ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

《銀河鉄道パス》だったかも。

2016-12-05 06:22:05 | 日記
「12月3日 晴れ」
日記には、そう記しました。
その通りの、日和だったのです。

先だって、JR「小さな旅ホリデー・パス」を使って、一日行程の〈出歩き〉をした際、
降り立ってみたい無人駅で、降車するのを躊躇しました。
デコボコ道に、足に不安を覚えたからでした。

さあ 今回は、孫がプレゼントしてくれた杖持参です。
リックに収めて持参しましたら、天下に怖いものなしの気分。
安心感がスーパーエネルギーとなった様で、駅の階段の昇降も、タッタッタッと。

もちろん、行先は気分と、お天気、それに電車の込み具合次第で決まります。
この放浪気分が たまらないのです。
〈東北線を仙台まで行って、松島の海を見よう、できたら遊覧船に乗る〉
などと、考えていたのですが、山並みが、
《いらっしゃーい》
と呼んだので、仙台駅から仙山線に乗り込みました。
まずは、山形まで。

セブンイレブンで買った紅鮭おにぎり1個と、塩味のついたゆで卵1個、ヨーグルトで、
窓外を眺めながらの昼食。
タブレットで、窓外に拡がる風景を確かめたり、今度見えてくるものは?
などと考えながらの移動は、まさに遠足気分です。
電車の中は暖かいし、疲れたらウトウトと。

終点・山形までは1時間半ほどの乗車時間です。
そのうち40分ほどは、車両の前部、運転士の斜め後ろに位置する嵌め込みのガラスの
後ろに立って、開けていく景色と二本のレールを眺めていました。

線路がカーブする時は、私も体を斜めに、
トンネルに入る時は「ピー」と警笛、
私も、頭の中で警笛ボタンを押します、
信号機を指差確認、
と、すっかり運転士になっていました。

やがて、同線で最長の面白山トンネル(仙山トンネル)・5361メートルに突入。
「ウッ」とした緊張感。
ちょっとした恐れ・畏れ。

そして、私は『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)のカンパネルラとジョパンニになったのです。
    「あ、あすこ石炭袋だよ。そらの孔(あな)だよ。」
     ……………………………………………………
    『僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。
    きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。
    どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んでいこう。』
    「ああきっと行くよ。ああ、あすこの野原はなんてきれいだろう。
    みんな集まってるねえ。あすこがほんとうの天上なんだ。
    あっ あすこにいるのはぼくのお母さんだよ。」
    カムパネルラは、にわかに窓の遠くに見えるきれいな野原を指して叫びました。
                        (宮沢賢治「銀河鉄道の夜」から)

前方に小さな白っぽい光の穴が見えてきました。
光の穴は、ずんずん大きく明るくなって来ました。
やがて、トンネルを出て面白山高原駅に到着。

自分が、カンパネルラなのか、〈ごまめのばーば〉なのか判別できないまま、
私は駅のホームに立っていました。
「小さな旅ホリデー・パス」などではなく、
「銀河鉄道パス」だったのかもしれません。
                         〈ゴマメのばーば〉
コメント (6)
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