【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「どろろ」:天王洲橋バス停付近の会話

2007-02-03 | ★品93系統(大井競馬場前~目黒駅)

こんなところに、テレビ東京のスタジオがあるとは思わなかったな。
テレビ東京っていえば、「どろろ」をつくったテレビ局よね。
それは、東京放送、6チャンネル。テレビ東京は12チャンネル。
うーん、地方出身者にはよくわからない。
え、痴呆出身者?
あ、差別的発言!微妙にイエローカード!
「どろろ」も昔テレビアニメになったらしいんだけど、微妙な問題が多くてほとんど再放送されていないらしいぜ。
ちょっとそういう考えさせられるところもあるけど、私は手塚治虫の原作を知らなかったから、ただの妖怪退治映画かと思ってた。
俺だって、手塚治虫の「どろろ」なんて知らなかったから、宮崎駿の「トトロ」みたいな映画かと思ってたよ。
となりのど・ろろ、ど・ろ~ろ、てね。
車内で歌うな!
失礼しました。でも、そんな先入観を吹き飛ばすような、重量級の映画だったわね。
まるで、ギリシャ悲劇か、シェークスピア劇みたいな話だもんな。
父と子の血を巡る物語。
父親が天下を取るために妖怪に自分の子どもの肉体を与えてしまい、子どもがその肉体を取り戻していき、最後には父親と対決しなくてはいけなくなる、その葛藤のドラマが、まるで黒沢明の映画みたいなんだよな。
それは誉め過ぎじゃない?
そうか?でも、妖怪退治の場面でも、子捨て問題に係わる妖怪との対決部分はじっくり描いて、その他の妖怪との対決は小気味よくスピーディに処理して、親と子の関係という重いテーマにつなげていく、うまい展開だと思ったけどな。
母親役の原田美枝子とかがちゃんとした演技をしているから黒沢映画みたいとか思っちゃうのかしら。
原作の設定は室町時代の日本てしぼってるんだから、映画もそうすればよかったのにな。
そうかしら。時代設定をあいまいにしたからあそこまで自由なファンタジーにできたんじゃない?
いやいや、室町時代っていうのは戦いに勝つためなら肉親だって犠牲にするっていうのはほんとにあったと思うんだ。妖怪と取引するっていうのはフィクションだとしても、人間には子どもを犠牲にしてしまうような非情な部分ていうのは確かに存在するんだっていうことに説得力を持たせるためには、実在の時代を背景にしたほうがよかったんじゃないか。
でも、実在の時代に設定したら、町の歴史家からあの時代はあんなことはなかったとか風俗考証が間違っているとか、いろいろ言われて窮屈なんじゃないの。
言わせとけばいいんだよ。
「この物語は実在の人物、団体、歴史、その他諸々とはまったく一切関係ありません」とかイクスキューズしてね。
そんなコメントより、俺はラストのコメントがものほしそうで気になったな。
ものほしそう?
「続編つくりたいんだけど、みなさんいかが?」みたいな。
続編つくってもいいんじゃない。
いいけど、こういう表現はちょっと品に欠けるなと俺は思ったわけよ。
でも、原作も未完ぽい感じで終わってるらしいわよ。
そうか。原作に敬意を表しているわけか。たしかに、これで続編ができなかったら、逆に未完の傑作として映画史に残るかもな。
この映画、テレビでは放送するかしら。
どうかな。テレビ局がつくってるんだからな。でも、陰影の深いシーンも多いから、テレビで放送するにしてもしないにしても、映画館で観ることをおすすめするね。
となりのど・ろろ、ど・ろ~ろ。
歌うな!


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