褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 八日目(1996) エリートとダウン症の人の交流です

2018年09月30日 | 映画(や行)
 
 最初から旧約聖書の創世記の冒頭部分のナレーションが出てくる。神様は一日目に太陽を作った~、二日目に神様は海を作った~、三日目に神様はレコードを作った~、四日目に神様は・・・なんていきなり出鱈目な創世記の流れのナレーションから始める。さて、八日目に神様は何を作ったのか?
 映画の分野と言えば色々あるが、本作はロードムービー。昔からロードムービーにはたくさんの名作があった。正反対の性格だったり、黒人と白人だったり、マトモな人間とちょっと精神的に問題がある人間だったり、全く立場の異なる者同士が、主に二人で目的地にまで進み、そこで観ている者は何かしら感動を得る。
 今回紹介する映画八日目も、ロードムービーとしては王道ではあるが、組み合わせが会社のエリートとダウン症の少年の組み合わせ。しかし、昔から心身ともにマトモな人間と障害者の組み合わせのロードムービーと言えばレインマンスケアクロウと言った名作があるように、障害者の方がダウン症と言ってもそれほど珍しい組み合わせでもない。
 しかし、この映画が珍しいロードムービーであるのはファンタジーや非現実な世界が描かれている事。本作はダウン症の人に対する世間の目をありのままに描いていたりで厳しい現実が描かれていたりする。だが、神様が七日間で創り忘れていたために、八日目に創り出した物は何を意味するか?そのメタファーに気づいた時に、深く感動できる仕組みになっている映画だ。
 もしも、そのメタファーに気づかなかったとしてもガッカリすることはない。人生に必要な物とは何かぐらいはわかるだろう。

 それでは会社のエリートとダウン症の少年の奇妙な交流が描かれているストーリーの紹介をしよう。
 ダウン症の少年ジョルジュ(パスカル・デュケンヌ)は施設に暮らしているが、何年も家族が面会に来ない。何とかして大好きな母親(イザベル・サドヤン)に会いたいジョルジュは犬を連れて施設を抜け出して、母親の所へ行こうとする。
 大手銀行で教育を担当しているエリート重役のアリー(ダニエル・オートゥイユ)だが、会社では活き活きしているのだが、妻のジュリー(ミュウ=ミュウ)とは別居しており、娘二人も妻の元に行っている。
 ある日のことアリーは会社のことで頭が一杯で娘二人が遊びに来ているの忘れてしまい、迎えに行くのを忘れてしまった。
 夜中にもう死んでも良いやと、目をつぶって運転したら何かをハネてしまう。それは犬、その傍にジョルジュが立っていた。
 アリーはジョルジュを彼の母親の家に送って行くのだが、そこには別の人が住んでいて既に母親は死んでいた。アリーはジョルジュの姉の現在住んでいる住所を聞いて、そこへ送りに行くのだが・・・

 実はこの映画はダウン症の少年ジョルジュの描き方に容赦がない。非常にはた迷惑な行動を繰り返し、アリーを頻繁に悩ます。
 女性に声を掛けても恋に発展しないで思いっきり泣き叫ぶ。何かと差別的に描かれているが、しかし、観ている我々は彼の笑顔に救われる。そして、実は一番彼の笑顔に救われているのが会社一筋だったアリーだ。
 ダウン症のジョルジュは気持ちは純粋だ。アリーも次第にジョルジュに同情していくが、ジョルジュもしっかりとアリーの気持ちを慰めようとし、あるトンデモな行動を起こすのだが、これが最大の感動的な場面だ。
 しかし、結末は悲しい。それは、この世での役目を終えたことに対する神様のいたずらな導きなのか?
 ロードムービーが好きな人、ダウン症というものを少しでも考えたい人、人生で大切な物を知りたい人、どういう人間が神様に愛されるかを知りたい人・・・等に今回は映画八日目をお勧めに挙げておこう。ちなみにダウン症の少年を演じたパスカル・デュケンヌは、実際にダウン症であり、本作の監督の作品に出演していたりします。

八日目 [DVD]
ダニエルト・オートゥイユ,パスカル・デュケンヌ、,ミウ・ミウ
角川書店


 監督はベルギーの俊英ジャコ・ヴァン・ドルマル。非常に寡作で知られる監督ですが、奇想天外なアイデアや映像は見応え充分。トト・ザ・ヒーローミスター・ノーバディが良いです。

 


  
 
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映画 獣人(1938) ついつい発作が起きてしまいます

2018年09月29日 | 映画(さ行)

 フランスの文豪エミール・ゾラの同名タイトルを原作とする映画化。冒頭でいきなりエミール・ゾラの画像と署名が出てきて驚いた。そして、その後に主人公のジャン・ギャバン扮する機関車の操縦者の先天的な精神的な病の説明がされる。それは『時々、女性を殺したくなる症状』俺はこの説明を聞いて、そんなことがありえるのかと思ったのだが。もうこんな男性と知り合いになった女性は、運が悪かったと諦めるしかないのか?

 それでは早速だが、祖父や父から遺伝子を受け継いでしまったがために悲劇を生みだしてしまうストーリーの紹介を?
 機関車の操縦士であるジャック(ジャン・ギャバン)は祖父や父から先天的な遺伝子を受け継いでいた。彼はそのおかげで故郷に彼女がいたのだが、結婚せずにいた。
 ジャックは自分の操縦する機関車が修理される3日間を故郷で過ごしていたのだが、3日間が終り彼はル・アーブル駅に戻る。その道中の列車の中で助役ルポーとその妻セヴリーヌ(シモーヌ・シモヌ)が彼らの養父である金持ちの爺さんを殺害する。
 みんなが列車を降りた後に犯人捜しが行われたのだが、ジャックはルポーとセリーヌが殺したことに気づいていたのだが、彼は知らないふりをする。
 セリーヌは念のためにジャックに近づいてきた。ジャックは口外しないことを誓うのだが、そのことを切っ掛けにジャックとセリーヌは愛し合うようになり、夫婦仲が悪かったセリーヌはジャックに夫のルポーを殺害するように持ち掛ける。ジャックは実行しようするのだが・・・

 実は変な遺伝子を祖父や父から受け継がなければ、ジャックは本当は好いやつだ。しかし、いくら遺伝だと言っても常に保護観察者が側にいないとダメだろう。しかも、男を殺そうとして殺せず、女はいつの間にか殺害してしまう。しかし、このなかなか滅多に見ることが出来ない設定のお陰で面白い映画を見た気分になれた。
 遺伝子によるアイデアはエミール・ゾラの自然主義文学から発生した。だからエミール・ゾラの愛読者ならこの無理があるような設定でも受け入れられる。
 しかし、俺がよくわからなかったのは自分の先天的症状を知っていながら、セリーヌとは愛し合おうとしたこと。ジャックはセリーヌを愛していながらも、犯罪者とならば発作が起きてしまっても良し、という考えからだろか?
 そんな疑問があるが、雨の中で2人がこっそり遭うシーン、当時の映画にしては激しい殺害シーン等、時代を考えれば鉄道の発展にも驚いた。印象的な場面があるので退屈感はない。
 エミール・ゾラの小説が好きな人、ちょっと昔のフランス映画を見たいと思った人、ジャン・ギャバンが好きな人、ラストは悲劇で終わる映画が好きな人等に今回は獣人をお勧めしておこう。

