後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔560〕「歩く、描く 谷口ジローと清瀬」展(清瀬市郷土博物館)絶賛開催中です。

2023年01月24日 | 美術鑑賞
 1月24日(火)、「歩く、描く 谷口ジローと清瀬」展(清瀬市郷土博物館)に足を運びました。谷口ジローのことはたびたびこのブログで取り上げてきたので、どうしても行っておきたい展覧会でした。なにしろ我が家から歩いても10分で行けるところですから。
 1月21日(土)に展覧会が始まりましたが、なかなか注目度は高いようです。朝日、毎日、読売新聞いずれでも紹介されたようです。

 





 展示は1階と2階に分かれていますが、1階だけなら無料、2階は大人が500円です。
 1階には未完の作品を含めて年代ごとの作品がコンパクトに紹介されています。なにより嬉しかったのはヨーロッパやアジアで出版された膨大な数の谷口作品が所狭しと展示されていたことです。これらはご遺族が保管されたものなのでしょうか。これを見て谷口の凄さが実感できました。

 



 2階に上がると、いきなり「歩くひと」の一場面の大きなパネルに出迎えられます。ここは野塩地域だというのですが、野塩の何処なのか特定できません。受付の人に聴いてもはっきりしませんでしたが、ガラスケースの中の取材アルバムに絵とそっくりな写真が置かれていました。でも、果たしてこの写真が何処で撮られたのか、特定できないのが悔しいのです。

 





 近年出版された豪華な著作集も2箇所に展示されて、谷口の仕事の全体像が見渡せるものになっていました。世田谷での谷口ジロー展には行けなかったけど、近場でゆっくり鑑賞できたのは嬉しいことでした。
 撮影が自由だったのでフォトアルバムとしてご覧ください。

〔559〕「瀬戸内人権映画祭」を開催した高校生(邑久高校の「地域学」について)-矢部顕さんからの特別報告です。

2023年01月24日 | メール・便り・ミニコミ
このブログではお馴染みの矢部顕さんからメールが届きました。
岡山県立邑久高校の人権教育が素晴らしいです。そこに講師として深く関わっている矢部さんのメールと報告を読んでください。ビデオには矢部さんも登場します。

◆福田三津夫様

岡山市の東隣の瀬戸内市に県立邑久高校がありまして、そこの高校では
地域学の取り組みを行っています。
今年度の地域学のまとめの発表会である実践報告会が1月19日にありました。
私は5年ほど前から、この地域学の講師をしていますので、招待されて報告会に
参加してきました。全校生徒300人に向かって、それぞれのグループが発表を行う
全てを見てきました。

地域学は、いろいろな分野の取り組みグループがあるのですが、ここにお送りするのは
私の関っているハンセン病グループの報告のドキュメンタリーです。
この映像は、映画「NAGASHIMA~“かくり”の証言~」の監督の宮崎賢氏が取材し編集してYouTubeに掲載したものです。

下記をクリックすれば見ることができます。
2023.1.19「瀬戸内人権映画祭」実践報告会ドキュメント 岡山県立邑久高等学校(映像ジャーナリスト 宮﨑 賢) - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=LriCk-sGBrs

また、地域学について私の書いたものを添付します。
                               矢部 顕


   ◆「瀬戸内人権映画祭」を開催した高校生
            邑久高校の「地域学」について
                矢部 顕

岡山県立邑久(おく)高校の「地域学」の取り組みについて紹介をします。
この邑久高校にはかつて新良田教室という分校が長島愛生園にあったのです。
13か所の国立ハンセン病療養所で唯一の高校でした。当時、全国の療養所に入所していた若者が受験して、この高校を目指したのです。高校での勉学と、その先の進学と社会復帰を可能にする希望の唯一の高校だったのです。
しかし、かつてそのような分校があったことを邑久高校の教師も生徒もほとんどが知りませんでした。5年前までは。

