後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔686〕『竹久夢二の世界』(王文萱著、藤原由希訳、パイ・インターナショナル出版)は中国語を日本語に翻訳した格好の夢二ガイドブックです。

2024年04月27日 | 図書案内

 台湾でも夢二を知る人は多く、人気もあるといいます。しかし、夢二の中国語文献は少なかったため、2022年、まず台湾で出版されました。本書はその出版の2年後、今年の2月に日本で翻訳出版されたものです。
 夢二といえば美人画が有名ですが、その他にも児童向け作品、少年少女画、図案・商業デザイン、雑誌の表紙と挿絵、書籍の装丁、楽譜の装丁、挿絵・漫画、人形作品などのマルチアーティストとして名を馳せています。本書は、現代でも十分通用する洗練された絵画がふんだんにちりばめられていて、それをくつろいで眺めるだけで楽しくなります。お茶の間美術館絵本といった趣でしょうか。

 夢二という人物にも興味をそそられます。幸徳秋水主宰の平民社に出入りし、社会主義的な考えも持ち合わせていたのでしょうか。また、自由恋愛主義とでもいうのでしょうか、多くの女性と浮き名を流したことも知れ渡っています。アナキスト・大杉榮との類似性もあるのでしょうか。それゆえ、美人画に付き合った女性たちの面影を見ることができるのは感慨深いところがあります。


■ 大正ロマンを輝かせた、竹久夢二の人生と作品(アマゾンのサイトより)

西欧の文化や思想が、人々の暮らしに大きな変化をもたらした大正時代。「夢二式美人」をきっかけに人気を博した夢二は、ジャンルの垣根を越え、庶民の暮らしに芸術を浸透させていきました。本書では、人生と作品という2つの視点から、夢二の作品を読み解きます。独学で芸術を学んだ夢二が、どのようにマルチアーティストとして活躍するようになったのか、そのルーツと全貌を美しい図版と共にたどります。


〔685〕『人生、挑戦・嫌煙権弁護士の「逆転法廷」』(伊佐山芳郎、花伝社)読んでみました。

2024年04月25日 | 図書案内

 ブログで少し前に、渡辺文学さんの『日本の嫌煙権運動45年史』(花伝社)を紹介しました。その本の末尾に宣伝されていたのが『人生、挑戦・嫌煙権弁護士の「逆転法廷」』です。この本はまさに渡辺さんの紹介で、花伝社からの出版が実現したと書かれていました。
  伊佐山芳郎さんといえば『嫌煙権を考える』『現代たばこ戦争』(いずれも岩波新書)が代表的な著書で我が家の本棚にも並んでいます。言わずと知れた嫌煙権運動で中心的役割を担われた弁護士です。ボランティアとしての参加で、一切報酬はもらわなかったということです。
  その彼が、どのような人生を歩み、それをどう総括されるのか、興味を持って読み進めました。

  2部構成です。前半は「逆転法廷への挑戦」として「強姦致傷被告事件の逆転無罪判決」「ピアノ演奏の差し止め裁判」など六つの事例に言及されています。後半は自身一番力点を置いたであろう嫌煙権問題を「受動喫煙被害は人権侵害」という視点から書き連ねています。
 おもしろかったのは、「反嫌煙権の珍説・暴論」の件でした。
・福田恆存「常識では思ひも付かぬさういう狂った世情」
・澤田ふじ子「精神文化の停滞と卑小が、原因にある」
・小室加代子「「間接喫煙ぐらいでシボむ花ならポイ」
  …(略)

 自らの来し方を総括するときの参考になりそうな本でした。


■アマゾンのサイトより
『人生、挑戦・嫌煙権弁護士の「逆転法廷」』 単行本 2021/9/22
伊佐山 芳郎 (著)

弱者のために、社会のために――
タバコをめぐる社会認識を塗りかえた嫌煙権運動
旗振り役となった弁護士、挑戦の45年

*推薦
「受動喫煙被害の深刻さと対策の遅れの原因に迫る、渾身の論稿! 」渡辺文学氏(「禁煙ジャーナル」編集長)
「現場主義に徹し法廷に挑む姿勢 若き法律家にお薦めの一冊」古城英俊氏(弁護士)
「70歳を過ぎてピアノコンクールにチャレンジ Bronze賞は驚き! 」ミハウ・ソブコヴィアク氏(ピアニスト・福島学院大学教授) 