獣人 [DVD]
ジャン・ギャバン,シモーヌ・シモン,ジュリアン・カレット,ブランシェット・ブリュノア
ジュネス企画


 監督は印象派の巨匠オーギュスト・ルノワールの次男坊であるジャン・ルノワール。1930年代から40年代にかけてのフランス映画黄金期を代表する監督。お勧めは反戦映画にヒューマニズムを叩きこんだ大いなる幻影、ジャン・ギャバン、ルイ・ジューヴェの当時のフランスの二大スターが競演したどん底、インドを舞台にした西洋人と東洋人の交流を描いたが良いです。 
 
 

 

 

 
 
 
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映画 追想(1975)ナチスに復讐です

2018年09月26日 | 映画(た行)
 ちょっと前にクエンティン・タランティーノ監督がイングロリアス・バスターズというナチスドイツの野郎をぶっ殺していく映画があったが、あの映画は今回紹介する映画追想の影響を受けている。あちらはタランティーノ節満載で、暴力的ながら所々でギャグをかましてくれるが、本作は銃撃戦はあるがフランス映画らしい繊細な映像も観れる。
 俺にとっては何と言っても冒頭が鮮烈だ。家族が向こうから自転車に乗ってこっちに向かってくるシーンなのだが、その時に母親役の絶世の美女であるロミー・シュナイダーの自転車に乗りながらチラチラ見える美しい太ももが、俺をクラクラさせる。何だか幸せだな~と思えるシーンから始まるのだが、本作はそんな甘美的なシーンも戦争の悲劇によって吹っ飛ばされる。

 早速だが、イングロリアス・バスターズに影響を与えたストーリーの紹介を。
 1944年、ナチスドイツ占領下のフランスのある村において。病院に勤務する外科医ジュリアン・ダンデュ(フィリップ・ノワレ)には美しい妻クララ(ロミー・シュナイダー)と娘フロランスと母の(マドレーヌ・オーズレー)の四人で何不自由のない暮らしをしていた。しかし、この街にも戦争の暗雲が立ち込めてきた。ジュリアンの病院ではナチスの兵隊やレジスタンスの兵士達が負傷して次々と担ぎ込まれる。
 連合軍の上陸に対して、ドイツ軍は掃討作戦を開始しフランス全体がやばい。ジュリアンはこの街にとどまっていては家族を危険にさらすので、クララと娘を田舎の村の城に避難させる。そして、数日後にジュリアンは妻子の顔が無性に見たくなり、自分も村へ向かう。
 ところが村に着いてみると、礼拝堂には村人たちの死体がゴロゴロあり、城の様子を覗くと妻のクララは火炎放射器で焼死体になっており、娘は乱暴された挙句に殺されていた。城の中には数人のナチスがまだ居り、ジュリアンは妻子を殺された復讐をするために、彼は城の中に隠されていた銃をとって、残っているナチスを一人残らず皆殺しにすることを誓うのだが・・・

 これがハリウッド映画でスタローンやシュワルツェネッガーだったら、ナチスドイツ親衛隊の数人ぐらいなら簡単にやっつけてしまうだろうと安心して観ていられるが、本作で銃を手にして戦うのは外科医のお医者さん。しかも、このお医者さんは見るからに太った冴えないおっちゃんで全く体を鍛えていないように思われる。復讐に駆られる気持ちはわかるが、勝ち目はないよな~と思っていたら、意外に頑張る。特に城の内情に詳しいので、そのアドバンテージを活かしてナチスドイツの兵士に対して一人で立ち向かう。
 戦いの場面は面白いが、実はちょっとした工夫が施されている。戦いの最中にジュリアンはこの映画のタイトル通りに追想するのだ。何だかすぐに美人女優ロミー・シュナイダーが死んでしまい、出番がないのかと思ってがっかりしていると追想の場面がけっこうでてくるので、その場面で麗しきロミー・シュナイダーを見ることができる。男性の視線に配慮した気配りが本作は素晴らしい。実はこの夫婦は意外な馴れ初めだったことがわかる。
 最後に火炎放射器でケリがつく結末は妻を殺された怒りを感じさせるし、確かにイングロリアス・バスターズでもこの結末が参考にされているのがわかり俺的にはニヤリとしてしまった。
 ハリウッド映画とフランス映画のアクション映画の作り方の違いをどうしても知りたい人、綺麗な女性の脚を見たい人にはお勧め。そして、戦争って人を殺してしまうからダメなのは勿論だが美しき女性、純粋な気持ち、良心を滅茶苦茶にしてしまうからダメなんだということが理解できる映画追想を今回はお勧めに挙げておこう。

追想 [DVD]
パスカル・ジャルダン
キングレコード


追想 [Blu-ray]
フィリップ・ノワレ,ロミー・シュナイダー
キングレコード


 監督はフランス人のロベール・アンリコ。この監督のお勧めは、青春、友情、恋愛、アドベンチャー、アクション的な要素を取り込んだ冒険者たち、少女が大人になる女性を描いた若草の萌えるころが良いです。


 
 
 


  
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映画 ウォーリアーズ(1979) ストリートギャングの逃亡アクション

2018年09月24日 | 映画(あ行)
 よく夜のニューヨークは怖いと聞くが、確かに今回紹介する映画ウォーリアーズを観てたら怖い。一斉にニューヨークのストリートギャング達が集まるシーンも怖いが、夜のニューヨークの風景が怖い。顔をペイントしながらバットを持っているグループや、もちろん拳銃を持っているグループもあり、へんてこりんな衣装をしたグループが多数。夜中にこんな奴らと運悪く出くわしたらアーメンと心の中で叫んで死を覚悟しなければならない。
 それにそこら中にある壁や電車に落書きしてあるのが怖い。ニューヨークの夜にうっかり電車に乗ったらストリートギャングが乗っていたらと思うと、その後に何が起きるかを想像すると怖い。まあ、ニューヨークの治安の悪さがよくわかり、日本に居ててもなるべく夜は外出を控えようと心に決めた。

 さて、ストリートギャングがニューヨークのスラム街をひたすら逃げるストーリーの紹介を。
 ニューヨークのストリートギャング達が一斉にブロンクスの公園に集まる。ニューヨークのストリートギャングで最も勢いのあるリーフズの呼びかけでニューヨーク中から集まって来たのだ。ブルックリン・コニーアイランドを縄張りとするギャングであるウォーリアーズもやって来た。リーダーは黒人のクリオン(ドーシー・ライト)、その右腕であるスワン(マイケル・ベック)を含めて9人でやって来た。他のグループも9人一組でやって来たのだが、およそ100組のグループのストリートギャング達が集まったのだが、流石にメチャクチャ多いし、怖い。
 リーフズのリーダーであるサイラス(ロジャー・ヒル)が高い台に上って集まった全グループに呼びかける。『停戦協定を今こそ結び、ニューヨークを我々で支配しよう!そうすればマフィアも警察も怖くない』なんて演説してたら、ズドンと一発。サイラスは撃たれて高い台から落ちてしまう。その時に外で待機していた警察も乗り込んでくるわ、ギャング同士で大騒ぎ。実は撃ったのはローグスのリーダーであるルーサー(デヴィッド・パトリック・ケリー)なのだが、ルーサーは『撃ったのはウォーリアーズだ』と叫び濡れ衣を着せる。
 ウォーリアーズのリーダーであるクリオンはリーフズのメンバーたちにリンチに遭ってしまい死亡。残りのウォーリアーズのメンバーはスワンをリーダーとして、とにかくバラバラになりながらもコニーアイランドへ逃げようとするのだが、リーフズの新しきリーダーであるマサイはウォーリアーズに復讐するために全グループにウォーリアーズを全員生かして帰らせずぶっ殺せと指示をだし、ウォーリアーズをひたすら追いかける・・・

