風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

歌舞伎座新開場 こけら落六月大歌舞伎 第二部(6月4日)

2013-06-04 23:51:25 | 歌舞伎




迷いに迷っていた杮茸落六月の第二部でしたが、良席(3A席2列目)の戻りが出ていたため思わずポチリ。

さて、結論から申しますと、、、4~5月の各部から貰えたほどの感動はありませんでした。。。^^;
今日は仕事を午後休にしたのですが、退社直前に緊急の案件が3件も舞い込み、その対応をしているうちに予定より1時間も退社が遅れ、体はヘトヘトに疲れ果て、それでも開演1時間前には東銀座に着いたのでプロントでお茶をしていたら猛烈な睡魔に襲われ・・・・・、まあテンション下がりまくりな状況であったことは確かです。
とはいえいつも書きますように、どんなに最悪な条件下であっても、感動する作品というのは必ず感動をくれるもの。そして今日の第二部の舞台はというと、全体としては、先月先々月ほどではありませんでした。
と、最初にとことん底辺まで下げておいてから(笑)、感想スタート~。


【壽曽我対面】

びっくりなことに、お目当てだった土蜘よりも、こちらの方が楽しめました。
少なくとも、正月の浅草の100倍は楽しめた。

大薩摩から始まり、浅葱幕が落ちると、ずらりと並ぶ面々。
最初からこれだけメインの役者が舞台上に勢揃いしている演目ってあまりないので、テンション上がります。
で、その中心にいらっしゃるのは、もちろん仁左衛門さん。
思っていたよりお元気そうで、ほっとしました。
背後にズラリと大名達を従え、左右に美女(七之助&芝雀さん)を侍らせている仁左さま。なんて眼福な構図。
大名達が口々に祝いの言葉を述べ始めると、視線をつと流してそれを聞く仁左さま。本当に、何をしても絵になるお人です。
そして皆に勧められて高座へ移るわけですが、その前に床に手をつき、客席に体を向けて「何れもさま」のご挨拶。
昨日の初日に観られた方の感想では声が掠れていたそうですが、今日はそんなことはなく、とても力強い声で聴きごたえがありました。仁左衛門さんのこういうのって、声も姿もいいから、気持ちいい。

で、舞鶴が「祐経さんに会わせたい人がいる」と五郎(海老蔵)&十郎(菊之助)を呼ぶのですが、孝太郎さんの舞鶴がまた、とってもよかったです。間違っても美人とはいえませんが^^;、堂々とした品があり。年齢が海老&菊より上で、かつ仁左衛門さんの息子ということもあり、兄弟と工藤の両方の立場を理解している舞鶴という聡明な女性にぴったりでした。

ちょっと早送りします。
兄弟が花道で何やかんややってから、舞台に上がります。
そして私は知りました。
海老&菊&七と並んでも、仁左さまが一番美しいということに――。
いや、本当ですってば!!
いくら仁左さまでも旬の花形と並ぶとキツイだろうと思っていたので、自分でも吃驚だったんですから!

話を戻しまして、海老蔵です。
正直に申し上げてしまいましょう。
これまでに観た海老蔵の舞台の中で、一番、突出してよろしくない出来のように思いました。
なんといいますか、見てはいけないものを見て、聴いてはいけないものを聴いてしまったみたいな。。。
舞台左側に視線をやるのが恐ろしくて(菊ちゃんは素晴らしかったから見たかったんだけど)、上手にいる仁左さまばかり見てしまった。。。
でも肝心の耳は塞げず。。。
ていうか五郎の台詞って、こんなに高音じゃないとダメなんでしたっけ?
海老のもっとも苦手とする部分が前面に出てしまう台詞まわしじゃないの、これ。
海老、弁慶のような低音は(少々こもるとはいえ)すごく良い声なのに、その魅力が少しも出せていないなんて、実にもったいない。
これが歌舞伎座初舞台となった彼がなんだか気の毒になりました。。この人はもっとずっと魅力のあるお芝居を見せられる人なのになぁ。

舞台の上で海老蔵だけが(あと七之助もちょっとだけ)、異星人な感じでした。
ただですね。海老を庇うわけではありませんが、脚本も良くない気がするんですよね(←黙阿弥を敵にまわしました)。だって、この観ていて居た堪れなくなる一人だけ異星人な感じは、浅草で松也が演じた五郎も全く同じでしたもの。
あくまでも曾我の五郎である以上、石切の俣野のようになってしまってもダメですし。といって無邪気さがなく重々しくなってもダメですし。十郎よりもこの五郎の演技の方がずっと難しいと思う。もちろん、そこを演じてみせるのが役者なのでしょうが。荒事って意外に難しいんですね。
「これぞ対面の五郎の名演!」って、一体どんな演技を言うんだろう。。

とまぁそんな感じで「もうどうしよう・・・(汗)」という微妙な気分のまま、しかし仁左さまには見惚れながら、お芝居は進み――。
五郎が工藤の盃を受ける場面。
ここは、良かった!
工藤が兄弟へ盃を与えるこの場面。工藤ほどの身分の者が盃を与えるということは、兄弟に対する破格な待遇なわけですが、なんか(意地悪な意味じゃなく)工藤がSっぽくて、思わずニヤニヤしてしまいます。今回のように役者が美形揃いな場合は特に。
で、お兄ちゃん(菊)は大人ですから、工藤からの盃を大人しく飲み干します。
しかし弟の五郎(海老)は、それができません。
いま目の前に、父を殺した仇がいる。なのに討つことができない怒りと無念。
盃を手にしますが、わなわなと震え、ついに盃を砕いて、三宝も壊してしまいます。

