後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔175〕ブリューゲル展から「さようなら原発集会」へと、雪の中を飛び回りました。

2018年03月23日 | 市民運動
  2018年3月21日(春分の日)、東京では季節外れの雪が舞うなか、ブリューゲル展から「さようなら原発集会」へとかけずり回りました。靴は冷たい水分をたっぷり吸い、身体の芯から冷え切ってしまいました。帰宅しても、ぐったりとした疲労感が体中を支配していました。でもけっこう頑張れるなと、もう少しで70歳になる自分を褒めているのでした。

 この日のことを振り返ってみましょう。
 まずは東京都美術館で開かれているブリューゲル展のことから。
 東京都の美術館はいずれも第3水曜日はシルバーデーで無料です。年間で10回ぐらいありますので都美術館のHPを調べてみてください。私は健康維持のためにも元気なうちはなるべく足を運ぼうと考えています。藤田嗣治展、ムンク展、奇想の系譜展などがこれから予定されています。奇想の系譜展は絶対に行こうと思っています。
 65歳以上は無料の日ということで、混雑を警戒していたのですが、今回のブリューゲル展は全く並ばずに入館できました。正午時にもかかわらずです。
 ヨーロッパの美術館でブリューゲルは数多く見てきたのですが、今回の展覧会はブリューゲル一族の絵画展です。新しい切り口の展覧会でした。

■ブリューゲル展  画家一族 150年の系譜(東京都美術館)
 16世紀のフランドル(現在のベルギーにほぼ相当する地域)を代表する画家ピーテル・ブリューゲル1世。聖書の世界や農民の生活、風景などを時に皮肉も交えながら描き、当時から高い評価を得ました。息子のピーテル2世、ヤン1世も父と同じ道を歩みました。長男のピーテル2世は人気の高かった父の作品の忠実な模倣作(コピー)を描き、次男のヤン1世は父の模倣にとどまらず、花など静物を積極的に描き、「花のブリューゲル」などと呼ばれ名声を得ました。さらにヤン1世の息子ヤン2世も、子供の頃から父の工房で絵を学んで画家となり、ヤン2世の息子たちもまた同じ道を歩み、ブリューゲル一族は150年に渡り画家を輩出し続けたのです。(ちなみに農民の生活を多く描き、本展にも出展されるダーフィット・テニールス2世は、ヤン1世の娘の夫です。)本展では、このブリューゲル一族の作品を中心に、16、17世紀のフランドル絵画を紹介します。


 山手線で上野から向かったのは原宿でした。代々木公園でのさようなら原発大集会参加のためです。
原宿の駅を降りても相変わらず雪は降り続いていました。13:35、この悪条件の中どれほどの人が集まっているのかと思ったら、いやあ、メインステージの登壇者が見えないほど傘の花が咲いていました。1万2千人と後で発表がありました。
 現地集合で簡単に見つかると思っていた連れ合いはどこに。徐々に空間を詰めてステージに前進していたら、連れ合いが探してくれました。
大統領を刑務所に送ってしまう韓国からはイ・キョンジャさんが参加してくれました。凄まじいエネルギーに圧倒されました。負けてなかったのが自称映画監督の河合弘之さん、もちろん本職は弁護士です。そして鎌田慧さん、敬愛している「反逆老人」代表です。

 資料として当日の流れと鎌田慧さんのコラムを再録しておきます。
 予定と違ったのはデモ行進が中止になったことです。それほどの雪でした。

■2018.3.21 さようなら原発大集会
 2011年3月の福島原発事故から7年、いまだ事故による5万人を超える被災者が、苦しい避難生活を余儀なくされています。一方、国は被災者への支援の打ち切りを進め、不安の残る故郷へ帰還させようとしています。加えて廃炉費用の拡大、増加する汚染水などの問題が山積し、事故の収束はいまだ見通しが立っていません。そのような中で安倍政権は、原発再稼働や核燃料サイクルなど、原子力推進政策をやめようとしません。私たちは、脱原発社会をめざすため、被災者とともに大きな声を上げます。

・場所:代々木公園(JR 山手線「原宿駅」、地下鉄千代田線「明治神宮前駅」
千代田線「代々木公園駅」、小田急線「代々木八幡駅」)

11:30 出店ブース開店
12:30 開会 野外ステージ
コンサート 歌:ゼロノミックス、 MILK(弥勒)
13:30 発言
主催あいさつ:落合恵子さん(作家・呼びかけ人)
フクシマから: ①片岡輝美さん(子ども脱被ばく裁判の会共同代表)
②あらかぶさん(被曝労働者)
③長谷川克己さん(自主避難者)
東海第二原発再稼働について:村上達也さん(元東海村村長)
韓国から:イ・キョンジャさん(核再処理実験阻止30キロ連帯実行委員長)
フクシマ連帯キャラバンから
脱原発法案について
原発ゼロ自然エネルギー推進連盟 河合弘之さん(事務局長)
立憲民主党エネルギー調査会 
戦争させない9条壊すな!総がかり行動実行委員会から:福山真劫さん(共同代表)
閉会あいさつ:鎌田慧さん(ルポライター・呼びかけ人)
15:10 デモ出発渋谷コース:会場→渋谷駅前→明治通り→神宮通公園解散
原宿コース:会場→原宿駅→表参道→外苑前駅周辺解散
クロージング:日音協+ イットク・フェス
※ステージ上のトークには手話通訳があります。
〇連絡先:さようなら原発1000万人アクション事務局
東京都千代田区神田駿河台3-2-11 連合会館1F 原水禁気付TEL.03-5289-8224
Email : sayonara.nukes@gmail.com http://sayonara-nukes.org/(「さようなら原発」で検索)


 ◆原発ゼロ法案 本音のコラム   鎌田 慧(ルポライター)

「私や妻が関係していたとなれば首相や国会議員も辞める」。言うや良
し。それだけの決意なら、国会質問であれこれ言い逃れせず、率直に妻の
証人喚問に応じて疑惑を払拭(ふっしょく)させればいいのに。改竄(か
いざん)、消去ほしいまま。あってもないといい、なくてもあるという、
森友国有地売却疑惑。国会中継を眺めて、怒り心頭。
 安倍首相特有の大言壮語のもう一つ。記憶に生々しい原発事故の「アン
ダーコントロール」。
 未だ(いまだ)メルトダウンした燃料棒は行方不明。放射性汚染水は一
向に止まらない。避難指示区域は解除されず解除された地域でさえ帰るひ
と少なく故郷の山河は荒れ果てた。
 17日、福島県楢葉町の天神岬スポーツ公園。「原発のない福島を!県民
大集合」で浪江町の避難者、三瓶(さんぺい)晴江さんが語って会場の涙
を誘った。「一家離散して家庭の団欒(だんらん)はなく、わが家はネズ
ミやサルやイノシシに蹂躙(じゅうりん)され立ち腐れたまま」
 住民を泣かせてなお安倍内閣は「原発は国のベースロード電源」と再稼
働に猛進。「被害は軽微」と言い、戦争を続行した、軍人出身の東条内閣
のような冷酷無惨(むざん)。原発の恐怖と欺瞞(ぎまん)の社会から脱
却するための市民による「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」ができあ
がった。
 21日午後1時、東京・代々木公園で開かれる「さようなら原発全国集会」
会場で訴えられる。
(3月20日東京新聞朝刊27面より)


 最後に、この日の反原発反戦集会をリアルに伝える報告が「たんぽぽ舎メルマガ」に掲載されました。マスコミではけして報道されないこころのこもった現地報告です。転載させてください。

┏┓ 
┗■3.悪天候で厳寒の中「さよなら原発」だけでなく
 | 「さよならアベ政権」を求める12000名の市民が集まりました
 | 3/21さよなら原発全国集会(東京・代々木公園)
 └──── 中村由博 (メールマガジン読者)

 3月21日(水)は、東京は朝からミゾレ混じりの氷雨そして雪の悪天候にもかか
わらず、反原発の強い意志を持った沢山の市民が全国から代々木公園に集まりま
した。
 集結した人たちは冷たい雨に打たれ震えながらも最後までステージからのスピー
チを聞き入っていました。
 アベの悪政はさらに酷くなって社会情勢は時々刻々と変遷していますが、人と
して未来永劫の良識・真理といったものを集会から学び取れました。

 集会冒頭に主催者挨拶で呼びかけ人の落合恵子さんは『何としてでもどんな手
を使ってもアベを倒そう!壊され奪われつつの民主主義を再構築しよう!愛国心
とは愛する政治家があってこそ愛する国となる。フクシマの被災・森友事件を作
ったのは誰か?抗い続けよう!これが自分の生き方!原発なくせ!米軍基地なく
せ!改憲するな!国難はお前(アベ)だ!』と鋭く語りました。

 福島県郡山市から静岡県に自主避難している長谷川克己さんは『政府及び行政
の理不尽なことを許せない。妻と5歳の子を連れて静岡に避難した翌年に子供が
生まれた。原発事故以前は真剣に生きることを考えなかったが、今は違う!
 そして自分の子は自分で守ると決断した。自主避難者が後ろ指をさされること
ではない!避難する途中に自宅から100m離れている妻の実家に立ち寄ったとき5
歳の息子が「じいじ、ばあばさよなら」と何度も何度も繰り返し言った。この理
不尽は絶対に許せない!』と幼い子を持つ自主避難者の父親が無責任で理不尽な
行政に対して怒り心頭で発した。