●地域で学ぶ、地域から学ぶ
「地域の魅力と課題を学び、地域の活性化に貢献するリーダーの育成」を目標に「地域学」の取り組みが始まったのが5年前でした。瀬戸内市(岡山市の東隣の市)にある唯一の高校として、瀬戸内市をフィールドに「地域で学ぶ、地域から学ぶ」をテーマに、地域の歴史・教育、自然・環境、文化・観光、医療・福祉、自然・科学などの分野別にグループを編成しての研究活動が始まったのでした。
「地域学」はここでは「セトリー」(Be a SETOUCHI Leader!)と名づけられています。
次に、この4年間のセトリー実践報告会でのハンセン病問題に取り組んだグループの研究テーマを記します。
①「後世に伝えよう、邑久高校の誇りと瀬戸内市の歴史」―実際に療養所や新良田教室を訪ねるなどのフィールドワークとともに、実際に新良田教室で学んだ元生徒の方や元教師の方々へのインタビューや、何十年も前からハンセン病問題に取り組んでいらっしゃる方からお話を伺うことによって、文献調査では得られない経験を積んできました。(令和元年・2019年)
②「ハンセン病の歴史とから我々が学ぶべきこと」―ハンセン病による差別、ハンセン病による裁判、ハンセン病と新型コロナウイルス。(令和2年・2020年)
③「長島愛生園が生んだ芸術たち」―長島愛生園の芸術について研究。この研究発表をきっかけに、芸術を通して、多くの方々にハンセン病問題を知っていただきたい。(令和3年・2021年)
(以上は、「令和1・2・3年度地域学“セトリー”研究成果集」より)
④今年度令和4年(2022年)の活動については今号で小西先生に原稿をいただいています。(○頁)

これらの研究は、何度も長島愛生園や邑久光明園を訪問して学芸員や自治会長の話をお聴きしてハンセン病の歴史と現状を学ぶことに合わせて、外部講師として学校に招聘したのは以下のような講師陣です。
愛生園・光明園の学芸員、新良田教室の元教師、新良田教室の卒業生、療養所世界遺産推進協議会事務局長、ハンセン病家族訴訟原告団副団長、地元放送局取材記者、ハンセン病問題長期連載の地元新聞記者、療養所園歌の研究している歌手などなど、年度によって違いはありますが延べにするとたくさんの講師による講義を受けてきました。わたくしも講師のひとりとして呼ばれています。
今年度は、40年にわたる愛生園の取材経験をもっている映像ジャーナリスト・宮崎賢さんのお話と完成したドキュメンタリー映画鑑賞がきっかけで、今回の映画祭主催につながったのでした。

●邑久高校の地域学のはじまり
邑久高校の地域学は平成29年度(2017年)から始まりました。
――ハンセン病療養所のことを調べている時に、偶然そこに邑久高校の名前を見つけたのです。「岡山県立邑久高等学校 新良田教室」です。隔離されたハンセン病患者に対し、邑久高校が全国で唯一、希望の光を与えていた事実を発見したのです。と同時に、今まで長いこと岡山県で教員をやっていたにもかかわらず、そういったことに全く無知でいた自分にあきれました。そこで、ぜひともこのことを契機に、ハンセン病を私も学び、生徒に考えさせたいと思うようになったのです。――
<元邑久高校教諭・田辺大蔵氏>(「むすび便り」2019年12月14日発行第45号より)
田辺先生には、「むすび便り」に「邑久高校のハンセン病問題の学習」と題して11頁にわたる寄稿をいただいています。

平成30年(2018年)には瀬戸内市で「邑久長島大橋架橋30周年記念シンポジウム」が開催されました。<基調講演は徳永進さん(FIWC関西)>
邑久高校生がボランティアで運営に関わり、受付、誘導のみならず、ステージ上での総合司会や、パネルディスカッションのパネラーとして登壇しました。
パネラー佐藤朱里さんは「今まで学んだことや療養所を訪問して、肌で感じたことを若い世代に伝えていきたいと思い
ます」と締めくくりました。

この先輩たち以降、それまでの積み重ねを継承するなかで、今回の上映会はお手伝いではなく、まさに主催者としての役割を持つまでに至ったのです。
ドキュメンタリー映画製作は次の世代への継承という意味も大きいわけですが、この「地域学」の学びも、若い世代への継承という意味ではとても重要なものだと感じました。

