43航空隊とEU欧州連合MITECOなどが支援に当っています。消火システムは機内内蔵方式を採用しており、この消防用水槽は既存のA-400M輸送機すべてに追加式で装着でき、取り外しなども迅速に行えるとのことです。

 消防航空機としては、貨物室に固定タンクを搭載し、貨物扉に延長させた二つのパイプから導水する方式を採ります、これは一挙に貨物室から短時間で放水した場合に重心へ影響する為と考えられます。A-400M輸送機は元々空挺作戦用に低空飛行能力を高く設計されており、これによりおおよそ600mの区域にわたって大量の放水を行う事が可能となります。
■ウェットシルク演習
 A-400M輸送機とC-130J輸送機の共同訓練が行われましてなにか2020年の空挺降下訓練始めを思い出します。

 アメリカ陸軍第173空挺旅団は7月29日、ドイツ連邦軍第26降下猟兵旅団とのウェットシルク演習を実施しました、なお、この演習はアメリカ空軍のC-130J輸送機とドイツ空軍のA-400M輸送機が参加し、二機種の輸送機が同じ空挺作戦を同時に実施できるという能力の確認にもあたっています。この訓練の特色はその演習降下地域が挙げられます。

 ウェットシルク演習はその名の通り、ウェットなドイツのコンスタンツ湖、ボーデン湖において実施され、湖に空挺降下させるという演習です。アメリカ陸軍第173空挺旅団から2機のC-130J輸送機に分乗した75名、そしてドイツ連邦軍はA-400M輸送機1機に搭乗した第26降下猟兵旅団からは75名が参加しました。A-400M輸送機の輸送力の大きさだ。

 A-400M輸送機とC-130J輸送機は、しかし演習当日が悪天候に見舞われ、降下できたのはアメリカ陸軍が68名、ドイツ連邦軍が10名のみとなっています。NATOでは水上効果能力の強化を進めており、水上への硬化と着水、降下直後に落下傘から離隔を採るべく25mを急いで泳ぎ、そのまま10分間ボートまたは湖岸に向かって泳ぐ三段階から構成されます。
■A-400M無人機母機
 小型無人航空機の空中空母に輸送機と云うものの輸送能力は有用な選択肢となります。

 フランスのエアバス社はA-400M輸送機からのDo-DT25無人機による空中無人機発進試験を成功させました。これは2022年に入り実施されたもので、将来航空戦闘システムの要諦となるMUM-T有人無人協同運用に関する重要な一歩です、今回はドイツ北部上空において発進試験を実施し、その後無人機は発進直後に落下傘により地上に着陸しています。

 A-400M輸送機を用いたMUM-T有人無人協同運用とは、将来の戦闘で高密度の地対空ミサイル等で防衛された地域での作戦にいきなり第五世代戦闘機や第六世代戦闘機を導入しての損耗を回避する為、先ず戦闘機部隊後方から無人機を展開させ、戦闘機部隊を超越前進し情報収集や必要ならば囮として有人戦闘機を損耗から守る運用などが考えられている。

 Do-DT25無人機は今回、発進直後に落下傘を開き飛行時間は限られていましたが、地上までの間にデータ伝送実験に成功しています。またこのDo-DT25無人機は2021年にドイツ空軍が実施したティンバーエクスプレス演習においてユーロファイター戦闘機への情報伝送実験に成功、更にエアバスはDo-DT25を5機同時管制する試験にも、成功しています。
■SAF代替燃料
 SAF代替燃料は民間航空機等で進められている温室効果ガス排出抑制対策です。

 フランスのエアバス社は2022年夏よりA-400M輸送機についてSAF代替燃料による評価試験を開始しました、SAF代替燃料とは従来の化石燃料に代わる再生可能エネルギーであり、バイオエタノールなど生成に際し光合成過程を通じて二酸化炭素を吸収した原料を用いる、全体として温室効果ガスを排出しない環境負荷を考慮した次世代燃料を示します。

 グリズリー 4、今回の試験は四基あるエンジンの内一基をSAF代替燃料により稼働させる事となり、食用油や廃棄野菜廃棄脂肪分などから精製した燃料で作動させました。廃棄食用油燃料は第三回気候変動枠組み条約締約国会議が京都で開かれた頃から京都市バスなどでも用いられていますが、SAF燃料は航空燃料と同じ特性を持ちそのまま利用できます。