 ストリートギャング達は馬鹿なのかもっと早く逃げれば良いのに、なぜか可愛い女の子が一人ついてきて足手まとい同然で一緒に逃げることになってしまったり、ちょっと休憩と女の子ばかりがいる部屋でエロいことでもしようかと考えていたら、実は女ばかりのギャング集団で危うく撃たれそうになったり、ウォーリアーズのメンバーの中に夜の公園の椅子に座っていた女性に気を取られてその女性にちょっかいをかけたら手錠をかけられてしまってパトカーが急に集まってきたりで、もっと必死で逃げないといけないのに、なぜか女性が現れるとそっちの方に気をとられてしまうのが笑わせる。しかし、メインはバイオレンス。逃げながも追いかけてくる奴は叩きのめす。アクション映画として見せ場はたくさんあり、けっこう燃える映画になっている。
 それと笑わせるのが情報通の黒人女性DJの存在。『どこどこのメンバーがウォーリアーズを捕まえるのに失敗しました』なんて放送してくれるのだが、ストリートギャングの世界もネットワークが凄いな~と妙なところで感心してしまった。確かにこれだけネットワークが充実していると逃げ切るのが大変だ。
 怖そうな奴らがたくさん出てくるが、残酷極まりないシーンは無いのでグロさはない。なかなかよくできたアクション映画であり、結末はちょっとさわやかに感じるぐらいだ。
 ロクな人間が登場しない映画だが、夜は独りで外出しない、怖そうな人とは目を一瞬でも合わさない、可愛い女性だからと言っていつも手を出してはいけない、電車に落書きをしない、ゴミはきちんと拾いましょう・・・等、見た目とは裏腹に人生の勉強にもなるストーリーが展開される映画ウォーリアーズを今回はお勧め映画に挙げておこう


ウォリアーズ [DVD]
マイケル・ベック,ジェームズ・レマー,トーマス・ウェイツ,ドーシー・ライト,ブライアン・タイラー
パラマウント


 監督はアクション映画に定評のあるウォルター・ヒル。犯罪人を車に乗せて逃亡する主人公を描いたザ・ドライバー、実際の兄弟が演じている西部劇の傑作ロング・ライダーズ、白人刑事と黒人の囚人が組んで犯人捜しをする48時間、ちょっとロックなアクション映画ストリート・オブ・ファイヤーが良いです。
  

 
 
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映画 クイズ・ショウ(1994)テレビ番組を内幕を暴露する

2018年09月22日 | 映画(か行)
 1950年代のテレビの人気番組の不正を暴き出すストーリーが今回紹介する映画クイズ・ショウ。映画でテレビ番組の不正を扱うとは、ずい分小さなテーマを扱うな~と思ったが、しかし、この時代は丁度アメリカにもテレビが登場してメディアの役割を行っていた時。そして本作はNBCの高額賞金で国民的人気のクイズ番組「21(トウェンティワン)」での不正。人気番組において不正が行われるなど、正義を標榜するアメリカでは絶対にあってはならない出来事だ。しかし、1950年代のアメリカにおいてはテレビ番組の力は偉大で、ヒーローを簡単に作り挙げることができるのであり、逆に自ら作り上げたヒーローを叩き落とすことも簡単だ。テレビ会社は視聴率に一喜一憂しスポンサーも人気番組に乗っかるのが会社の得になる。

 それでは1950年代に実在した人気番組でいかなる不正が行われたのか?そして、その顛末はこれ如何に。
 高額賞金で国民的人気クイズ番組「21(トウェンティワン)」においてユダヤ人のハービー(ジョン・タトゥーロ)は連戦連勝。今や高額賞金を得そうになっていて、街を歩いていても人気者だ。しかしながら、彼が勝ち続けている最初は良かったが、次第に視聴率が横ばい。しかも、ハービーは華がないわ、格好良くないわ、もうユダヤ人のサクセスストーリーはこりごりだろうと、スポンサー企業の社長(マーティン・スコセッシ)が番組のNECの社長にハービーを変えろと指示を出し、番組のプロデュサーも引き受ける。
 そして番組のプロデューサーは、ハービーに次回の出演で問題に対してワザと間違えろと圧力をかけてきた。
 さて、番組のプロデューサーは次期チャンピオン候補にチャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)に白羽の矢を立てた。チャールズは白人で若くて、男前。そして大学教授で生徒を教え、しかもヴァン・ドーレン家は非常に学問においては優秀な一家だった。チャールズはNECに赴き、番組プロデューサーと面接し、ある問題の答えを教えられる。チャールズはそういうやり方はしないように番組プロデューサーに釘をさす。
 そしていよいよ本番でハービーとチャールズの対決になる。ハービーは間違えろと言われた問題で彼には簡単すぎる問題だったのだが、悩んだ末にワザと間違える。一方、チャールズには教えてもらった問題が勝負を決する場面で出てきた。新チャンピオンの登場だ。それ以来番組の視聴率がまたうなぎ上りのように上がっていく。ところが問題はこんなことで終わらない。
 ハービーは怒り心頭で番組を不正で告発する。そしてその動きに呼応するように立法管理小委員会の捜査官のディック・グッドウィン(ロブ・モロー)は、このクイズ番組は何か怪しいと感じ、本格的に調査するのだが、事態はディックの思った通りに行かなくなってしまい・・・
 
 チョット俺の独り言だが、クイズ番組の不正は恐らく日本でもあるな。ユダヤ人のハービーは夢を掴むことが出来ずに叩き落とされ、チャールズは良心が傷んで不正を自供、そして大学の教授から追い出されてしまう。ディックはテレビ番組とスポンサー訴えるつもりだったのだが、テレビ局もスポンサーも殆どダメージはなし。本作からテレビの権力の凄さがよくわかる。
 日本のテレビ番組のニュースも本当に怖い。政治問題だとテレビ局は殆どが反権力に向かってしまう。これでは視聴者はテレビの言っていることだから、と言うことで信じ込まされたりするがテレビだけでなく新聞も色々な見方で視聴者に伝えなければならないと思う。本当にメディアの恐ろしさがよくわかる映画だ。特に日本人もテレビ、新聞、インターネット等で色々な媒体があるが、どれが正しいか自分自身で判断する力が必要だと感じる。
 テレビ界の内幕を知りたい人、テレビってどこも同じニュースをすることに疑問を感じた人、ちょっと最近のテレビの報道は安倍叩きがひどいんじゃないの?と思った人等に今回はクイズ・ショウをお勧め映画に挙げておきます。


クイズ・ショウ [DVD]
ポール・アタナシオ
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント


 監督は先日もう俳優は辞めると引退宣言をしたロバート・レッドフォード。大スターであるロバート・レッド・フォードだが監督作品は意外に地味な作品が多い。家族の断裂を描いた普通の人々、自然環境をおとぎ話風に描いたミラグロ/奇跡の地、ブラッド・ピットを大スターにしたリバーランズ・スルー・イットが良いです。



 


 


 
 


 
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映画 第三の男(1949) いつまでも色あせない名作

2018年09月21日 | 映画(た行)
 名作だからといって必ずしも面白いとは言えないのが映画の常識。しかし、今回紹介する映画第三の男は名作中の名作として今日においても評価が高いが、文句なしにこの映画は面白い。チターの演奏によるテーマ曲はワンパターンだが非常に聴き心地が良く、ストーリーも非常にテンポ良く進む。モノクロの画面を活かした陰影や構図が素晴らしく、本作を観ればモノクロ映画はダサいと思っている人も、そんな考えが一変に吹っ飛ぶはずだ。
 そしてこの映画の凄さは名シーンや名台詞の数々。映画の名シーンを聞かされても、そんなシーンあったっけ?なんてこともあるが、本作に関して言えば色々なシーンが頭の中に浮かんでくる。

