ヌルボ・イルボ    韓国文化の海へ

①韓国文学②韓国漫画③韓国のメディア観察④韓国語いろいろ⑤韓国映画⑥韓国の歴史・社会⑦韓国・朝鮮関係の本⑧韓国旅行の記録

韓国内の映画の興行成績 [5月21日(金)~5月23日(日)]と人気順位 ►韓国でも<1人世帯>増加が社会問題化 ►ドキュメンタリー「スズさん」で再認識した昔の専業主婦の知識や手仕事の奥の深さ

2021-05-28 23:48:36 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶今回の記事の中で興味を持った初登場の作品は2つ。
 1つ目は韓国映画の「一人暮らしの人々」。本ブログで10年前「韓国でも「お一人様で外食もOK」の時代に突入か?」と題した記事(→コチラ)を書きました。その頃から<혼자>(ホンジャ.一人)をモトに、<혼밥>(ホンパプ.一人飯)、<혼술>(ホンスル.一人酒)、<혼영>(ホニョン.一人映画)のような新語が次々と生まれ、そんな人たちを<홀로족>(ホルロジョク.一人族)、さらには<혼족>(ホンジョク)と呼ぶようになっています。
 また2020年の統計によると、韓国の全世帯の約30%が1人世帯とのこと。ソウルは約34%で、40年前に比べて16倍も増加しているそうで、今や社会問題化しているようです。そんな韓国で一人暮らしの方が気楽という若い女性を主人公にしたドラマです。※日本の1人世帯の比率は1995年が約26%で2020年が30%。ここでも韓国に「追いつかれた」というわけです。
 2つ目は「アイダよ、何処へ?」。1974年に現在のボスニアの首都サラエボで生まれたジュバニッチ監督作品で、デビュー作「サラエボの花」(2006)同様自身の90年代の体験に基づく作品で今年の第93回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされる等高い評価を得ています。その内容の焦点は、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の中で1995年7月に起きた戦後最悪のジェノサイド(集団虐殺)とされる<スレブレニツァの虐殺>(→ウィキペディア)です。
 日本公開は9月なので私ヌルボももちろん未見ですが、軍事的・政治的視点ではなく、多くの悲劇に見舞われた人々からの視点は貴重で、ぜひ早く観てみたいものです。ただ、大局的に見ると西欧諸国、NATO、アメリカ、国連軍、そして本作の製作に関わった(下掲の)諸国やNATO、アメリカ等の側も全然問題がないわけでもなさそうですが・・・。合作に名を列ねている諸国は、やはり反セルビア、反ロシアなんですね。作品自体に対する評価は別とはいえ、それでも一般論として映画作品の政治的意味はつきまとうことは念頭に置く必要はあるでしょうね。

▶この1週間で観た映画は次の2本です。
 ・「茜色に焼かれる」★★★★★ (コロナ下でも公務員や年金生活者の生活はあまり変わってないと思われますが、さすがに石井裕也監督、厳しい状況下にある人々にスポットをあてて問題提起をしてます。7年前の高齢者によるブレーキとアクセルの踏み間違い事故(!)で夫を亡くした母(尾野真千子)と中学生の子の2人家族、もっとひどい生い立ちを抱えつつ現実の問題に直面している女性等。「それでも何で生きようとするんだ」という風俗店の店長(永瀬正敏)の口から発せられる言葉は彼らにとっては決して極端なものではないのでしょう。大体は平穏無事に日々を過ごしている私ヌルボにとって、登場人物やストーリーが少し極端な感もありますが、そう感じるのも立場の違いかどうか不明。尾野真千子さんの神懸かり的(?)熱演に☆1つ分をオマケしました。)
 ・「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」★★★★★ (生活史研究家で昭和のくらし博物館館長の小泉和子さんの視点から母のスズさんの一生と専業主婦としての衣食住のさまざまな道具や手仕事を具体的に説明・紹介。また和子さんたちの鳴子温泉への学童疎開や横浜大空襲等も記録映像と共に折り込まれています。その横浜大空襲への関心から観に行ったのですが、忘れかけていた昔の道具・家具のこと等々懐かしく思い出しました。)
 ▶「スズさん ~昭和の家事と家族の物語~」については→コチラに予告編を含めて詳しく紹介されています。先週「きみが死んだあとで」に関連して私ヌルボ自身の思い出を書きましたが、この「スズさん」についてもごく個人的な記憶がいろいろ甦ってきました。実はヌルボの母も1910年生まれ。明治43年、大逆事件や韓国併合の年です。東京の下町に生まれ育ち、関東大震災の経験も聞きました。運のいいことに全然焼け死んだ人たちも見ることなく世田谷の方に家族で逃げたとか・・・。この映画で今さらながら思ったのはかつての女性の家事労働の大変さ。いや、キツい、ツラいということもあるでしょうが、母から娘へとずっと昔から受け継がれてきた衣食住の知識・技術の奥深さです。映画の中で例えば和裁関係の道具の鏝(こて)や箆(へら)が出てきました。子どもの頃見た道具です。洗い張りも憶えています。縁側から庭に差し渡した洗い張り板を滑り台にして遊んだことがありました。本作の映像では洗い張り板ではなく伸子針(シンシバリ←今ググって名称を知った)を使っていましたが・・・。(洗い張りについては→コチラや→コチラ参照。)
 スズさんは当時の主婦としてはふつうなのかも知れませんが、縫い物などお手のもので80代頃(?)足を傷めた時もベッドで上半身を起こしてチャッと袋物なんかを作ったりしてました。そういえばヌルボも高校時代の冬着ていたどてらは母の手製だったか・・・。食生活についても、親族の集まりの時など当然のように小豆をゆでておはぎを作ったりしています。一方男はというと、ヌルボの学生時代(60年代末)スーパーで買い物してる男性はまだ多くはなかったですね。下宿で初めて作った味噌汁が全然おいしくなかったのはダシを入れるものだということを知らなかったからです(笑)。1905年生まれの父が自分で何か作って食べたことがあったかは今も疑問です。ご飯のおかわりでさえも少し手を伸ばせば自分でよそえるのにまだ台所で水仕事をしている母に「おーい、おかわり!」などと声をかけてました。まあ昔の男はおよそそんなものだったのかも。で、ヌルボは帰省した折り母に料理とか洗濯とか生活の知恵をたまに授けてもらって、そんな時昔から伝えられてきたのであろう女性社会の文化のごく一端に触れた思いがしたものです。
 女性の、とくに主婦の生活が大きく変わったのはやはり1950年代後半<三種の神器>と呼ばれた白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫に代表される家電の普及ですね。それが女性を家事労働にかける時間を大幅に減らし、また男性でもスイッチ1つで洗濯も調理もできる時代になりました。今、専業主婦と言えばややもすれば「家でラクしてるけっこうな身分」とさえ見られかねない、ですか? この数十年の間に女子の進学率も高まり、社会での男女平等の動きが顕著に進められてきているのは、昔のような男女の社会的分業を成立させてきた基盤がほとんど根本から変わってきたということなんでしょうね。
 このドキュメンタリーでは1945年5月29日の横浜大空襲についても当時の記録映像と共に語られています。焼夷弾攻撃で約8千~1万人もの死者を出した空襲ですが、「今一般に3月10日の東京大空襲ばかりが多く報道され、他はあまり知られていないのは問題」との大墻敦監督の言葉はまさにその通り。全国各地に空襲犠牲者の慰霊碑や資料館があります。29日(土)はまさに横浜大空襲からちょうど76年目にあたる日。大通り公園にある平和祈念碑前での<横浜大空襲祈念のつどい>は昨年に続いて今年も中止なのかな。※右上画像は小泉和子さんの著書「くらしの昭和史」(朝日選書)。このドキュメンタリーと多くの部分が重なり、また写真や図も豊富で読みやすくためになる本です。