 A-400M輸送機による試験では、一基のみSAF燃料を用いている為、全体で見れば25%をSAF燃料で飛行させたことになります、そして同時にエンジン停止リスクにも対応すると共に他の通常航空燃料によるエンジンとの比較も実施できたとのことです。SAF燃料は気候変動対策と航空輸送を両立させる切り札であり、エアバスはこの点を強調していました。

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ウクライナ襲う4700発のミサイル-我が国本土防空の迎撃ミサイル備蓄目安と難しい”反撃能力”のミサイル威力

2022-11-29 07:00:36 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ロシア軍ウクライナ侵攻に伴いロシア軍の今年度国防治安支出は邦貨換算で21兆円規模になるとのこと。

 ウクライナへ撃ち込まれたロシア軍ミサイルは4700発に上るとのこと、ただ、イスカンデル弾道ミサイルにしてもカリブル巡航ミサイルについてもジルコン空対地弾道ミサイルにしても、徐々に枯渇しておりロシア軍はイランからのミサイル調達に乗り出しています。ここで重要なのは自衛隊が保有するべき地対空ミサイルの数が見えたという一点でしょう。

 ペトリオットミサイルと03式中距離地対空誘導弾、基地防空地対空誘導弾や11式短距離地対空誘導弾など、ロシア軍が相手ならば4700発を迎撃できる程度の備蓄があれば少なくとも半年以上は戦闘を継続できる、ということです。これで先は見えた、とはいえるのですが、ミサイルがねらう目標は様々、しかし、ミサイル備蓄に一定の目処は見えたのです。

 目処というのは、要するに防衛省が財務省へ予算要求する際の目安です。もちろん4700発来るので4700発準備すればよい、というものではありません、例えば新潟や福井の原発を破壊すると日本海縦貫線の輸送網を核汚染で完全に停止させられますが、こうした地域ばかり重視しますと国家石油備蓄基地や大都市の通信中枢などが狙われる危険もあるのです。

 ただ、大国であっても巡航ミサイルや短距離弾道弾の備蓄はこれが限界だ、手は届く、ということです。一方で、4700発のミサイル攻撃という問題はもう一つの側面を示しているのかもしれません、それは4700発のミサイル攻撃にさらされても、ウクライナは国家崩壊に至っていない、世論の多くはロシアに憤慨し領土奪還を支持しているという事実です。

 反撃能力という、ここまでは日本をミサイル攻撃から防衛するための弾薬所要という視点で示しましたが、今度は日本がミサイル攻撃を受けた場合に行うとして政府が構想する反撃能力についてです。自衛隊の地対艦誘導弾の射程を遠心する、またこの実現までの繋ぎとしてトマホークミサイルの導入が検討されているのですが、この視点についてみてみる。

 日本へミサイルを撃ち込む可能性が高い国の多くは専制主義国家であり、民主主義国家ではありません。その上で、考えてみますといまの自衛隊の地対艦ミサイルと空対艦ミサイルに艦対艦ミサイルの合計がおおむね数千、反撃により攻撃の意志を喪失させるには、発射機を正確に破壊しなければ4700発撃っても無駄、こうした現実も突きつけています。

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【防衛情報】海上自衛隊ミサイル防衛専用艦構想とオーストラリア海軍原潜2040構想,インド空母ヴィクラント

2022-11-28 20:21:15 | 国際・政治
■週報:世界の防衛,最新10論点
 今回は海軍関連の話題を10論点集めてみました。最初の話題は海上自衛隊が構想する巨大なミサイル防衛専用艦についての話題です。

 海上自衛隊はミサイル防衛専用艦を2万tクラスの大型艦とする検討を進めています。ミサイル防衛専用艦とは陸上配備型ミサイル防衛システムイージスアショア計画の中止を受け代案として提示されたものです。イージスアショアは迎撃にも通るスタンダードSM-3の切り離しブースターが周辺民有地落下の懸念を払拭できず、中止された背景があります。

 SPY-7レーダー。代案としてイージスアショアへ搭載用の陸上用SPY-7レーダーを艦船に搭載する方式が執られる事となりましたが、SPY-7そのものには艦載型の事例はあるものの、既に発注されているものは陸上配備型であり、まや型イージス艦など既存設計に搭載するには難しい可能性がありました。一方、専用艦に多用途性能を求める声もありました。

 スタンドオフミサイル、防衛省は敵基地攻撃能力の整備として導入する長射程の誘導弾を、このミサイル防衛専用艦に搭載する構想を進めると共に、長期間の弾道ミサイル警戒任務に対応させるには乗員休息へ個室等の確保が必要としており、これにより余裕を持たせる為、船体は基準排水量で2万t規模、いずも型護衛艦より大型化させる検討を始めたのです。
■オーストラリア原潜要員訓練
 ゼロから始める原子力潜水艦計画はイギリスの支援を受けて要員教育を加速させ早ければ20年後に実現するようです。