 東海村元村長の村上達也さんは『私は原発を推進した村長だったが、今は脱原
発を表明した!』と強く述べた。

 弁護士であり原発ゼロ自然エネルギー推進連盟の河合弘之さんは『原発はゼロ!
再稼働絶対阻止!世界は自然エネルギーの潮流である。自然エネルギーは現在安
くなったので、あの日経新聞さえも「自然エネルギーをやらないとダメ」と書き
出した。
 我々は絶対に勝つ!原発をゼロにする。自然エネルギーを呼び込む。目の前の
ことで一喜一憂していてはダメ。我々は絶対に勝つ!』と原発ゼロを大きく強く
訴えた。

 閉会の挨拶はルポライターで呼びかけ人の鎌田慧さんが『会場の熱気で雪が解
けた。原発事故から8年目、私たちは原発ゼロで7年間闘った!原発ゼロ法案は
与野党合わせた原発ゼロだ。今日の情熱と希望で脱原発を実現させよう!アベは
「アンダーコントロールしている」と云っているが全くのウソだ!原発は存在で
きない。元首相の小泉純一郎や細川護煕までも原発ゼロと云っている。アベは無
知で無謀で無責任だ!アベはもうヤメロ!アベを倒して原発ヤメロ!六ヶ所村に
ある核燃料サイクル・核再処理工場は24年も稼働していない。この再処理工場を
廃棄しよう!東海原発そして福島第二原発も廃棄しよう。
 私たちは原発を許す政府を許さない!私たちは原発廃炉宣言をしていく。今後
は脱原発自治体・都市を全国に増やしていこう!』と力強く宣言して集会を締め
くくった。

 『予定されていたデモは悪天候のため中止です!』のアナウンスに傘を差した
1万2000名の参加者は納得のいかない様子だった。
 アベ自公ゴロツキの極悪非道の一味たちが政権をとってからというものは次か
ら次へととんでもないことを起こしてきました。
 秘密保護法・戦争法・共謀罪の強行採決や憲法改悪の策動・沖縄米軍新基地推
進・森友アッキード事件・カケ事件…数えあげたらきりがありません!
 そして公文書を隠蔽及び改竄させています。
 また7年前に東京電力福島第一原発の爆発事故が起きたのにも関わらず、原発
を推進しているとは全く○○の名にふさわしいのがアベ・シンゾーです。

 悪天候で厳寒の中でも「さよなら原発」だけでなくアベ内閣退陣、「さよなら
アベ政権」を求める12000名の市民が集まりました。
 アベ政治を絶対に許さない市民たちです。
 とても勇気づけられ力を得ました。
 この力を日々のいろいろな活動に活かしていきたい。
 まずはこの集会の様子を家族・友人・知人そして近所の人に報告することにし
ます。


〔174〕谷川雁の物語論・子ども論・教育論を凝縮した『<感動の体系>をめぐって』が出版されました!

2018年03月20日 | 図書案内
 ラボ言語教育総合研究所事務局長をされていた矢部顕さんからメールが入ったのは昨年の秋のことでした。松本輝夫さんの編集する『<感動の体系>をめぐって』(谷川雁 ラボ草創期の言霊)が出版されるというお知らせでした。私は早速予約購読希望ということで、松本さんにメールしました。
 なんというタイミングでしょう。丁度私が読んでみたい本だったのです。
 私はラボ言語教育総合研究所(言語総研)に所員としてかかわって12年がたちました。ここでの私が志向している研究は、ラボの中心的活動の「テーマ活動」の位置づけや方法、表現について演劇教育の立場から提言するということです。そこで、そもそもテーマ活動とは何か、ラボの創始者の一人、谷川雁がどう考えていたのかをはっきりさせたいと思っていたのです。ところがそれをまとめて読むことがなかなかできませんでした。そうした本が出版されていなかったのです。まさかラボ教育センターの本部に赴いて、資料探しをするわけにも行きません。そこにこの本の出版が知らされたのでした。
 昨年の暮れ、私の元にこの本が届きました。読み応えある大部な本でした。
 本の概要は次のとおりです。

■『〈感動の体系〉をめぐって』谷川雁 ラボ草創期の言霊
松本輝夫 編
本文344頁
2018年1月発売
定価3,780円(税込み)
目次
第一部 珊瑚礁のように育つもの――論考、エッセイ、発言・講話録
第二部 [講演記録]人間は「物語的存在」
    ――『ロミオとジュリエット』『国生み』、狂言をめぐって
第三部 [参考資料等]言語(学)を手がかりに世界に新たな挑戦
     鈴木孝夫エッセイ、ラボ・テープ一覧、ラボ用語解説、略年譜


 松本輝夫さんは10年ほど前にラボ教育センター会長を辞した方です。私を言語総研に誘ってくださった方でもあります。その顛末については拙著『実践的演劇教育論-ことばと心の受け渡し』に詳述されています。
 彼はラボを退社してから『谷川雁-永久工作者の言霊』を出版しました。雁の「サークル村」での活動は有名ですが、ラボ時代の思想や運動についてはあまり知られていません。雁の一生涯のトータルな思想や運動を俯瞰できる本を今まで読んだことはありません。そこを書ききった本です。松本さんは学生時代、サークル村の雁を訪ね、ラボを興した雁を追って入社します。松本さんにしか書けない本です。名著だと思います。
 少し詳しく目次を紹介しましょう。


■『谷川雁 永久工作者の言霊』松本 輝夫 平凡社新書 2014/05 264ページ 880円+税
*60年代前半、多くの若者や知識人に多大な影響を与えた谷川雁。思想家や詩人といった枠に収まりきらない彼の思想と生涯を描く。
●目次
はじめに──謎と可能性のかたまり
「おれたちはあくまでオルグさ」/筑豊での雁との出会い
「沈黙の一五年」=ラボ時代は雁の全盛期であった/「下山の時代」の先駆者
第一章 「種子を蒔く事には魂の愉悦がある」──幼時から戦争期の学生時代
母親体験における消えない瑕/『ピーター・パン』との出会い/谷川四兄弟
五高時代の作文「蒔く人・刈る人」をめぐって/「侮戦」「蔑戦」で潜りぬけた戦争期
八か月の兵隊生活
第二章 「血のしたたるようなほんとの生活をしたい」──詩作、日本共産党、青年時代
雲への偏愛とアジアへの親近/井上光晴への弔辞と『ポアン・ホワンけのくもたち』
日本共産党入党とその後の試練/阿蘇の結核病棟での「反省なき日々」
『サークル村』発起の下地/思想的飛躍/長男の早すぎた死と子どもの主題化
「東京へゆくな ふるさとを創れ」/雁にとっての原点/日本の村へのオマージュ
「日本浪曼派の戦後版」/潜在するエネルギーの井戸、思想の乳房
第三章 「ここに酒あり」──「サークル村」「大正行動隊」、筑豊時代
森崎和江との「内的友情」と筑豊入り/『サークル村』創刊/「さらに深く集団の意味を」
「虎を描いて猫に堕した」/「サークル村」から「大正行動隊」への転進
「乗りこえられた前衛」──日本共産党との決別/吉本隆明との連携と共同
大正行動隊内で起こった強姦・殺人事件/大正鉱業退職者同盟の結成
泥沼的争議終結から「同盟村」づくりへ/森崎和江との豊饒な離別
「革命の現在的不能性」をばねに/「立体的な」脱筑豊をめぐって/「ここに酒あり」
第四章 「ことばがこどもの未来をつくる」──ラボ(=テック)時代の一五年
テックへの入社/ラボ・パーティの発起/外国語を媒介にする精神活動を
「第三の女」としてのラボ・テューター/ラボ・パーティは「サークル村」の継承でもある
ラボ活動の骨格形成に献身/ラボは「ストレンジ・カンパニー」/物語へ、ことばの本質へ
「ことばを教える」教育からの自己脱皮/「子ども向き」は子どもへの冒涜
生命の源へ/子どもの本質は「童神」/ラボが「成った」時
第五章 「がらんどうがあった」──ラボに残した物語作品
「ああ、女の子。これはもう、あんまりなことだ」/トムとベッキイにとっての「鍾乳洞のやみ」
日本神話における天地の始まり/格別な吸引力/「物語としての日本神話」にこだわる
第二話「スサノオ」の出だしの謎/物語的存在としての長男空也/原典にない独自の彩り
「非国家的な交流の風」/物語におけるよみがえりの構造/人間は物語的存在である
第六章 「数えきれぬ私の追放歴」の最終篇──なぜラボ退社となったのか
路線上の対立が表面化/経営者谷川雁の過剰と不足/労組敵視政策は何に由来したのか
平岡正明と吉本隆明、それぞれの「支援」の流儀/吉本隆明の谷川雁批判をめぐって
雁がラボ時代を封印した理由
第七章 「源流としての宮沢賢治」──十代の会、ものがたり文化の会
ラボ退社後の軌跡/雁によるテック批判/「ものがたり文化の会」=「賢治への旅」の構え/独創的な高度成長期批判/試みの核心/「賢治からはじまったものがある」
「原点」と「源流」としての縄文
終章 「下山の時代」にこだまする言霊
「あざやかな精神下降」の先達・柳田国男/吉本隆明との対照性/晩年の「妄想」「白昼夢」
「下山の時代」の進展
あとがき