         ★★★ NAVERの人気順位(5月25日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 学校に行く道(韓国)  9.61(111)
②(新) 草間彌生∞INFINITY  9.40(10)
③(4) 玆山魚譜(韓国)  9.31(2,420)
④(6) ソウルフル・ワールド  9.30(9,785)
⑤(5) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.29(12,114)
⑥(3) 子供たちは楽しい(韓国)  9.22(169)
⑦(10) オクトノーツと火のリング  9.18(40)
⑧(-)私のお姉さんチョン・ジヒョンと私(韓国)  9.14(177)
⑨(-) 僕にはとても大切な君(韓国)  9.08(132)
⑩(-) クルードさんちの新時代  9.06(42)

 ②「草間彌生∞INFINITY」が新登場です。水玉模様が特徴的な作品で知られる世界的なアーティスト、草間彌生にスポットを当てたドキュメンタリーですが、日本ではなくアメリカの作品。第2次大戦期に幼少期を過ごし、芸術に理解のない家庭を出て単身渡米して以降の60年以上、人種差別や性差別、病気に苦しみながらも、多彩な創作活動を続けてきた彼女の人生と芸術をたどります。日本では2019年に公開されています。韓国題は「쿠사마 야요이: 무한의 세계」です。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
③(3) スパイの妻(日本)  8.00(5)
④(新) アイダよ、何処へ?  7.67(3)
⑤(4) ミナリ  7.58(12)
⑥(-) 逃げた女(韓国)  7.33(6)
⑦(7) ファーザー  7.13(8)
⑧(8) 玆山魚譜(韓国)  7.00(9)
⑨(9) レ・ミゼラブル  7.00(6)
⑩(10) クルードさんちの新時代  7.00(2)
⑩(10) いい光、いい空気(韓国)  7.00(2)

 ④「アイダよ、何処へ?」が新登場です。ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、エストニア、オーストリア、ルーマニア、オランダ、ドイツ、ポーランド、フランス、ノルウェー、トルコの合作によるドラマ。デビュー作「サラエボの花」(2006)でベルリン国際映画祭の金熊賞を受賞したヤスミラ・ジュバニッチ監督作品で、今年の第93回アカデミー賞では国際長編映画賞にノミネートされました。物語の舞台は1995年夏のボスニア・ヘルツェゴヴィナ東部の町スレブレニツァ。セルビア人勢力が村を攻撃すると、ボスニア人たちは安全地域の国連キャンプに避難しました。そんな中、国連平和維持軍の通訳として働くアイダ(ヤスナ・ジュリチッチ)は夫と息子がキャンプ内に入って来られなかったと知り、彼らを救うために東奔西走します・・・。韓国題は「쿠오바디스, 아이다(クォヴァデス、アイダ)」。日本公開は9月17日です。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月21日(金)~5月23日(日) ★★★
    久々のメガヒット「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」 あっという間に100万人突破!

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・ワイルド・スピード・・・・・・・・・・5/19 ・・・628,096 ・・・・・1,132,887 ・・・・・11,090 ・・・・2,296
       /ジェットブレイク
2(新)・・STAND BY ME ドラえもん2(日本)・・5/19・・11,054・・・・・65,560・・・・・・・・・577 ・・・・・・387
3(4)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・19,752・・・・・2,044,636 ・・・・・19,697 ・・・・・・392
       無限列車編(日本)
4(1)・・スパイラル: ブック・オブ・ソウ・・5/12・・・・9,677 ・・・・・・・122,849・・・・・・・1,220 ・・・・・・417
5(2)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・・7,530 ・・・・・・・303,269・・・・・・・2,801 ・・・・・・287
6(5)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・・4/28 ・・・・・6,200 ・・・・・・・365,371・・・・・・・3,375 ・・・・・・276
7(3)・・クルードさんちの新時代 ・・・・・5/05 ・・・・・6,188 ・・・・・・・222,304・・・・・・・1,962 ・・・・・・255
8(7)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・3,823 ・・・・・1,125,428 ・・・・・10,150 ・・・・・・156
9(69)・・一人暮らしの人々(韓国)・・・・・5/19 ・・・・・3,770・・・・・・・・・・7,441・・・・・・・・・・67 ・・・・・・159
10(8)・・劇場版 コンスニ・・・・・・・・・・・・5/05 ・・・・・3,337・・・・・・・・・72,673 ・・・・・・・・637・・・・・・・139
       :おもちゃの国 大冒険(韓国)
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 このところ長続きするヒット作が現われず1位が3週間以内で次々と変わっています。そんな中、1度しかトップに立っていない「鬼滅の刃」が1月以来17週ずっと5位以内を維持しているのは注目に値します。
 1・2・9位の3作品が新登場です。
 1位「ワイルド・スピード/ジェットブレイク」はアメリカのアクション。
2001年に始まる人気シリーズの第9作です。ドム(ヴィン・ディーゼル)は危険な世界を離れて愛するレティ(ミシェル・ロドリゲス)と共に静かに暮らしていました。ところが、そんな彼の前に彼自身と同等のスキルを持つ弟ジェイコブ(ジョン・シナ)が刺客となって現われます。その裏で糸を引いていたのは宿敵のサイバーテロリスト、サイファー(シャーリーズ・セロン)でした。ドムはファミリーを招集し、この危機に立ち向かいますが・・・。韓国題は「분노의 질주: 더 얼티메이트」。日本公開は8月6日です。いやあ、→この予告編だけでもスゴくて笑っちゃいます。
 2位「STAND BY ME ドラえもん2」は、ドラえもんシリーズ初の3DCGアニメだった「STAND BY ME ドラえもん」(2014)に続くフル3DCGのドラえもん映画第2弾。タイムマシンで過去に行ったら今は亡きおばあちゃんが「のび太のお嫁さんを見たい」と言ってたので、のび太とドラえもんは今度は未来へ飛びますが・・・。韓国題は「도라에몽: 스탠바이미 2」です。私ヌルボはこれ観てませんが、一般論として3Dアニメは全然好みじゃないんですよね。漫画が原作の作品はとくに。2Dで十分魅力的なのに、3Dにする意味がどこにあるんでしょうね。3Dにすると現実に近くなって変にリアル味を増すか、それを避けるとブキミになるし・・・って、ここに書くことじゃないか。※韓国のネチズンのコメントを見ると「3Dドラえもんは1作目もそうだったけど띵작(名作)だね」と書いてる人もいました。
 9位「一人暮らしの人々」は韓国のドラマ。冒頭にも記したように、近年韓国で一挙に増えてきて社会的なイシューになっている<一人暮らしの人々>をテーマにした作品です。ジナ(コン・スンヨン)は家でも外でも常に1人の方が落ち着きます。周囲の人たちはちょくちょく話しかけてきますが、ジナはそれさえも苦手です。会社で新入社員の1:1の教育まで引き受けることになり、つらくて死にそうなくらい。そんなある日、出退勤の際に毎日話しかけてきた隣の男性が誰にも知られず独りで亡くなったことを知ります。彼の死後、ジナの静かな日常に小さな波紋が広がりますが・・・。原題は「혼자 사는 사람들」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・・・3,823 ・・・・・1,125,428・・・・・・10,150 ・・・・・・156
2(25)・・一人暮らしの人々(韓国)・・・・・・・5/19 ・・・・・・3,770・・・・・・・・・・7,441 ・・・・・・・・・・67 ・・・・・・159
3(3)・・息子の名前で(韓国)・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・1,665・・・・・・・・・22,824・・・・・・・・・198・・・・・・・・96
4(2)・・僕にはとても大切な君(韓国)・・・・5/12・・・・・・・1,129・・・・・・・・・22,813・・・・・・・・・205 ・・・・・・・70
5(10)・・復活: その証拠(韓国)・・・・・・・・10/08 ・・・・・・・・899・・・・・・・・・46,264・・・・・・・・・382・・・・・・・・15

 2位「一人暮らしの人々」が新登場ですが、この作品については上述しました。
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韓国内の映画の興行成績 [5月14日(金)~5月16日(日)]と人気順位 ►「きみが死んだあとで」は貴重な記録 いろいろ思い出した・・・ ►「鬼滅の刃」累計観客動員数200万人突破!