〔684〕無料上映「地の群れ」と「PLAN75」と鎌田慧講演会のお知らせです。

2024年04月23日 | 映画鑑賞

 清瀬在住の佐藤夫妻が主宰する凸凹映画研究会は、月一回映画の無料上映会を開いています。会場費の安さから東村山中央公民館などで開催されることが多いようです。最新の清瀬市議ふせ由女が発行する「ゆめ通信」にその活動が紹介されたことがありましたが、その「ゆめ通信」をこのブログで取り上げました。良かったら探してみてください。
 このブログでは「地の群れ」と「PLAN75」を紹介します。
 
 さらに、鎌田慧講演会のお知らせです。こちらも入場無料・申込不要です。どうぞお誘い合わせのうえご来場ください。当日お会いしましょう。

 


〔683〕腰越・憲法9条の会で、次期戦闘機輸出に関するチラシを作成しました。」(塚越敏雄さんより)

2024年04月23日 | メール・便り・ミニコミ

●いつもお世話になります。腰越・憲法9条の会で、次期戦闘機輸出に関するチラシを作成しました。ご覧下さい。塚越敏雄             

 

 

◆原告から被告にされた男
                    鎌田 慧(ルポライター)

 東京電力・柏崎刈羽原発の燃料装填、さらには東北電力・女川原発の
再稼働の準備が進められている。
 岸田政権の財界追随の「原発回帰」政策だが、あまりにも現実無視、
無責任にすぎる。
 来週22日、東京地裁606号法廷で「避難住宅追い出し訴訟」の公判
がある。
 被告は福島県いわき市からの避難者で、国と東電を訴えた訴訟で原告
団長を務める鴨下祐也さん(55)である。

 いわき市は福島原発から40キロ離れていて避難地域にされなかった。
国立工業高専の教員だったが、学生の時、放射性物質を扱っていた鴨下
さんは、危険を察知して親子4人で東京に自主避難、100世帯以上の人た
ちと「ひなん生活をまもる会」を結成して、補償のない白主避難者とし
て、避難住宅に入居していた。

 ところが2022年3月になって、東京都から一方的に立ち退きを要求さ
れ、代表の鴨下さん一人が裁判に訴えられた。
 突然、避難を命じられた強制避難者も自主避難者も汚染と被曝の恐怖
を背負って生活してきた。
 「自宅を去って、避難住宅から追い出されるというのは心身を破壊さ
れます。まして裁判に訴えられるなど恐怖です」。
 原告から被告にされた鴨下さんの苦悩である。
 原発から30キロ以上の人びとの不安を切り捨て、補償の埒外(らちが
い)におく政策ひとつを見ても、原発は人間社会には無理なのだ。
                (4月16日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」)


〔682〕映画「かづゑ的」を観て心震え、『長い道』(宮﨑かづゑ、みすず書房)読んで心に落ちました。

2024年04月21日 | 映画鑑賞

   映画「かづゑ的」の主人公は、瀬戸内海の長島にあるハンセン病療養所長島愛生園に70年以上暮らす宮﨑かづゑさんです。冒頭から圧倒されるシーンに遭遇します。かづゑさんは、私のすべてをさらけ出したいので、入浴シーンを撮って欲しいと言うのです。監督であるインタビューアーはためらいつつそれを実行することになるのです。
  ハンセン病後遺症に悩むみづゑさんは、しかしながら、明るく豪快に生き抜いているように私には映りました。実に清々しい映画です。鑑賞をお勧めします。 
 鎌田慧さんは東京新聞の「本音のコラム」にも紹介されていましたし、朝日新聞でも映画評が掲載されていました。


■ 「私、みんな受けとめて、逃げなかった。」(映画「かづゑ的」公式サイトより)

瀬戸内海にある国立ハンセン病療養所、長島愛生園。

宮﨑かづゑさんは10歳で入所してから約80年、ずっとこの島で生きてきた。病気の影響で手の指や足を切断、視力もほとんど残っていない。それでも、買い物や料理など周囲の手を借りながらも自分で行う。