 雁のラボでの思想と行動を考えるにはまず『谷川雁 永久工作者の言霊』でそのアウトラインをつかみ、『〈感動の体系〉をめぐって』で原典に当たるのがいいかもしれません。
『〈感動の体系〉をめぐって』は雁の論考、エッセイ、発言・講話録、講演記録などで構成されているのですが、巻末にある松本さんの解題や解説が周到で秀逸なので、まずはこれに目を通してから本文に入ることをお勧めします。

 ところで、先日、『〈感動の体系〉をめぐって』の出版記念会が東京神田で開かれました。私は呼びかけ人の1人に加えていただき、スピーチもさせていただきました。魅力的な雁の肉声も聴かせていただいたり、錚々たるメンバーのスピーチを楽しみました。テューターの佐藤公子さん、五十嵐伸子さんとの再会、あきあかねさん(ペンネーム、谷川雁研究会『雲よ』執筆者)との出会いなど、嬉しいことも多々ありました。残念だったのは矢部顕さんが足の不調で上京できなかったことです。
 いずれにしても、この本の出版は、テーマ活動の物語論、子ども論、教育論を考える上で貴重なものでした。テーマ活動の表現をめぐっては、さらに、竹内敏晴や鶴見俊輔に登場願う必要があるということが見えてきました。

 そうそう、7月近刊のお知らせです。『地域演劇教育論-ことばと心の受け渡し』(仮、晩成書房)巻頭言として松本輝夫さん、矢部顕さんに原稿をお願いしました。そのうちに詳しくお知らせします。


■『<感動の体系>をめぐって一谷川雁 ラボ草創期の言霊』
        出版祝賀・記念会へのご案内
          2018年2月吉日 主催:谷川雁研究会(代表:松本輝夫)
                       賛同呼びかけ人一同(2枚目参照)
 全国的に厳寒の新年となっていますが、いかがお過ごしでしょうか。
 さて、この度、松本輝夫編の標記大著がアーツアンドクラフツより刊行となりました。
かって詩人、思想家、論客として吉本隆明に勝るとも劣らない存在として屹立していた谷
川雁。しかもほんの数年前まではその雁の「沈黙時代」とか「謎の空白期」とみなされて
いたテック時代(=ラボ草創期)の言霊のほぼ全てをおさめた一巻だけに刊行後まだわず
か1か月ですが、すでに数多の反響を呼び起こしています。
 谷川雁や吉本、村上一郎、あるいは谷川健一、上野英信、(2月10日逝去の)石牟礼道子、森崎和江、さらには「サークル村」や大正炭鉱闘争に関心を寄せる研究者や読書家からは「テック時代の雁がこんなにも真剣かつ雄弁に物を書き語っていたとは驚き。しかも難解が売りだった雁にしては至って読みやすく面白いので感服も」とか「全てがラボ関係者相手の言霊だが、よく読むと<解説>にも書かれているようにラボ以外の人間も納得や発見に導かれるさすが雁!という表現が多々」といった感想を沢山いただいています。
 一方ラボ・デューターの皆さん(元の方も含めて)からは「これはもう何よりの宝物」
とか「私の新たなバイブル」、「ラボのベースを築いた人とは聞いていたが、こんなにも深くて魅力的なことばでラボを語っていたとは素敵すぎて嬉しいかぎり」といった声から「ラボの全デューターに読んでほしい本」といったいささか過激な提案(?)まで夥しい数の反応が寄せられています。
 いずれにせよ、「これまで埋もれていた雁さんのことばを発掘し、集め、一巻にまとめて読めるようにした大仕事に感謝」し、喜んでくださる内容で、それなりの苦労も重ねましたが、今は編者冥利に尽きる日々となっている次第です。
 また雁が、なぜ吉本とは「別な道」を選んで子ども達との共同活動に打ち込んでいった
のか-その謎と活動軌跡が解き明かされる一巻でもあると改めて確信しているところです。
 つきましては様々な意味でそれこそ<感動の体系>でもある本書発刊を共に喜び、祝う
出版記念会を下記の通り開催いたします。ふるってご参集ください。お待ちしています。

                  記
・とき:2018年3月17日(土)午後2時半~6時(午後2時開場)
・ところ:「サロンド冨山房Folio」(出版社冨山房地下1階)千代田区神田神保町
・プログラム:天下無双の言語学者にして雁に匹敵する思想家(先生の言い方では
    ホモ・フィロソフィクス)でもある鈴木孝夫先生による「ラボ草創期における
    谷川雁さんと私」そして「私がラボを応援してきた一番の理由」をテーマに
    した記念大講演(90分前後)が中心プログラムとなります。ただし「私がその
    日まで生きていればね」という冗談半分の「条件つき」ですが、これに対して
    は「万が一の場合は鈴木孝夫を偲ぶ会の第一弾も兼ねるようにしますから
    ご心配なく」と応えています。かってラボの全国を縦断的に回って行なった
    鈴木先生と松木による掛け合い漫才型のやりとりも再現されることになるで
    しょう。他にも<感動の体系>にふさわしい多彩なプログラムを検討中です。

【賛同呼びかけ人】(五十音順)
石川俊文(読書会サークル「鷹揚の会」世話人)
内田聖子(作家。『谷川雁のめがね』著者。元ラボ・デューター)
河谷史夫(朝日新聞元編集委員、論説委員。名うての辛口書評家でもあります)
神山典士(ノンフィクション作家。佐村河内事件スクープでは大宅壮一ノンフィクション
     賞受賞。元ラボ会員)
坂口博(火野葦平資料館館長。筑豊・川筋読書会世話人)
坂本喜杏(冨山房インターナショナル社長。谷川健一全集全24巻や『鈴木孝夫の世界』     全4巻も刊行)
佐藤公子(ラボ・デューター。二十代でパーティ開設以来一貫して<旬>の状態を保ちな
     がらラボの王道を歩み続けて今春が50周年というラボの女神的存在)
設楽清嗣(労働運動家。東京管理職ユニオン創設者。かってテック労組が大変世話になっ
     た恩人でもあります)
正津勉(詩人。詩集をはじめ『風を踏む』等著書多数。谷川雁には昔から多大の関心)
得丸久文(独自の言語学探求。昨秋大著『道元を読み解く』を冨山房インターより刊行)
仁衡琢磨(つくば市でIT企業経営。雁研ならびに鈴木孝夫研究会発起人。元ラボ会員)
林浩司(ラボ教育センター常務取締役)
福田三津夫(長年『演劇と教育』誌編集代表。元教員。ラボ言語教育総合研究所研究員)
米谷匡史(東京外国語大学教員。社会思想史・日本思想史専攻。『谷川雁セレクション』共編者)


  はてさて、出版懸念会からしばらくして、主催者の松本輝夫さんから会の報告が届きました。さすがに、当日の様子がよくわかるので転載させていただきます。


■3・17『感動の体系』出版記念会は新たな感動のうねりと共に無事終了
送信日時:2018年03月24日 19:47:44(+0900)
雁研発第192号:体調不安を抱えながらも敢えて出席してくれた
    鈴木孝夫先生の記念講演をはじめ多彩な人士による
   『<感動の体系>をめぐって--谷川雁 ラボ草創期の言霊』
    刊行を共に喜び、高く評価する熱い祝辞の数々に改めて
    本書発刊の大役を全うできた「感動」と次への励ましを
    果てしなく反芻する一日となりました。出席して下さった
    全ての皆さんに心から感謝申し上げます。
      