2021-05-20 23:53:27 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶この1週間で観た映画は次の2本です。
 ・「ブックセラーズ」★★★★ (ジツは私ヌルボ高校時代以来の古書店ファン。ニューヨークブックフェアに集まってくる人たちの風貌も東京古書会館の古書展で見る人たちとフンイキが似ている。ただ西洋の古書は格調高い総革装が目立つ。そんな本がぎっしり並んだ書架を見るだけでドキドキ。ただ例えば「偉大なるギャツビー」の初版本は15万ドルとか。私ヌルボは稀覯本コレクターではないのでイズレニシロ「見るだけだが・・・。)
 ・「きみが死んだあとで」★★★★★ (今の若い世代は樺美智子さんを知らない? では山崎博昭君のこともほとんど知らないかも・・・。<赤軍派・よど号ハイジャック事件><連合赤軍・あさま山荘事件><東アジア反日武装戦線・三菱重工本社ビルを爆破>などといった突出した過激派による事件は映画等である程度は知られているかもしれないが、1967年10月8日に反日共系の3組織の連合体<三派>が佐藤栄作首相の南ベトナム行き阻止を目的とした<第1次羽田闘争>は今どれほど知られているだろうか? 当時京大生で、この闘争に参加し機動隊と衝突する中で犠牲となったのが山崎博昭君である。この闘争は、それ自体よりも以後約2年間全国的に高揚する<全共闘運動>の導火線となったことに大きな意味がある。上記の過激派による事件は全共闘運動の(表面的な)鎮静化の後に先鋭化した極少数によるもので、全共闘運動を担っていた多くの学生大衆の支持・共感の外にあった。そうした意味で、高校時代から山崎君の仲間だった人たちが様々な思い出を大変具体的に語る本作は大変貴重であり、興味深かった。なおパンフ(右画像)は本作中の証言すべての他多くの画像・人物紹介等を含む充実した内容で◎。)

▶「きみが死んだあとで」については、いや、山崎博昭君や第1次羽田闘争については、私ヌルボ、個人的にいろんな思いがあります。今まで本ブログには書きませんでしたがジツは1949年1月生まれ・・・ということは山崎君の2ヵ月後。つまり同学年です。ただ67年の入試で不合格だったため徳島で自宅浪人中でした。
 羽田での<事件>や山崎君のことはTVや新聞で知って大きな衝撃を受けました。まさに<10・8(ジッパチ)ショック>でしたが、この言葉を知ったのは最近のことです。具体的には、学生たちの訴えたことやその闘い方よりも、彼らの行動を一方的に<暴力>と決めつけてほとんど全否定する報道に対する義憤が非常に大きかったと思います。
 サルトル等の翻訳で知られる海老原武・元一橋大教授は專任講師だった当時この10月8日「デモ隊の渦中にいた」以下その現場のようすやその後のことを「かくも激しき希望の歳月」(2004)に書いていますが、そこでも「私が、私たちがもっとも腹を立てたのは、機動隊の暴力的対応もさることながら、これをめぐる新聞報道のあり方だった」と同様の心情を記しています。
 一昨年亡くなった加藤典洋さんも48年生まれ。しかし誕生日が4月1日なのでギリギリ上の学年に入って東大に現役合格したので2年生でした。「私の秘密」と題した一文(→コチラ。「言葉の降る日」にも所収)や「オレの東大物語 1966~1972」によると彼は前日7日ビラ配りをしていた活動家のクラスメートに翌日のデモへの参加を強く誘われたこと、その後やはり「事件」を伝える新聞の記事と写真を見て「そのとき、私の世界が変わったと思います」と記し、11月12日の<第2次羽田事件の時初めてデモに参加したことを明かしています。
 私ヌルボ、時折考えるのは、もし現役合格していたらその後の人生はどうなっていたかということ。もしかして、自分も羽田に行っていた可能性もあったのか? 生来危険なことは避けて通る性格だし、実際1浪後合格して上京してから何度もデモには参加しましたが、投石をしたこともなく、もちろん角材を握ったこともナシ。しかし好奇心が強くて物見高いし反抗心もけっこうある方なので情報に触れていれば現場に行ってた目も全然ないとは言えなさそう。とすると、最初の入試で(今も憶えている)数学の順列組み合わせの問題で焦って失敗していなければ首尾よく合格して運命が(よくない方に)大きく変わっていたかも・・・。(まあ若い頃の進学・就職や結婚等々ちょっとした選択が人生の大きな分かれ道だったという事例は誰でもあることでしょうが・・・。)
 「きみが死んだあとで」の中で山崎君の大手前高校時代同じ社会科学研究部員だった詩人・佐々木幹郎さんが自作の詩「死者の鞭」を朗読しています。この詩集が刊行されたのが1970年。その2年後頃、私ヌルボは学生寮の友人からこの詩集のことを初めて聞きました。たまたま青山通りの古書店の棚にあるのを見つけたものの、2千円は当時の学生には高価で、買わずに店を出たことがありました。しかし「死者の鞭」の中の「永遠に走れ たえざる行為の重みを走れ」という詩句は以来脳裏に残り続けています。この詩の作者がまさか自分と同い年で1浪中に書き始めた作品だと知ったのはしばらく後のことで、少なからず驚いたものです。
 「きみが死んだあとで」に登場する人たちの中で知名度が一番高いのはおそらく東大全共闘の議長だった山本義隆さんでしょう。彼も大手前高校出身とは知りませんでした。7歳年上で60年入学、ということは樺美智子さんが亡くなる直前だったのですね。

 私ヌルボ、昨年2月2日懸案だった羽田闘争の現地・弁天橋をはじめ羽田方面の関係の場所を探訪してきました。また関連資料も図書館で見てみました。その中から4枚の画像を紹介します。

    
【翌日の毎日新聞より。山崎君も含めヘルメット姿の学生は少ない。当時は弁天橋のすぐ先に空港の滑走路があった。京急の羽田駅は今はなく、海老取川を越えた東に天空橋駅があり、その先に羽田空港第3ターミナル駅、羽田空港第1・第2ターミナル駅がある。】

    

【弁天橋は天空橋駅から約300m。中央に見える大鳥居は67年当時はなかった。付近には江戸時代以来の漁村の頃からの歴史等の説明版はあるが、羽田事件を物語るものは全然ない。2017年6月に建てられ五十周忌に一般公開された墓石は弁天橋から1㎞あまり西の萩中公園の西に隣接する福泉寺にある。】


         ★★★ NAVERの人気順位(5月18日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) 学校に行く道(韓国)  9.60(92)
②(-) 私はボリ(韓国)  9.54(228)
③(2) 子供たちは楽しい(韓国)  9.33(145)
④(3) 玆山魚譜(韓国)  9.31(2,345)
⑤(4) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.30(11,944)
⑥(5) ソウルフル・ワールド  9.30(9,764)
⑦(-) 復活: その証拠(韓国)  9.30(414)
⑧(6) 少年の君  9.26(1,679)
⑨(9) ラーヤと龍の王国  9.15(1,678)
⑩(8) オクトノーツと火のリング  9.15(39)

 新登場の作品はありません。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) ノマドランド  8.00(8)
③(3) スパイの妻(日本)  8.00(5)
④(4) ミナリ  7.58(12)
⑤(5) ユダ&ブラック・メシア  7.20(5)
⑥(6) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑦(7) ファーザー  7.13(8)
⑧(8) 玆山魚譜(韓国)  7.00(9)
⑨(9) レ・ミゼラブル  7.00(6)
⑩(10) クルードさんちの新時代  7.00(2)
⑩(10) いい光、いい空気(韓国)  7.00(2)