 さて、サスペンス映画の作り方の見本のようなストーリーの紹介をします
 第二次大戦後の米英仏ソによって4分割統治されていたオーストリア、ウィーンが舞台。アメリカの西部劇作家であるホリー(ジョゼフ・コットン)は親友のハリー(オーソン・ウェルズ)から『こっちへ来いよ』と誘われてウィーンにやって来た。街合わせた場所にハリーは現れず、仕方なく彼の家に向かったのだが、驚いたことを耳にする。なんとハリーは、昨日に自動車事故に遭って死んだと聞かされる。
 ホリーは、ハリーが埋められた墓場に行くと、そこにはイギリス軍のキャロウェイ少佐(トレヴァー・ハワード)、そしてハリーの恋人だったアンナ(アリダ・ヴァり)も居た。そこでキャロウェイ少佐から意外なことを聞かされる。実はハリーはとんでもない極悪人であることを知らされる。
 ホリーは親友のハリーが極悪人だと聞かされて、そんなはずがあるもんか!と思いアンナと一緒に自ら調査を始める。最初はハリーが事故に遭ったときは側に二人の男がいたと聞いていたのだが、その現場をみていた管理人から二人ではなく三人いたと聞かされる。
 ホリーは、もしかしたら三人目の男がハリーであり、ハリーは生きていると確信する。しかし管理人は殺され、しかもホリーに疑いの目がかけられてしまうのだが、暗闇からハリーが登場する・・・

 オーソン・ウェルズ演じる極悪人の登場の仕方が素晴らしい。ちょっと薄笑いを浮かべて、まるでホリーをバカにしているようだ。そこからは名シーンの連発。観覧車の中でのホリーとハリーの二人だけの会話シーン、地下水道でハリーが追いかけられるシーン、ラストの並木通りのシーン等。それらの名シーンを通して観ている者に色々な感情を持たせる。俺なんかは男同士の友情っていうのは、このように脆いものなのかと思ったり。友情なんて男女の恋愛に比べたら軽いよな~と思ったり、やっぱり一人で外国へ行くのは寂しいよな~と感じたり、好意を持った女性からガン無視されるぐらいだったら死んだ方がマシだよな~と悲しくなったり、正義の行いをしたはずなのに虚無感に襲われたり。俺以外の人が観たらもっと色々な想いが沸き上がるのかもしれない。
 猫、子供、地下水道、観覧車を使った演出は巧みだし、なかなかハリーが現れない展開はサスペンスフルで良いし、ハリーが登場してからもホリーを悩ます展開が楽しい。そして戦後の人々の不安な状況というのも何気に描かれているのは流石だ。
 名作映画の面白さを知りたい人、サスペンスタッチでありながらも色々な感情を抱かせる映画と聞いて観たいと思った人、名作中の名作である映画市民ケーンを観てそれほど面白いと思わなかった人、たまにはカラー映画ではなくモノクロ映画を観たいと思った人・・・等に映画第三の男を今回はお勧めしておこう。


第三の男 [DVD]
シ゛ョセ゛フ・コットン
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第三の男 [Blu-ray]
ジョセフ・コットン,オーソン・ウェルズ,アリダ・ヴァリ,トレヴァー・ハワード,バーナード・リー
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


 監督はイギリス人のキャロル・リード。サスペンス映画を得意にしている監督。お勧めは負傷したテロリストの一日を描いた邪魔者は殺せ、子供の不安定な心理を活かしたサスペンス映画落ちた偶像が良いです。





 




 
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映画 アルタード・ステーツ 未知への挑戦(1979) 人類誕生の謎に迫る

2018年09月17日 | 映画(あ行)
 本作に出てくる重要な道具として人間が入れるタンクが出てくる。それはアイソレーション・タンク。どうやら色々な用途で世界中及び日本でも使われているようだが、本作ではウィリアム・ハート演じるか科学者が変性意識状態(日常的な意識状態以外の意識状態のこと)になるために、自らアイソレーション・タンクに入って、自分自身で人体実験をしている。ちなみにタイトル名のアルタード(altered)は変性意識状態の事を示している。タンクの中には液体が入っており、この科学者が何のためにアイソレーション・タンクに入るのかは、後ほど追々と説明するが、個人的には好き好んで入ろうと思わない。

 さて、あまりにも優秀過ぎる科学者であるがために、この世の最大の謎を解明しようとするストーリーの紹介を簡単に。
20歳代半ばにして博士号の資格を持つ天才科学者エドワード(ウィリアム・ハート)は自ら何時間もアイソレーション・タンクに入って研究していた。人類は古代から進化のプロセスを辿っているので、人類の細胞は原始時代からの今まで引きずっているので、細胞のもっている記憶を逆に原始時代まで遡ることによって、人類の誕生の真理が明らかになるはずだと考えていた。アイソレーション・タンクに入って、幻覚を引き起こすのだが、エドワード曰く『面白いぞ』とか言って、外で監視していた友人のアーサー(ボブ・バラバン)と話していた。
 その後にエドワードは人類学者のエミリー(ブレア・ブラウン)と結婚し、子供も生まれて研究を一時中止する。お互いに生活は順調だったのだが、エドワードはメキシコにキノコを食べて幻覚を引き起こし過去にトリップをする部族が居ることを知る。またまた研究にのめり込むエドワードに愛想を尽かしてエミリーは子供を連れて出て行ってしまう。
 メキシコへ行き、キノコの効果を自ら確かめたエドワードは、また自らアイソレーション・タンクに入る。そうするとキノコによる幻覚作用と併用すると効果が抜群。彼の頭の中には原始時代にトリップするだけでなく、他のイメージも見える。どんどん実験を重ねていくのだが、次第にエドワードの体にも変化が訪れるのだが・・・

 アイソレーション・タンクやキノコなど使って幻覚を引き起こしているが、見ていて俺自身が麻薬をを使ってラリっている気分になってしまった。トリップした時のイマジネーションがなかなか面白く、キリストを茶化したような映像も出てくる。
 けっこう笑えたシーンが実験後に口から血を流しているエドワードの体のレントゲンを撮り、それを専門家に見せると『猿のレントゲンなんか持ってくるな』と言われたりするのには笑ってしまった。
 しかし、後半はなんだかホラー映画。すっかり変身してしまったエドワードが暴れまくる。さて、そんなエドワードの暴走は止められるのか?ラストシーンは正直なところ、俺はこんな結末で良いのか?なんて思ったのだが、もしかしたら感動する人の方が多いかもしれない。
 SF映画とホラー映画が融合したような映画。エイリアンみたいなアクションシーンは全くないが、色々と見どころはたくさんある。豊かなイマジネーション、そんなこと有りえね~!なんて思わせたり、ブラックユーモア的なセンスで笑わせたり・・・。
 ケン・ラッセル監督作品と聞いて観たいと思った人、幻覚症状を味わってみたい人、何だか変わった映画を観たい人、科学者になりたい人・・・等に今回はアルタード・ステーツ/未知への挑戦をお勧めしておこう。


アルタード・ステーツ~未知への挑戦~ [DVD]
ウィリアム・ハート,ブレア・ブラウン,ボブ・バラバン
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督はイギリス人のケン・ラッセル。シュール、エロ、変態のイメージがあります。彼のお勧めは少し毒舌なミュージカル映画トミー、ちょっとエロいホラー映画白蛇伝説、男二人がスッポンポンで対決する恋する女たち、キャスリン・ターナーが綺麗だった頃のクライム・オブ・パッションが良いです。
 

