散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

ヘルメスとしての地方議員~票と利益の交換を超えて

2015年03月03日 | 地方自治
地方自治体議員の役割、もう少し厳しく云えば、存在価値は何だろうか。実は簡単なようで、そうでもないのだ。現在の地方自治体は、政治体制として二元代表制と云われている。その一方は「首長」であり、もう一方は「議会」である。これは我が国の議員内閣制よりも米国の大統領と議会との関係と似ている。

首長は個人であると共に機関であって、その地方を代表し、行政機構の長である。これに対して議会は?…議員の集合体であるが、憲法の規定からすれば、議事機関である。事を議(はか)る、即ち、議論することだ。議会で議長が良く、「おはかりします」と云う。これは「議る」であって、「謀る」ではないのだ。

しかし、議論するだけであって、何もしないのかとの疑問が直ぐに涌く。そこで多くの地方議会における議会基本条例は、自らを「意思決定機関」とよぶ。確かに首長からの予算案を受けて、議会は審議し、議決する。形式的には意思決定だ。しかし、本来の組織的意思決定は予算案段階において首長が行っている。実質的に議会の議決は形式的なのだが、そうも云えないので、筆者は「承認型意思決定」とよぶ。単に承認するだけで多数の議員が必要なのか、との疑問は残るが。

予算案以外にも条例の制定には議会での議決が必要だ。しかし、これも圧倒的に多くは「承認型意思決定」なのだ。勿論、議員提案の条例もあり、特に最近は多くなっているが、それでも稀少例だ。

さて、ここまで来ると、議員とは何だ!との疑問を正面から問いたくなる。そこで、多くの議員は「行政のチェック役」と云う。流石に議会基本条例には、チェック役とは記していないだろうが。川崎市では政策立案及び政策提言と規定する。

しかし、ここでも疑問は続く、全国の地方議員を合わせると何人いるだろうか。自治体の数は1,700程度か。一声、平均20名とすれば、3万4千人になる。それだけいて、地方にハコモノが数多く建設され、多くの職員を雇い、財政難に陥るのはどうしてだろうか。

これでは堂々巡りに陥る。
そこで、新しい議員像を打ち立てる必要がでてくるのだ。議員は自らを住民の代表と考えているだろうが、それは単に選挙で選ばれただけのことだ。議員そのものには何も政治的権限はない。権限があるのは、議会なのだ。

そこで、改めて住民から選ばれたことと、権限のある議会の構成員のひとりであることを考えれば、「議会―議員―住民」と表現できる。一方、首長は、「首長―行政職員―住民」になるだろう。議員は議会と住民を結びつける存在なのだ。

ここで表題にある「ヘルメスとしての議員」を提案したい。
ヘルメスはギリシャ神話に出てくるオリュンポス12神のひとりだ。様々に解釈される多様な神として描かれる。ここでは、ゼウスによって神々の使者に任じられ、異なる世界を動き回ったことに倣って、「使者としての議員」とする。

議員は、議会と住民を繋ぐ役割を担う。一方では、代表性を有し、住民の意思を把握して討論によって議会の意思を動かす。議会の意思は議員によって、住民に知らされ、住民もまた、討論の中から議員へ意思表示を行う。

議員の意識としては、議会報告に代表される様に、議会から住民への使者と考えるだろうが、住民と意見交換を行うようになれば、住民から議会への使者となることもある。更に、両者を繰り返し、更に住民を議会へ導き、自らの意見を開示するようにアレンジも必要になる。どちらの使者なのか、混乱するかも知れない。しかし、その混乱状態が実は議員の“本来の姿”と考える。

これまでの議員と住民との関係は「票と利益」との交換であった。勿論、政治は利益を巡る争いの側面が大きいことは確かだ。しかし、それだけでは味気ない。「全体像及び将来像」も必要なのだ。逆にこれだけでは心もとないだろうが。

そこで、「票と利益」を超えて「全体像及び将来像」に接近するアプローチが必要になる。それは住民もまた、考える必要がある。その試みは長い忍耐の道になるだろう。しかし、議会を「討論の広場」として議員だけでなく、住民も参加するように、使者が活動することによってその道が拓かれるのではないか。

今度の統一地方選挙が、その皮切りになることを期待する。

      
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