 順位・評点とも前週と全く同じです。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月14日(金)~5月16日(日) ★★★
       「鬼滅の刃」 17週連続5位以内で累計200万人突破

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(新)・・スパイラル: ブック・オブ・ソウ・・5/12・・60,583・・・・・・・・・88,308 ・・・・・・・・883 ・・・・・・688
2(3)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・36,888 ・・・・・・・283,086・・・・・・・2,616 ・・・・・・596
3(1)・・クルードさんちの新時代 ・・・・・5/05 ・・・・33,368 ・・・・・・・206,684・・・・・・・1,828 ・・・・・・616
4(4)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・29,127 ・・・・・2,004,206 ・・・・・19,303 ・・・・・・503
       無限列車編(日本)
5(2)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・・4/28 ・・・・27,772 ・・・・・・・346,891・・・・・・・3,201 ・・・・・・615
6(6)・・明日の記憶(韓国)・・・・・・・・・・・・4/21 ・・・・15,681 ・・・・・・・323,826・・・・・・・2,936 ・・・・・・386
7(5)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・14,678 ・・・・・1,113,810・・・・・・10,048 ・・・・・・465
8(8)・・劇場版 コンスニ ・・・・・・・・・・・・・5/05・・・・11,054・・・・・・・・・65,560・・・・・・・・・577 ・・・・・・387
       :おもちゃの国 大冒険(韓国)
9(30)・・僕にはとても大切な君(韓国)・・5/12 ・・・10,387・・・・・・・・・17,358 ・・・・・・・・159 ・・・・・・449
10(34)・・息子の名前で(韓国)・・・・・・・・5/12 ・・・・・8,988・・・・・・・・・15,198 ・・・・・・・・132 ・・・・・・423
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 このところ長続きするヒット作が現われず1位が3週間以内で次々と変わっています。そんな中、1度しかトップに立っていない「鬼滅の刃」が1月以来17週ずっと5位以内を維持しているのは注目に値します。
 1・9・10位の3作品が新登場です。
 1位「スパイラル: ブック・オブ・ソウ」(仮)はアメリカのスリラー。2004〜10年に人気を集めたホラー映画「ソウ」シリーズの第9弾(リブートと書かれた記事もあります。) ベテランの警官マーカス(サミュエル・L・ジャクソン)が尊敬を集める一方で、エゼキエル・ジーク・バンクス刑事(クリス・ロック)と彼の新人パートナーであるウィリアム・シェンク(マックス・ミンゲラ)は地味ながらもキッチリ仕事を遂行しています。その2人が陰惨な過去を思い出させる殺人事件の調査を担当することになります。それは警察署に届いた謎の小包に始まった警察連続殺人。別の殺人が始まる前に手がかりを探して事件を解決しなければ・・・。ところが、ジークは知らず知らずのうちに自らが深まる謎に閉じ込められ、殺人鬼の仕掛けた病的なゲームの中心にいることに気づき始めます・・・。韓国題は「스파이럴(スパイラル)」。日本公開は未定のようです。
 9位「僕にはとても大切な君」は韓国のドラマ。ジェシク(チン・グ)はエンターテイメント会社の代表、とは言ってもオフィスもなく、持っている物はわずかに中古のバン1台と負債だけ。ある日、彼の下で働くナレーターでモデルのジヨンが突然死亡するという事故が起こります。ジヨンに貸していたお金を回収できないのかと不安になったジェシクは死んだジヨンの家を訪ねて行ったところ、見ることも聞くことも話すこともできない視聴覚障碍児であるジヨンの幼い娘ウネ(チョン・ソヨン)と会うことになります。ジヨンの家に掛けられた保証金を手元に握れば貸してやっていた金も回収することができると思うジェシクは、1日も早くジヨンの保証金を手に入れるために、心にもないウネの保護者になりすまします。そうして1人のジェシクと1人になったウネの同居生活が始まります。しかし、子供と一緒の生活を甘く見ていたためか、見ることも聞くことも話すこともできない子供の障碍のために基本的なコミュニケーションさえ全くできない彼らの同居生活は不便そのもの。何も持っていないくせに格別な潔癖症のジェシクと、何であれ手で触れなければならない視聴覚障碍児の同居は本当に苦痛この上ありません。そこでジェシクは不便さを減らすためにウネとの疎通を図ることにします。ジェシクとウネは指先での会話を試み、徐々に特別な関係に発展していきます・・・。原題は「내겐 너무 소중한 너」です。
 10位「息子の名前で」は韓国のドラマ。5∙18光州民主化運動40周年を記念して光州広域市の公式サポートを受けて製作された作品です。1980年5月の光州を忘れることができず苦しさの中で生きてきたオ・チェグン(アン・ソンギ)は大切な息子デヒョン(チン・ヘソン)との約束を守るため、反省せずにぜいたくに暮らしているる者たちへの復讐を決心します。光州民主化運動の犠牲者家族の女性ジニ(ユン・ユソン)に会ってより一層決心を固めた彼は、当時の責任者の1人だったパク・ギジュン(パク・グニョン)に接近します。「デヒョン、おまえが出してくれた宿題を遅くなったが今やっているからな」・・・。この彼の言葉に秘められたものは・・・。原題は「아들의 이름으로」です。※のデータでは、観た人181人の評点(10点満点)は10点=94人・9点=7人と過半数高評価が過半数。一方1点=40人・2点=10人と低評価も約4分の1。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・・14,678・・・・・・1,113,810・・・・・・10,048 ・・・・・・465
2(13)・・僕にはとても大切な君(韓国)・・・5/12・・・・・・10,387・・・・・・・・・17,358・・・・・・・・・159 ・・・・・・449
3(15)・・息子の名前で(韓国) ・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・・8,988・・・・・・・・・15,198・・・・・・・・・132 ・・・・・・423
4(新)・・ワンリューシュンリン[網絡凶鈴]・・5/12 ・・・・3,681・・・・・・・・・・5,042 ・・・・・・・・・・47・・・・・・・・85
5(新)・・スーパーノヴァ・・・・・・・・・・・・・・・5/12 ・・・・・・・2,565・・・・・・・・・・6,460・・・・・・・・・・54・・・・・・・171

 2~5位の4作品が新登場です。
 2位「僕にはとても大切な君」と3位「息子の名前」については上述しました。
 4位「ワンリューシュンリン[網絡凶鈴]」(仮)は中国のホラー。中国の人気作家マ・ボヨンのスリラー小説「她死在QQ上(彼女はQQで死んだ)」の映画化作品ですが、本格的なJホラー演出ができる監督ということで「リング0 バースデイ」(2000)等で知られる鶴田法男監督に白羽の矢が立てられ、4年がかりで制作して昨年10月中国全土の約5千館で公開されたとのことです。<ワンリューシュンリン>は「ネットワークのリング」いう意味。心理学専攻の女子大生シャオノー(スン・イハン)は従姉のタンジンからかかってきた緊急の電話が途切れるとすぐ彼女のところに行きますが、タンジンはすでに冷たい死体となっていました。警察は自殺と判断しましたが、タンジンが遺したネット小説「ザンセイロウ(残生楼)」の謎を解明するためにシャオノーはオカルト現象を研究している記者志望の男子学生マーミン(フー・ムンポー)を訪ね、2人はその小説の内容と同じような殺人事件が相次いで発生しているという事実を知ります。死んだタンジンと代わった誰かによって継続して小説は更新され、そして惨劇が繰り返されていきます。逃れられない、息をのむような呪いが始まるのですが・・・。韓国題は「링: 더 라스트 챕터(リング: ザ・ラスト・チャプター)。日本公開は未定です。すでに→中国版予告編の日本語字幕版は公開されているのですが・・・。
 5位「スーパーノヴァ」はイギリスのドラマ。サム(コリン・ファース)とタスカー(スタンリー・トゥッチ)は20年来男性同士のパートナーとして過ごしてきました。ある日、サムの提案で2人はこれまでの思い出の地や友人たちを訪ねる旅に出ることになります。というのは、タスカーは2年前に若年性の認知症と診断されていて、その病状はゆっくりながらも確実に進行しているからでした。ところが、旅を続ける中でサムはタスカーが全てを忘れてしまう日はそう遠くないという残酷な現実を突きつけられます。終わらなければいい旅行の終わりが近づくと2人の感情はますます高まっていきますが・・・。韓国題は「슈퍼노바」。日本公開は7月1日です。
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韓国内の映画の興行成績 [5月7日(金)~5月9日(日)]と人気順位 ►「コントラ KONTORA」★5は並みの日本映画ではなかった! ►韓国映画「子供たちは楽しい」の原作漫画に注目!