●勉強と学問
いま、あちこちの高校で「地域学」の取り組みが行われているようですが、なかなか良い試みだと思います。教師もテキストだけを教えていればそれで済むということではありませんので、生徒と共に学ぶという姿勢も問われてきます。
私たちの世代の高校時代は、地域のことから学び地域に貢献する人材の育成などの考えは全く無くて、ともかくいい大学に入ることだけが目的の高校教育でした。当時はおしなべてそんな時代でした。
高度経済成長の時代とあいまって、都会への一極集中をもたらし、その結果がいま日本中で地方・地域の衰退という現実となっていったことは明らかであります。
学校での「勉強」という言葉は「強」いられた「勉」めという感がありますが、「学」んで「問」う、「問」うて「学」ぶ「地域学」は「学問」の始まりといえましょう。試験で正解がひとつ、と答えることだけを訓練される勉強ではない、大切な本質的な学びがあると思います。

「瀬戸内人権映画祭」では上映だけでなく、公式パンフレットと名づけたA4で12頁の研究成果を冊子にして参加者に配られました。
目次を引用します。
1. はじめに
2. 映画「NAGASHIMA~“かくり”の証言~」紹介
3. ハンセン病について
4. ハンセン病Q&A
5. 私たちの出会い~ハンセン病問題に関わった人々~
6. 長島愛生園訪問レポート
7. その他―ハンセン病を扱った映画紹介①「もののけ姫」②「あん」
このように、生徒たちのたいへん詳しい研究内容を分かりやすく編集していることに感心しました。映画を観に来てくださった方々への貴重なお土産でした。

ハンセン病問題は、この高校の若者たちの学びによって確実に継承されていくことでしょう。
                        (やべあきら NPO法人むすびの家理事)

〔558〕2月19日(日)、マイナンバーカードと給食の無償化について、白石孝さんにお話をうかがいます。

2023年01月24日 | 講座・ワークショップ
 このブログで以前に白石孝さんのご著書を紹介したことがありました。個人的にも我々夫婦のミニコミ誌「啓」を読んでいただいていたり、逆にピアノコンサートにご招待いただいたり、昔から親しくさせていただいています。しかしながら、じっくりお話をうかがうことは今までありませんでした。清瀬の地でこうした学習会が開かれるのはとても嬉しいことです。
 当日は司会をすることになりました。読者の皆様とお会いできれば嬉しいです。



主催 ● 清瀬・くらしと平和の会
お問い合わせ ● 042-493-2982 ● fuseyume@krc.biglobe.ne.jp
        または、携帯電話・090-9969-7655(布施さん)
● 学 習 会 ●

清瀬でいっしょに考えたい
【 マイナンバーカード 】と
【 給食の無償化 】

● 講 師 ●

白石 孝さん
(しらいし・たかし)

●「荒川区職員労働組合」顧問、「プライバシー・アクション」代表、NPO法人「官製ワーキングプア研究会」理事長、NPO法人「アジア太平洋資料センター(PARC)」共同代表ほか。● 1974年に荒川区に入区し、2000年から2011年まで職員団体書記長をつとめ、働く者の立場から自治体行政の改善に取り組む一方、個人情報保護、給食の無償化、非正規公務員、地方自治、多文化共生など、幅広いテーマに精通し活動する。

● 日時: 2023年 2月 19日 (日)
      13:30   開場  16:30   閉会
      14:00   ふせ由女(清瀬市議)の市政報告
      14:15   白石孝さんのお話と質疑応答


● 会場: 男女共同参画センター【アイレック】会議室    

          西武池袋線「清瀬駅」北口右側(徒歩2分)
                「アミュービル」4階
※ 資料代:200円
※ 定員:40名(先着順)

この学習会が、多摩地区のタウン紙アサココに紹介されました。(2023年2月2日)
この記事の連絡先が違っていました。ごめんなさい。正しくは、携帯電話090-9969-7655(布施さん)です。



  せっかくブログに来ていただいたので鎌田慧さんのコラムもどうぞ。

 ◆岸田訪米のあとで     鎌田 慧(ルポライター)