「本当のらい患者の感情、飾っていない患者生活を残したいんです。らいだけに負けてなんかいませんよ」と力強く語るかづゑさん。患者同士のいじめに遭い、つらかった子ども時代。家族の愛情と、たくさんの愛読書が、絶望の淵から引き上げてくれた。そして夫の孝行さんと出会い、海沿いの夫婦寮で自然とともに暮らしてきた。

かづゑさんはいつも新しいことに挑戦している。そしてどこか可愛いらしい。78歳のときにパソコンを覚え、84歳になって初の著作となる『長い道』(みすず書房)を出版。類まれな表現力で日常を瑞々しく綴り、版を重ねている。

90歳も半ばになったかづゑさんは言う、「できるんよ、やろうと思えば。」

●熊谷博子監督メッセージ

宮﨑かづゑさんは、私が初めて会ったハンセン病の元患者さん(回復者)でした。
信頼する知人に、会わせたい人がいるからと、半ば強引に長島愛生園に連れていかれました。10歳からハンセン病療養所で生活している、という人に。その日々の暮らしを描いた著書「長い道」を会う前に読み、大変心をうたれました。かづゑさんの部屋で話しながら、この人生を撮って残しておかねばと心に決め、2016年から愛生園に通い始めました。それから8年間、私たちはカメラとマイクを携えて、かづゑさんの人生に伴走することになりました。この映画はハンセン病を背景にしていますが、決してハンセン病だけの映画ではありません。人間にとって普遍的なことを描いたつもりです。                             

    映画「かづゑ的」を観たのは昨年末のことでした。
  そして、先頃、宮﨑かづゑさんの著書『長い道』を読むことができました。2012年発行、2019年6刷となっています。

●みすず書房(公式サイトより)
著者は1928(昭和3)年生まれ。10歳で瀬戸内海に浮かぶ島、長島のハンセン病療養所長島愛生園(現・岡山県瀬戸内市)に入園、以来70年余をこの地で暮らす。22歳で療友と結婚後は園内で働く夫を主婦として支え、様々な後遺症を持ちながら、家事と読書を楽しんで慎ましく暮らしてきた。
「本は親友だったけれども、自分が書くなんて思ってもみなかった」が、80歳を迎える頃から習いおぼえたワープロで少しずつ、瑞々しい文章を生みだしていく。
家族の愛情に包まれて過ごした幼少期。発病によって故郷を離れ、孤児のような気持ちで過ごした少女時代。『モンテ・クリスト伯』を読みふけり、大海原に心遊ばせた十代。夫のために料理をし、ミシンをおぼえ裁縫に精出した日々。心の支えだった親友の最期。遠い道のりをいつまでも会いにきてくれた母への思い。
故郷の暮らしを細やかに綴った「生まれた村で」、長島での日々を語る「島の七十年」(聞き手・伊藤幸史神父)、親友の看取りの記「あの温かさがあったから生きてこれたんだよ」(『愛生』連載)他を収録。

著者の生き方と言葉に深くうたれ、交友がはじまった料理研究家・辰巳芳子さんとの対談「生きなければわからないこと」を巻末に付す。


  数多くのメディアで取り上げられたのも納得がいきます。80歳過ぎてからワープロを駆使して綴られた実に瑞々しい文章です。ハンセン病という名称にはなじめないと書かれていたり、長島愛生園の初代園長・光田健輔氏に向けられた批判への違和感なども読めて興味深かったです。こちらも一読をお勧めします。


〔681〕今、私の最大の美術的関心事は「石川雲蝶の彫刻と絵画作品巡り」です。

2024年04月16日 | 美術鑑賞

 ドイツ語圏を中心とした後期ゴシック彫刻を、十数回妻と巡ってきたことは、このブログでもたびたび書き連ねてきました。来年の夏には家族や友人も連れだって、新たな旅立ちを考えているところです。今年はパリ・オリンピックもあることだし、ドイツ旅行は自重しようと考えているのです。
  そこで、今年は久しぶりに国内の旅行を準備しています。なんでも鑑定団の中島誠之助さんが「越後のミケランジェロ」と讃えた石川雲蝶の彫刻絵画巡りの旅です。絵画と彫刻の二刀流といえばミケランジェロもしかりですが、中世ドイツではハンス・ムルチャーかミヒャエル・パッハーでしょうか。私にいわせれば雲蝶は「日本のパッハー」ということになりそうです。

