散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

AIIBを巡る日本の外交姿勢~参加を勧めるイアン・ブレマー

2015年04月12日 | 国際政治
「アジアインフラ投資銀行AIIB」に関して来日中の国際政治学者、イアン・ブレマー氏にNHKがインタビュー(4/10)している。氏の結論は明快で、「中国がその存在感を増しているからこそ、日米ともにAIIBに参加し、内側から影響力を発揮せよ」である。

日本と米国は「組織運営に不透明さ」を理由として参加申請を見送っている。一方、欧州は、英国を皮切りに、仏、独、伊が参加を表明。新興国も含めて、これまでに50を超える国や地域がせきを切ったように参加の意向を示した。これに対して、中国は6月末までにAIIBの設立協定を締結すると表明している。

ブレマー氏は、国際社会の現状をリーダー不在の「Gゼロ」の時代と名付けたことで著名であり、筆者も無料部分だけだが、「フォーリン・アフェアーズ・リポート」で幾つかの論考を読んで、世界的なオピニオンリーダーとして知った。
以下、「日米の孤立化」、「日米共に参加すべき」、「封じ込めよりも共生を」、「米国は同盟国、中国は隣接国」とインタビューは続く。

・AIIBへの参加を巡る各国の動き~米と日は孤立化
「英国の参加決断に米国は驚きと落胆を示した。参加に否定的な姿勢を示した後の参加表明だったからだ。米国は、英国の中国へのすり寄りと糾弾した。米英の特別な関係の中で、米国のこの発言は、これまで聞いたことがない」。

・日本がとるべき道~日米共に参加すべき
「日本は米国と共に参加するのが望ましい。組織の中のほうが、影響力を行使できる。AIIBの融資基準はIMFや世界銀行と同じではない。それ故、入って影響力を行使するのが理にかなう。AIIBでの資金融資の判断は、中国ビジネスに利があるか否かになる。従って、中国だけに運営をさせずに、情報を共有させ、影響力を少しでも行使すべきだ」。

・日本の参加見送り~封じ込めるよりも共生を
「日本政府は、米国も同様だが、“参加見送りの判断は間違い”と認めるべきだ。日米両国は『中国が国際金融システムの中で、米国と同盟国の力を弱めようとしている』との姿勢である。ただ、世界は自分の思うように動くわけではない。中国は世界最大の経済国への道を歩んでおり、中国が米国に“ノー”という力は増していく。米国は中国を“封じ込める”のか、それとも“共生する”のか、選択を迫られている。同盟各国が参加を表明するなかで、最悪の行動だ」。

・けん制し合う米中への日本の姿勢~米国は同盟国、中国は隣接国
「日本は、米国と中国との二者択一を迫られているわけではない。日本がアメリカの同盟国であるのは明らかだ。価値観も近く、政治的にも近い。一方、日本は中国が今後10年で世界最大の経済大国になるという現実を受け止め、その中国が日本の隣国威に存在することを忘れてはいけない」。

なお、筆者は英国のAIIB参加の反応は、英国の対中国政策からすると、不思議ではない様に見える。例えば、英国は1950年に中国を承認している。一方、細谷雄一・慶大教授は「なぜイギリスはAIIBに参加するのか」において、あまり論じられていない点として英国の国内政治問題を挙げている。

それは、来る5/7の総選挙の情勢判断だ。
今、英国ではEU離脱の可能性が生じている。しかし、ビジネスの観点からは致命的なダメージとの批判がある。そこで、キャメロン政権は、他の経済成長に資する説得材料が、選挙のために必要とのことだ。

過去数年間、政府は異常ともいえるほどの熱意で、中国に歩み寄る姿勢を見せてきており、昨年も大訪中団を率いてキャメロンは訪中している。そこで、英国の頼みはほとんど中国しかないとの説だ。選挙戦のための材料として、中国と更に接近するとの考え方になる。

この細谷説は判断が難しい。なぜならば、この参加問題は、外交における選択の問題であって、ブレマーの日米参加が正しければ、英国以下の欧州勢が参加することも当然のこととなる。米国の様に突っ張る理由がないからだ。あとは、日本の様に、米国への配慮だけになる。

日頃、色々な情報に接する機会が多い大学教授の立場では、その整理が大変であろう。従って、卑近の利益に関わる情報が、為政者にとって最重要のものに思える。しかし、何が為政者の決断を左右するのか、実際の処は良く判らないのだ。


     
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