 オーストラリア海軍は将来の原潜要員訓練をイギリス海軍原潜において実施するようです。これはイギリス政府が8月31日に発表したものです。イギリスのウォレス国防相は8月31日、イングランド北部のバローインファーネスにおいて行われました最新鋭攻撃型原潜アンソンの就役式典においてオーストラリア潜水艦要員訓練受け入れを表明しました。

 オーストラリア海軍は難航を続けるコリンズ級潜水艦後継計画として、一時契約したバラクーダ級潜水艦のフランスからの導入を破棄し原子力潜水艦を導入する発表を行いました。ただ、オーストラリアは過去の核実験影響などから核技術への反発が強く国内に専門家がいません。この為、イギリスとの防衛協力枠組AUKUSに基づく防衛協力を求めたかたち。

 ウォレス国防相のアンソン就役式典にはオーストラリアからマールズ副首相兼国防相も出席していました。オーストラリア海軍は2050年までに原潜導入を計画していますが、これを可能ならば2040年に前倒ししたい方針で、設計は未だ未定ですがイギリスのアスチュート級とアメリカのヴァージニア級の設計に影響を受けた独自の潜水艦を計画するようです。
■空母ヴィクラントの就役
 アメリカ海軍のエセックス級空母SCB-27改修型くらいの大きさということでしょうか。

 インド海軍は9月2日、国産初の空母ヴィクラントの就役式典を挙行しました。ヴィクラントは航空母艦運用国として長い経験を持つインドにとっても初となる国産航空母艦で、2009年に起工式を迎え進水式は2013年に行われていましたが幾つかの問題が生じ公試まで期間が長くなるも夏に入り開始、満載排水量は40600tと全長262m、乗員は1600名だ。

 ヴィクラントと共にインド海軍にはロシアから廃棄空母アドミラルゴルシコフを再生させた空母ヴィクラマディーチャが運用されていますが、このヴィクラントの就役により2隻の空母によるローテーションが可能となりました。航空母艦は過去の印パ戦争において沿岸航空作戦を支援しましたが、近年では中国海軍のインド洋進出が脅威とされています。

 モディ首相も出席したヴィクラントの就役式典ではあたらしい海軍旗も公開されました。あたらしい海軍旗はイギリスからの独立当時から維持されていたイングランドを示す十字がヒンズー教徒の戦士を示す紋章に改められており、国産空母と共に国産装備の強化を進める象徴的な一隻となります。なおインド海軍は続いて空母ヴィシャルを建造予定です。
■フリゲイトラインラントプファルツ
 ドイツ海軍は徐々に外洋での作戦能力を整備していますがウクライナ戦争を受けての陸軍再編の予算がどのようにグローバル戦略に影響するかが関心事です。

 ドイツ海軍は新フリゲイトラインラントプファルツを就役させました。引き渡し式は7月13日にヴェルヘルムスハーフェンにおいて行われています。ラインラントプファルツはバーデンヴュルテンベルク級フリゲイトの4番艦で最終艦、本型は1番艦から全て、建造はティッセンクルップ社とリュールセン社の合弁会社ARGE F125により行われています。

 バーデンヴュルテンベルク級フリゲイトはドイツ海軍のアフリカ地域など遠隔地の戦力投射能力整備へ建造された満載排水量7316tの水上戦闘艦で、ドイツ海軍含むドイツ連邦軍は、その歴史的経緯から長らくNATO域外での軍事行動を大きく自制してきた過去があり、この為に冷戦終結後のEU共通安全保障政策に基づく活動拡大に対応できませんでした。

 大規模な水上戦闘よりは安定化作戦などを想定した設計で、127mm艦砲と機関砲にハープーンミサイル、RAM個艦防空ミサイルを搭載していますが、対潜兵装を持たず哨戒艦的な運用を想定し母港を出航し2年間は乗員のみ入れ替え母港に戻らず作戦行動が可能です。4隻体制となったことで、今後は複数の海域におけるプレゼンス発揮が可能となるでしょう。
■45型駆逐艦ミサイル防衛艦
 先日掲載の際にお教えいただいた話題です。