9日未明、岸田文雄首相は政府専用機で欧州と米国にむけて出発した。
安倍氏国葬の弔問に来なかった首脳たちと5月に広島で開催されるG7
サミットで会う。「地球規模の課題について議論をリードしていく
責任を担う」その準備か。
 「リード」できるかな、との懸念が強い。会見するバイデン米大統領
からまたなにか、安倍晋三元首相のように、高い買い物リストを押しつ
けられるのではないか。

 安倍首相時代は米国との集団的自衛権行使容認を閣議決定、オスプ
レイやF35ステルス戦闘機などを爆買いした。岸田首相は敵基地攻撃
のために長距離巡航ミサイル「トマホーク」の爆買いを決め、防衛予算
を倍増させる方針だ。これまで5年間で25兆円余だった防衛費はこれか
らの5年間で60兆円にされる(本紙、12月31日)。

 岸田首相、保守リベラル標榜の「宏池会」会長ながら「専守防衛」の
思想からすでに逸脱。いまは右派「安倍派」操作のロボットか。「戦争
の永久放棄」。この世界に冠たる平和憲法の下で、戦争準備を公然と
進める。
 米国の戦争は日本の「存立危機事態」。緊急事態に於ける基本的人権
の侵害が、ワイマール憲法下、ヒトラー「全権委任法」の突破ロに
なった。
 「敵基地攻撃能力の保持」。敵の攻撃の「着手」 段階で反撃する。
 岸田政権、いまもっとも危険な政権だ。
  (2023年1月10日「東京新聞」朝刊23面「本音のコラム」より)

◆沈思実行(129)
  増税論よさようなら
  「軍備増強のための増税」は絶対反対

                   鎌田 慧

 岸田ゾーゼイ首相の人気は、ますます落ち目。べつに期待していた
わけではない。
 が、安倍派の「清和会」があまりにも酷かったし、後継の菅は、陰気
だった。岸田は「軽武装・経済優先」の池田勇人由来の「宏池会」会
長。リベラルな派閥が売り物だった。
 が、いまやおなじ穴のムジナ。いきなり「国葬」を打ち上げ、全国的
な「国葬反対」運動を引き起こした。閣僚の辞任続きでボロボロ。やる
ことなすこと世論を刺激し、ついに増税。それも軍備強化のためだから
安倍亡霊の支配のまま。

 台湾有事=日本有事。このフィクションを宣伝、とにかく米軍需
産業の廃品を大量に買いつける、アメリカ完全中毒。
 「新たな脅威に対し、日本人の暮らしと命を守り続ける」との危機感を
前置きにして「責任ある財源を考えるべきであり、今を生きる国民が
自らの責任として、しっかりその重みを背負って対応すべきである」と
岸田ご託宣。

 なぜ、戦争が「自らの責任」なんだ。戦争をさせないのが、お前の
責任じゃないか、と猛然たる批判があがった。生活を犠牲にして軍備を
強める。戦争国家に逆走する悲惨。安倍・菅・岸田の地獄への三段跳び。
 昔、ある首相は、しもじもの家庭のごみ箱を開けて歩いたとの伝説を
つくった。それでも戦争をやった。
 政治家三代目の岸田首相も、高級割烹での密談にふけるばかり
でなく、巷に満ちている生活苦の生の声を聴いて歩いたらどうか。

 スーパーの時間切れ割引食品を買い、電気料金を節約のためテレビ
もよほどでなければみない。新聞は図書館で見る。年金が下がって、
医療費が上がった高齢者の生活防衛策。
 「復興特別所得税」の一部を「防衛目的税」に流用して、期間を長期
化させる。「復興」を食い物にするな。だれも増税に賛成していない。

 米軍ともども戦う「集団的自衛権」を行使せず、「敵基地攻撃」の
準備のためのミサイルを買わなければ、防衛費倍増は必要ない。
 「軍事増強のための増税」は絶対反対。この運動を強めよう。
      (週刊「新社会」2022年12月28日第1288号)