 早速参考になる資料をあさり始めました。ネットで文献調査したところ、それほど多くの雲蝶関連図書は見つかりませんでした。『越後の名匠 石川雲蝶』と『私の恋した雲蝶さま』が気になる本として現れてきました。色々検討してこの2冊をアマゾンで購入しました。

■『越後の名匠 石川雲蝶』木原尚、新潟日報事業社、増補改訂版、2019年

■『私の恋した雲蝶さま』中島すい子、現代書館、2014年

 この2冊を読み進めるとおもしろいことがわかってきました。
  雲蝶は江戸雑司ヶ谷鬼子母神(現在の東京豊島区)に1814年生まれ、1883年に70歳で越後の三条(現在の新潟県三条市)で亡くなっているのです。雑司ヶ谷鬼子母神は実家からも近く、親戚が住んでいたところです。池袋からもすぐのところです(鬼子母神の鬼は、正しくは漢字の角がないのですが)。
  雲蝶は江戸で彫刻の修行をしたようですが、作品はほぼ残されてないようです。当時、天保の改革で綱紀粛正、華美が取り締まられため、江戸での活躍の場がなく、越後の人(本成寺の檀徒総代)に求められて、越後に赴いたようです。越後には膨大な作品群が残されています。

 雲蝶の代表作は、どうやら西福寺の天井彫刻「道元禅師猛虎調伏之図」といわれているようですが、私はむしろ永林寺の欄干の三天女を勧めたいと思います。『私の恋した雲蝶さま』の表紙の写真が素敵ですが、まさにこれが天女像です。
  雲蝶巡りをするなら西福寺と永林寺(魚沼市)、そして本成寺(三条市)は外せません。本成寺は雲蝶が最初に手がけたお寺で、お墓もここにあります。
 その他にも見どころは山積していますが、『越後の名匠 石川雲蝶』が最高のガイドブックになることは間違いないでしょう。これを手引きに、旅程を決めたいと思いますが、30以上の社寺を全部巡ることは不可能なので、二,三泊で回れる限りというのが現実的なところでしょうか。夏場の楽しみが増えました。

   ところで、私の大好きな世界的浮世絵師、葛飾北斎は後年、江戸から長野の小布施に呼ばれ、竜の天井画など多くの作品をここに残していますが、雲蝶も似たような経歴を辿ったのが興味深いところです。


〔680〕「図書館とは公共の文化的福祉に大きく寄与する市民交流の場ではなかったのですか❓」溜口郁子さんの投稿です。

2024年04月16日 | 市民運動

 清瀬・憲法九条を守る会、清瀬・くらしと平和の会の溜口郁子さんが、フェイスブックに以下のような投稿をしました。清瀬市議会を傍聴し、その場でメモをとったようです。お見事! 以下紹介します。 

【清瀬市図書館条例の一部改正案強行可決について】
★図書館とは公共の文化的福祉に大きく寄与する市民交流の場ではなかったのですか❓(図書館削減は各地で始まっているとか。)

3月28日(木)、清瀬市議会は市内図書館が6館あるうちからわずか2館に減らす改正案を強行可決してしまいました。賛成11反対8でした。しかもこのことは、予算案賛成議員にだけ伝えて、反対した無所属市民派布施ゆめ議員と共産党議員や、市民にこのことを隠しながらパブコメを行った上でのことでした。それを知った市民たちがわずか2週間で署名を集めて、澁谷桂司市長に議会最終日前の26日㈫に要請書と共に提出しました。このような進め方をする自民党澁谷市政の暴政は自治体に混乱を招くばかりです。