 イギリス国防省の海軍45型防空駆逐艦を弾道ミサイル防衛艦へ改修する計画についての補足と訂正です、これは先に掲載した防衛情報への訂正です。ミサイル迎撃にはアスター30block1NTミサイルが用いられると記載しましたが、搭載されるミサイルはアスター30 BlkIとのこと。レーダーの能力向上などについては8月時点では画定していないもよう。

 水上戦闘艦に搭載する弾道ミサイル迎撃用装備としてはイージスミサイル防衛システムが採用するスタンダードSM-3が知られていますが、これは放物線を描き飛翔する弾道ミサイルを高高度で迎撃するものであり、終末段階の弾道ミサイル迎撃に際しては航空機や巡航ミサイルに対処するスタンダードSM-6を改良して、終末段階迎撃に転用する構想です。

 アスター30 BlkIはスタンダードミサイルシリーズよりも小型であり、また側方サイドスタスタ構造を採用しており不規則軌道目標への対処応力が高いことから、改良によっては従来のミサイル防衛が想定していた弾道ミサイルのような放物線軌道を描く目標の他に極超音速滑空弾など急激に軌道を変更する目標に対しても対応能力を高める事が期待されます。
■フリゲイトテ-マナ
 こちらも先日掲載したものへのコメント欄にてお教えいただいた話題です。

 ニュージーランド海軍のフリゲイトテ-マナのカナダでの近代化改修についての補足です、これは先に掲載した防衛情報への追加情報です。戦闘情報システムの更新にレーダーの改良と個艦防空システムの刷新、対電子装置の更新とともに対艦ミサイルや魚雷に対する回避装置を追加していますが、この程この話題を紹介しましたところ詳細情報を頂きました。

 カナダにおいて改修を受けたテ-マナは、近代化奇襲においてカナダ海軍のハリファクス級フリゲイトに準じた改修を受けたといいまして、戦闘システムもハリファクス級のCMS-330 戦闘システムに換装、近代化改修を踏襲しています。またレーダーはSMART-SMk2-3Dレーダーとしたとのこと。ただ、ミサイルについては別の選択肢を。

 カナダ海軍はMk56VLSにシースパローを搭載し改修によりミサイルをESSMとしています、そしてテ-マナの艦対空ミサイルもシースパローでしたがニュージーランド海軍ではSeaCeptorへ改修に際し換装したとのこと、20発を搭載している。ミサイル用デコイにDLEシステムを採用するなど、これはイギリス海軍に歩調を合わせた改修となっているもよう。
■ビントゥニ級戦車揚陸艦
 カーフェリーの様な揚陸艦の様な上陸作戦よりは輸送能力を重視しているような。

 インドネシア海軍は国産のビントゥニ級戦車揚陸艦の9番艦カリトルクカラングを受領した。ビントゥニ級戦車揚陸艦はインドネシアの防衛力国産化政策の一環としてPT-DRU造船所において建造されたもので、観音開扉を有する伝統的な戦車揚陸艦構造の船体に地巨大な上部構造物と飛行甲板を配置したインドネシア独自の運用思想に基づき設計された。

 ビントゥニ級戦車揚陸艦は満載排水量2300t、全長117mと全幅16.4mで最高速力12ノット、また上陸用舟艇4隻を搭載可能でレオパルド2主力戦車10両かBMP-3装甲車15両と兵員361名が乗艦し12日間の航海が可能となっている。インドネシア海軍ではこの9番艦を区切りとし、今後は改良型の建造に移行し、最終的に12隻体制を目指しているようだ。
■イラン海軍の無人空母艦隊
 無人機母艦といいますと自由主義圏では機雷掃討などにあたる艦艇がその地位を占めつつありますが将来の海上戦闘ではどのような影響を及ぼすのでしょうか。

 イラン海軍は7月15日、貨物船に多数の無人航空機を並べた世界初となる“無人空母艦隊”の訓練映像を発表しました。映像には無人航空機の船舶からの発信映像も含まれており、イラン国営テレビによればこれらは潜水艦と航空母艦用船舶より成り、索敵と追尾から破壊までの一連の作戦行動を可能とする強力な無人艦隊であると説明しています。

 無人空母部隊を発表した7月中旬は、アメリカのジョーバイデン大統領が中東歴訪を行う最中であり、これに対抗する目的が在ったとされています。イラン製無人航空機はアラビア半島のイエメン内戦などで使用されており、一定程度性能があるとされています。他方、イラン製装備はサエゲ戦闘機がズフィカル戦車のように未知数の部分が多いのも事実です。
■韓国海軍ゴールキーパー
 ファランクスよりもゴールキーパーの方が高性能だったのですが継続的に改良が続いたのはファランクスの方だったという。