〔557〕ドイツから届いた待望のお年玉『ラインベルガーと弟子と同時代の作家たち』とオリジナル・カレンダー。

2023年01月09日 | 美術鑑賞
 このブログでお馴染みの、マティアス・ヴェニガー博士(ミュンヘンのバイエルン国立博物館)から届いたのは1月初旬、クリスマスプレゼントではなく大人のお年玉でした。ずっしりと重い大冊『ラインベルガーと弟子と同時代の作家たち』(um leinberger Schüler und Zeitgenossen )と手作りカレンダーです。
 カレンダーは以前にも何回か送られてきましたが、すべてご自身で撮影された写真が使われています。ドイツだけでなくフランスやイタリアなどヨーロッパ各地に足を伸ばして、ゴシックの彫刻を中心に、様々な芸術作品、風景や昆虫などもカメラに収めています。その写真は玄人はだしで、美術館のカタログに掲載されることも多いのです。
 今回はその表紙だけご覧ください。





 もう1冊の『ラインベルガーと弟子と同時代の作家たち』は私どもが喉から手が出るほど欲しかったものでした。
 昨年7月刊行された写真集第Ⅴ巻『結・祈りの彫刻-リーメンシュナイダーからシュトース』(福田緑・福田三津夫、丸善プラネット株式会社)にはドイツ後期ゴシック彫刻の作家列伝を書き込みました。しかし、それにまつわる日本語文献はリーメンシュナイダー以外はほぼないといっていいので、底本としたのはドイツ滞在中に「発見」した、ドイツ出版の作家ごとの図録(カタログ)でした。十数回の渡独でかなり収集できたのですが、どうしても手に入らなかったのがファイト・シュトース、ミヒェル・エーアハルト、ハンス・ムルチャーの3巨匠でした。
 昨年のドイツ旅行中にアイゼナッハの友人からファイト・シュトースの写真集をいただいたことはブログに書いたとおりです。残るはミヒェル・エーアハルト、ハンス・ムルチャーの図録です。

 ところでもう一人の気になる作家はハンス・ラインベルガーです。後期ゴシック最終盤に現れた個性派彫刻家です。写真集第Ⅴ巻では手帳ほどの小さな図録を紹介しているのですが、大きな図録には巡り合っていなかったのです。
 そんなときヴェニガーさんから連絡が入りました。2007年にランツフート(ラインベルガーが活躍した町)の博物館が展覧会開催時に出版した図録があるというのです。しかも彼もこの展覧会・図録づくりに深く関わっていて、論文も掲載されているのです。ご厚意に甘えてこの大部な図録(350頁、A5版)を送ってもらうことにしました。写真は本のサイズが大きすぎて若干まわりが欠けています。

 この本が届いてから、重量感たっぷりの本の頁をまさに舐めるように捲りました。不思議なことに片言のドイツ語を知っているだけでもいろいろのことが読み取れるのです。時々緑に助けを求めました。
 この本には写真集第Ⅴ巻で紹介した小さな図録に掲載されているラインベルガーの代表作品を含めて、おそらく優に百以上の作品が収められています。とりわけ興味深かったのはラインベルガー派といっても良いと思うのですが、「アルトエッティングの扉のマイスター」や「ラーベンデンのマイスター」などが取り上げられていることです。その詳細についてはドイツ語の壁にたじろいでいるところです。

〔556〕きな臭い今だからこそ見て欲しい、映画「金子文子と朴烈」と「わが青春つきるとも-伊藤千代子の生涯」。

2023年01月04日 | 映画鑑賞
 明治維新(1868年)から敗戦(1945年)までが77年、敗戦から昨2022年までも丁度77年でした。今年2023年はどのような新しい77年の始まりになるのでしょうか。
 2020年、全世界は瞬く間にコロナ禍に見舞われました。2022年2月24日、ロシアのウクライナ侵略が開始されました。多くの犠牲者を生み、このコロナ禍の中、戦争をしている場合かと私は心の中で叫びました。
 岸田政権はウクライナ危機に乗じて、敵基地攻撃能力の保有、防衛費の2%を宣言、原発の再稼働、新増設も公言しています。新しい戦前の始まりか、とどこかの新聞の声の欄にありました。

 こんなきな臭い情況のなか、戦前の軍国主義日本とは何だったのか、深く問い返すきっかけになった2本の映画に出合いました。「金子文子と朴烈」と「わが青春つきるとも-伊藤千代子の生涯」です。おすすめの2作品です。
 とりわけ素晴らしかったのが『金子文子と朴烈』です。韓国映画で韓国で235万人を動員したといいます。まずはウィキペディアをご覧ください。

