会社に合ったフレックスタイムは総労働時間を守れば始業・終業時刻は自由でテレワークとうまく運用可能か
テレワークを行っている会社では、フレックスタイム制を導入しているところも多いように見受けられますが、理論的にも、テレワークとフレックス制は、相性がいいように思われるところです。
(ただし業種・職種によっては必ずしも親和性が高いとは言えないところもあるようですが・・・。)
フレックスタイム制とは、始業・終業時刻の決定を従業員にゆだねて、従業員は、1か月の範囲での総労働時間の枠内に収まるように、毎日の勤務時間を自ら決めて勤務する制度です。1か月の総労働時間を守れば、始業・終業時刻が自由というだけでなくて、一日ごとの労働時間は、8時間に限られるものではなく、それよりも多くなっても少なくなってもかまわないという自由な働き方ができるのです。1か月が切りの良い28日で説明すると、1か月の総労働時間は(28日÷7日=4週間)×週40時間=160時間となり、その総労働時間を守ればよく、その範囲で自由な働き方ができることになります。
また、従来は、総労働時間の「枠」の期間が1か月までの範囲だったのが、平成30年の労働基準法の改正により、3か月まで拡大されました。これにより、子供が夏休みになる8月に労働するのを控え、6月・9月に多くの仕事をするというような、さらに弾力的な働き方もできるようになりました。※(注)詳細説明へ
ただし、このフレックスタイム制の導入は、条件を守らなければなりません。概略ですが、次のとおり、就業規則に規定した上、労使協定を結ぶ必要があります。
1、就業規則の規定
始業および就業の時刻をその従業員の決定にゆだねる旨の定め
2、労使協定の内容
・ フレックスタイム制により労働させる従業員の範囲
・ 総労働時間を決めたその枠内の期間(3か月以内)とその総労働時間数(当該期間の起算日も
併せて決定)
・ 標準となる一日の労働時間
*年次有給休暇を取得した際に、その取得日に1日何時間勤務したものとして取り扱うかを
明確にするために設けるもの
・従業員が労働しなければならない時間帯(コアタイム)を定める場合には、その時間帯の開始
と終了の時間
・従業員がその選択により労働する時間帯(フレキシブルタイム)に制限を設ける場合は、その
時間帯の開始と終了の時刻
フレックスタイム制の1か月の例
|・・・・・・・標準労働時間・・・・・・・・・・・・・・|
8時 9時 10時 15時 18時 21時
|・・・・・・・・・|===============|・・・・・・・・・・・・・・|
フレキシブルタイム コアタイム フレキシブルタイム
いつ出社しても可 必ず出社しなければならない時間 いつでも退社可
最初に説明したように、テレワークについては、自分だけでなく子供や夫・妻の生活時間と密接な影響が出てくる可能性がありますので、始業・終業時間等が自由な融通の利くフレックスタイム制と相性が良いということがいえます。さらに、コアタイムやフレキシブルタイムは必ず設けなければならないものではありませんので、これを設けなければ、理論的には、全く自由に始業・終業時間を決めることができることになります。
しかし、コアタイムを設けないことになれば、例えば会議をして意思統一を図ることがむずかしいという問題がでてきます。そのためのコアタイムが設けられているのであり、テレワークの場合は、ウエブ会議用ツールによって会議を開けますが、コアタイムがないとその時間に欠席する者があり得ます。このように、コアタイムさえもなくなれば、個々の従業員の勤務時間帯が異なり、上司と部下とのコミュニケーションも不足して、業務能率の低下などの弊害も見られるようになります。
また、フレキシブルタイムを設けないことは、深夜帯に労働する者が出てくることにもなり、それは、社員の健康の上からいっても賃金管理(割増し)の上からも、避けなければなりません。
さらに、コアタイムを設けていない場合には、休憩を一斉に付与することができなくなりますので、一斉休憩の例外業種でなければ、労使協定を締結して、一斉休憩の適用を除外しておく必要もあります。
また、フレックスタイム制を実施する場合は、労働安全衛生法上や賃金管理の観点から、会社は必ず従業員の労働時間はきちんと把握することが必要です。フレックスタイムとはいえ、労働時間の把握義務を免れたわけではないので、注意が必要です。
総論的に申し上げると、これら労務管理の観点から言って、どうしても、フレックスタイム制の導入にあたっては、会社に合わせた適当な制限を設けた上で、うまくフレックスタイム制とテレワークを組み合わせて、動かしていくことが必要となってくるのです。
※(注)詳細説明へ;総労働時間数の「枠」の期間が1か月から3か月に拡大されることについて
この枠を「精算期間」といいますが、この精算期間が1か月を超える場合は、労働基準監督署へ
の届け出が必要となり、また、健康リスクの観点から、週当たり50時間を超える場合は時間外
労働として取扱い、割増賃金が必要となるなど、より厳格な規制がなされます。
(労基法32条の3第2項他)
参考 割増賃金の基本と実務 第2版 石嵜伸憲編集 横山直樹他著 中央経済社 p266~
テレワークの労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本 秀和システム 寺林顕ほか著 p48~50