 




 

 

 

 
 





 

 
 
 
 
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映画 ロンゲスト・ヤード(1974) バート・レイノルズが亡くなりました。

2018年09月14日 | 映画(ら行)
 先日、バート・レイノルズが亡くなった。見るからに男臭いマッチョなイメージがあり、よく知られている出演作品と言えばキャノンボール。しかし、俺の彼が出演している作品で最も好きなのは、最近は日本でも何かとニュースになっているアメフトをテーマにした映画ロンゲスト・ヤード。この映画のアメフトのシーンがもの凄く面白いのだが、日大アメフト部の危険なタックル問題がニュースを騒がすようになってから、非常に笑いにくい映画になってしまったのが残念。本作のアメフトシーンは日大のアメフト部よりももっと悪質なラフプレーが出てくる。
 しかし、本作は大学生同士の神聖なスポーツの戦いではない。同じ刑務所内における悪質な看守と日頃から理不尽な苛めを受けている囚人の対決だ。学生同士の試合ならスポーツマンシップにのっとって正々堂々とプレーしなければいけないが、本作の看守VS囚人の戦いに、スポーツマンシップを期待するのがムリ。スポーツ映画にありがちなスポコン映画とは全く違うということだ。
 
 さて、殆どがアメフト未経験の懲役何十年の囚人たちは、一体何のために戦うのか?それではストーリーの紹介を。
元アメフトのプロとして花形選手だったポール(バート・レイノルズ)だったが、今では金持ち女のヒモに成り下がっていた。そんな彼女との生活に飽きたのか、手切れ金の代わりに彼女の高級車を奪って出ていくが、警察に通報され、パトカーを壊しまくって走った挙句に捕まってしまう。
 ポールは懲役三年でテキサス州の刑務所に収監されるが、そこの所長であるヘイズン(エディ・アルバート)は看守たちからなるアメフトチームを成長させることに異常な執念を持っており、今まで5回連続で2位だったのだが、今度こそ優勝するためにポールをアメフトのチームのコーチにしようとする。しかし、ポールはアメフトチームのコーチ兼選手の看守長であるクナウアー(エド・ローター)から脅迫されて、コーチの依頼を断る。しかし、なぜかポールはクナウアーから理不尽な暴力を受けてしまう。
 ある日のこと、ポールはまたヘイズン所長に呼び出される。今度は看守チームの練習相手のために、囚人たちのアメフトチームを作るように頼まれる。早速、囚人達を集めてチームを作り、いよいよ看守チームと試合をすることになるのだが・・・

 前半は所長や看守たちの嫌がらせによる刑務所映画、そして後半は看守チームと囚人チームのアメフト対決によるスポーツ映画。このミックスがなかなか楽しい。ポールが囚人チームのメンバー探しのシーンはかなり笑える。刑務所なだけにとんでもない大悪党がいたり、非常に個性的な面々がそろった。
 観客を集めてのアメフトの試合のシーンだが、日大のアメフト部の監督も真っ青になるぐらいのラフプレーの連発。蹴ったり、殴ったり当たり前だが、相手のキンタマ目がけてアメフトのボールを投げ込む。しかし、試合中にもかかわらずヘイズン所長の脅迫はポールにやって来る。権力の乱用に対してポールは屈してしまいそうになるが、そこからがこの映画の真の見どころだ。自堕落なダメ男が立ち上がる内容の映画は本当に心が熱くなる。
 今ではすっかり希少価値となってしまったバート・レイノルズのファンの人、権力に立ちむかう男の映画を観たい人、最近のニュースでアメフトに興味が出てきた人、スポーツ映画が好きな人などに今回は映画ロンゲスト・ヤードをお勧めに挙げておこう。


ロンゲスト・ヤード [DVD]
アルバート・S・ラディ,トレイシー・キーナン・ウィン
パラマウント ジャパン


 監督は熱い戦いを多く描いているロバート・アルドリッチ。お勧めは軍隊内部の腐敗を描いた攻撃、列車のタダ乗り男と車掌の熱いバトルが描かれている北国の帝王、ゲイリー・クーパーとバート・ランカスターの二大スターによる共演の西部劇ベラクルス、女の戦いを描いた何がジェーンに起こったか?、不時着してしまったただ広いだけの砂漠からの脱出映画飛べ、フェニックスが面白いです。

 バート・レイノルズが他に出演している作品ではポール・トーマス・アンダーソン監督のポルノ業界を描いたブギー・ナイツがお勧めです。


 
 
 
 

 

 
 
  
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映画 サクリファイス(1986) 名監督アンドレイ・タルコフスキーの遺作です

2018年09月12日 | 映画(さ行)
 ソ連の映画のレベルの高さを世界中に広めたアンドレイ・タルコフスキー監督。その作風はよく難解だと言われる。そして映像の詩人と呼ばれ、特に水をモチーフにした自然描写は独特の感性がある。よく彼の作品で家の中に居るのに雨が降っているシーンがあるが、『何で?』と質問されても、それはタルコフスキー監督の個性だという答えになってしまう。特に後半の彼の作品群になると人類の救済をテーマにした作品に偏ることになるが、核戦争をテーマにした作品が今回紹介する映画サクリファイスだ。
 ちなみにタイトルのサクリファイスの意味は『生贄、犠牲』といった意味。日本人は神社に行って『世界が平和になりますように』と祈ってるだけの人が多いが、俺に言わせれば、こんなのは平和という尊いものを冒涜しているにしか思えない。祈っているだけで平和がやってくるはずがない。祈った後に具体的に行動しないとだめだ。だいたい神様も人間の限りない我儘を全部聞けるはずがない。そりゃ~、神様だって祈ってくる人に対して何か見返りを求めてくるのは当然だろう。そのことは旧約聖書に親しんでいるヨーロッパ人はよく理解しているようだ。

 さて、本作の主人公は核戦争が勃発した時に彼は神様に何を犠牲として差し出すのか?それではストーリーの紹介を。
 舞台はスウェーデン、バルト海をのぞむゴッドランド島。かつて舞台俳優と名声をはせていたアレクサンダル(エルランド・ヨセフソン)だが、今は上手く仲がいっていない妻と娘と喉を手術したために声が出せない幼い息子と暮らしている。そして女性の召使が2人がいる。
 アレクサンダルの誕生日の日、郵便屋さんのオットー、医師であるヴィクトルもやって来て、誕生日祝いをする。
 ある日のこと、二階で息子を寝かして降りてきたアレクサンダルだがテレビで核戦争が勃発したことのニュースを見る。そのことに妻は発狂してしまう。無神論者だったアレクサンダルは初めて神様に祈るのだが・・・