28日(木)の議会最終日はこの改正案について共産党の佐々木議員から継続動議が出されたのち賛成、反対の各議員から意見が交わされました。反対意見は共産党、生活者ネット、無所属議員などから出されて、その内容は、
・図書館を減らす代わりの図書宅配サービス(システム化には1億円かかるとか。は〜?です。)は、地域図書館の代わりにはならない。
・図書館法に違反する。
(図書館は,通時的に見る ならば,記録資料の保存,累積によって世代間を通しての文化の継承,発展に寄与する社会的記憶装置であり,共時的には,社会における知識や情報の伝播 を円滑にするコミュニケーションの媒介機関としての役割を果たす。)
・運送業者の状況が後退しているなかでニーズの上でもコスト面でも非常に疑問である。
・十分な説明もなく反対意見もあるなかで、これほど急がなくてはならない理由は?
・先人からの遺産であり、豊かな(知識)環境を育むことに寄与したものである。
・子ども達が質の高い教育を平等に与えられる場である。
・図書カード利用者が人口の13%というが、利用者を増やしてこなかった市の責任が問われる。
・(残されるのは中央図書館(こちらは名称改名予定)と駅前図書館ですが。)駅前は有料の自転車置き場しかないこと。(まして離れた地域の老人は通えなくなります。)
・本市には公民館がなく社会教育の場がないことに心を痛めてきたのに。
・これを聞いて(中国における)焚書坑儒(ふんしょこうじょ)を思い出した。ナチスドイツも思想弾圧のために本を焼いた。
など様々な意見が出されました。賛成意見は少子高齢化の非常に財政が厳しい清瀬市財政を思えば、とありましたが、少子高齢化の準備を怠り、海外にお金をばら撒いてきた第一次第二次安倍政権など自民党政権の責任は大きいのです。そのしわ寄せの図書館削減とは。岸田政権が軍事費強化に傾いているせいでもありますね。
2021年に開庁した清瀬市新庁舎は54億円強もの巨額費用をかけて建てられましたが、それと比例するように地域センター削減もしだしてきたさなかの図書館大幅削減です。
各地で起こり出しているというこのことは、まさに戦争準備拡大のなかさらに拡大するのではないでしょう。皆様、くれぐれもご用心を❗

 今朝ポストを覗いたら、「地域図書館の廃止 市民の声 聞かないまま可決」という日本共産党・清瀬市議団NEWSが入っていました。たんぽぽ舎のメルマガに掲載されていた鎌田慧さんと前川喜平さんのコラムもお読みください。

  ◆岸田首相が軍事大国ニッポンへ    沈思実行(189)
 人を殺して金儲けする武器商人国家は平和憲法の放棄だ
                           鎌田 慧

 3月下旬のこの欄で、戦闘機輸出を狙う岸田首相を「羊の皮を被った
狼」と批判した。ついに3月26日、国会にはかることなく、政府の国家
安全保障会議で「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定、戦闘機の輸出
解禁を決定した。集団的自衛権行使の容認、敵基地攻撃能力の保有に次
いで、武器輸出の決定。
 岸田首相は平和国家のプライドをかなぐり捨て、一挙に軍事国家に
変身させた。

 1976年、三木武夫内閣のとき、先に佐藤栄作内閣が決定していた、
共産圏や紛争当時国への武器輸出の禁止を、さらに厳格化して「武器輸出
は謹む」との政府統一見解を決めた。
 それは半世紀ほど守られてきたのだが、2014年、安倍晋三首相が「移転
禁止先の明確化」などの条件つき、「防衛装備移転三原則」を決めた。

 この時からの後ろめたさからか、「防衛装備移転」などという大衆
欺瞞語を使いはじめた。
 が、今回は「現に戦闘が行われている国は除外する」との原則を緩
めて、大量殺人が可能な戦闘機の輸出を認めたのだ。

 人を殺して金儲けをする「武器商人国家」となる今回の決定は、
平和主義を掲げる憲法の理念の放棄であるばかりでなく、その放棄が
国会での討論を踏まえることのない、政府の独断だった。民主主義的な
手続き無視の暴政だ。
 昨年12月にも、武器輸出規制を緩和して、ライセンス生産国への輸出
が可能とされ、地対空ミサイル「パトリオット」の米国輸出を決定して
いる。
 輸出拡大は兵器メーカーの最大の欲望であり、三菱重工業、IHI
などの悲願だった。

 岸田内閣は、有事の際には自衛隊が空港や港を使用できる、那覇
空港など16カ所の「特定利用空港・港湾」の指定も狙っている。

 さらに在日米軍の機能強化のために、自衛隊との「指揮系統」を
連携させる方針や米太平洋艦隊司令官を日本に派遣する案も浮上して
いる。
 平和憲法下の軍事大国化は、矛盾であり欺瞞、かつもっとも危険
な方針だ。

 前々回で紹介した宮崎かづゑさんの「遠い道」は「長い道」の誤り、
訂正してお詫び致します。
                      (4月10日発行「週刊新社会」より)

  ◆政治家小池百合子の命運
                                 前川喜平(現代教育行政研究会代表)