◆『金子文子と朴烈』(かねこふみことパクヨル、原題:박열(→朴烈))は、朝鮮と日本で活動したアナキスト(無政府主義者)の朴烈と、朴に共鳴した日本人女性アナキスト金子文子を描いた韓国の歴史映画、伝記映画。(ウィキペディアより)

 1923年の関東大震災朝鮮人虐殺事件や朴烈事件がとりあげられている。2017年6月28日韓国で劇場公開され、1週間足らずで観客動員数100万人を記録した。日本では2018年3月9日に第13回大阪アジアン映画祭にて『朴烈 植民地からのアナキスト』の邦題で初公開後、2019年2月に『金子文子と朴烈』と改題されて一般公開された。


 大逆事件といえば大杉栄と伊藤野枝が有名ですが、金子文子と朴烈も忘れてはいけないでしょう。鎌田慧さんの名著『大杉栄 自由への疾走』や『大杉榮語録』(いずれも岩波書店)などは読んでいたのですが金子文子と朴烈については無知でした。
 韓日の役者が入り乱れての作品でしたが、とりわけ金子文子役のチェ・ヒソが秀逸でした。
 23歳で縊死した金子文子の獄中手記『何が私をこうさせたか』(岩波文庫)にはぐいぐい引きつけられます。その生い立ちの過酷さと半端でない文章力。



 さらに、私設のK文庫から借りてきた3冊の関連本を読み切るつもりでいます。
*『金子文子と朴烈』鑑賞、12月25日、東村山福祉センター、凸凹映画研究会。







 瀬戸内寂聴の『余白の春』は事実に基づいた秀逸な伝記小説です。金子文子の獄中手記を読む前に『余白の春』を読むことをお勧めします。金子文子の全体像が良くわかるものになっています。瀬戸内のあとがきによると、管野須賀子のことを『遠い声』として小説に書いていますが、他の雑誌が敬遠するなか掲載してくれたのは鶴見俊輔の『思想の科学』だったそうです。連載が終了したとき鶴見は瀬戸内に今度は金子文子のことを書いてほしいと言ったそうです。その提案を実現したのが『余白の春』でした。そういえば、鶴見の『ひとが生まれる-五人の日本人の肖像』(ちくま文庫)には中浜万次郎、田中正造などとともに金子文子についても書かれていたのでした。読んだはずがうっかり失念していました。そもそもこの本はこのブログでお馴染みの矢部顕さんからいただいたものだったのです。
 金子文子の決定版評伝を書いた山田昭次さんは清瀬・憲法九条を守る会のメンバーが良く知る方でした。確かにこの本は金子文子の全生涯・思想を克明に記した決定版評伝に違いありません。膨大な裁判記録なども丁寧に読み解いています。その仕事にはただただ脱帽です。

 そして映画「わが青春つきるとも」、鑑賞、11月10日、清瀬けやきホール、映画上映清瀬実行委員会。
 上映のチラシと中日新聞の記事を紹介しましょう。



◆女性社会活動家描いた 映画「わが青春つきるとも」中日新聞
2022年5月14日 15時35分 (5月14日 15時40分更新)

 昭和初期、「主権在民」や「男女平等」を訴え、思想犯罪者として逮捕された女性の社会活動家を描いた映画「わが青春つきるとも―伊藤千代子の生涯―」が十三日から、名古屋市東区の名演小劇場などで公開されている。
 時代は治安維持法が成立した一九二五年ごろ。長野県湖南村(現・諏訪市)出身の千代子(井上百合子)はこの年、東京女子大に入学。「社会科学研究会」の立ち上げに尽力し、社会主義に傾倒する。
 無産政党「労働農民党」で活動をしていた浅野(窪塚俊介)と結婚。共産党に入党し、選挙の応援やビラ張りなど活動に本腰を入れたが、政府の弾圧により逮捕され、激しい拷問を受ける。獄中でも女性リーダーとして同志を励ましたが、次第に追い詰められる。
 監督は社会派の桂壮三郎。主演の井上は、本作で映画デビューとなった。金田明夫、石丸謙二郎、竹下景子らが脇を固める。(花井康子)