 最初の方は伝説、文学、絵画などの話がグタグタ言っているが、そういうことに興味の無い人は退屈するかもしれない。まあ、だいたいタルコフスキー監督作品は最初はダラダラしているので退屈だ。しかし、この映画がちょっと面白くなるのはやはり核戦争が起こってから。別に核戦争が起こっているシーンなんかは出てないが、その場にいる人間の本性が少し垣間見れてから楽しい。アレクサンダルの妻は自己中だし、女性の召使の一人であるマリアは魔女だと噂されていることがわかり、けっこう男を誘っていることがわかる。
 そして感動するのがアレクサンダルが神に祈るシーン。彼は日本人のように『お願いですから助かりますように!』なんて自分の願望だけを言ったりしない。自らの大切な物を犠牲にすることを誓うのだ。そして祈った後に目的を達成するために実行する。俺はキリスト教徒ではないが、たまには参考にすると自分の心の癒しになる。
 しかし、この映画は何気に美しい。アレクサンダルとマリアが愛するシーンの空中を浮遊したり、湿地帯に建てられている家が燃え上がっているシーン、冒頭のシーンとエンディングのシーンの映像など。そして結末は暗闇の絶望の中にも、わずかな希望を感じさせる光が小さいけれども生きる気力を感じさせるのが良い。
 そして、アレクサンダルに届くお誕生日プレゼントが色々あったが、果たしてこれらは何かのメタファーなのかと深読みのしがいがある。まあ、タルコフスキー監督の映画を観て彼の意図を探ろうとすればするほど無間地獄におちいりそうになるが。
 アンドレイ・タルコフスキー監督作品と聞いて心が躍る人、キリスト教の考え方に少しでも触れてみたい人、宗教画やロシア文学に詳しい人、そして神社に行くたびに同じことばかりお祈りしている人、自分さえ良ければ良いという自己中の人、難解な映画が好きだというレアな人・・・等に映画サクリファイスを今回はお勧め映画としておこう。

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 監督は前述したアンドレイ・タルコフスキー。水、火、木、などの自然を写し出し、犬、馬、ヤギなど動物を登場させ、宗教、平和への祈りを込めた独特の映像は、まさに映像の詩人と呼ぶのに相応しい。彼のお勧めはストーリー性はしっかりしている僕の村は戦場だった、そして2001年宇宙の旅とならぶSF映画の金字塔とでも言うべき惑星ソラリス、タルコフスキー監督がイタリアで撮った平和と祖国への想いが伝わってくるノスタルジアが良いです。でも、彼の映画はどの作品も合う合わないがあると思います




 


 




 
 


 

 





 
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映画 市民ケーン(1941) 映画界の金字塔と言うべき作品

2018年09月09日 | 映画(さ行)
  映画史に語り継がれ続かれている大傑作が今回紹介する映画市民ケーン。しかもオーソン・ウェルズが弱冠25歳にして監督、主演まで兼ねた彼のデビュー作。現在においても映画評論家達の評価が高く今でも映画史上最高傑作と呼ばれる作品だ。この映画を褒めるのによく撮影技術のことが言われる。パンフォーカス、長回し、超ローアングル、老けメイク、時間軸構成など。しかし、このような予備知識を無しで本作を観て、あのシーンの撮影テクニックが凄いぞ、と気づく人はまずいない。今の映画の特撮技術に慣れてしまっている人にとって、正直なところ本作を観ても驚くことは何もない。1941年という時代を想像しながら見れば、あの映像はどうやって撮ったんだろうと思うかもしれないが、このシーンはどんな撮影テクニックが使われているのかを考えながら観るのはやめた方が良い。『映画好きならば絶対に市民ケーンは観ろ!』なんて偉そうに言うような自称映画評論家が多いが、ハッキリ言って余計なお世話だ。
 そりゃ~、俺だってスピルバーグ監督のジュラシックパークを見た時はリアルに動く恐竜に驚いたが、やはり映画に求めるのは感動できるか、衝撃があるか。その当時の人はこの映画の革新的な作りに衝撃を受けたようだが、今を生きる俺の観点から言うと、確かに後世に残る傑作映画はこの映画から凄い影響力を受けている。俺も本作以前の古い映画も見ているが、この映画の題材、構成、結末は現在の映画に見られるパターンが多い。
 実はこの映画の主人公は当時実在したウィリアム・ランドル・ハーストをモデルにしている。彼は新聞王と呼ばれ、アメリカのメディアを殆ど支配下におき、当時のアメリカにおいて世論を大きく動かすことすらできた。実は俺が面白かったのは、この新聞王の描き方。まだ存命中でありアメリカの政界、財界、民衆に大きな影響を与え、海外の大物政治家にも繋がりのあったハーストを25歳の青年が果たしてどのように描いてしまったのか。

 それでは映画史に残る大傑作のストーリーの紹介を。
 大豪邸において寂しく新聞王ケーン(オーソン・ウェルズ)が『バラのつぼみ』という言葉を残して死んだ。早速、彼の記録映画が製作されるが、それを観た経営陣たちは何か物足りなさを感じていた。しかし、死ぬ間際に発した言葉『バラのつぼみ』の意味を知ることによってケーンの人物像が明らかになると考え、ニュース記者のトンプソン(ウィリアム・アランド)は、ケーンの生前を知る者を片っ端から訪ねていく。
 ケーンの生涯の最初の転機は両親とはまだ幼い頃に引き離されて、銀行家の金持ちサッチャーを後見人として育てられたこと。しかし、ケーンが最も興味を持ったのは新聞の仕事。彼は友人のリーランド(ジョゼフ・コットン)、バーンステイン(エヴェレット・スローン)を引き連れ、新聞経営に乗り出す。民衆受けする記事を載せて新聞の売り上げを伸ばしまくり、そして大統領の姪であるエミリー(ルース・ウォーリック)と結婚。後々は大統領にまでなろうかという勢いで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いで一躍注目の人物になる。
 そして、ついにケーンは州知事に立候補し当選するような勢いだったのだが、思わぬ墓穴を掘ってしまい次第に人生の歯車が狂ってくる・・・

 一度でも栄華を極めた人間の落ちっぷりが凄い。この主人公ケーンだが他人のアドバイスは全く聞かずに、自己中心。そりゃ~かつての友達も愛する奥さんも離れて行ってしまう。まるで自分を応援してくれている人を裏切ったり、騙したりしているために段々と人が離れていく俺の知人を思い出す。
 しかし、笑えるのが愛する売れない歌手をしている女性に対して豪華な宮殿やオペラ劇場をプレゼントしているところ。しかも、その宮殿はヨーロッパから集めた骨とう品だらけで動物園なみに象やキリンがいる。しかし、さすがにそんな物をもらっても喜べない。女性がでかい宮殿で一人ぼっちでジグソーパズルをしているのには笑ってしまった。
 そしてケーンがその女性が宮殿を出て行ってしまう時に言うセリフが凄い。『こんなに愛しているのに、なんで愛してくれないんだ?』。とんでもなく自己中で笑った。

 しかし、オーソン・ウェルズは老けメイクをしていない時でもかなりのおっさんに見える。お前本当にこの時はまだ25歳だったのかよ。しかし、本作を観て思うのは若さというのは一歩間違えれば恐ろしい。当時の新聞王ハーストは絶大な権力を持ち、まだ存命中なのにかなり馬鹿にした内容の映画を撮ってしまった。俺はその部分がかなり面白かった。それは若者が軽い冗談で、新聞王をからかってやろうかと思ったぐらいのつもりで撮ったのじゃないかと俺は想像してしまったのだが。しかし、若僧が大手の新聞会社を敵に回してはいけない。それは今の日本でも、政治家がメディアからデタラメなでっち上げで袋叩きに遭っていることからもわかる。
 ちなみに本作市民ケーン新聞王ハーストの圧力に遭う。おかげで映画の興行成績は惨敗。アカデミー賞も本命視されながらこちらも惨敗。そして、オーソン・ウェルズ自身もその後は自由に映画を撮らさせてもらえず、その後の監督作品は出来上がったフィルムが映画会社からズタズタにカットされるなどされてしまう。結局、彼は監督として市民ケーンを超える映画を撮ることもなく、脇役で見るぐらいになってしまった。
 さて、結局『バラのつぼみ』の意味は何だったんだろう。最後に理解できる仕組みになっているのだが、俺にはハッキリとしたことがわからなかった。個人的には幼い時に離れた母親との思い出の象徴だと思っているのだが。この白黒はっきりしない終わり方も今風のハリウッド映画に近い気がする。
 映画史に残る最大の傑作を見てみたい、ストーリーの内容は無視してもどんな驚くような映像技術を使っているのか知りたい人、謎解きが大好きな人、主人公の馬鹿っぷりに笑いたい人、新聞王ウィリアム・ランドル・ハーストに興味が湧いた人に映画市民ケーンを今回はお勧めしておこう。