         2018年3月24日 雁研代表:松本輝夫

 本日から丁度一週間前の17日(土)、東京・神田神保町で開催された
標記出版記念会はお蔭様で大盛況裏に、かつ「感動の体系」そのものの
現前として実行でき、無事終了いたしました。
 実はその後も雁研がらみ、あるいは本書出版がらみの所用も多々あり、
関西にも寄って、一昨日(22日)大分市に戻ったばかりにつき、
報告が少々遅れた次第です。書くべきこと、書きたいことが溢れるほど
あって悩ましいのですが、可能な限り簡潔に箇条書きで記すことに
いたしましょう。
 1)まずは開会冒頭の司会役仁衡琢磨君の挨拶からして、彼と小生との
長い共同関係をめぐってよく考えられた上でのまことに凛々しく気合の
こもった語りで、会の空気を始めから熱く内容豊かな色調に彩ってくれま
した。彼はつくば市に拠点を置くIT企業経営者として超々多忙な身にも
かかわらず、小生が展開するほぼ全ての活動に同伴し、支えてくれる片腕
どころか両腕のような存在であり続けているのですが、彼が中二の時
(ということは30年以上前!)小生がラボ国際交流の引率者として米国
インディアナ州に赴いた際、その団に彼が交じってくれていた僥倖を改めて
かみしめた次第でもあります。(このようにのっけから雁の言う「感動の
体系」が発露する会だったということです)
 2)編者・松本の基調挨拶が15分ほどあったが、これは割愛。
 3)版元であるアーツアンドクラフツの小島雄社長の挨拶。この元々雁好き
でもある社長との出会いと誼を通じることがなければ、今回の出版は難し
かったかもしれません。併せてこのような大著を今どき出すことに伴う困難
を真率に語ってクリアすべきぎりぎりの「条件」を事前に伝えてくれたこと
が結果として「共同の運動としての出版」に結びついたのですから、この
版元を選んだのは大正解であり、佳いことづくめだったと言えるでしょう。
さらに言えば、この縁を結んでくれたのは実はラボ・テューターであり、
雁研発足時からの熱心な会員でもある忰田麻理子さんだということ。
この得難い人的連鎖もまた「感動の体系」と言えるでしょう。
なお小島社長は挨拶の中で、「次は谷川雁の全詩集、若い時の俳句や本人は
詞集と呼んでいる作品も含めて出したいと考えているので、松本さん、この場
にきておられる米谷さんの協力も得たい」とのこと。もちろん二人とも即座に
快諾となったのはいうまでもありません。
 4)ラボ・テューターを代表するかたちでの佐藤公子さんのスピーチは
特筆すべきものでした。公子さんは翌18日が佐藤パーティ50周年記念発表会
で、その発表等に向けて17日も子どもたちが集って活動しているところを
抜け出すようにして参加してくれたのですが、「本書を読んで一番驚き、かつ
感動したのは谷川雁さんはテューターでもないのに、何故こんなにも子どもたち
の心身の動きがよくわかり、全身全霊で寄り添えるような文章が書けるのか、
ということ。だから読んでいていちいちことばが胸に染みてきて、私が50年間
ラボをそれなりに頑張ってやってこれたことの理由と意味もよく納得することが
できた。テューターが書こうとしても書けない文章でテューターが一番言いたい
こと、思っていること、願っていることをものすごい説得力で表現している大著
一巻。なので、感動のあまり正月三が日だったのに、こんな本を出してくれた
松本さんに直接その気持ちを伝えたくて電話までした次第」と話してくれました。
50年もの歴史を刻んでなお全国でも指折りのパーティ規模をキープしつつ、
超異年齢の数多のラボっ子と共同して、佐藤パーティならではのテーマ活動を
自在に楽しみながら創りつづけているラボの女神的存在ともいうべき公子さんから
ここまで高評価されて、今は天界に遊ぶ雁の御霊もきっと大喜びしていること
でしょう。
 5)鈴木先生の記念講演。本当のことを言えば、先生は三年ほど前に患った大病
の再発が疑われるこの頃で、顔色も決してよくないのですが、「他ならぬ松本
さんの大事」であり、また「どうせもう満91歳にもなっているのだから充分
生きすぎと周りでも言われるので、仮に講演中に倒れてもそれもまた本望と割り
切って」、相当な無理をして参加してくださったのですが、1時間余、例に
よって立ったままの講演はさすがでしたね。
いつもの切れ味はやや乏しかったかもしれませんが、ともあれ鈴木先生が約束
通り姿をみせてくれ、地球と人類の現状に深い懸念を示すとともにそうであれば
こそ本来欧米とは異なる文化・文明をもつ日本が果たすべき役割が大なることを
力説し、そうした文脈において谷川雁が子どもたち、テューターから学びながら
英語優先主義やネイティブ英語講師志向は斥けつつ母語である日本語をとことん
大事にする外国語教育、母性豊かなテューター集団づくりに賭けていった大志と
言語哲学は今からみても高く評価できるとの講演でした。
なお先生は午後6時半からの二次会にも参加、生ビールで乾杯も共にされたくらい
ですから、まだまだ講演中に倒れてそのまま…という望みがかなうことは
なさそうですね。
 6)休憩後はまず雁の肉声を聴くということで、本書第二部収録の「ラボ・テープ
になぜ狂言か」講演記録CDを流したのですが、会場のデッキとの相性が悪かった
のか音声があまりよく聞き取れなかったので、途中でこれは取りやめに。
それでも「雁さんの肉声が少しでも聴けてよかった」との声を少なからずいただいて、
安堵した成り行きでもあります。
 7)この後は、林浩司(ラボ教育センター常務)、米谷匡史(東京外国語大学教員。
『谷川雁セレクション』共編者)、正津勉(詩人)、福田三津夫(演劇教育のプロ
フェッショナル。ラボ言語教育総合研究所研究員)、張厚泉(上海・東華大学教員)、
森史郎(松本の浦和高校・高一時からの旧友)さん等からの祝辞をいただき、
それぞれに有難く嬉しいスピーチだったのですが、割愛させていただくことにして、
今回初めて会うことができ、強烈な印象を残してくれたお二人のことだけを特記して
おきましょう。
 一人は、前田速夫さん。新潮社で定年まで有能な編集者として活躍し、車谷長吉を
はじめ多くの作家を世に送り出したことで知られる方ですが、一方で民俗学への関心
やみがたく、定年退社とほぼ同時に谷川健一に弟子入りしたというユニークな経歴の
持ち主でもあります。冨山房の坂本社長によれば、谷川健一に従って宮古島に赴いた
際、何度か氏が一緒だったとも。で、今回の出版記念会については民俗学に関わる
著書をアーツアンドクラフツから刊行している関係で知ることになり、雁にも当然関心
を抱いているので参加したとのこと。「できれば谷川4兄弟についての本も書いて
みたい」とも。
 また近年の沖縄発季刊誌『脈』特集の充実ぶりには編集者としても目を見張っていた
ところ、その「本土側」中心人物の一人が松本という男だとわかっていたので、ぜひ
会ってみたかったとのことでもあります。氏は『脈』86号、92号に執筆者として
名を連ねてもいます。小生としても以前から目をつけていた人物でもあるので、今後
共同活動が始まる可能性もあるでしょう。これまた雁の「工作」力が結んでくれた
新たな縁ですね。
 もう一人は韓国人研究者である申知瑛(シンチヨン)さん。米谷さんから紹介うけて
電話で参加申込みしてきた方で、韓国の研究空間<スユ+ノモ>という研究者
共同体みたいな興味深い「空間」の研究員であるとともに日本では今は津田塾大学等
の非常勤講師を務めているが、驚くべきは森崎和江作品の韓国語訳をすでに済ませて
(作品名は聞かず)現在は谷川雁の文章の韓国語訳に取り組んでいるとの話。
どの文章の翻訳がどのくらい進んでいるか、までは聞く時間がとれませんでしたが、
ともあれ、どうみてもまだ若い韓国人女性が、何度も「谷川雁」と呼びすてで親しみ
込めて語る凛々し気な姿につい聞き惚れ、見とれてしまいましたね。
 次の上京時には米谷さんと一緒にぜひ会って、ゆっくり話を聞いてみたいとも思った
次第です。
 さて、祝辞の最後にふったのが、ラボ・テューターの五十嵐伸子さん。この方は昨秋
事前予約の受付を開始するや、すぐになんと10冊分4万円を振り込んでくれた方です
が、茶道の先生でもあり昔から着物姿が美しい人として我が脳裏に刻まれてきた方でも
あります。で、今回参加申込みをうけるや、「祝賀会でもあるのでできれば着物姿で」
と依頼すると本当にその姿で現れてくれたのでした。その上で、「私は佐藤さんの50年
には及ばないが、40年はテューターの道を歩んできたので雁さんの話をラボで直接
聞いた最後の世代。今回の本を読んで雁さんの溌剌とした姿と語りが蘇ってきて嬉し
かったし、改めて励ましもうけたので、雁さんを知らない比較的若い世代のテューター
に読んでもらおうと思って声をかけたら皆快く買ってくれた。昨秋、すぐに10冊
求めたのは、私が声をかければ皆協力してくれると楽観できたからだが、松本さん
の活動を是非応援したいと思ったからでもある。だから今日は私がもっている着物
の中でも一番上等な着物を選んできた」との何とも涙がでるほどに有難い祝辞。
 ーー長くなりましたが、かくして出版記念会は、まさしく「感動の体系」にふさわしい
感動のうねりを巻き起こしながら閉会となった次第です。
 改めて参加してくださった全ての皆さんに御礼申し上げます。
                       以上

 追記:本当はこの後、出版記念会翌日からのことも書く予定だったのですが、
これだけでも長文すぎるので、号を改めて書くことにいたしましょう。
なお出版記念会には下記の方からお祝いメッセージをいただきました。
併せて感謝申し上げます。
(敬称略)
坂口博(筑豊・川筋読書会世話人)、松岡素万子(ラボ・テューター)、田尻裕子
(ラボ・テューター)、間瀬えりか(ラボ・テューター)




〔173〕原発事故から7年、フクシマ3.11行動は東電&原電本店抗議に参加しました!

