散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

「文献解題」に国際政治学の古典が並ぶ~「平和の代償」に学ぶ(3)

2014年02月02日 | 永井陽之助
「この文献解題は国際関係論や戦略論の基礎的テキストブックを網羅的に紹介することを意図したものではない。」「その意味で、極めて主観的な選択であり、おそらく、私自身の個人的な好みが色濃く反映していることと思う。」

「本書(「平和の代償」)に収められた三論文を書くに当たって直接、参照した書物、及び執筆した後に出版された新しい文献などのなかで、何らかの意味で筆者にとって示唆的であり、また、おそらく読者にとって、参考になるだろう思われるものに限った。」

以上が18頁に渡って書かれた「参考文献」に対する著者の説明だ。確かに解題になっているのだ。おそらく、第1論文及び第2論文に対する批判に反論した最後の第3論文「国家目標としての安全と独立」を読むと、腰を据えて読んで見なければ、と本当の学者ならば考えるだろう。しかし、そのような学者は日本の学界のなかに何人いたのだろうか。お寒い現状なのではないか?

閑話休題。
先の記事で書いた内容の“意味”を更に詳しく知りたければ、ここから文献を辿れば良い。しかし、それも最初の2冊程度でバリヤが高く、引き返さざるを得なくなりそうだ。それはこの本が刊行されてから50年近く経ったいまでも変わりないかもしれない。
 『日本の安保問題の盲点は対米国防衛~「平和の代償」から学ぶ(2) 140110』

参考文献は次の様に、六分野に分かれている。
1 国際関係の基礎的な理解
2 米国の外交政策と自由主義イデオロギーとの関連
3 軍事戦略、ゲームの理論、特に核時代の限定戦争論
4 戦略問題―間接戦略、ゲリラ戦略、毛沢東の戦略、革命戦争等
5 日本の外交政策、国内政治の圧力、日本を巡る米中ソの関係
6 軍備コントロール、軍縮・平和の問題

ここで、1,3,4,6が国際関係、外交・軍備に関する文献だ。2,5はそれにも関係するが、日本の憲法第9条を巡る政治状況の分析に関わる。すると、現在の日米の内政を含めた外交・防衛問題に対する示唆を与える内容を十二分に含んでいると気が付く。

当然ながら、外国語文献であって、日本語に翻訳されていない本も含まれる。
日本語;17冊 翻訳;15冊 外国語(未翻訳);35冊
しかし、その後に翻訳されたものは何冊あるだろうか。些か心許なく感じる。
そこで、その後に翻訳された中から何冊か紹介する(出版側のPR文を含む)。

トーマス・シェリング;2005年ノーベル経済学賞受賞
「紛争の理論」(Strategy of Conflict) 勁草書房 (2008年)
戦略的意思決定のメカニズムを解き明かした,いまも色あせない社会科学の古典。
本書は,ゲーム理論を用いて戦略的意思決定のさまざまな問題を解き明かした古典的名著である。核抑止,限定戦争,奇襲攻撃といったなまなましい国際政治上の問題をつきつめて分析すると同時に,交渉,コミットメント,脅し,約束など,人間社会に普遍的な問題についても,いくつもの重要な知見を提供する。

スタンレー・ホフマン
「国境を超える義務―節度ある国際政治を求めて」 三省堂(1985年)
(Duties beyond Borders: On the Limits and Possibilities of Ethical)

ケネス・ウォルツ
「人間・国家・戦争」 勁草書房 (2013)
ルソー、スミス、マルクス、ミルなどによる戦争原因論を、人間、国家、国際システムの三つに体系化し,深く,鋭く,描き出す。戦争を引き起こすのは政治家か? 国家の体制か? それとも国際システムか?

      
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「徴奉公制度」で元気な高齢... | トップ | 運命を変えられたSTAP細胞た... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

永井陽之助」カテゴリの最新記事