 小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑が再燃している。火を付けたの
は小池氏の元側近小島敏郎氏とカイロでの元同居人北原百代氏が文芸春
秋5月号に寄せた手記だ。
 小島氏によれば、前回の都知事選前の2020年5月末に出版された石井
妙子著「女帝 小池百合子」でカイロ大学卒業の学歴を虚偽と指摘され狼
狽(うろた)えた小池氏が、小島氏の発案により、元ジャーナリストA氏
に文案を作成させて、小池氏のカイロ大学卒業を証する同大学長名の
「声明」を作成、駐日エジプト大使館のフェイスブックに載せてもらった
のだという。
 これは私文書偽造罪に該当する疑いがある。
 「声明」は単に小池氏の学歴を証するだけでなく、卒業証書の信憑性
に疑義を呈することは「名誉毀損(きそん)であり、看過することができ
ない」と警告し、モハメドオスマンエルコシト学長のサインと大学の公
印らしきものが記されていた。同大学のホームページを見ると、確かに
現学長の名は「モハメド・コシト博士」となっている。
 犯罪の疑いが生じた以上、検察はカイロへ飛んで大学当局及びコシト
学長から事情を聴取すべきだ。検察が動かないならメディアが行って真
相を確かめるべきだ。
 選挙公報で学歴を偽れば公職選挙法違反にもなる。
 政治家小池百合子の命運が尽きる日も近いかもしれない。
                (4月14日「東京新聞」朝刊19面「本音のコラム」)


〔679〕『天使のいる教室』『天使たちのカレンダー』そして『天使たちのたんじょう会』にまつわるあれこれの話です。

2024年04月15日 | 図書案内

 宮川ひろさんの児童文学『天使のいる教室』(童心社、1996年)を池袋のブックオフで見つけたとき、奥付に「取材協力:板橋区立大山小学校・佐藤静子学級」とあったのでためらわず購入しました。
 1972年、北区立滝野川第六小学校で教師生活をスタートさせた私は、教師としての力量のなさを自覚し、様々な教育関連書(村田栄一さんの本が最も刺激的でした)を読みあさり、近場のサークルに教職一年目の秋から参加しました。職場の同僚の紹介で日本生活連盟(日生連)の火曜会を知り、そこで山口(福田)緑とも出会います。
 火曜会の指導的立場にあったのが鈴木孝雄さんで、当時板橋市立志村第六小学校に在職し、緑の学年主任でした。『学級文化活動と集団づくり-学級新聞“ブタとアヒル”の物語』(明治図書、1967年)を若くして著し、教育界ではすでに著名な方でした。我々の結婚式においでいただいたのですが、働き盛りで残念ながらその後亡くなられたのでした。ちなみに、お連れ合いの鈴木桂子さんも教師で、若い女性教師と私の教室を訪ねてくださり、授業を見てくださったのでした。彼女も残念ながら若くして亡くなられます。
  実は、佐藤静子さんも志村第六小学校で緑の同僚で、日生連に参加していました。お連れ合いの佐藤功さんは『とんねる学級物語』(明治図書、1970年)の実践記録を公刊されています。のちに、清瀬市立清瀬第七小学校の校内研究会においでいただいたことがありました。
 鈴木孝雄さんは志村第六小学校から板橋区立大山小学校に異動になり、在職中に亡くなられたと思います。佐藤静子さんもその学校で教鞭を執られました。そこでの実践が、『天使のいる教室』に描かれたのです。著者は宮川ひろさん。数年間板橋区などで教員として働いていました。『先生のつうしんぼ』(偕成社)など児童文学を多数執筆されています。
  ここでの佐藤静子実践は、日生連よりむしろ日本文学教育連盟(文教連)の影響を強く受けています。