休日・休暇・労働時間 畑中義雄他著 秀和システム p193~198
テレワークを行っている会社では、フレックスタイム制を導入しているところも多いように見受けられますが、理論的にも、テレワークとフレックス制は、相性がいいように思われるところです。
(ただし業種・職種によっては必ずしも親和性が高いとは言えないところもあるようですが・・・。)
フレックスタイム制とは、始業・終業時刻の決定を従業員にゆだねて、従業員は、1か月の範囲での総労働時間の枠内に収まるように、毎日の勤務時間を自ら決めて勤務する制度です。1か月の総労働時間を守れば、始業・終業時刻が自由というだけでなくて、一日ごとの労働時間は、8時間に限られるものではなく、それよりも多くなっても少なくなってもかまわないという自由な働き方ができるのです。1か月が切りの良い28日で説明すると、1か月の総労働時間は(28日÷7日=4週間)×週40時間=160時間となり、その総労働時間を守ればよく、その範囲で自由な働き方ができることになります。
また、従来は、総労働時間の「枠」の期間が1か月までの範囲だったのが、平成30年の労働基準法の改正により、3か月まで拡大されました。これにより、子供が夏休みになる8月に労働するのを控え、6月・9月に多くの仕事をするというような、さらに弾力的な働き方もできるようになりました。※(注)詳細説明へ
ただし、このフレックスタイム制の導入は、条件を守らなければなりません。概略ですが、次のとおり、就業規則に規定した上、労使協定を結ぶ必要があります。
1、就業規則の規定
始業および就業の時刻をその従業員の決定にゆだねる旨の定め
2、労使協定の内容
・ フレックスタイム制により労働させる従業員の範囲
・ 総労働時間を決めたその枠内の期間(3か月以内)とその総労働時間数(当該期間の起算日も
併せて決定)
・ 標準となる一日の労働時間
*年次有給休暇を取得した際に、その取得日に1日何時間勤務したものとして取り扱うかを
明確にするために設けるもの
・従業員が労働しなければならない時間帯(コアタイム)を定める場合には、その時間帯の開始
と終了の時間
・従業員がその選択により労働する時間帯(フレキシブルタイム)に制限を設ける場合は、その
時間帯の開始と終了の時刻
フレックスタイム制の1か月の例
|・・・・・・・標準労働時間・・・・・・・・・・・・・・|
8時 9時 10時 15時 18時 21時
|・・・・・・・・・|===============|・・・・・・・・・・・・・・|
フレキシブルタイム コアタイム フレキシブルタイム
いつ出社しても可 必ず出社しなければならない時間 いつでも退社可
最初に説明したように、テレワークについては、自分だけでなく子供や夫・妻の生活時間と密接な影響が出てくる可能性がありますので、始業・終業時間等が自由な融通の利くフレックスタイム制と相性が良いということがいえます。さらに、コアタイムやフレキシブルタイムは必ず設けなければならないものではありませんので、これを設けなければ、理論的には、全く自由に始業・終業時間を決めることができることになります。
しかし、コアタイムを設けないことになれば、例えば会議をして意思統一を図ることがむずかしいという問題がでてきます。そのためのコアタイムが設けられているのであり、テレワークの場合は、ウエブ会議用ツールによって会議を開けますが、コアタイムがないとその時間に欠席する者があり得ます。このように、コアタイムさえもなくなれば、個々の従業員の勤務時間帯が異なり、上司と部下とのコミュニケーションも不足して、業務能率の低下などの弊害も見られるようになります。
また、フレキシブルタイムを設けないことは、深夜帯に労働する者が出てくることにもなり、それは、社員の健康の上からいっても賃金管理(割増し)の上からも、避けなければなりません。
さらに、コアタイムを設けていない場合には、休憩を一斉に付与することができなくなりますので、一斉休憩の例外業種でなければ、労使協定を締結して、一斉休憩の適用を除外しておく必要もあります。
また、フレックスタイム制を実施する場合は、労働安全衛生法上や賃金管理の観点から、会社は必ず従業員の労働時間はきちんと把握することが必要です。フレックスタイムとはいえ、労働時間の把握義務を免れたわけではないので、注意が必要です。
総論的に申し上げると、これら労務管理の観点から言って、どうしても、フレックスタイム制の導入にあたっては、会社に合わせた適当な制限を設けた上で、うまくフレックスタイム制とテレワークを組み合わせて、動かしていくことが必要となってくるのです。
※(注)詳細説明へ;総労働時間数の「枠」の期間が1か月から3か月に拡大されることについて
この枠を「精算期間」といいますが、この精算期間が1か月を超える場合は、労働基準監督署へ
の届け出が必要となり、また、健康リスクの観点から、週当たり50時間を超える場合は時間外
労働として取扱い、割増賃金が必要となるなど、より厳格な規制がなされます。
(労基法32条の3第2項他)
参考 割増賃金の基本と実務 第2版 石嵜伸憲編集 横山直樹他著 中央経済社 p266~
テレワークの労務管理のツボとコツがゼッタイにわかる本 秀和システム 寺林顕ほか著 p48~50
休日・休暇・労働時間 畑中義雄他著 秀和システム p193~198