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 監督は前述したように悲劇の天才オーソン・ウェルズ。この人のお勧め映画は黒い罠。冒頭からの長回しは、流石だと思わせます。

 

 



 

 

 
 
 
 
 


 

 




  
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映画 日本の夜と霧(1960) 津川雅彦さんを偲んで

2018年09月08日 | 映画(な行)
 先日のことだが名優津川雅彦さんがお亡くなりになられた。最近はメディア等で保守派としての言論が目立っていたが、彼の若い頃はリベラルな映画にもよく出演していた。津川さんが出演していた映画を多くは観ていないのだが、個人的にもの凄く印象的に残っている作品が大島渚監督の映画日本の夜と霧。津川さんが20歳の頃の作品だが、当たり前のことだが流石に若い。外見だけでなく声もだいぶ違う感じがする。
 さて、本作だがテーマは大島渚監督作品らしく、かなりイデオロギーに満ちた作品になっている。制作された年代を見てもらえばわかるが、時代にマッチして日米安保闘争をテーマに描かれている。細かい内容は後で語るとして、本作は俺が生まれる10年前の作品だが、けっこう出演者は俺がテレビで見ていたりで知っている人が数人が出演している。津川雅彦さんを始め、渡辺文雄、佐藤慶さんも出ているように、後に名優と呼ばれる人が多く出演している。他の人もプロの俳優ばかり出演していると思うのだが、ところが驚いたことに台詞だけを聞いていれば学園祭レベルの酷さ。もうみんな台詞は噛み嚙みだし、明らかにミスっているし、ハッキリ発音できていないから何を言ったかわからななかったり、棒読みの俳優もいる。津川さんも台詞をミスって、明らかに失敗した~とわかる表情も撮られている。普通ならもう一回撮り直さないといけないレベルなのだが、台詞のミスなんかそのまま放ったらかしたままで、豪快に長回し。日本のヌーベルバーグを代表する大島渚監督の凄さを感じられる映画だ。

 さっそくだが安保闘争の息吹を感じられるストーリーの紹介をしよう。
 6月の国会前で安保闘争反対のデモをしていた時に出会った新聞記者の野沢(渡辺文雄)と女子学生の玲子(桑野みゆき)の結婚式が行われていた。野沢の学生時代の友人、先生。そして玲子の友達も呼ばれていた。ところがその場へ今日も安保反対デモに参加していた太田(津川雅彦)が乱入してくる。野沢、玲子、太田の三人の仲間である北見(味岡享)が安保反対のデモに参加するために国会に戻ってから行方不明になっているのに結婚式をしている場合か!と言って来たのだ。更には野沢の学生時代の友人である宅見(速水一郎)が結婚式に呼ばれても居ないのに乱入。彼は10年前の破防法(破壊活動防止法)における学生運動の中心人物だった野沢と共産党員の幹部である中山(吉沢京夫)に対し、10年前の出来事に対して文句を言いにやって来た。
 もはや結婚式どころではなく、その場は10年前の出来事と現在の安保闘争をめぐって激しい激論が繰り広げられる場所に変わってしまったのだが、次々と色々な疑問が明らかになっていき・・・

 映画全体の構成はディスカッションドラマ。議論を交わしている場面が殆どのシーンを占めているのだが、こういう映画はあまり人気がない。しかも
ディスカッションドラマなのに前述してたように出演者の誰もが台詞はカミカミというお粗末さだ。更にこの映画が少し変わっているのが結婚式の場面から違うシーンに移る時に、少しの時間だが暗転して違うシーンに向かう。舞台劇が半ば混ざっている感じになっている。
 しかし、せっかくのお目出たい結婚式が議論の場になるが、俺から見ればかなりお粗末な議論の内容。特に新郎の野沢(渡辺文雄)が昔の女性関係をバラされているのには笑った。しかし、学生運動にしても全くまとまりがなかったり、日本共産党員の幹部が全く人の意見は聞かないし、逆らったら反逆罪の汚名をきせたりしている。しかも、火炎瓶を投げているように暴力革命を良しとしている風潮も今見ればかなり滑稽だ。左翼による内ゲバ争いが非常によくわかる内容だ。
 まあ、観ていて一番腹が立つ奴が中山(吉沢京夫)。学生運動のリーダーであり、共産党員の幹部でもあるのだが責任逃れが酷い。俺の知っている自民党員らしき政治家にも責任逃れや人を騙す卑怯者がいるが、まさにリーダー不適格の見本を見せられたようだ。ちなみにこの中で出てくるキャラクターで一番のお気に入りは全くぶれない太田(津川雅彦)。考え方は間違っていても仲間想いでグタグタ言わないでストレートに想いを語っているのは非常に共感できる。
 しかし、俺の学生時代とは違って俺より20歳から30歳上の学生達の社会を変えるんだという熱い気持ちは本作からも伝わってくる。カミカミの台詞は聞き苦しいかと思いきや、実はリアリティを出す効果があった。政治や議論がメインの映画はアクション映画やサスペンス映画と違って動きがないので、あまり人気がない。
 しかし、台詞カミカミ、言い間違い、すぐに言葉が出ない等のような珍しい映画を観たい人、学生運動の雰囲気をちょっと知りたい人、なぜ共産党は日本では受け容れられないのか知りたい人、若すぎる津川雅彦を見たい人などに今回は日本の夜と霧をお勧め映画として挙げておこう。

日本の夜と霧 [DVD]
大島渚,真鍋理一郎,石堂淑朗
松竹ホームビデオ


監督は前述しているように大島渚戦場のメリークリスマスが世界的に有名ですが、個人的には儀式をお勧めしたい。



 
 

 






 
  
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映画 或る夜の出来事(1934) ロマンチックコメディの傑作

2018年09月05日 | 映画(あ行)
 ロマンチックコメディの名作で誰もが知っている映画となるとローマの休日が真っ先に思い浮かぶだろう。しかし、ローマの休日に影響を与えている映画となると今回紹介する或る夜の出来事が俺の頭にはパッと思い浮かぶ。しかし、この映画はローマの休日だけでなくその後における恋愛映画において大いなる影響を今でも与え続けている傑作だ。ボーイ・ミーツ・ガール 、スクリューボール・コメディといった恋愛映画によく使われる言葉は、この映画から始まる。
 合コン、飲み会、イベント等で初めて顔を合わせた男女が、第一印象が悪くてそのまま何も発展しないことが多々ある。俺もその類で何の成果も出ない合コンを繰り返しては、電話番号もゲットできずにカネだけ無駄に浪費している今日この頃。だいたい俺の良さは出会った一瞬だけではわからない。
 まあ、俺のボヤキはどうでも良いが、本作はまさに偶然にも出会った知らない者同士の男女が、最初は言い合いばかりしながらも次第に仲良くなっていく話。ところがこの男女の2人が、かなり笑わせてくれる。マイアミからニューヨークまで世間知らずのお嬢さんと、少々態度が横柄な新聞記者との珍道中。恋愛映画でもありロードムービーの趣もあったりする。