2018年03月13日 | 市民運動
 東日本大震災からもう7年が過ぎたのですね。でも原発の廃炉は遅々として進まず、未だ自宅に帰れない福島の住民は7万人を超えています。国民の5,6割は原発再稼働反対が明らかなのに、安倍政権は着々と原発を再稼働して、輸出さえ企んでいます。国民の意思を無視して、資本家や企業のために「奉仕」するアベ政治は本当に許せません。集団的自衛権を認めて、戦争への道を突っ走り、自国やアメリカの軍需産業に寄り添う構図とぴったり重なります。
 久しぶりに東京電力本店前行動に連れ合いと参加しました。清瀬からはTさんとKさんの姿が見えていました。春が近いといっても道路に2,3時間立ち尽くすということでダウンを着込み冬場と変わらぬいでたちです。
 まずはJR新橋駅から徒歩5分の東電前に1時半ジャストに到着しました。国会前とは違い狭い道路に参加者がぎっしりです。なるべく本社前に移動したのですが、スピーカーを直接見ることはできませんでした。ただビルのガラスに映される彼らの後ろ姿が若干見えるだけです。
 主催者発表の参加者900人とは控えめに見ての数値です。様々な地域からの参加者が多いとわかるのは林立した幟がそれを示しています。東海第2原発の再稼働反対の意思表示をするため茨城のメンバーがバスで大挙して駆けつけました。頭が下がります。大きな日の丸も1つ、よく見かける反原発の保守系の団体なのでしょう。

 集会の概要を下掲のチラシで見てもらいましょう。

■事故から7年-2018年3月11日(日) 追悼と抗議集会〔チラシより〕
  東電&原電本店抗議に参加して東海第2原発の再稼働を止めよう!

 日本原子力発電は東海第2原発の再稼働へ着々と準備を進め、地元での状況説明会を始めています。東海第2原発は、運転開始から40年を迎える老朽炉で、東日本大震災で被災した日本一危険な原発です。日本原電は「原発には万全の安全性は求められていない」と明言しています。東海村には多くの核施設があり、高濃度核廃棄物が大量に貯蔵されていて、危険性は原発だけに留まりません。半径30km圏内に96万人が住み、首都東京までの距離はたった100kmです。事故が起きれば避難を余儀なくされますが、脱出および長期にわたる避難は、困難であり不可能です。
 原電の大株主である東京電力は、福島の被害者への補償や賠償もなおざりにし、一切責任を取ろうとしていません。公衆被曝限度の年間1m?をはるかに超え、放射線管理区域に匹敵する地域に帰還を迫られている福島県民の境遇は、明日の我が身です。
 再稼働に向けた安全対策費用の1800億円もの借入債務保証を、東電に絶対に引き受けさせないよう強く抗議しましょう。

・3月11日(日)13時30分より15時
・東京電力本店
・呼びかけ:「経産省前テント広場」・「たんぽぽ舎」
・賛同:東電株主代表訴訟、ピースボートなど128団体
・発言者(予定):村上達也【元東海村村長】、落合恵子【作家】、 鎌田 慧【ルポライター】、木村 結【東電株主代表訴訟】、山本太郎【参議院議員】、首都圏の多くの参加の皆様、福島から 鴨下裕也【福島原発被害東京訴訟原告団長】他

・3月11日(日)15時30分より16時30分
・日本原電本店抗議 【千代田区神田美土代町1-1】
・再稼働阻止全国ネットワーク&3.11抗議集会茨城実行委員会
 大石光伸・大名美恵子・荻三枝子・小張佐恵子
 佐藤英一・先崎千尋・村上達也(あいうえお順)


 現地に行かなければわからないのは、発言者以外に様々な歌や演奏が披露されたことです。数団体が入れ替わり立ち替わりというふうでした。そしてひっきりなしにコールが起こりました。コーラーは1人ではなくて、いろいろなグループの方が担っているようです。参加者は手に手に自作のステッカーを持っていました。動員されたのではない、「手作り」集会という感じです。
 集会が始まると、後方からかなり大きなボリュームでがなる声が聞こえてきました。どこでもお馴染みの右翼の妨害スピーカーに違いありません。これが3,40分続くのですが、なぜか警察が注意しているようには見えないのです。
 途中で大音響のデモ隊が東電前を通過していきました。たぶん新左翼系の団体で、10人ほどに警官が3,40人彼らを包囲していました。異様な風景でした。
 
 当日残念ながら駆けつけられなかった山本太郎(参議院議員)は以下のようなメッセージを主催者に送っていました。代読されて参加者の笑いを誘いました。

■たんぽぽ舎のブログより
●1.3/11「第54回東京電力本店合同抗議行動」に
   寄せられた山本太郎氏のメッセージの紹介

山本太郎です。7年目の3月11日が訪れました。
今から政治家、らしからぬ言葉を使い、メッセージします。

おい東電!

 世界最悪の核惨事、スリーメルトダウンをおこしておきながら、その収束方法
もわからず、最終的には汚染水も海で希釈しようと思ってるだろ?
 30年で廃炉にできる訳ないだろ?
 何で、フクイチの廃炉の期間が、事故を起こしていない原発と同じ廃炉期間な
んだよ。いい加減、嘘はやめてくれ。
 汚染水のタンクのコストをケチった結果、汚染水が漏れ出して、そのケチった
タンクの解体処理を担当する作業員の瞳の水晶体が、過去最高の被曝だなんてど
ういうことだ?
 その作業、ここ2年で水晶体の被曝限度を超えてるのがすべて、下請けの人た
ちだなんて、随分、派手なことヤリまくってるな。
 作業員の皆さんの生涯に渡る責任を、東電がちゃんと負えよ。
こっちは収束作業員のみなさんに公務員と同等の地位と処遇を求めて行くからな。

おい東電!

 事故の真相究明もできてないのに、再稼働したい、だなんて何の冗談だ?
頭が沸騰している、としか思えないぞ。
その熱を利用してタービン回して発電した方が環境に優しいんじゃねーか?
事故加害者の東電が、地震国でまた原発やりたいだなんて、よく言えたもんだ。
東電はガス部門が優秀なんだから、そっちで儲けろ。
そっちで、がっつり儲けて、値切った、打ち切った賠償、もう一回再開しろや。

おい、東電。

 ここまで汚染をばらまいても、誰も逮捕されないなんて、そうは問屋が卸さな
いからな。
何年かかっても、東電と国家ぐるみの犯罪にケジメつけるからな。
東電がばら撒いた、汚物から逃れるために多くの人々が人生を狂わされた。
半端な賠償じゃ許さないぞ、そろそろ打ち切りなんて認めないからな。

いいか、東電。

 未来永劫、人々の健康と失われた暮らしの責任を、東電が負う社会を作ってい
くからな。覚悟しておけ。

以上のような趣旨で、国権の最高機関にふさわしい言葉使いのもと、国会におい
て、全力で求めて参ることを誓います。
山本太郎でした!一緒にがんばりましょう。


 さて、この集会の様子を、珍しくNHKがニュースで流しました。

■原発事故7年 東電前で抗議集会(NHKニュース)3月11日 17時32分
 福島第一原子力発電所の事故から7年となる11日、東京電力の本社の前で原発に反対する人たちが集会を開き、すべての原発を直ちに廃炉にするよう訴えました。
 東京電力の本社の前で開かれた原発に反対する集会では、主催した団体の発表でおよそ900人が参加し、「原発はいらない」とか「福島を返せ」などと書かれた横断幕やのぼりを掲げました。
 参加者は追悼の意を込めて1分間の黙とうを捧げたあと、「被災者の支援が不十分なままで原発を再稼働すべきではない」とか、「こどもたちの未来に原発を残さないでほしい」などと述べ、すべての原発を直ちに廃炉にするよう訴えました。
 福島県双葉町から都内に避難しているという73歳の女性は「東京電力には、昔の双葉町を返してほしい。福島県民と同じ苦しみを経験させないためにも、原発の再稼働には絶対反対です」と話していました。
 また、横浜市から参加した65歳の男性は「東京電力や国はもう一度、事故のときの原点に帰って、原発は人に制御できるものではないことを考えてほしい」と話していました。


 東電前集会は予定より20分遅くまで展開されました。みんな慌てて日本原電本店前に地下鉄を乗り継いで移動です。500人の参加ですが、NHKニュースはなぜかこちらは伝えませんでした。
 私が受け取ったチラシは約30種類でした。まだまだ心ある市民は誰もくたばっていないな、と嬉しくなりました。私の出身大学同世代のTさんに日本原電本店前で今回も会うことができました。

 最後に、私たち市民グループも清瀬の地で反原発の運動を地道に進めています。単なるお笑い芸人ではないマコ&ケンの「原発講座」を企画したのですが、彼らの事情で会が中止になりました。またいずれそうした会を企画したいと思います。期待していた皆さん、ごめんなさい。

 

〔172〕東博の「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝」展に心躍りました。

2018年03月08日 | 美術鑑賞
 東京国立博物館で開催されている「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 」展が気づいたら3月11日(日)で終了してしまうということで、少し慌てて見に行くことにしました。
 仁和寺は2回ぐらい訪れたでしょうか。私は仏像鑑賞を目的に赴くことが多いのですが、もちろん見たい仏像がすべて公開されているわけではありません。今回の展覧会には仁和寺の仏像がほぼ「全員集合」し、御室派の秘仏までもが「上京」したのです。だからどうしても見ておきたい展覧会でした。私の仏像のこだわりについては後ほど書くことにして、まずは展覧会のコンセプトを引用してみましょう。 

