後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔186〕プロイスラー『クラバート』は、大人がじっくり再読したくなるような、子どもだけの文学ではなさそうです。

2018年07月25日 | 図書案内
  今年の9月に13回目の渡独(約一ヶ月間)を計画しています。妻の3冊目の写真集『新・祈りの彫刻 リーメンシュナイダーと同時代の作家たち』が完成し、それを製作するにあたってお世話になったドイツの方々に手渡しする、お礼参りの旅のお供なのです。
 せっかくドイツに行くのならと思って手にしたのがドイツ人作家・プロイスラーの最高傑作と言われている『クラバート』でした。いつものようにブックオフで安価で手に入れていたのですが、翻訳物で383ページの大部な本なのですぐには読み始められませんでした。
 プロイスラーは現代ドイツの代表的児童文学作家で、『小さい水の精』『小さい魔女』『大泥棒ホッツェンプロッツ』3部作、『小さいおばけ』『大力のワーニャ』などで愛読者も多いので読者の皆様にもお馴染みでしょう。
  いろいろ調べてみると、『クラバート』は2008年にはドイツで映画化されて評判になっているし、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』の下地にもなっているということが分かってきました。いま読むしかない、まさに読書のチャンス到来でした。
  まずはどのような本なのか、上手に要約した文章を見つけましたのそれを読んでみてください。

■『クラバート』オトフリート=プロイスラー (著), ヘルベルト=ホルツィング (イラスト), 中村 浩三 (翻訳) 偕成社 1980/5
●アマゾン商品説明より
ヴェンド人の少年3人組で村から村への浮浪生活をしていたクラバートは、ある時から奇妙な夢を見るようになる。「シュヴァルツコルムの水車場に来い。お前の損にはならぬだろう!」という声と止まり木に止まった11羽のカラスの夢。
その声に従って水車場の見習となったクラバートは、昼は水車場の職人として働き、金曜の夜には12羽目のカラスとなって、親方から魔法を習うことになる。
『大どろぼうホッツェンプロッツ』や『小さい魔女』などで知られるオトフリート・プロイスラーが、ドイツとポーランドにまたがるラウジッツ地方の古い伝説を下敷きにして書いた『クラバート』。チェコのアニメ作家カレル・ゼマンによって映画化もされたこの物語は、ドイツ児童文学賞、ヨーロッパ児童文学賞などを受賞し、プロイスラー文学の頂点ともいわれる1冊である。
クラバートが足を踏み入れた水車場は、暗く多くの秘密を抱えた場所だ。新月の夜に現われる大親分の存在や復活祭の決まりごと。毎年の大晦日には仲間のひとりが犠牲となるなど、常に死の影がつきまとう。そこでの3年間の修行を経たクラバートは、「自分自身の意志の力と、ひとりの誠実な友の助力と、ひとりの娘の最後の犠牲をも覚悟した愛とによって」親方との対決を果たすことになるのだ。
宮崎駿が『千と千尋の神隠し』の下地としたという本書は、少年少女向きの軽いファンタジーではない。あらゆる世代を対象にした児童文学の枠を超える1冊である。(小山由絵)

 
 さらに、今回の渡独のために『地球の歩き方』『ベルリンと北ドイツ』を購入しましたら、こんなコラムを見つけました。

■『ベルリンと北ドイツ』(『地球の歩き方』2018~19)
*バウツェン(226ページ) ソルブ人が語り継いだ『クラバート』伝説
 バウツェンのあるラウジッツ地方は『クラバート』というソルプ人伝説で知られている。ドイツの作家プロイスラーによって世界に広められ、魔法を使うクラバートの話は映画『千と千尋の神隠し』に影響を与えられたといわれている。ザクセンでは古くからクロアチアの傭兵を雇っており、彼らの中には出世した者もいた。クロアチア人はクラバートと呼ばれたので、伝説の主人公もクロアチア系だった可能性がある。ちなみにクロアチアの傭兵は赤いスカーフを巻いており、彼らを意味するクラバートがドイツ語でネクタイを意味するクラバッテになったとか。

 本書も読む前に訳者・中村浩三氏の「解説」を読むといいです。
『クラバート』の成功要因に、登場人物の個性が描かれているとしていますが、メモを取りながら読み進めることをお勧めします。外国人の名前はやはりなかなかインプットしづらいものです。四季折々の素晴らしい自然描写はそのとおりだと合点します。そしてこの物語の最大のテーマは「軍国主義への鋭い風刺」ということになるのでしょう。なぜそう言えるのか、本文を読んでいただくしかないようです。
 プロイスラーは訳者に次のように語るのです。
「ひとりの若者が-当初はただの好奇心から、そしてのちにはこの道を選らべば、楽な、けっこうな生活が確保できるという期待から-邪悪な権力と関係をむすび、そのなかに巻きこまれるが、けっきょく自分自身の意志の力と、ひとりの誠実な友の助力と、ひとりの娘の最後の犠牲をも覚悟した愛によって、落とし穴から自分を救うことに成功する物語です。」

  こうした作者のことばを念頭に、もう一度読み味わいたいと思ったのでした。


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