2021-05-14 22:56:15 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶この1週間で観た映画は次の1本だけです。
 ・「コントラ KONTORA」★★★★★ (5月8日横浜シネマリンの初日に鑑賞。これは期待以上だった。今年に入って観た50本目で、文句ナシの★5つ。地方の小さな町で父と暮らす高3女子のソラ(円井わん=好演)は急死した祖父が遺した元飛行兵の頃の絵日記を見て・・・というストーリーは映画情報サイトや下の予告編で見ていただくとして、とにかく終始不穏なフンイキが漂い、冒頭からラストまでスクリーンから目が離せず。それよりも気に入った点は近年の日本映画には滅多にない映像世界の広がりと奥行きが感じらること。少し具体的に言えばキーワードは<疎通>。身近な家族・親族でもそれだけで気持ちが通じ合うわけでもないし、逆になぜかいつも後ろ向きに歩く言葉の通じないヘンな男とか、あるいは手帳に記された昔の祖父の思いにふれることもできる。そんなディテールがより普遍的な世界認識につながっている・・・と、これも私ヌルボの感じ方にすぎないのかもしれないが・・・。)
    「コントラ KONTORA」の予告編。音楽も印象的。

 ※本作品は<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020>の国内コンペティションで長編部門優秀作品賞。その他エストニアの国際映画祭で2019年のグランプリと最優秀音楽賞を受賞。第15回大阪アジアン映画祭で後ろ向きに歩く男を演じた間瀬英正さんが最優秀男優賞。

▶今回の記事中では、ソウル市江西区の<特殊学校>設立を求める生徒の親たちと設立反対を叫ぶ建設予定地の地元民の対立を扱ったドキュメンタリー「学校に行く道」ホ5パ6という変わったペンネームの漫画家の人気ウェブトゥーンが原作の「学校は楽しい」に注目! (いや、原作の方に注目か?) もう1つ、アニメ「劇場版 コンスニ」は20年以上前に誕生した女児に人気の人形で・・・等々いろいろ調べてたらいつもより記事の仕上がりが2、3日も遅れちゃいました。

         ★★★ NAVERの人気順位(5月11日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(新) 学校に行く道(韓国)  9.46(50)
②(新) 子供たちは楽しい(韓国)  9.41(115)
③(7) 玆山魚譜(韓国)  9.31(2,247)
④(6) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.30(11,746)
⑤(8) ソウルフル・ワールド  9.30(9,741)
⑥(9) 少年の君  9.26(1,675)
⑦(新) クルードさんちの新時代  9.22(297)
⑧(5) オクトノーツと火のリング  9.18(34)
⑨(10) ラーヤと龍の王国  9.15(1,672)
⑩(-) 私のお姉さんチョン・ジヒョンと私(韓国)  9.14(175)

 ①②⑦の3作品が新登場です。
 ①「学校に行く道」は韓国のドキュメンタリー。ソウル市江西区に位置するコンジン初等学校は生徒数急減のため閉校となりました。ソウル市教育庁は、2013年末からその跡地に特殊学校[←韓国での用語]の設立を推進しました。特殊学校は当然普通の学校より数が少なく、障碍のある生徒の数からみても少なすぎるとのことです。そのため遠くまで通う児童・生徒が多く、全国の在校生の半分は毎日往復1〜4時間の距離を通学していて、多くの家庭では朝のあわただしさが常態となっているそうです。ところが、そのソジン学校(仮称)の工事は満5年になっても開始できませんでした。地元の人たちの反対のためです。2017年、障碍者児童の保護者たちは学校の設立を許可してほしいと強い決意を持って膝を屈して要求しました。その姿を写した写真(→コチラ)は多くの人々に衝撃を与え、怒りや熱い論争を引き起こしました。このドキュメンタリーは、その写真の背景であるソジン学校の設立過程を描いたものです。この怒りと論争の背後には、「住民たちの反対で学校の建設が遅れている」との説明だけではすまない複雑な状況があります。大都市ソウルの物理的な拡大の過程で、該当地域が経験してきた特殊な歴史があり、自分の政治的野心のためにとんでもない問題を提起して住民間の紛争を大きくしている地域有力政治家の策略まで加わります。本作は、依然として解決の糸口が見えないソジン学校設立をめぐる葛藤をオーソドックスな手法で誠実に取材し記録して、それらの関連性を考察し問題を提起しています。原題は「학교 가는 길」です。
 ②「子供たちは楽しい」は韓国のドラマ。5月5日の子供の日に合わせて公開されましたが、決して子どもたちだけを対象とした作品ではありません。本作は漫画家のホ5パ6[허5파6]が<NAVER Webtoon>で公開したウェブトゥーン(ネット漫画)「子供は楽しい」(下画像)の映画化作品です。2013年7月~14年5月まで連載されたその漫画は簡潔で単純な絵柄で微細な感情の流れを完成高く表現したもので、読者に深い感動を与えて平均9.95という高い評点を獲得し、14年6月に単行本が刊行されました。以下、本作のあらすじ。どこか具合が悪くて病院にいるママ(イ・サンヒ)といつも忙しいパパ(ユン・ギョンホ)、ちょっぴり寂しいけど、新しく転校した学校で出会った友人のおかげで9歳の男の子ダイ(イ・ギョンフン)は楽しく過ごしています。ところがある日、ママとの別れが少しずつ近づいていること感じたダイは、男女4人の友だちと一緒にママに会うため大人たちに知られないようにこっそり旅に出ます。9歳の人生で初めて全財産をはたいて決行した旅行でした。そしてママとの出会いの最後に待っているのは最後の挨拶でした・・・。原題は「아이들은 즐겁다」です。
     
【基本的に彩色ナシの飾り気のない線ながら多くの読者の心に響く漫画だそうで、ぜひ読んでみたい!】

 ⑦「クルードさんちの新時代」(仮)については後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(3) ノマドランド  8.00(8)
③(4) スパイの妻(日本)  8.00(5)
④(5) ミナリ  7.58(12)
⑤(6) ユダ&ブラック・メシア  7.20(5)
⑥(8) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑦(9) ファーザー  7.13(8)
⑧(10) 玆山魚譜(韓国)  7.00(9)
⑨(-) レ・ミゼラブル  7.00(6)
⑩(新) クルードさんちの新時代  7.00(2)
⑩(新) いい光、いい空気(韓国)  7.00(2)

 ⑩の2作品が新登場です。
 ⑩「クルードさんちの新時代」(仮)については後述します。
 ⑩「いい光、いい空気」は韓国のドキュメンタリー。タイトルを見てもほとんどの方は意味がわからないのでは? <いい光>とは光州、<いい空気>とはブエノスアイレスのことです。1980年5月18日<いい光>(光州、Good Light)という意味を持った光州の市民が新軍部勢力によって7千余人が無辜の犠牲を被ったその日に、<いい空気>(Buenos Aires、Good Air)という意味を持ったブエノスアイレスの国家権力も3万余人の市民を行方不明者にしたのです。地球の反対側の光州とブエノスアイレスという2つの都市の、同じ名前のように驚くほど似ている虐殺の歴史。いまもその時代を経験し生き残った人々の生々しい声が上がります。夫と子供を守るために街に出た光州の母たちは今日もその日の真相を糾明し、消えている抗争の痕跡を復元せよと闘っています。強制的に連れ去られた息子を探して77年から始まったブエノスアイレスの母たちの5月広場沈黙の行進は、今も同じ気持ちで続けられています。平凡だった彼女らを動かし、悟らせ、闘争させた国家暴力の記憶は今時代を超えて次の世代に伝達され、追慕と哀悼の現在的意味を確認し、私たちが確立して行こうとする未来に向かって、明らかにより良い光とより良い空気になるでしょう。生ある者よ、忘れるなかれ! 5月の光州を、5月のブエノスアイレスを! 原題は「좋은 빛, 좋은 공기」です。 ※ブエノスアイレスのことについては私は知りませんでした。「五月広場の母たち」で検索すると関連記事がヒットします。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績5月2日(金)~5月9日(日) ★★★
       ドリームワークスのアニメシリーズ第2作「クルードさんちの新時代」が1位 日本は今回も劇場公開ナシか?