■特別展「仁和寺と御室派のみほとけ ― 天平と真言密教の名宝 ―」
■パンフレットより
 御室桜で知られる仁和寺は、宇多天皇が仁和4年(888)に完成させた真言密教の寺院です。歴代天皇の厚い帰依を受け、すぐれた絵画、書跡、彫刻、工芸品が伝わります。創建時の本尊である国宝「阿弥陀如来坐像」や秘仏・国宝「薬師如来坐像」、さらには空海ゆかりの国宝「三十帖冊子」など、本展では仁和寺に伝わる名宝を一堂に紹介します。さらには、仁和寺を総本山とする全国約790箇寺の御室派寺院から、選りすぐりの秘仏や名宝も集結します。天平彫刻の最高傑作として知られる葛井寺(ふじいでら)の国宝「千手観音菩薩坐像」は、千本以上の手を持つ唯一の、そして最古の千手観音像です。江戸時代の出開帳以来、初めて東京で公開されます。また、通常は非公開の仁和寺の観音堂が、33体の安置仏と壁画の高精細画像により再現される特別な空間も登場します。

 さらに詳しく東京国立博物館のHPで展覧会のねらいを確認してみます。

■東博HPより
○秘仏や本尊を含む仏像など66体が一堂に!
 仁和寺創建当時の本尊・国宝「阿弥陀如来坐像および両脇侍立像」、秘仏・国宝「薬師如来坐像」など仁和寺が誇る仏像に加え、全国の御室派(おむろは)寺院の中から、葛井寺の国宝「千手観音菩薩坐像」、道明寺の国宝「十一面観音菩薩立像」、中山寺の重要文化財「馬頭観音菩薩坐像」、神呪寺の重要文化財「如意輪観音坐像」、雲辺寺の重要文化財「千手観音菩薩坐像」などの普段は公開されていない数多くの“秘仏”、さらに明通寺などの仏像ファン待望の名宝まで、合計66体を一堂に公開します。
○仁和寺所蔵の国宝「三十帖冊子」、修理後初の全帖公開!
 2014年度に修理が完了した、弘法大師空海ゆかりの国宝「三十帖冊子」を公開します。特に、1月16日(火)~28日(日)限定で全帖を一挙公開します(1月30日(火)~は2帖ずつ公開)。書のファンを魅了してやまない空海ゆかりの書を、全帖にわたりご覧いただきます。
○仁和寺の観音堂を展示室に再現!
 江戸時代の仁和寺再興期に再建され、僧侶の修行道場のため一般には非公開の観音堂を、展示室に再現します。実際に安置されている仏像33体に加え、壁画も高精細画像で再現し、仁和寺の僧侶により守り伝えられてきた観音堂の姿を体感いただきます。本展が観音堂改修工事を記念して開催されることにより実現した、特別な空間となります。


 会場に到着したのは朝の10時頃(開場は九時半)だったでしょうか。上野駅の券売り場ではすでに券はなく、国立西洋美術館脇売店で購入できました。東博窓口では購入に手間取ると判断したからです。
 運慶展は入場までに1時間半以上並んだでしょうか、今回は30分ということでしたが、すでに20万人以上が来場しているということでした。会場内での賑わいはかなりのものでした。低い位置にある巻物や書き物は覗き込むのに難儀し、あきらめたものも多かったです。
 展覧会の構成は次のようになっていました。

第1章 御室仁和寺の歴史
第2章 修法の世界
第3章 御室の宝蔵
第4章 仁和寺の江戸再興と観音堂
第5章 御室派のみほとけ

 私が今回どうしても見たくて、興奮を抑えきれなかった「展示物」を列挙していきましょう。(引用は東博HPより)

●国宝 千手観音菩薩坐像(せんじゅかんのんぼさつざぞう)
奈良時代・8世紀 大阪・葛井寺(ふじいでら)蔵
 西国33所第5番札所である葛井寺の本尊で、天平彫刻の最高傑作の1つ。優美な表情、均整の取れた体や衣の表現は、究極の天平美といえる。千手観音像は、40本の手で千手をあらわすのが一般的だが、本像は大手・小手あわせて1041本をもち、合掌した手を中心に千の手が広がる本像の表現は見事である。千本以上の手を持つ千手観音像は、本像しか確認されていない。

→本展覧会最大の目玉であることは間違いありません。毎月18日に開帳される千以上の手を持つ実に優美な仏像です。葛井寺で参拝者と拝観したときは、御簾の奥に鎮座していて、全体像が充分捉えきれませんでした。今回は四方八方から心ゆくまで見ることができました。千の手が羽のようで造形的にも素晴らしいものでした。日本の仏像の中で最高傑作の1つであることに疑いはありません。

●秘仏本尊
国宝 薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)
円勢・長円作
平安時代・康和5年(1103)
京都・仁和寺蔵
 11世紀後半から12世紀前半にかけて活躍をした、当時を代表する仏師円勢(えんせい)とその子長円(ちょうえん)の作。仁和寺北院(きたいん)の本尊で、大御室・性信親王(おおおむろ・しょうしんしんのう)の念持仏(ねんじぶつ)であった薬師如来像が火災によりほとんど焼失してしまった後、すぐさま造り直されたのが本像である。白檀(びゃくだん)をきわめて精緻に彫刻し、木地に直接截金(きりかね)技法とよばれる金箔で細やかな文様をほどこした大変美しい作品。

→本像は仁和寺に行っても見ることができません。初めての拝観でした。約6寸の像で、台座の装飾も見事で、まさに精緻な彫りとしかいいようがないものです。小ぶりでありながら存在感がある仏像です。確かにこれこそ国宝ですね。

●国宝 孔雀明王像(くじゃくみょうおうぞう)
中国 北宋時代・10~11世紀
京都・仁和寺蔵
 様々な災厄を払う密教修法・孔雀経法を修する際の本尊画像。仁和寺においては、歴代の門跡が鎮護国家など様々な祈りを込めて孔雀経法を修した。大きな孔雀に乗った明王の三面六臂(さんめんろっぴ、三つの顔に六つの腕)の姿は、経典には見られない特異な図様。現存作例の乏しい、中国・北宋で制作された仏画としても極めて重要な位置を占める。

→どうしても見たかった画像ですが、期間限定展示で未見です。もちろん仁和寺でも見られないので、生きているうちに拝観はできないのでしょうか。

●秘仏本尊
重要文化財 馬頭観音菩薩坐像(ばとうかんのんぼさつざぞう)
鎌倉時代・13世紀
福井・中山寺蔵
 若狭から丹後、現在の福井県南西部から京都府北部にかけての日本海沿海部には、興味深いことに馬頭観音を本尊とする寺院が集中している。中山寺(なかやまでら)もその一つで、本像は鎌倉時代の名品として名高い。秘仏として伝えられ、鮮やかな彩色だけではなく、光背や台座も当初のものが残されている貴重な作例。

→馬頭観音菩薩像の最高傑作と断言します。33年に1度開帳の秘仏と聞きます。以前中山寺を訪ねたとき、無理は承知で住職に拝観を頼んだのですが、やはり無理でした。気の毒に思った住職は、座敷に案内してくれて、掛けてあった絵や書を見せてくれました。どんなものだったかは記憶にありませんが。若狭湾を見下ろせる美しいお寺でした。

●秘仏本尊
重要文化財 如意輪観音菩薩坐像(にょいりんかんのんぼさつざぞう)
平安時代・10世紀
兵庫・神呪寺蔵
 兵庫県西宮市のシンボル、六甲山系の甲山(かぶとやま)の中腹に所在する神呪寺(かんのうじ)の秘仏本尊で、古くより信仰を集めてきた。一木造(いちぼくづくり)で、細身の表現が特徴。制作は平安時代半ばにさかのぼる。如意輪観音像の古い例として重要な像である。毎年5月18日にのみ開扉(かいひ)される秘仏である。

→河内観心寺、大和室生寺とともに日本3如意輪の1つ。アンニュイな雰囲気を漂わせる独特の表情にやっと会えました。

 今回ようやく会えた国宝重文に子島曼荼羅(奈良・子島寺)、千手観音菩薩座像(香川・屋島寺)、千手観音菩薩座像(徳島・雲辺寺)があります。こうしてみると今回の展覧会は私にとって実に貴重で有意義なものでした。入場料1600円は高くない!
 あそうそう、今展覧会の1番人気はひょっとして大阪・道明寺の十一面観音菩薩立像かもしれません。皆さん「美しい。」と声をあげてましたので。何度見てもため息が出る素晴らしさです。大阪・金剛寺の仏像群も懐かしいです。

〔171〕『ざわざわ~こども文学の実験」というあたらしい児童文学の雑誌が創刊されました!