 『天使たちのカレンダー』は静子さんのご友人のいらした板橋区立赤塚新町小学校・五組の実践がもとになっています。1998年発行。

 さらに『天使たちのたんじょう会』は再び佐藤静子実践が下敷きになっています。2012年発行。この本のあとがきには佐藤静子さん本人の文章も収録されています。

 3冊の絵を描いたのはいずれもましませつこさんです。くしくも清瀬市在住の挿絵画家さんでした。

  これらの3冊の本は、子どもたちだけでなく、親の皆さんや教師たちにも読んでもらいたい本です。図書館におくこともお勧めします。


〔678〕腰越九条ニュース「日本の殺傷兵器 輸出拡大へ」(212号)が届きましたよ。

2024年04月13日 | メール・便り・ミニコミ

 鎌倉の塚越敏雄さんから腰越九条ニュースが届きました。「日本の殺傷兵器 輸出拡大へ」(212号)です。拡大してお読みください。

 ■いつもお世話になります。
腰越9条ニュース4月号ができましたのでお送りします。
次期戦闘機について書きましたが、それについてのチラシも作成中です。

                          塚越敏雄


 ◆沈思実行(188)
  靖国再稼働の野望NO
  海上自衛隊の元海将(海軍大将)が靖国神社の宮司に就任した

                         鎌田 慧

 2013年に強行採決された「特定秘密保護法」は、知る権利や研究・報
道の自由を規制する悪法として、日弁連などが強く反対した。
 その後の「身辺調査」の動きは深く潜行している。どのような保護の
成果になったかは明らかでない。
 11年が経って、今度はその経済版である「重要経済安保情報保護法
案」が、衆院本会議で審議入りした。特定秘密の上に、さらに半導体製
造や宇宙開発など、企業の「重要経済情報」の漏洩が処罰の対象になる。

 この間、警視庁公安部による大河原化工機の会社幹部が「経済安保」
の犠牲になったことが明らかになった。同社の噴霧乾燥機の輸出は、生
物兵器の製造に転換可能だ、としたのは「捏造」、「冤罪」だった、と
現職警部補が暴露した。これから経済安保の名目での拡大解釈が増え
そうだ。

 前々回に書いた「防衛装備品の第三国移転」という名の「戦闘機輸
出」。れっきとした武器輸出だが、三菱重工などの兵器産業の要請に応
じて、岸田内閣が「現在、戦闘が行われていると判断される国へ移転す
る場合を除く」との但し書き付きで、戦闘機の輸出を解禁する。

 プーチンのウクライナ侵攻やネタニヤフのガザ侵攻では、戦闘機より
も無人機が「活躍」している。それを見れば、大枚はたいての新型戦闘
機開発がどれだけの意味があるのか。
 平和憲法は戦闘行為厳禁。共同開発国の英伊がその戦闘機で人殺しを
しても、「戦闘は行われていない」と責任を回避するのか。

 そればかりか、戦時体制に備えたかのように、自衛隊幹部が靖国神社
に集団参拝している。さらに今度は、海上自衛隊の元海将(海軍大将)が
天下りかのように靖国神社の宮司に就任する。
 靖国神社は日本軍人の教育支柱、陸海軍所管の国家施設だった。
 が、今は戦犯も祀る一宗教法人に過ぎない。戦争反対の兵士までも、
強制的に祀ったとして離脱を求める裁判も起きている。首相の参拝は、
政教分離の原則に違反する。

 靖国神社はこれから来る自衛隊員を、元海将が迎え入れる、憲法違反
の装置となるのか。    (4月3日発行「週刊新社会」第1349号より)


〔677〕入手しにくい『神奈川大学評論』と『星火方正』を紹介します。

2024年04月09日 | 図書案内

 私が今まで手に取ることなかった本を皆さんに紹介します。
 まずは神奈川大学編集・発行の『神奈川大学評論』です(年3回発行)。最新号は3月末発行の105号です。210頁で定価が889円、内容の充実具合を知れば格安と言えるかも知れません。
 ページを捲るのを楽しみにしている記事を列挙しましょう。

・エッセイ 永山則夫の短い旅路 鎌田慧
・対談 寅さんと旅 山田洋次、アーサー・ビナード
・講演記録 循環する言葉とものと文学 田中優子
・舞台時評 プーク人形劇場-建設までの経緯と絵入り年代記 竹内とよ子
・書評(全部で11冊あります)
 大森淳郎・NHK放送文化研究所著『ラジオと戦争-放送人たちの「報国」』永田浩三
  辻野弥生著『福田村事件-関東大震災。知られざる悲劇』北原糸子

  とりわけ巻頭の見開き2頁に凝縮された鎌田慧さんの永山則夫論は秀逸です。裏付けのある一文、一段落が私に説得力を持って迫ってきました。
 私は、鎌田さんがものにした大杉榮、鈴木東民、太宰治、葛西善三、坂本清馬などの評伝文学を愛しています。永山則夫の評伝もお願いしたいものです。