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(13)・・クルードさんちの新時代 ・・・・5/05 ・・・・47,980 ・・・・・・・164,678・・・・・・・1,454 ・・・・・・950
2(1)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・・4/28 ・・・122,261 ・・・・・・・174,742 ・・・・・・2,738 ・・・・・・789
3(2)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・45,269 ・・・・・・・228,430・・・・・・・2,098 ・・・・・・703
4(5)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・28,007 ・・・・・1,960,091 ・・・・・18,871 ・・・・・・548
       無限列車編(日本)
5(4)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・24,319 ・・・・・1,088,506・・・・・・・9,821 ・・・・・・581
6(3)・・明日の記憶(韓国)・・・・・・・・・・・・4/21 ・・・・20,309 ・・・・・・・299,134・・・・・・・2,689 ・・・・・・499
7(新)・・ウィッシュ・ミー・デッド・・・・・5/05 ・・・・19,956・・・・・・・・・43,016 ・・・・・・・・403 ・・・・・・614
8(新)・・劇場版 コンスニ ・・・・・・・・・・・・5/05 ・・・・15,836・・・・・・・・・50,927 ・・・・・・・・448 ・・・・・・521
       :おもちゃの国 大冒険(韓国)
9(6)・・名探偵コナン 緋色の弾丸(日本)・・4/16 ・・11,719 ・・・・・・・209,229 ・・・・・・1,976 ・・・・・・278
10(再)・・ハリー・ポッターと ・・・2004/7/16・・・・・・6,043・・・・・・1,860,994・・・・・11,728 ・・・・・・156
       アズカバンの囚人
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1・7・8位の3作品が新登場です。
 1位「クルードさんちの新時代」(仮)はアメリカのコメディ&冒険アニメ。ドリームワークスの製作です。「クルードさんちのはじめての冒険」(2013)の続編、と言っても日本では劇場公開されなかったため映画ファンの多くはご存知ないのでは? それでも<Filmarks映画>では400人を超える人がコメントしてるんですけどね。皆さんBS日テレで観たりDVDで観たり、「機内日本語吹き替え版で鑑賞」という方もいらっしゃいました。(その際の日本語タイトルを仮題としました。) 韓国では13年に「크루즈 패밀리(クルーズ・ファミリー)」とタイトルで公開され、一般のファンにも批評家にも好評でした。日本の映画サイトでも「おもしろく感動的なのになんで一般公開しないの?」との声がいくつも・・・。原題は「The Croods」で今作は「The Croods: A New Age」。最近つくづく洋画のタイトルはダメだと思うことが多いのですが、これもその部類。直訳すると「クルード家」。内容が皆目わかりません。早い話が、クルードさん一家は原始人の家族なんですね。前作の方は父親の命令でずっと洞窟内で生活していたのが火山の噴火で大変な時代になって外の世界に飛び出して・・・という話。そして今回は、洞窟を離れて新しい居住地を探しに出たクルード一家のその後。紆余曲折の末に見つけた完璧な木の家で進化した人類ベターマン一家と相対します。道具を使用して<家>で安全に暮らしている知能型のベターマン一家と、素手で狩りして、自然と共に生きていく本能型のクルーズ一家は生活方式があまりにも異なっているためことあるごとに衝突します。一方、初めて女性の友だちと出会ったイプとダンは他の家族とは違って友情を築いていきますが、やがて両家族に予期せぬ脅威がだんだんと迫ってきます・・・。私ヌルボ、今作はもちろん前作も観ていませんが、原始時代の話とはいえ登場人物のものの考え方も物語の展開も(当然とはいえ)アメリカっぽさがかなりあるように思われます。今作も日本での一般劇場公開はなさそうな・・・。
 7位「ウィッシュ・ミー・デッド」(仮)はアメリカの犯罪&スリラー。マイクル・コリータによる同名の小説(未訳)の映画化作品です。消防士ハンナ(アンジェリーナ・ジョリー)は、上空からパラシュートで火中に飛び込む航空隊員でしたが、火災現場で3人の子供を救えなかった罪悪感とトラウマのために監視塔の配属となりました。そんな彼女はある日、血にまみれた少年を発見します。彼は巨大犯罪の証拠を持って逃走中の13歳のコナー少年(フィン・リトル)でした。一方、少年を追っていた双子の殺し屋ブラックウェル兄弟(ニコラス・ホルト、エイダン・ギレン)は人々の目をそらすため火事をおこし、火は一瞬のうちにモンタナの荒野に広がっていきます。殺そうとする者と守ろうとする者が炎の中を生死をかけて駆けめぐります・・・。原題は「Those Who Wish Me Dead」で韓国題は「내가 죽기를 바라는 자들(私が死ぬことを望む者たち)」。日本公開は未定ですが、いくつかの関連記事にならって仮題としました。
 8位「劇場版 コンスニ:おもちゃの国 大冒険」は韓国のアニメ。おもちゃ屋の新しいおもちゃを見ると5歳の女の子コンスニの胸はドキドキ! でもママは「ダメよ!」としか言いません。「コンスニさあ、新しいおもちゃばっかりどんどん買ってったら前からあるおもちゃたちが傷つくんじゃないの?」。フン、チェッ・・・。おもちゃの気持ちが傷つくいなんて、嘘だ! 拗ねてるコンスニの前に現れたのは猿ロボットのハッピーです。「こんにちは。ぼくはハッピー! 君の友だちだよ」。ハッピーはコンスニが一番大事人形トトをくれたら新しいおもちゃをあげるって? 家に帰ると嘘のように新しいおもちゃが部屋の中にいっぱい! ところがちょっと待って! トトと一緒にママもパパも、妹のコンコンイも消えた!? まさかハッピーが・・・。消えた家族を見つけるためにコンスニはフクロウのセヨ、友だちのパミ、ソンイと一緒にハッピーがいる神秘的なおもちゃの国に向かいますが・・・。原題は「극장판 콩순이: 장난감나라 대모험」です。※コンスニ(콩순이)、1999年に誕生した玩具ブランドで、現在までに国内だけで534万個以上が販売され、海外でも36万個以上が販売されてきました。2014年からは幼児向けアニメ「엉뚱발랄 콩순이와 친구들(ぶっとびコンスニと仲間たち)」がTV等で放映されています。劇場版アニメは今作が初めて。[右画像は左からソンイ、コンスニ、パミ。下にコンコンイ、上にセヨが小さく描かれている。]

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・・24,319・・・・・・1,088,506・・・・・・・9,821 ・・・・・・581
2(29)・・学校に行く道(韓国)・・・・・・・・・・・5/05・・・・・・・1,721・・・・・・・・・・・6,671 ・・・・・・・・・53・・・・・・・・70
3(4)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07・・・・・・・1,375・・・・・・・・・・41,584 ・・・・・・・・355・・・・・・・・44
4(再)・・八月のクリスマス(韓国)・・1998/1/24 ・・・・・・・・999・・・・・・・・・・30,174・・・・・・・・・211 ・・・・・・・52
5(2)・・あの頃、君を追いかけた ・・・2012/8/22 ・・・・・・・・915・・・・・・・・・・58,553・・・・・・・・・415 ・・・・・・・43