 韓国海軍が多数を採用したゴールキーパー近接防空火器CIWSについて韓国のLIG-Nex1社はオランダ のタレス社との間で包括整備契約を結びました。韓国海軍はLIG-Nex1社へ次期CIWS開発契約を締結しており、これによりゴールキーパーCIWSとともにCIWS関連の整備契約統合を目指すものと思われます。契約は3000億ウォンという。

 ゴールキーパーCIWSはオランダが1979年に開発した対艦ミサイル迎撃用の自律型防空システムで、アメリカが開発したバルカンファランクスの20mm口径と比較し、ゴールキーパーは30mmという大口径を採用し迎撃力を高めています、しかし、普及はオランダ艦と中古輸出艦、韓国艦など限られており、長期運用の整備契約が課題となっていました。
■デンマーク水上戦闘艦計画
 これもウクライナ情勢の影響という。

 デンマーク海軍は8月21日、400億クローネ規模の海軍水上戦闘艦計画を発表しました。400億クローネとは邦貨換算7400億円規模です。水上戦闘艦計画の背景にはやはりロシア軍のウクライナ侵攻に伴う安全保障環境の変化が有り、極圏など遠隔地に離島を有するデンマークとしては北方海域などでの作戦に対応する専用の水上戦闘艦艇が必要となります。

 デンマークのブドスコウ国防相は国防相と海運業界の協力を強化する為にも水上戦闘艦は必要であるとしています。現在デンマーク海軍にフリゲイトは3隻のみ、そのアイヴァーヒュイトフェルト級も2011年に建造されたもので10年以上フリゲイトを建造していません、他方セティス級哨戒艦の老朽化が進み、その後継にフリゲイトを構想するのでしょう。

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防衛費増額抑制を考える:人件費-即応機動連隊を45個整備した場合の人員は3万8250名,本来任務に集約が条件

2022-11-28 07:01:45 | 国際・政治
■防衛費増額抑制を考える
 災害派遣など昔の様に市町村の消防と土木系公務員に余裕があれば今問題とされる防衛費の問題で少なくとも人件費の問題は抑えられるかもしれない。

 防衛費負担、この命題は様々な報道媒体やNHK日曜討論などで討議される段階となっています。ただ、自衛隊を本来業務に特化させるならば、従来の防衛費にミサイル防衛の予算を加算した程度に収められるかもしれません。例えば、災害派遣などを自治体防災能力強化し、ゲリラコマンドー対処に警察機動隊の人員や装備を強化する等方法はあるのです。

 人件費についても。機械化によるマンパワーの省力化、考えれば製造業ではあたりまえの施策なのですが、自衛隊においては置き去りとされた分野でもあるようにおもいます。特に戦闘防弾チョッキという1990年代に装備化された個人用防護装備、データ通信端末に威力とともに重量を増す対戦車装備、これらをかついで近接戦闘、徒歩機動には限界がある。

 装甲戦闘車、火力の強い装甲車と理解されたのは1980年代までであり、1990年代に冷戦後の地域紛争増大とともに欧州で戦車に置き換わり装甲戦闘車が増強されたことで、下車戦闘の直前までを機関砲により火力支援する事で攻撃陣地の数十m以内まで進出するという戦術を構築しています。これならば個人装備の重さは負担とならない。歩兵の趨勢です。

 即応機動連隊、単純な発想かもしれませんが、普通科連隊は1200名規模となっていますが、即応機動連隊とすることでおなじ連隊という呼称であっても850名規模、いや普通科連隊以上に高射小隊と火力支援中隊があり、施設作業小隊の機材も若干充実、つまり連隊戦闘団を組まずともあるていどまでは独立した作戦能力を有しており、より省力化している。

 人件費、即応機動連隊を45個整備した場合の人員規模は3万8250名です。この人数は少々心細い規模ですが、機動戦闘車900両と装輪装甲車2250両、なかなかの心強い規模と逆に考える事も出来るでしょう。勿論、ウクライナの状況を見ますと火砲か代替手段による特科火力、機動戦闘車の一部を戦車か戦車相当の装備とし、架橋などの施設器材も必要だが。

 人件費は抑えられます、こうした手法で装備を充実させることで陸上防衛力は現役要員を7万以下とすることも不可能ではない。いやいや防衛費を抑えても自治体と警察で歳出全体は膨らむではないか、こう反発があるかもしれませんが、問題は防衛費、行政サービスが拡大する中で歳出を抑えるのは物理的に難しい。ただ、防衛費の伸びについては、こうした選択肢はあるのです。

