散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

仮説・インテリジェンスの勝利~前回W杯予選・日本~

2014年07月30日 | スポーツ
今回のブラジルW杯の個々の試合に対するコメントは都度記事にした。残るは総括だが、その前に、別の処で書いた前回W杯の総括を再考してからにしようと考えた。それはJFAによる総括が「調整の失敗」で止まっているためだ。

確か前回は調整の成功が予選突破の要因のように言われていたと思う。しかし、調整でサッカーの結果が左右されるのであれば、誰がサッカーを見にくるの?と半畳を入れたくなる。

以下、表題の記事はメルマガ2010/7/3に掲載したものに、筆者が本日、所々にコメントを入れたものだ。

仮説・インテリジェンスの勝利~W杯予選・日本~
1.問題の所在
2.「ノーチョイス」と「インテリジェンスの効果」
3.「リズムの作り方」と「不要となるシュンスケ」
4.「創造的プレーの封じ込め」と「日本人の魂」

1.問題の所在

W杯の日本チームは前評判(不評)を覆す予選突破であった。「決トナ」で直ぐに敗退したが…。それでも良くやった、惜しかったと岡田監督と選手たちを褒め称える雰囲気に満ち溢れ、その評判は蘇った。岡田監督もこの雰囲気に安心してか、「脈々とつながってきている日本人の魂…」と生真面目に反応した。

筆者は高校、大学(一般的な弱いチーム)のサッカー部で活動し、この十数年は地域の少年サッカークラブ(一般的な…)のコーチをつとめ、最近は地域のスポーツクラブで「大人のサッカー」(一般的な…)の仲間入りをして楽しんでいる。
(筆者:この4年間、続けている)。

単に、普通の生活のなかでサッカーの情報に接しているだけである。しかし、時としてその情報をサッカーの枠に閉じこめないで考えるクセがある。今回の表題はそこから発想したもので、客観性?は乏しい。
(筆者:サッカーこそはグロ-バル化していく、スポーツビジネスの真っ只中にいて、世界の様々な活動の影響を受けている)。

2.「ノーチョイス」と「インテリジェンスの効果」

直前の強化試合(5/24)で「日本 0─2 韓国」と完敗した。韓国はヨーロッパ標準に近いチームに仕上り、その中でのパクチソンの得点はプレミアリーグの水準を見せつけた。おそらく、この衝撃が日本を「ノーチョイス」に追い詰めた。次のイングランド戦からW杯に続く“New”日本チームが登場したからだ。

しかし、「ノーチョイス」は逆に戦略「専守防衛」の確定を意味する。情報収集・分析は緻密化、それに基づく戦術構築のインテリジェンス活動、W杯開始前の試合、練習で試し、精度を上げる。
(筆者:今回のブラジル大会では、日本は攻撃を仕掛けるチームとの触れ込み、マスコミ・ファンも同調!)。

更に開始後、現実の敵の試合に対する情報戦は徹底されたはずである。弱小チームが勝ち上がる道はこれしかない。試合毎にチームの守備戦術は磨かれ、結束力も強くなった。ここが他国チームと比べ日本チームの傑出した特徴であったと想像する(実は比べるものはないのだが…)。

なお、インテリジェンス活動の中心はNHKニュースに登場した小野剛氏であろう。氏は98年・フランス大会で岡田監督のもと、コーチを勤めた。その一方で、オランダの方法を取り入れ、育成年代の技術・指導体系を「指導教本」としてまとめた。これも98年度に発行され、日本全国の少年サッカー指導のバイブルになっている(著書「クリエーティブ サッカー・コーチング」(大修館))。

3.「リズムの作り方」と「不要となるシュンスケ」

専守防衛の戦術を具体化し選手に徹底するには、互いに関連する動きでリズムを作ることが必要である。先ずは守備、続いて攻撃への切り替えに関して、お互いが“同一”の意図でプレーを継続することが不可欠である。ここにシュンスケを外す意味が出てくる。創造的なプレーは単純な意図の「遮断」が含まれるからである。簡単なプレーでOKな場合でも、彼はボールを持ちすぎる場面がある。周りの味方は一瞬、彼の意図に?を抱く。リズムが継続しづらくなる。

やれることをやるだけとの状況認識を共有して、初めて日本チームは戦術を確定し、作戦を立て、メンバーも決め、その力を発揮した。だが、少しステップが上がると行き詰まり、パラグアイ戦ではその弱点を露呈した。しかし、作戦は一貫し、PK戦まで遅延できたのは大きな成果、負けなかったという意味では良くやったのである。一方で勝てなかったとの意識は希薄になる。これが脈々とつながる魂か?…。

戦略的にはノーチョイスの切羽詰まった状況で「戦術」を立てる。これは太平洋戦争末期・硫黄島での日本軍の徹底抗戦・玉砕作戦を想到させる。
 「やれる限り抵抗(戦術)→敵攻撃遅延(目標)→秩序維持→集団的力の発揮」
 特に戦略的創造性と選択の判断を必要としない。司令官・栗林中将は名将か?
 硫黄島では戦術的に成功して玉砕、しかし、戦略的には失敗の過程に過ぎず、最後は沖縄戦の悲劇につながる。
(筆者:今回のブラジル大会でも「硫黄島」を想い起こした。しかし、この記事は頭に想い浮かばなかった。)

4.「創造的プレーの封じ込め」と「日本人の魂」

日本は弱小チームとしてインテリジェンス活動に基づいた作戦を徹底した。しかし、守備を中心とした組織的プレーと守備から攻撃への創造性の含んだプレーのトレードオフは避けがたい。今回は前者へ傾けざるを得なかったことで、思い切り良く切り替えることができ、戦術的成功である。しかし、戦略的評価は定まっていない。
(筆者:結局、その場限りの戦術に終わってしまった。4年ごとのW-Cupに合わせて、監督を替え、スタイルも変えるのは良いことか?)

戦術、戦略については新聞、雑誌等でこれからも論じ続けられるであろう。しかし、大切な問題は表面的な議論ではない。情報の入手、分析、なかんずく戦術の策定はそれを実行する具体的メンバーとの相互作用で成り立つ。

バックヤードでのインテリジェンス活動と短期にそれを試合に表現した日本チームの成功のカギは何か?一方、どこに隘路があるのか?一致団結の中で創造的プレーをどう織込むか?それを考えることは我々自身の活動に多くの示唆を与えると思われる。

サッカーだけから言えば、攻撃に向けたプレーのなかに少数であるが創造的なプレーが含まれているはずである。どの世界でも先端的な少数の例こそが大切である。それを取り出し、広げていくこと。これが今後の戦略へ向けた第一歩あり、インテリジェンス活動としてすでに始めているであろう。

その意味で本稿はオランダがブラジルに逆転勝ちした試合、反転してブラジルを圧倒したオランダ、をみながら書いたことも偶然ではないかもしれない。勝ち負けはともかく、日本の試合で面白い…内容を含む試合を見たいものである。

初出:メルマガ 探検!地方自治体へ(第129号 2010/7/3)
 
仮説・インテリジェンスの勝利~前回W杯予選・日本~』