 2位「学校に行く道」が新登場ですが、この作品については上述しました。
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韓国内の映画の興行成績 [4月30日(金)~5月2日(日)]と人気順位 ►「狼をさがして」の関連で半世紀前の学生運動のこと書いちゃった ►すごい楽しい!キートンの喜劇映画

2021-05-06 23:47:02 | 韓国内の映画の人気ランク&興行成績
▶この1週間で観た映画は次の3本です。
 ・「狼をさがして」★★★☆ (70年代前半一連の企業爆破事件を起こした武闘派左翼組織<東アジア反日武装戦線>を追ったドキュメンタリー。事件の中で8名の死者と380名の負傷者を出すという惨事となったのが1974年の三菱重工本社ビル爆破事件で、その実行部隊が大道寺将司をリーダーとする<狼>だった。①ドキュメンタリー映画としての本作 ②<東アジア反日武装戦線> ③大道寺将司(1948~2017) の3点それぞれに対して考えることはあるが、とりあえず①に限定する・・・と、すでに愛読する→コチラのブログ記事に(②③についても書かれているが)いろいろ記されていて、ほとんど付け足すことはないが、パンフによるとキム・ミレ監督が「ノガダ(土方)」の日本での自主上映中の2006年に1観客から初めて<東アジア反日武装戦線>の話を聞き、またその支援者たちと集まりを持ったとのこと。具体的な取り組みは2014年本作の企画を担当した歴史学者の藤井たけし(現)東京外大講師が資料を集め、関係者を探し、支援者の平野良子さん等と会って取材しますが、肝心の大道寺将司をはじめ服役中の人物とは面会できず・・・。ということで上記onsenmaru blogの指摘のような取材の甘さはやむを得ない事情が多分にあったと思われる。ただ、なんでこのようなドキュメンタリーを作ったのが日本人でないことと共に、なぜ韓国人なのかとの疑問は当然あるだろう。私ヌルボとしては特に目新しい情報は得られなかったが、しかし、このような事件と組織が半世紀近く前にあったことを知らなかった日韓の人たちのためにはなるということで☆1つプラス。)
      
【右は韓国版のポスター。原題は「동아시아반일무장전선(東アジア反日武装戦線」)。】

 ・「文化生活一週間」[キートンのマイホーム] ★★★★☆、「キートンの探偵学入門」[]忍術キートン★★★★★(シネマ・ジャック&ベティで<柳下美恵のピアノ & シネマ>ということでバスター・キートンの2作品をセットで鑑賞。これは実に楽しかった! いろんなギャグが盛り沢山だが、現在までのTVや映画のギャグのオリジナルがすでにこの頃(1920年代)からあったことがわかる。(マルクス兄弟の「我輩はカモである」(1933)を観た時もそう思った。) とくに「キートンの探偵学入門」はわずか44分という短尺の中にコメディとかファンタジーとかアクションとかロマンスとかいろんな要素が詰まっている。カーチェイスの原型のようなシーンもあり、あのウッディ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」とか、近年では「今夜、ロマンス劇場で」のようなスクリーンの中から登場人物が飛び出して・・・といったシーンまでも・・・。このようなシーンを撮るためにキートンは当時の技術に通じ、さまざまな工夫を凝らすと共に、今ならスタントマンが担当するような危険な撮影も自分で演じ、首の骨を折ったこともある(?)とか。社会的・政治的メッセージ性の強いチャップリンの作品に比べるとはるかに上映機会の少ないキートンだが、映画の楽しさに没頭する彼の情熱が直接伝わってくる。なお、柳下美恵さんのピアノは初めて聴いたが、「映画を楽譜として」演奏しているとか。しかし転ぶ場面でも時差を感じさせない自然な演奏。こんな感じ→YouTube。そして、この作品についても上記onsenmaru blogのブログ主さんがいい記事を書いていらっしゃいます。→コチラ。)

▶先週の記事で「シカゴ7裁判」と韓国で公開中の「ユダ&ブラック・メシア」が共にアカデミー賞ノミネート作品で、また60年代末のベトナム反戦運動や黒人差別反対運動の実話に基づいた作品だと書きました。もしかして日本関係でも今その時代の若者の<闘争>に関心が向けられているのかな?と思ったのは、上記の「狼をさがして」と、4月17日からユーロスペースで公開されている「きみが死んだあとで」とが相次いで公開されているから。昨年公開の「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」も含めていいかも。その時代の真っ只中、大道寺将司とジツは同い年の大学生だった私ヌルボとしては、当時の学生全体、とくに全共闘とそのシンパ(両者の境界は不明瞭)の時代的フンイキ、とくに<熱量>の推移といったことに留意してほしいと思います。「きみが死んだあとで」が扱っているのは1967年10月8日の第一次羽田闘争。タイトル中の<君>とはこの時犠牲となった京大生・山崎博昭君のこと。この事件がその後の全共闘運動の導火線になりました。その巨大な闘争の熱気が一番高まったのは翌年68年10月21日の新宿騒乱事件から69年1月18・19日の東大安田講堂事件頃まででしょうか。全共闘の要請に応えて三島由紀夫が69年5月13日東京大学駒場キャンパスにやってきた時には春の盛りでもあって数ヵ月前までの緊張感もかなり弛んでいて、集まった学生たちも物見遊山的な連中が多かったのでは、と推測します。その後の72年2月のあさま山荘事件を引き起こした連合赤軍や、上記の東アジア反日武装戦線といった過激な武闘派組織に対しては数年前の全共闘運動を担った多くの学生大衆の支持どころか関心を寄せる者もほとんどいなかったのではないでしょうか? むしろ環境運動とかウーマンリブ運動等に流れて行った人が圧倒的に多かったと思います。ただ、映画の素材としては過激な内容の方が「絵になる」から、ということで取り上げられることが多いように思われます。また、全共闘運動の最盛期でも例えば東京の大学の学生の2割(1割?)いたかどうか疑問だし、大学進学率にしてからが1968年で約20%ですからねー。むしろそんな少数でよくあれだけのムーブメントを作ったものです。
 個人的に一番観たいのは「きみが死んだあとで」なのですが、まだ未見。近所の横浜シネマリンで5月15日公開ということなので、続きはそれを観てから。

         ★★★ NAVERの人気順位(5月4日現在上映中映画) ★★★

     【ネチズンによる順位】
  ※[記者・評論家による順位]とも、評点の後の( )は採点者数。初公開から1年以内の作品が対象。
        「初登場」とは、本ブログでの初登場の意。

①(1) スプリング・ソング(韓国)  9.67(27)
②(2) 復活(韓国)  9.49(127)
③(3) 詩を読む時間(韓国)  9.43(14)
④(-) 復活: その証拠(韓国)  9.31(408)
⑤(新) オクトノーツと火のリング  9.31(16)
⑥(4) 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編(日本)  9.30(11,530)
⑦(6) 玆山魚譜(韓国)  9.30(2,071)
⑧(5) ソウルフル・ワールド  9.30(9,715)
⑨(-) 少年の君  9.26(1,661)
⑩(8) ラーヤと龍の王国  9.15(1,653)

 ⑤「オクトノーツと火のリング」が新登場ですが、この作品については後述します。

     【記者・評論家による順位】

①(1) ソウルフル・ワールド  8.44(9)
②(2) Mank/マンク  8.14(7)
③(3) ノマドランド  8.00(8)
④(4) スパイの妻(日本)  8.00(5)
⑤(6) ミナリ  7.58(12)
⑥(7) ユダ&ブラック・メシア  7.20(5)
⑦(8) TENET テネット  7.18(11)
⑧(9) 本当に遠いところ(韓国)  7.14(7)
⑨(10) ファーザー  7.13(8)
⑩(-) 玆山魚譜(韓国)  7.00(9)