 『星火方正(せいかほうまさ)』(燎原の火は方正から)を初めて手に取りました。
 方正友好交流の会、37号、2023年12月号です。
 敗戦の1945年、ハルピン市近くの方正で5千人近くの日本人が亡くなり、日本人たちの公墓が周恩来総理の許可の下1963年に設立されたといいます。
  方正友好交流の会は2005年に立ち上げられました。日本人公墓の存在を知ってもらい、周恩来総理の国際的な精神を広めたいという思いから出発したようです。
 興味があるようでしたら、是非ネット検索してみてください。

 

◆ヒマラヤと原発事故         鎌田 慧(ルポライター)

 「『日本で大地震が発生し、東京でも死者が出ているそうです』宿泊
者のひとりが食堂に駆け込んできて涙声で言った」「東北の太平洋岸原
発の緊急自動停止装置がうまく作動したのだろか。阪神大震災や奥尻島
の大津波は取材にいって惨状を目にしている。今度は柏崎刈羽原発より
も被害は大きい、と推察される」
 13年前の3月13日。カトマンズのホテルから手書き原稿をFAXでこ
の欄に送稿した。

 ヒマラヤの8000m峰の一つダウラギリの麓ナウリコットのホテルに
帰ってきたばかりだった。
  大地震のニュースは同行者たちを不安にさせた。
 祈るような気持ちだった。 あのとき、東京にいなかったことが恥ずか
しく、 深い負い目だった。そのこともあって「さようなら原発」運動に
時間を割くようになった。
 そのとき、友人たち7人とエベレストを見に行く旅のガイド役を務め
たのが、同郷の作家、高校の後輩、登山家の根深誠氏である。

 この2月に上梓した『求道の越境者・河口慧海 チベット潜入ルートを
探る三十年の旅』を送ってもらった。
 ヒマラヤを案内しながら根深氏は、100年前鎖国のチベットで修行した
慧海の潜入はこれまで伝えられてきた経路ではない、と力説していた。
 それを解明した力作だ。ヒマラヤの山脈で聞いた原発事故のニュース
と河口慧海。やや奇妙な関係なのだが。
         (4月2日「東京新聞」朝刊17面「本音のコラム」)


〔676〕「PARC自由学校2024」とくまもと「狭山」学習会の冊子を紹介します。

2024年04月02日 | メール・便り・ミニコミ

 数年前にPARC自由学校のことを知るようになりました。年2回の「さようなら原発」集会、2015年の集団的自衛権抗議集会、5.3憲法集会などの大集会に参加する度にPARC自由学校のチラシを受け取るようになりました。
  「PARC自由学校2024」の冊子を紹介しましょう。特定非営利活動法人アジア太平洋資料センター(PARC)が主催する自由学校があります。今年は13の講座が用意されています。

 その1つを紹介しましょう。
 「鎌田慧 ルポルタージュと文学の現場から」、講師は鎌田慧さん、コーディネイターが永田浩三さんです。お二方とも親しくさせていただいています。4回連像講座です。

 くまもと「狭山」学習会の冊子も44頁立ての立派なものです。
  2002年東京高裁「狭山第2次再審異議審棄却」を受けて、熊本市辛島公園で「狭山事件の公正裁判を求める」坐りこみが始まったそうです。現在まで月1回で300回近く行われているようです。
  冊子は狭山事件の概要と石川一雄さんが無罪であることを12の視点から提示しています。

 石川一雄さんは明らかに無罪です。
 私は70年代の後半に数年間狭山市に住んでいました。ある時、狭山事件の現地調査に参加し、小さな石川さんの家を訪れました。そのわずかばかりの玄関の鴨居から証拠物件とされる万年筆が発見されたというのです。捜査の専門職の刑事たち調査官が2時間ずつ2回も捜査して発見されなかったのに、なぜか3回目にその鴨居にあったというのです。無罪を確信した瞬間でした。
 当時、私は狭山事件関連の本を買いまくっていました。
 脅迫状が残されているのですが、石川さんの当時の識字能力では到底書き得なかったものですし、筆跡もまったく違います。

  袴田事件、狭山事件共に完全無罪も勝ち取りたいものです。