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【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【01】横須賀の朝は海上自衛隊70周年国際観艦式へ繋ぐ(2012-10-08)

2022-11-27 20:01:44 | 海上自衛隊 催事
■海上自衛隊六〇周年観艦式
 これが日本の海上防衛力だという特集を今回から紹介します。

 海上自衛隊60周年観艦式を海上自衛隊70周年国際観艦式の実施されました本年からその様子を紹介しましょう。この60周年観艦式は今年行われた国際観艦式とは規模が根本から大きく、よくぞここまで護衛艦を集めたものだ、堂々の観艦式に驚かされたものでした。

 十年前の観艦式、驚くのはこのころにFOIPも艦隊これくしょんも存在しなかったということです。そして日本の防衛は、このままなにもせずに時間を空費するならば、大陸中国に一国平和主義を掲げる日本は単独で立ち向かう必要さえありました、本土決戦主義的に。

 海上防衛というものは、考えれば日本の防衛はゲオポリティクス的なハートランドとリムランドの関係、このゲオポリティクスの提唱者は中華思想的影響を多少なりともうけていたのでしょうが、太平洋に面した海洋国家でありながら発想が大陸的なものという印象だ。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋、日本の防衛はこの10年間で大きく転換しましたが、その最たるものは護衛艦いずも型を中心として行われるインド洋地域へプレゼンスオペレーション、ポテンシャルオペレーションと言い換えるべきと信じるのですが、この開始で。

 もっと世界の国々と協力する関係を深めてゆこう、プレゼンスオペレーションの背景にはこうしたものがあります。そして、単なるヘリコプター母艦というヘリコプター搭載護衛艦の位置づけが陸上自衛隊のV-22可動翼機の導入、そして次の段階の航空機導入でかわる。

 F-35B戦闘機、F-35A戦闘機の導入は野田政権時代の決断ですが、安倍政権ではF-35A戦闘機の従来のF-4EJ戦闘機後継という位置づけからF-15Jの一部を置き換えるとともに、護衛艦からさえも発着可能というF-35B戦闘機の導入へ転換したのですね、意味は大きい。

 プレゼンスオペレーション、日本はいわばFOIPのステイクホルダーとして参画するために海上防衛力が実のところ最適ではあるのですが、そのためのポテンシャルを示すには離れた地域へ一定のパワープロジェクション能力を護衛艦に付与させる必要性がありました。

 十年一昔、こういうものですがこの観艦式が挙行されました2012年は、あの東日本大震災、2011年3月11日から一年以上を経ているのですが、その記憶は一年以上を経てなお鮮やかであり、しかし政権は民主党政権から自民党公明党連立政権へと転換した直後という。

 FOIP自由で開かれたインド太平洋、安倍政権が提唱しアジア太平洋という概念からインド太平洋という二つの大洋を結ぶ国際関係へ、ダイナミズムという転換期を迎えつつありましたのが、この2012年という時代です。これはマルチラテラリズムといういみで、です。

 多極化時代、考えてみますと京都大学の高坂学派は冷戦時代から多極化時代という認識で国際関係を研究していましたが、安倍政権の外交ブレーンたちはこの門下生がおおく、そして外務省にも多く、神川学派の戦後体系化の分散とは一線を画した認識といえました。

 田岡良一の国際法学派からの影響、もともと司法は国際慣習法の時代から大国と小国の関係を国際関係の慣行と慣習の整合化という、多極化を志向していた概念とみることもできるのですが、高坂教授の国際関係の理念は根底に田岡良一教授の影響をみる事ができます。

 神川先生の時代は日本の国際関係を考える場合、なにしろ東京帝国大学の時代ですので戦前の国際観に依拠した多極化というよりも大国間関係という認識が基盤としてあり、これはいまでの比較的容易に入手できる全集を読んでみても幾つかき付かされることでしょう。

 マルチラテラリズムの認識は、これは国際政治という認識から世界政治という認識という非国家主体の国際公序醸成への影響という、2000年代と比較しますと2020年代には非国家主体の関与度合いは若干後退したのか、分散した印象も受けますが、合致する点もある。

 FOIPの認識とマルチラテラリズムとの関係ですが、従来のアジア太平洋という認識では、アジアは中国で太平洋はアメリカ、いやアジアには日本も韓国も東南アジアもあるし太平洋にはオセアニアも太平洋諸国も、という反論はあるでしょうが、二元的構図に違いない。