 新登場の作品はありません。

 ★★★ 韓国内の映画 週末の興行成績4月30日(金)~5月2日(日) ★★★
       韓国の青春メロドラマ「雨とあなたの物語」1位

【全体】
順位・・・・題名・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・累積収入・・上映館数
1(57)・・雨とあなたの物語(韓国)・・・・・4/28 ・・・122,261 ・・・・・・・174,742 ・・・・・・1,569 ・・・・・・956
2(11)・・ザ・クーリエ ・・・・・・・・・・・・・・・4/28 ・・・・88,507 ・・・・・・・130,864・・・・・・・1,171 ・・・・・・710
3(1)・・明日の記憶(韓国)・・・・・・・・・・・・4/21 ・・・・55,010 ・・・・・・・247,776・・・・・・・2,191 ・・・・・・625
4(5)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03 ・・・・52,748 ・・・・・1,026,668・・・・・・・9,265 ・・・・・・701
5(2)・・劇場版「鬼滅の刃」・・・・・・・・・・・・1/27 ・・・・43,931 ・・・・・1,893,327 ・・・・・18,223 ・・・・・・500
       無限列車編(日本)
6(4)・・名探偵コナン 緋色の弾丸(日本)・・4/16・・28,266 ・・・・・・・175,504 ・・・・・・1,659 ・・・・・・457
7(3)・・徐福(韓国)・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・24,497 ・・・・・・・385,296 ・・・・・・3,626 ・・・・・・510
8(9)・・ノマドランド ・・・・・・・・・・・・・・・4/15 ・・・・11,900・・・・・・・・・50,342 ・・・・・・・・472 ・・・・・・173
9(44)・・オクトノーツと火のリング ・・4/28 ・・・・10,090・・・・・・・・・11,685 ・・・・・・・・・95 ・・・・・・183
10(51)・・ザ・マークスマン・・・・・・・・・・4/28・・・・・・8,557・・・・・・・・・15,328 ・・・・・・・・119 ・・・・・・210
     ※KOFIC(韓国映画振興委員会)による。順位の( )は前週の順位。累積収入の単位は100万ウォン。

 1・2・9・10位の4作品が新登場です。
 1位「雨とあなたの物語」は韓国の青春メロドラマ。「これは、待つことについての物語です」。はっきりとした夢も目標もなく退屈な三浪生活を続けてきたヨンホ(カン・ハヌル)は、長い間大切にしてきた記憶の中の友人を思い出し、やみくもに手紙を送ります。その宛先はソヨン(イ・ソル)でしたが、手紙を最初に手にしたのは妹のソヒ(チョン・ウヒ)でした。ソヒは自分の夢は探せないまま母親と共に古い本屋を運営しています。彼女はヨンホからの手紙を受け取ります。そして具合の悪い姉に代わって返事を書き、ヨンホに送ります。偶然始まった手紙のやりとりは無彩色だった2人の日常はときめきと期待に染まり始め、ヨンホは「12月31日、雨が降ったら会おう」という可能性の低い提案をするのですが・・・。原題は「비와 당신의 이야기」です。
 2位「ザ・クーリエ」はアメリカのスパイスリラー。キューバ危機に際して重要な役割を果たしたとされる実在のイギリスのスパイで電気技師のグレヴィル・ワインの半生を描いていた作品です。冷戦時代の1960年、ソ連の軍事情報局オレグ大佐(メラーブ・ニニッゼ)は政府の目を避けて、核戦争の危機をくい止める重大機密をCIAに伝えようとします。CIAはイギリスの情報機関MI6と協力して、ソ連の機密文書を入手するためにイギリスの実業家グレヴィル・ワイン(ベネディクト・カンバーバッチ)を情報の運び屋として雇い入れ、潜入に成功します。正体を隠したまま、ロンドンとモスクワを行き来するグレヴィルとオレグ大佐の隠密で危険な関係が続くにつれKGBの疑いは大きくなっていきますが・・・。韓国題は「더 스파이(ザ・スパイ)」です。本作は日本では昨年7月ヒューマントラストシネマ渋谷の<未体験ゾーンの映画たち2020 延長戦>で上映されましたが、他の一般劇場公開はなさそうです。
 9位「オクトノーツと火のリング」はイギリスのアニメ。韓国でも「海探検隊 オクトノーツ(바다 탐험대 옥토넛)」というタイトルでTV放映されておなじみのイギリスBBCの子供向け人気アニメシリーズの新作劇場版。日本でもスカパー等でやっているようです。いろんな動物によるエージェント集団オクトノーツがタコ状の乗り物に乗って出動します。今回は、えっ、海底火山!? 平和な日常を送っていたオクトナッツは太平洋をめぐる<火のリング>で火山の噴火が起きていることを知ります。生態系救助のために熱い炎の中に先を争って飛び込むオクトナッツ。大爆発が続いて起きると、オクトナッツの万能エンジニア、トゥイックはついに最後の手段を取り出しますが・・・。それはまさにオクトナッツ全員が搭乗して操縦することができるように<メガ合体>されている、シャコの形のメガ探索船Zです! 韓国題は「극장판 바다 탐험대 옥토넛 : 불의 고리 대폭발(劇場版 海の探検隊 オクトノーツ:炎の輪 大爆発)」です。
 10位「ザ・マークスマン」はアメリカのアクション。ジム・ハンソン(リーアム・ニーソン)は海兵隊の狙撃手でしたが今は引退し、立ち退きの通知を無視してアリゾナの国境地域で静かな晩年を送っています。ある日偶然に11歳の少年ミゲル(ジェイコブ・ペレス)とその母親ローザ(テレサ・ルイス)がメキシコの麻薬カルテルの殺し屋たちに追われているのを救ってあげますが、無慈悲な彼らの攻撃によってローザは息を引き取ります。ミゲルをシカゴの親戚の所に連れて行ってくれというローザの最後の頼みを無視することができなかったジムは、ミゲルと共にシカゴに向かいます。2人は徐々に解け始めますが、彼らを追う殺し屋たちはじわじわと近づいてきます・・・。韓国題は「마크맨」です。

【独立・芸術映画】
順位・・・・題名 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・公開日・・週末観客動員数・・累計観客動員数・・・累積収入・・上映館数
1(1)・・ミナリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3/03・・・・・・52,748 ・・・・・・1,026,668・・・・・・・9,265 ・・・・・・701
2(再)・・あの頃、君を追いかけた ・・2012/8/22 ・・・・・・3,286・・・・・・・・・・54,930・・・・・・・・・389 ・・・・・・109
3(2)・・大人たちは知らない(韓国)・・・・・・4/15・・・・・・・2,239・・・・・・・・・・32,294・・・・・・・・・314・・・・・・・・86
4(4)・・ファーザー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4/07・・・・・・・2,078・・・・・・・・・・38,102 ・・・・・・・・326・・・・・・・・73
5(再)・・風と共に去りぬ・・・・・・・・1972/12/23・・・・・・・1,768・・・・・・・・・・26,829・・・・・・・・・・87・・・・・・・・52

 新登場の作品はありません。
 5位「風と共に去りぬ」は(たぶん)1995年以来久々の再上映。韓国題の「바람과 함께 사라지다」は日本題をそのまま韓国語にしたのでは? 1939年制作で日本上映は1952年9月有楽座(東京)と大阪松竹座。有楽座は1984年11月11日の閉館の時もこの作品を上映しています。※その跡地に建てられたビルにTOHOシネマズシャンテ等が入っている。大阪松竹座も1994年5月8日映画館閉館に際し最後の上映作品は「風と共に去りぬ」だったとか。タイトルも合ってるしねー。韓国での初公開は首都劇場で1957年3月25日。(上の表の「1972年」は2度目。)
コメント
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