2018年03月05日 | 図書案内
 前ブログで紹介したところざわ太陽劇団の舞台を見終わってから新所沢の駅に向かっていたら、市橋久生さんが前を歩いていました。声をかけると時間はあるということで、駅近くの喫茶店でお茶を飲むことにしました。彼はかつて日本演劇教育連盟事務局長、私は『演劇と教育』編集代表としての長い付き合いなのですが、久しぶりに長時間積もる話をすることになったのでした。3時間くらいはあったように思います。
 2,3日して彼から『ざわざわ』(2015.5.15)という雑誌が送られてきました。初めて目にする児童文学雑誌の創刊号でした。特集は私の大好きなあまんきみこさんでした。出版不況といわれているこの時代、しかも児童文学の新雑誌とは出版社も随分思い切ったものです。興味津々でページをめくりました。
 目次を紹介してみましょう。(四季の森社HPより)

■No.1 特集 あまんきみこ
口上(内田麟太郎) 創刊によせて宮川健郎 2  for Children(写真)
落合次郎 4~7 リレーエッセイ 子どもの現在 霜村三二 8

〔特集 あまんきみこ〕
あまんきみこアルバム 10 (初出再現)びわの実学校版 「くましんし」 17  あまんきみこのエッセイから 21
インタビュー対談-作品は一通しかだせないラブレター あまんきみこ×矢崎節夫 22 あまんきみこ-たぬきねいり 内田麟太郎 52
贖罪の児童文学-あまんきみこの人と作品-矢部玲子 55
境目の魔女(ほんわり系) 谷山浩子 62
あまんきみこ論-経験と成長のファンタジー 山元隆春 66
『きつねのおきゃくさま』を教材として読む/作品として読む 府川源一郎 76
あまんきみこ 加藤真理 83  
ずっと友達にしていただいて 宮川ひろ 86  
あまんさん 岩崎京子  89
あまんきみこ年譜+文献 宮田航平 92   
谷山浩子『ねこの森には帰れない』紹介(編集部) 95
  
〔小特集 加速するナンセンス-起承転転…〕
インタビュー  内田麟太郎さんに聞く  内田麟太郎×宮川健郎162
村上しいこと二宮由紀子のナンセンス-私的ナンセンスの読み方の模索 内川朗子174
少年詩におけるナンセンス-笑える詩・笑えない詩-菊永謙178
宮澤賢治とナンセンス 平澤信一185
「ことばあそび﹂の世界-子どもの中のイノセンス-吉田定一189
白秋にはくしゅ 林 木林194
中原佑介の「ナンセンス芸術論」を読む 入江隆司198

童謡  創作  詩 随想 (略)
*A5判 272頁 定価:本体1200円+税 発売 四季の森社

 
 さて、送っていただいたのは創刊号で、この『ざわざわ』は4号まで発行されていました。なかなか意欲的な雑誌であることはその目次から見て取れます。私からの出版へのエールを込めて2号からは特集と主な記事を抜き書きさせてもらいましょう。

■No.2 特集 武鹿悦子の世界 
武鹿悦子アルバム  インタビュー対談  一番自分らしい生き方だったと……武鹿悦子×聴き手 矢崎節夫
武鹿悦子アンソロジー   童謡篇(矢崎節夫・選)    少年詩篇(菊永謙・選)
武鹿悦子詩人論  吉田定一 畑中圭一 菊永謙 奥山恵 足立悦男 鶴田清司 児玉忠 千早陽生 ほか
エッセイ 新川和江 赤岡江里子 あまんきみこ こやま峰子 上野与志 後路好章 ほか  
年譜(菊永謙)

創作 岡田淳、最上一平、千田文子/エッセイ 宮川健郎、内田麟太郎、志津谷元子、海沼松世、小林雅子、山中利子/童謡・詩 西村祐見子、二宮龍也、林木林ほか 

*A5判 368頁 定価:本体1200円+税 発売 四季の森社

■No.3  特集 内田麟太郎
内田麟太郎アルバム インタビュー対談 新宿の怪しいルノアール……内田麟太郎×村上しいこ
エッセイ 長新太 今江祥智 菊永謙 暮尾淳 いずみたかひろ 西村繁男 伊藤秀男 余郷裕次
草谷桂子 こがしわかおり ひこ・田中 長野ヒデ子 山本孝 矢崎節夫 高橋秀雄 最上一平
降矢なな 内田麟太郎詩アンソロジー(菊永謙・選) 内田麟太郎年譜 小特集〈内田麟太郎が推す絵本作家〉

石川えり子・田島征三 筒井大介 加藤休ミ ウレシカ・小林 西須由紀 土井章史

創作 最上一平/エッセイ 内川朗子、海沼松世、小林雅子、山中利子/童謡・詩 西村祐見子、二宮龍也、ほか
*A5 判 288頁 定価:本体1200 円+税 発売 四季の森社

■No.4  特集 神沢利子   
神沢利子アルバム
神沢利子さんに聴く(聴き手・いとうゆうこ)
 ─幼年時代は今もわたしのまわりに 
 「いないいない国へ」の幻郷 吉田定一
 幼年期からの根源的な問い きどのりこ
 ほか
小特集〈心を揺さぶられた詩・童謡〉
谷萩弘人 いずみたかひろ 宇部京子 ほか
連作「あらわれしもの」④ あらわれしもの・ひめりんごちゃん 最上一平
エッセイ―魅せられた一冊─『エルフギフト 上:復讐の誓い 下:裏切りの剣』小川英子
詩はどこにあるか2『詩の絵本』の試み 宮川健郎
*A5判 336頁 定価:本体1200円+税 発売 四季の森社


 私は『演劇と教育』(日本演劇教育連盟編集、晩成書房)の編集に30数年かかわってきました。編集代表を担っているときに、「~を遊ぶ」シリーズを企画したことがあります。最初は詩人の谷川俊太郎、工藤直子、まどみちお、阪田寛夫、次に児童文学者の佐野洋子、あまんきみこと特集は続きました。できれば続けて神沢利子を考えていたのですが編集部を去ることになりそれはかないませんでした。
 『ざわざわ』の特集を見ていて何か共通点やら、懐かしさを感じるのです。

□全6号「~を遊ぶ」シリーズ(執筆者)
・「谷川俊太郎を遊ぶ」2008年7月号、福田三津夫、内部恵子、加藤みはる、山地千晶
・「工藤直子を遊ぶ」2009年7月号、工藤直子、霜村三二、神尾タマ子、高丸もと子
・「まどみちおを遊ぶ」2010年7月号、伊藤英治、廣本康恵、泉宣宏、福田三津夫、霜村三二
・「阪田寛夫を遊ぶ」2011年7月号、霜村三、刀禰佳夫、福田三津夫、山地千晶 ・「佐野洋子を遊ぶ」2012年7月号、福田三津夫、平井まどか、新井早苗、梶本暁代、上 保節子、小森美巳
・「あまんきみこを遊ぶ」2013年7月号、あまんきみこ、佐熊郁代子、篠原久美子、宮﨑充治


 さて、市橋さんから『ざわざわ』が送られてきたときあるコピーが同封されてきました。彼が『ざわざわ』の最新4号に執筆したリレーエッセイ《子どもたちの現在4》でした。許可を得て転載させてもらいます。


■今日も健気に生きている      市橋久生

 幼児の発達支援に携わる小さな施設の午後。子どもたちは、それぞれお気に入りの絵本や紙芝居を持ってテーブルの周りに寄ってくる。自閉症、ダウン症、体の不自由な子、なんらかのハンディを抱えている一人ひとりの子に、支援スタッフが寄り添う。一緒に声を出して読んだりページをめくったり…。紙芝居ではお気に入りの場面に見入ってしまって、観ているほかの子に待ちぼうけをくわせたり、絵本はページを飛ばして好みの絵に移ってしまったりするが、スタッフはにこやかにやんわりと促す。埼玉県のその事業所を時々訪ねている私は、この光景を「○○(施設名)の“ブック・スタート”」と呼んで、微笑ましく見ている。“小さな施設”と記したが、この一日の利用者十人ほどの子どもたちというのが程良い規模に見える。一人ひとりに、その日の体調や動きを頭に入れながら、“ゆる~い一体感”(管理責任者の謂う)のスタッフの目が行き届き、思わぬできごとにも慌てず、待つ、聴く。遊ぶ場面ではスタッフは言わば黒子になって動き、ときに遊びに誘う場合にはその子の意思を尊重し、選択肢を示す程度にして見守る。まずは子どもたちの気持ちを思いやるおおらかな姿勢がここの雰囲気を醸し出している。
 今、この社会ではこのような“おおらかさ”を感じられるだろうか? 逆に息苦しさや不安を語られることはしばしばである。<子どもたちの現在>を語るということはとりもなおさず、おとながつくる社会の現在を語るということになる。たとえば、子どもの貧困は喫緊の社会的課題であり、子ども同士のできごとであった「いじめ」はいじめ防止対策推進法という国家の法律制定を要するほど深刻な問題になってしまった。貧困もいじめもおとな社会の縮図である。所得や家計のゆとりに格差がある、教育や健康の格差にもつながる、人と人の間に線を引く、異見を排除する、等々(為政者からして!)。ネット時代の社会では知らず知らずなんとなく気を張っていなければならない。メール対応にスピードを要求され、友だちは「承認」を受けてなるもの? 空気を読めという同調圧力がかかる。何事につけ寛容な精神が脆くなったと感じざるをえない社会。
 学校では「道徳」が「特別の教科」として子ども一人ひとりに「評価」がされることになった。これまで副読本はあったが、教科書になる。パン屋が「和菓子屋」に書き換えられ、公園のアスレチックが「和楽器の店」に差し換えられる―学習指導要領にある「我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ」という観点に照らしてとする文部科学省の検定意見に反応した教科書会社の対応―という悪い冗談のような現実が起きている。
 また、子どもが巻き込まれる事故や事件が起きるたびにその対策は強化されていく。公園の遊具が取り外されたり、防犯カメラが設置されたり、植え込みが刈り込まれたり。「親の目届きすぎ?今の子育て」と題する読者の投稿が新聞に載った(2017年6月5日、朝日)。「だいたい子どもというものは、『親の目が届かないところ』で育っていくんです」(河合隼雄)という言葉を引いて―。おとなの善意、見守りのつもりが押し付けや息苦しさになったり過干渉になったりしてはいないだろうか?
 しかし、子どもとは、いつの時代どんな社会でも、おとなの目や管理の抜け道を探して生きるもの。知恵も体感覚もそうやって身に付けていくものだろう。一方、今日の環境に危機感を覚えるおとなたちは、子どもには心身ともにたっぷりの子ども時代が必要であると考えている。埼玉県内の子ども劇場おやこ劇場が仕掛けている「子どものまち“ミニ○○”」(○○は市区町村名)。ある一日、子どもたちがつくるまちが出現する。役所、首長、議員、警察署、病院、銀行、商店街、広場など文字通り一つのまちを創る(広い公共施設などを会場にして)。どんなまちにしたいか、事前に何度も子ども会議を開き、意見交換や議論を重ね、時間をかけて準備する。それでも失敗はある。それも含めての子ども自身の貴重な体験。おとなは見守りに徹する。口を出さない。このような「子どものまち」づくりは今や全国各地で行われているという(子ども劇場おやこ劇場埼玉センター『KOGNET』vol.49)。「冒険あそび場」「プレイパーク」なども各地で見られる。失ってしまった自然や生活様式を嘆いても懐かしんでいてもどうにもならない。今日の環境でできるだけのことをしようというおとなたちがいる。
 埼玉の「ミニ○○」。子どもたちの掲げたテーマは「やさしいまち」。実際のまちは?のおとなの問いかけに「やさしくない!」―そう感じながらも子どもたちは今日も健気に生きている。(『ざわざわ』4)