その様子を、一段上から(笑)冷静に見下ろすニザさま。
そして、斜め後ろから厳しい視線で、弟を見守るお兄ちゃん菊之助。

海老蔵は本当に泣いていました。涙=いい演技というわけでは決してありませんし、“荒事”という稚気を要点とした芸からは恐らくズレてしまうでしょう。また彼が父親を亡くしたばかりということを観ている側が全く思わなかったといえば嘘になります。それでも、ここの場面の海老蔵だけは、仁左衛門さん&菊之助とともに、とても美しい3人の姿でした。

菊之助の十郎。
とても良かった。
五郎が工藤に襲いかかろうとする度に素早く動いて五郎をとめる姿が、すべて美しい絵になっていて、それだけじゃなく、心も感じられて。弟思いで美しくて思慮深い、とても素敵なお兄ちゃんでした。

そして今回の仁左さまは「態度は上から&心根は爽やか」という、最も私好みな仁左さまだったので、観ていて楽しかったのなんのって。
最後に兄弟に通行手形を投げるところも、カッコよかったな~。
ただ仁左衛門さんは演技も雰囲気もとっても繊細系なので、『寿』な雰囲気はあんまり感じられなかったです^^;
幕切れの見得も非常に美しかったですが、本来この演目が目指しているであろう「何やらおめでたい感じ」ではなく、繊細な雰囲気の後味でした。
「何やらわからんけどおめでたい感じ」というのは、吉右衛門さんみたいな役者が向いているのではないでしょうかね。あと、團十郎さんとか。
とはいっても、美しく包容力がありすっきりカッコよくインテリジェントでちょっぴり意地悪な最強仁左さまが観られて、個人的には大満足でございました♪



【土蜘】

こちらも黙阿弥さんですね。
で、ワタクシ、土蜘が松羽目物と知っていたはずなのに、なぜかこの演目は将門のようなオドロオドロしい舞台装置&演出だろうと思い込んでおりました。
なので、幕が上がったときの舞台の明るさに軽く困惑いたしました^^;

この演目、日本昔話の退治モノといった感じなのですね。
もっと暗~い、じめ~っとした演出にした方が素敵だと思うのだけどなぁ。
オリジナルの能の方もこういう感じなのでしょうか。蜘蛛の棲もぴったり一人用サイズで、天井に草が絡まっていて、可愛らしい鳥カゴみたいだし^^; 笛の美しい旋律だけは、最高にぞくぞくしましたが。
なにより、菊五郎さんにこの役があまり合っておられないように私には感じられました。なんといいますか、怪しさがあまりなく、妖怪ではなく人間に見えてしまった。。
それともやっぱりお疲れなのだろうか。。
ですが、お声はあいかわらずとっても良かったです。

吉右衛門さん。
これも團十郎さんの代役でしたっけ?
なんか、可愛かったです、笑。
白塗りのお顔も、髷のカタチも。
夜になり寝ているところを表す場面の打掛?がまた可愛かった
オレンジ色に、色んな種類の花々が色とりどりに一面に散りばめられていて。
あとこの就寝シーン、座って扇子を持った右手を顔の横に掲げてる姿勢で微動だにしないのが、すごかった!熊谷のときもそうでしたけど、吉右衛門さんのこういうところ、素晴らしいですね。
少し喉がやられていたのか声が掠れていましたが(そりゃあ疲れもしますよねぇ・・・)、その疲れた感じが病身の身らしくてよかったです。たぶんこの疲れた感じがなかったら、ちょっと健康的すぎたと思う^^; 
なので役としてはいい感じだったのですが、実際のところ、吉右衛門さんの体調が心配・・・。このまま来月は巡業に突入とは・・・・・。

太刀持音若の玉太郎くん、品があって、とてもいいですね。観ていて気持ちよかったです。
石神の大河くんも可愛かった。4月の盛綱陣屋の小三郎のときもそうだったけど、見得がはきっとしてて綺麗。

で、今回の一番の見所はこの方。
三津五郎さん。
素晴らしかった
声もよく通るし、最初から最後まで、動いていても止まっていてもキマるキマる。
ひとつひとつの動きがキリッとカッコよくて、目が離せませんでした。
第一部の喜撰が楽しみ!!

最後の最後の場面で菊五郎さんが蜘蛛の糸を左右に投げるときに片方を糸巻きごと投げてしまったりというハプニングもありましたが(ぽ~んと下手の端まで飛んでいってしまい客席から笑いが起きていました)、これはこれで生舞台らしくて、のんびりと楽しめました。

と、ここまで書いて思うに。
なんだかんだ言って、結構楽しかったみたいデス、私。
みなさん、2日目、お疲れさま♪
海老蔵も、南座から引き続き、お疲れ♪
来週、かっこいい助六を楽しみにしてるよ~!
私はもう二部は観ませんが、千秋楽までに少しでもマトモな五郎になるよう、ぜひ頑張ってください。共演者の方々のためにも、お客さんのためにも、そして何より海老自身のために。。。


帰宅したら、ポストに8月の竹三郎さんの会のチケットが届いておりました(ちなみにこのチケットは発売二日目の昼休みにようやく取れました・・・。友達との関西旅行に合わせて行って参ります)。
8月まで、くれぐれもお体をお大事に。。。
仁左衛門さんも、竹三郎さんも。。。

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