 色々な名シーン、名台詞、笑いがいっぱいのストーリーを簡単に紹介を
 富豪のお嬢さんであるエリー(クローデット・コルベール)には飛行士であるウェストリー(ジェムソン・トーマス)という名の婚約者がいた。しかし、ウェストリーの女癖の悪さは有名で、エリーの父は彼女を結婚させないためにマイアミ沖の豪華船に監禁していた。父親はエリーを何とか説得しようとするが失敗。エリーは船からダイブして逃亡してしまう。父親はさっそく探偵を雇って娘のエリーを探させる。
 エリーはマイアミからニューヨークに居る婚約者のウェストリーの所まで夜行バスで向かおうとする。そこへ居合わせたのがつい先ほど新聞会社の社長と喧嘩してクビになってしまった失業中の記者ピーター(クラーク・ゲーブル)。2人はいきなりバスの座席の取り合いで喧嘩してしまう。お互いに第一印象が悪くて何かとソリが合わないが、ピーターはエリーが富豪の令嬢だということを知ってしまい、これは大スクープになることを確信し、しばらくエリーと一緒に行動することに決めるのだが、次第にエリーはピーターに好意を寄せてしまう・・・

 世間しらずのお嬢さんの一人旅はやばい。鞄を盗まれたり、切符の買い方がわからなかったりで、もう少し勉強しろよ!なんて思ってしまう。しかし、この映画は名シーンの連発。大雨でバスが止まってしまい、2人は夫婦を装って一つの部屋で寝ることになるが、この時に二人を仕切る毛布をジェリコの壁に例えるが、聖書を少しかじっていたらけっこう笑えるし、これがラストシーンで大いなる効果を発揮する。他にも途中でバスを諦めてヒッチハイクをするシーンがあるが、ピーターが偉そうにヒッチハイクのやり方をエリーに教えるが、全く車が止まらない様子に笑える。ヒッチハイクは男性がするよりも女性にしてもらう方がすぐに車が止まってもらえることがわかる。
 それから出番は少ないがお父さんのキャラクターが良い。富豪とはいえ決してお金が大好きな人間ではなく娘のことを考えた行動が素晴らしい。これはなかなか感動した。他にもこの映画を褒めるところはたくさんあるのだが、とにかく笑い、テンポ、ストーリー展開が洗練されていて、何だか素敵な映画を観たような気分になる。
 笑える映画を観たい人、名監督の熟練のテクニックを見たい人、古典的名作映画の素晴らしさを知りたい人に今回は或る夜の出来事をお勧め映画として挙げておこう。


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クラーク・ゲーブル,クローデット・コルベール,ウォルター・コノリー,ロスコ・カーン,アラン・ヘイル
ファーストトレーディング


 監督はフランク・キャプラ。ハリウッド全盛期を支えた名監督。本当にどの作品も素晴らしい。ひたすら生きる気力が湧いてくる素晴らしき哉、人生!、この世の中にこういう人間は居ないのかと思わせるオペラハット、マスコミ関係の人はぜひ見て欲しい群衆、生き方に悩んでいる人は必見の我が家の楽園、キャプラには珍しいサスペンスの毒薬と老嬢などお勧め多数です。 

 


 


 

 
 

 

 
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映画 キングスマン(2014) ひたすら面白い英国スパイ映画です

2018年09月04日 | 映画(か行)
 イギリスのスパイ映画と言えばジェイムズ・ボンドが活躍する007シリーズが挙げられるが、そんな50年以上も超える化け物シリーズを一瞬にして面白さで抜き去ったのが、今回紹介するキングスマン。007の方は英国政府のお抱えの諜報機関MI6にジェイムズ・ボンドは所属していたが、今回紹介するキングスマンも本拠地は同じく英国でありながら、こちらはどこの国にも属さないスパイ組織だ。
 かつての007シリーズも素っ頓狂なストーリー、小道具など出してきて、大いに楽しめたもののリアリティゼロのスパイに何となく不満を持った人もいた。そんな007シリーズだが最近はリアル路線に変更して、再びスパイ映画の健在を示すことに成功した。
 そして今回紹介するキングスマンはスパイ映画の先輩にあたる007シリーズに敬意を表しながらも、斬新なアクションシーンやビジュアルで観ている我々を大いに楽しませてくれる。先輩がリアル路線に進んでいくのを裏手にとったガジェットの数々。攻防兼用の傘型の銃、手りゅう弾の役割を果たすライター、記憶喪失、麻酔などのモードを自由に変えられる腕時計、猛毒が塗られた刃が出てくる靴など、なかなか楽しい見せ物が出てくるところは先輩のスパイ映画へのオマージュを感じさせる。しかし、先輩シリーズを遥かに面白さで超えるのがアクションシーン。とんでもないバトルで血が吹っ飛ぶかと思いきや、優雅な音楽で次々と頭が爆発していくなど、かなり突き抜けたシーンを見せてくれるのが本作の特徴だ。


 ちょっとお洒落なスパイが活躍するストーリーの紹介を。
 母親はすっかりDVの義父の言いなりで、毎日をチンピラばかり相手にしている自堕落な生活に陥ったしまっていたエグジー(タロン・エガートン)は警察沙汰で捕まってしまう。しかし、そんな彼を保釈したのがスパイ組織キングスマンに属するハリー・ハート(コリン・ファース)。実はハリーは17年前にキングスマンの候補生でエグジーの実の父親に命を助けてもらったことがある。
 ハリーはその恩を忘れておらず、不良少年ではあるがその素質を見込んで、欠員が出たキングスマンの候補生としてエグジーをスカウトする。他の候補生との争いをクリアしていくエグジーだったが、実はその裏で人類滅亡計画がIT企業の大富豪であるヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)の手によって進んでいたのだ・・・

 話は二段構成。エグジー少年がキングスマンに入るための訓練と、ヴァレンタインの野望を阻止するために戦い。けっこう笑えたのが運よく(?)キングスマンに入ることになり、急に服装がオシャレになる場面。任務を遂行する時でもスーツはもちろんのこと、いかした眼鏡までかけて、さすがは英国紳士。間違ってもハリウッドのアクションスターみたいに自らの筋肉を自慢するために裸になったりはしない。
 悪役のサミュエル・L・ジャクソンだが環境問題に熱心というIT企業の大富豪。スマホを世界中の人に配給しまくる素敵なオジサンだ。現実としてIT企業の社長のなかにはロクでも無い奴が多いが、そういう人間を悪役に持ってくることに今の時代を感じさせる。
 さぞかしキングスマンって凄い優秀なスパイの集まりなのかと思っていると、けっこう無様な姿を晒していたりで意外性があり楽しいし、そしてアメリカに対する皮肉だと思うのだが教会で繰り広げられる大バトルはキレキレで非常によくできたシーンを堪能することができる。
 他にもキングスマンの本拠地がロンドンのストリートに面していて、外見は高級紳士服屋さんというのも英国らしさ満載。あんまり小さい子供には見せたくないシーンが多いが、楽しいし笑える。これからはスパイ映画の代表と言えば007でもミッションインポッシブルでもない、と思わせるだけのポテンシャルがある。もうシリーズ化されているだけに人気作ではあるが、とにかく楽しい映画を観たい人には映画キングスマンを今回はお勧めしておこう。


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 監督はイギリス人のマシュー・ボーン。この人のお勧めはキレキレのアクションをここでも見れるキック・アス、ファンタジーのスターダストが良いです。

 

 

 
 
 
 
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