 二極論、こうしますと日本の位置づけが非常に微妙なたち位置となります、もちろん大東亜共栄圏を掲げていました1940年代の日本であれば、二極論の一方に陣営をくむことはできるのかもしれませんが、アメリカと中国、どちらかに一方で対抗できる国力はもうない。

 単極化とは1990年代にソ連崩壊の後の国際関係はアメリカ一極となる認識が一応は存在していました、これは国力をハードパワーだけではなくソフトパワーという部分も含めてです。ただ、2010年代に入りますと、ハードパワーでは競合国が生まれてくるという認識が。

 ソフトパワーの国際関係、やはり世界政治というものは認識の領域が広いものですから敢えてこの単語を選択するのですが、この点については、アメリカの認識、いや欧米と言い換えてもよいのでしょうか、幾分強いよう考えるのです、それは個人のポテンシャルから。

 自由主義と社会主義という認識は、民主主義と権威主義というように微妙に変化しているといえます、社会主義というには中国は資本の共有が偏りすぎていますし、安易に自由主義国と区分することはできません、すると政治システムの部分から類別する手法をとる。

 権威主義国は個人の価値観を国家が定型化するのにたいして、民主主義国は自由主義という選択肢を国家が選ぶこと、個人の価値観についてを内心の自由として、いわば尊重される制度である。ここでどちらが良いかをとう結論がソフトパワーの強さと解釈できうる。

 アジア太平洋の概念では、日本という位置が明確に示すことが難しい、一方で、再度日本に高度経済成長時代のような年率10%の経済成長は、10%成長ならば7年で経済力は2倍となり物価も連動する、そんなものは望めないのですし、軍事力も今更核開発しても、と。

 二極構造では、日本と中国という構図では日本がアメリカを凌駕する国力をもつ、ちょっと考えにくい構図となりますし、中国ではなく日本がアジアの中心としてアジア30億の代表を担うという概念、1940年代に潰えました、すると多極化しか生き残る手段はなくなる。

 FOIPはその発想の延長であり、インド太平洋と二つの大洋を結ぶ概念に意味があります、インド太平洋という概念ならば人口で中国に対抗しうるインドが加わる、こう考えるだけではなく二つの大洋を結ぶ国際関係という認識を加えれば、もう一つの要諦が加わります。

 ヨーロッパは地中海地域がアラビア半島を通じてインド太平洋地域に隣接していますし、なによりも知的財産と先端工業の集約拠点というヨーロッパの地政学的用件はアジアと車輪の両輪が如く相関関係を有していますので、地域安全保障にも大きく関与する余地が。

 安倍政権の時代から日本と各国の防衛関係は大きく前進している、FOIPの概念とともにインド海軍東部艦隊司令官が、小さくない規模の艦隊とともに横須賀基地を親善訪問したことは記憶するところです、いわばFOIPはインドを国際政治の頂に持ち上げた構図というわけなのですね。

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【京都幕間旅情】特急きのさき289系明智光秀ラッピング電車と不遇の最新鋭271系電車関空特急はるか号

2022-11-27 18:10:33 | コラム
■明智光秀ラッピング
 普段見慣れているものが急にちがうカラーリングだったりしますとおどろくもの。

 289系特急電車きのさき号、たんば号が統合された山陰本線の特急電車なのですが、この車輛を初めて見た際に、軌道検測車の一種かと思いました、新幹線のドクターイエローの様にね。むかしやってしまったのが、ドクターイエローが新幹線ホームを通過していた時だ。

 明智光秀記念ラッピング特急だったのですね。ドクターイエロー、なんといいますかゆったりとした気分でおおらかに電車を視ていますと、電車がラッピング車輛だったり、団体運行で117系が運行されていたり、リバイバル塗装の車両だったり、ということがある。

 271系電車、関空特急はるか号、このコロナ時代にはいろいろあったのですが、気付かない変化と云うものはあるのですね、例えば特急はるか号、271系電車が281系電車と混成運用されている、という点でしょうか。よく似ているので単体では気付かない、気づき難い。

 COVID-19が日本に上陸を始めました頃、271系は2020年3月14日のダイヤ改正において導入されましたが、考えてみるとあのころは700系新幹線のさよなら運転がこのCOVID-19日本上陸により中止となった為、新型特急には気付かなかった方もいないかと。

 281系と271系、しかしCOVID-19感染拡大の影響で特急はるか号が短縮編成での運転となりまして、2020年4月1日には一時的に運航を離脱、4月24日には、はるか号そのものの運転休止が始ります、関西国際空港そのものが、殆ど閉鎖されたような状態でした。

