ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

報道記事:全国周産期医療連絡協議会の声明

2006年03月27日 | 報道記事

*** 共同通信、社会ニュース
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060327-00000179-kyodo-soci

逮捕、起訴は疑問と声明 周産期医療の医師団体

 福島県立大野病院で帝王切開を受けた女性が死亡し、医師が逮捕、起訴された医療事故で、全国周産期医療連絡協議会は27日、「不幸な出来事が医師個人の責任として問われたこと、逮捕、起訴にまで至ったことは疑問」などとする声明を厚生労働省や捜査当局に提出したと発表した。
 同協議会は、妊娠後期から新生児早期までの周産期の診療に当たる医師ら約50人で組織。
 声明では、逮捕、起訴は「産科を志す医学生の減少や全国的な産科医不足に一層拍車を掛ける。地域の周産期医療が崩壊し、安全で安心なお産ができる地域が激減してしまう」とした。
 さらに「最善を尽くし診療に当たっても、一定の頻度で不幸な出来事が起こることは避けられない」と指摘し、再発防止には周産期医療システムの改善などの施策が必要と要望した。

(共同通信) - 3月27日17時58分更新

******** 全国周産期医療連絡協議会
http://mf-med.umin.jp/

高次周産期産科医療を担う医師からの声明

はじめに、亡くなられた患者様とそのご遺族に対して心より哀悼の意を表します。

お産や手術に際して、担当した患者様が亡くなられる事は、ご家族と同様に、私たち周産期医療に携わるものにとっても大変残念で悲しい事であり、現代医療の限界を痛感させられるものです。

さて、福島県の県立病院において帝王切開中の大量出血により患者様が亡くなられた件で、帝王切開術を担当した産科医師が逮捕・起訴されました。このこと(逮捕・起訴)につきまして、全国各地域において周産期医療をささえる責務のある高次周産期医療施設の集まりである本会としても、日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会の共同声明ならびに、新生児医療連絡協議会の声明を強く支持せざるを得ません。


世界に誇れる日本の周産期医療において最善を尽くし診療に当たったとしても、ある一定の頻度で不幸な出来事が起こることを避けることはできません。このことは、一般の産科医療施設のみならず、3次あるいは2次施設としての総合・地域周産期母子医療センターにおいても同様です。今回の不幸な出来事が一人の医師個人の責任として問われたことには疑問を抱かざるを得ません。

さらに今回のことが、近年問題となっている産科を志す医学生の減少、全国的な産科医不足や産科医療施設の閉鎖に一層拍車をかけ、地域の周産期医療が崩壊し、妊婦さんたちが安全に、安心してお産ができる地域が激減してしまうのではないかとたいへん危惧しております。

今回の件に対して、適切な医学的見解に基づいた判断により、周産期医療システムの改善も含めた再発防止に向けた最善の施策を講じるために、国民の皆さん、妊婦さんとそのご家族、医療機関、行政機関に最大限のご協力をいただくよう、強く要望致します。

2006316

全国周産期医療(MFICU)連絡協議会
代表 末原則幸
会 員 一 同

******** 山口県支部声明
http://www.jaog.or.jp/JAPANESE/MEMBERS/sibu/35yamaguchi/news/news060324.pdf

         抗議声明

福島県の県立病院で平成16年12月に腹式帝王切開術を受けた女性が死亡したことに関し、手術を担当した医師が業務上過失致死罪で逮捕、勾留、起訴された件に関して、抗議声明します。

はじめに、本件で亡くなられた患者様、および遺族の方々に心からお悔やみを申し上げます。

 この医療事故に関しては、福島県により事故調査委員会が開催され、すでに報告書が作成され、関係者の処分が行われています。また、当該医師はその後も同病院にて勤務を続けていることから、証拠隠滅や逃亡の恐れはなく、逮捕、勾留の必要性は全く認められなかったと考えられます。

 癒着胎盤は術前の診断が極めて難しく、また治療の難度が高い疾患です。本件においては、医療事故調査委員会の報告によると、患者から子宮温存の希望があったため、子宮摘出の判断に遅れが生じたとされていますが、当該医師は手をこまねいていたわけでなく、胎盤剥離部位の縫合、ガーゼによる充填圧迫、子宮動脈血流遮断、そして最終的に子宮摘出という処置を試みています。

  今回のように診療上ある一定の確立で起こり得る不可避な事例に対し、その状況下において、できる限りの処置を行なったにもかかわらず、刑事責任を問われ逮捕、起訴されるようなことが許されれば、今後は、産婦人科医療だけにとどまらず、すべての医療が萎縮し、医療レベルの低下を招き、ひいては国民の不利益になるものと考えます。

 ここに、医療に携わっている我々の社会的使命によって、強く抗議します。

平成18年3月24日
日本産婦人科医会山口県支部長    伊東武久
日本産科婦人科学会山口地方部会会長 杉野法広

******** 栃木県支部声明
http://www.tochigi-og.org/visitors/fukushima01.html

福島県産婦人科医不正逮捕事件について

                         声明文

福島県立大野病院の産婦人科医師の逮捕事件に抗議

 先ずは、今回ご逝去された患者様とご家族並びに親族の皆様に対して深甚なる哀悼の意を捧げたいと思います。
 去る2004年12月17日に福島県立大野病院産婦人科で帝王切開手術を受けた患者が、不幸にも予知することが極めて困難な癒着胎盤による出血多量で死亡し、担当医師が業務上過失致死と医師法21条(異状死の届出義務)違反で2006年2月18日に逮捕され、起訴されました。1年以上経過した後に「証拠隠滅のおそれ」等を理由としての拘留は、多くの医療関係者が驚愕するとともに、なぜ今逮捕なのかと疑問に感じております。
 この事件は、国が医師法の21条の「異状死」の定義、判断を明確に示さず、解釈を現場の医師に委ねたことに、大きな要因があります。医師が扱わなければならない疾患の中には、最善の治癒と考えて施した手術でも、時に予見できない合併症などがあります。
 今、全国的に医師不足が社会問題になっており、とりわけ産婦人科や小児救急の担い手不足が深刻でありますが、産婦人科医療の特殊性に何ら配慮することなく、結果だけで医師個人に責任転嫁した福島地検および福島県警の過剰行使に強く憤りを感じる次第です。
 我々は、今回の不当逮捕に対し強く抗議するとともに速やかに医師法21条の改正もしくは明確な解釈を示していただき、今後、二度とこのような事件が起こることのないよう医療の改善に向けて全面的な支援を表明いたします。

平成18年3月23日
日本産婦人科学会栃木地方支部会長 鈴木光明
日本産婦人科医会栃木県支部長       野口忠男