●市橋久生(いちはし・ひさお)1948年、佐渡島生まれ。埼玉で中学校勤務とともに日本演劇教育連盟の活動に参加。事務局長、『演劇と教育』編集委員などを務める。フリー・スクールや子どもデイ・サービスにも関わる。子どもと文化環境に関心をもつ。共同通信連載「気持ち伝えるには」や週刊メルマガ『演劇タイムズ』連載「ドラマティックな人々」など寄稿。


〔170〕ところざわ太陽劇団と武蔵村山市立第三中学校演劇部の公演は心地よい劇空間を創り出していました。

2018年03月02日 | 語り・演劇・音楽
  2018年2月11日(日)、ところざわ太陽劇団・第45回公演『デゴイチ2018』を見るために新所沢公民館ホール(西武新宿線新所沢駅西口)に向かいました。太陽劇団の舞台は数年ぶりだったので期待が高まりました。
  当日、昼の1時前に劇場に入りました。日本演劇教育連盟常任委員研究部の小山内徳夫さんが劇場の客席の中央に陣取っていました。毎回太陽劇団公演では写真を撮っているということでした。すでにスタンバイという風情です。
 太陽劇団の公演に先立ち、武蔵村山市立第三中学校演劇部の『船出の時』が上演されました。午後1時から30分ほどでした。実にパワフルでエネルギッシュ、好感の持てる舞台でした。後でわかったことですが、出演者はすべて中学1年生で、まだ発足したばかりの演劇部だったのです。中学生はみんな演じることが大好きということが手に取るように伝わってきました。
 当日のパンフレットを紹介しましょう。作・指導の城戸美佳さんは演劇部顧問で、この後の『デゴイチ2018』に主役のデゴイチで出演していました。彼女は新進の若手教師で、それこそ「実にパワフルでエネルギッシュ」でした。彼女の熱気が中学生に伝播しているとしかいいようがありません。
 そしてサプライズのじいちゃん役は正嘉昭さんでした。

■武蔵村山市立第三中学校 演劇部 『船出の時』作・指導 城戸美佳
●演出助手の言葉 1年 山田碧月   
 私たち三中演劇部は今年新しくできた部活です。部員は全員1年生なので、仲が良くみんなで楽しく部活動に参加しています。今回の劇でも、部員同士の距離が近いため対立してしまうこともありましたが、全員で意見を出し合い、それを聞き合うことで、自分たちの力で解決し、互いの力を高め合ってきました。みんなで仲良く協力して劇づくりを進めてきたことで、部全体のレベルアップも達成できたと思います。三中演劇部の仲の良さがあって作り上げることができた舞台です。この部活だからこそ成長してこられた私たちの仲の良さを感じながらご覧いただきたいと思います。
●作者の言葉  顧問 城戸美佳
 この作品は、「自立」をテーマに書き下ろした新作です。初めて子供たちだけで、父ちゃんを見つけるべく船を出す、湊たち。大冒険には、予期せぬ出来事がつきもの。船の上で起こるさまざまな出来事を通して成長する中学生の姿を描きました。今年できたばかりの部活動で、今回出演する生徒は全員1年生です。しかし、彼らは学校生活や部活動を通して、確実に成長し、自立をしていこうと努力をしています。その大きな成長の過程を、この作品を通して皆さんに伝えられたら嬉しく思います。
 今回は、劇のテーマと同じように、自分たちで意見を出し合ってーつの作品を作り上げることを目標に、劇づくりに取り組みました。演出助手の山田さんをはじめ、多<の生徒が自主的・主体的に劇づくりに臨む姿に、部員たちの成長を感じています。今こそ、三中演劇部の『船出の時』です!どんなことも、強い絆と自分たちの力で乗り切っていく大冒険の物語を、ぜひお楽しみください。

 
 そしていよいよ、ところざわ太陽劇団『デゴイチ2018』です。私は初見でしたが、中学生のためにつくった劇団主宰の正さんの作品で、今までに何回も上演しているそうです。
 ここでまた配布されたパンフレットを覗いてみましょう。

■第63回所沢市文化祭参加、ところざわ太陽劇団・第45回公演『デゴイチ2018』
●チラシのリード
    1970年、埼玉県日市にあった駄菓子屋を舞台に、
   友情と将来の不安が交錯する中学生たちのひと夏の物語。
 主人公のデゴイチは、学校にも家にも居場所がない中学三年生。
デゴイヂは、ある日、見慣れない町の駄菓子屋の店先で目を覚ます。
    不良仲間の使いっぱなしに嫌気がさしたデゴイチは、
  駄菓子屋で出会った面白おかしい人たち、店のおばちゃん、
  同学年で他校生の山さんとマチコに心癒されるのだが……。

【キャスト】
  バット喜界島 赤江瞭 城戸美佳 たいまる 土屋崇仁
  麻婆太郎 江梨いづみ 原田昌幸 小町子
【スタッフ】
演出:正嘉昭  制作:伊藤行雄  舞台監督:中村一文   照明:蓮沼元宏
音響:光延朋哉  宣伝美術:宮内一敏・正嘉人
●演出のことば
 正嘉昭(演出家・日本女子大学客員研究員・前所沢市文化芸術振興ビジョンアドバイザー)
 『デゴイチ』は、私が中学教員だった頃、中学校演劇のために書き下ろした脚本です。
地区大会から都大会での発表を経て、全国大会で多くに人々に観ていただいた作品で
すが、他の中学校や高校や大学でも上演された、親しみやすい雰囲気のドラマです。
 ところざわ太陽劇団でも2006年、2010年、2015年と舞台化してきました。
 そのつどその時々の想いを入れて書き直してきましたが、今回の2018年版も、新たな場
面を加えて「現代化」を施しました。
 どんな中学生のデゴイチたちが皆様の前を飛翔するか、ごゆっくりお楽しみください。
 あわせて中学1年生だけの武蔵村山三中演劇部の新作『船出の時』をお楽しみください。


 ところざわ太陽劇団は正さんが主宰していますが、同世代の伊藤行雄さんが盟友といってもいい存在で、常に活動を2人で担ってきました。この劇団で一番感心するのは、常に温かい劇空間を創り出していることです。演劇を通してそれぞれ参加者が成長していく創造団体なのです。劇団そのものが演劇教育そのものを実践し体現しているかのようです。そしてそれを温かく見つめる観客がまた素晴らしいのです。家族的な雰囲気を漂わせた劇空間を常に保っています。
  演劇教育の代表的な実践者・研究者として正嘉昭さんは間違いなく歴史に名前が残る人です。存命なら副島功さんが手がけることなのでしょうが、時代を併走してきた私は遠からぬうちに正嘉昭論をものにしたいと思うのです。彼の劇は1980年の全国演劇教育研究集会上演の『しらけ仮面』が初見ですが、1995年演劇教育賞受賞『閉じこもりし者』、『ザ・ライオン』などが特筆されるのです。
 そして、同世代の並び立つ演劇教育の巨人として故・渡辺茂、梶本暁代を抜かすわけにはいきませんので、渡辺茂論、梶本暁代論もいずれ手がけたいと思っているのです。
*彼らの仕事については、渡辺茂追悼を本ブログ〔101〕に掲載したことがありました。劇団X探偵社は現在も活動中です。