 2020年9月1日には早朝と夜間の特急はるか号が運行を再開するのですが、2021年には11往復まで運行が再開されるものの2021年5月1日には再度一日六往復のみと運行となりました、漸く2022年11月1日、感染上陸前の水準まで特急運行が再開されたのです。

 ドクターイエロー、考えればもう700系新幹線は京都駅に乗り入れていないのに、黄色っぽい新幹線車両を、ああドクターイエローの様なカラーリングに見えるなあ、まえしっかり写真を撮ったのはいつだったろうか、と思ってみていたら、本当に車体が黄色かった。

 明智光秀ラッピング電車と不遇の最新鋭271系電車関空特急はるか号が並んでいるのですが、京都駅のこのホームは並びが撮影しにくいのですよね。そんな状況ですが、ビックカメラに寄る為に山陰線を使いましたお蔭で、こういう瞬間を撮影出来ました次第です。

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ロシア軍イラン製弾道ミサイル使用懸念-考え得るウクライナへのATACMSや広域防空システム供与の現実化

2022-11-27 07:00:33 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナへロシアが撃ちこんだミサイルは4500発との事ですので自衛隊の迎撃ミサイル備蓄の目安となるでしょう。

 ロシアへイランが無人航空機に続いて弾道ミサイルを提供する可能性が危惧されていますが、この問題はミサイルを越え、次の領域まで問題を拡大する可能性があります。まず今回イランがロシアに供給すると考えられているミサイルの酒類です、ウクライナ領内の攻撃に絞れば短距離弾道弾と准中距離弾道弾以上のミサイルをロシアは必要としていません。

 イスカンデル弾道ミサイルなど、ロシアは多数の短距離弾道弾を装備していましたが、これがすでに払底している状況故にイラン製ミサイルを代替装備の選択肢に含めた構図です。対してウクライナ軍は弾道ミサイルを迎撃する手段はS-300ミサイルのみ、しかも准中距離弾道弾迎撃に対応する世代のS-300はすでに枯渇している可能性が、たかいのですね。

 ポーランドへのS-300ミサイル落下事件は整備されたS-300の在庫枯渇を示唆するものともいえるものです。すると、SAMP/T地対空ミサイルやペトリオットPAC-3地対空ミサイルのような弾道ミサイル迎撃能力を有するミサイルを欧州やアメリカが供給するか、もしくはATACMS陸軍戦術ロケットのような、策源地攻撃を行う対抗手段を供与するか、と。

 ペトリオットミサイルは今回まだウクライナへ供与されていないため、アメリカの対外供与を考えれば備蓄としては枯渇状態にはありません、ただ、システムは高度であり防空システムとの連接が必要な装備です。SAMP/Tについては高度な地対空ミサイルですが、生産数が限られているため供与のための余剰がないのが実状というところ。すると消去法で。

 ATACMSの供与、バイデン大統領はこれまで一貫して、ウクライナへロシア本土を攻撃できる装備は供給しない、としており供与したHIMARS高機動ロケットシステムにもGMLRSという射程80kmのものまでしか供与していませんが、ATACMSは射程300kmあり、イランが供与の短距離弾道弾であれば最前線からATACMSにより反撃は可能です。

 キエフなど後方地域に対してロシア軍はミサイル攻撃を強化していますが、短距離弾道弾はATACMSよりも射程は長い、しかしHIMARSに搭載したAIACMSはキエフから反撃するのではなくウクライナ東部から反撃に用いるならば射程の差は問題ではなくなります。一方で、ATACMSはクリミア半島のロシア軍セバストポリ基地も射程に収めている。

 人道危機、問題はウクライナへのロシア軍ミサイル攻撃が開戦から半年間は後方のキエフやハリコフ地域では民間施設などに相当数命中していたものの軍事施設を中心が主たる目標であったのに対して、この数ヶ月は電力施設などインフラ攻撃に重点が置かれ、厳しい冬を前に人道危機の懸念がある、このためにミサイル攻撃を看過できないという点です。

 イランや北朝鮮からロシアが武器を買いあさるとは、これはもう、一年前には冗談でも信じてもらえないものだったのでしょうが、仮にロシアが無人航空機に加えて弾道ミサイルを調達しウクライナを攻撃するのであれば、これは別の問題、ATACMS供与やペトリオットミサイル供与、後者はNATOの教育訓練支援強化なども含む、問題を拡大しています。

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