ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

民主党マニフェスト: 医師不足には医学部定員5割増し

2009年07月28日 | 医療全般

今後、医師養成数が5割増しになるとすれば、研修医の数も5割増しとなり、大学病院や都会の有名病院だけでは研修医の受け皿が全然足りなくなる筈です。

地方の弱小病院であっても、充実した臨床研修ができる病院であれば、初期研修医や後期研修医が自然に多く集まって来るようになると思われます。

従って、これからは従来にも増して、病院の研修機能を高めることが重要となっていくと考えられます。

現状では、当直の翌日も終日働く36時間連続勤務が普通ですが、今後は医師の交代勤務制を含めた労働基準法の遵守が常識となっていくと思われます。また、女性医師が産休や育休を取得しても、周囲の医師が全く困らないような「女性医師の働きやすい勤務環境」を実現する必要があります。

****** 読売新聞、2009年7月27日

民主公約…医師不足には医学部定員5割増し

 医師不足対策では、医師の絶対数を増やすため、医学部定員を現状の1・5倍にすることを明示した。

 当面の対策としては、医師や看護師ら医療従事者を増やす努力をしている医療機関に対し、診療報酬を手厚くする。

(以下略)

(読売新聞、2009年7月27日)


民主公約 「医学部定員5割増」明記へ

2009年07月25日 | 医療全般

現在、医学部定員約7600名の時代に入学した医師が毎年、新人医師となって初期研修を開始してます。また初期研修や後期研修を終了した医師たちが、大学に戻ったり、市中病院に就職したりしてます。この新人医師数(毎年約7600名)は、リタイヤする医師や一時休業する医師の数(年間約4000名)をはるかに上回っているので、実働の医師数は毎年確実に増えてます。医師数増加のスピードは今後さらに加速されます。

今は医療崩壊が進行して、産科や救急などの医療現場に必要な医師を確保するのにみんな四苦八苦してますが、医療現場の常勤医ポストの数だって無限ではないので、いつかはすべての常勤医ポストが埋まって、飽和状態に達する日も必ずやって来ます。何年先かはわかりませんが...

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****** 朝日新聞、2009年7月22日

民主公約 「医学部定員5割増」明記へ 時期や道筋は未定

 民主党は医師不足解消策の一環として、衆院選マニフェスト(政権公約)に、大学医学部の定員を5割増やす目標を明記する方針を決めた。医師不足が特に深刻な救急や産科、小児科、外科の充実に向け、地域の医療機関の連携強化や、国公立病院の医師定数増員も明記する。

 政府は80年代後半から定員削減策をとってきたが、医師不足の拡大を受けて08年に方針転換した。しかし、民主党の鳩山代表はまだ不十分だとして、6月の党首討論で「政府・与党との政策の違いの一つが医療問題」と医学部定員5割増を明言。公約にも明記することになった。

 公約では、従来政府がとってきた年間2200億円の社会保障費抑制方針は採らず、医療再建のため十分な予算を確保するとしている。当面の目標として医師数を人口1千人あたり現行の2.1人から、主に先進国が加盟する経済協力開発機構(OECD)の平均である3.1人まで増やす方針を掲げる。

(以下略)

(朝日新聞、2009年7月22日)


文部科学省: 医学部入学定員増を発表

2009年07月19日 | 医療全般

コメント(私見):

来年度の医学部入学定員が最大369人増員されて、増員後の総定員は全国の国公私立79大学医学部で最大計8855人と過去最多となることが、文部科学省より発表されました。

また、民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)では、医学部入学定員を1.5倍に増員するとしてます。従って、民主党が政権を担当することになった場合、医学部の入学定員が今後さらに大幅増員(4000人程度?)されることになります。

今は医療現場に必要な医師数を確保するのにみんな非常に苦労してます。しかし、将来的には医師の需給バランスが激変し、今の人気診療科は医師過剰で新規参入が困難となり、今さんざん人集めに苦労している不人気診療科(外科、産婦人科など)に多くの若手医師が争って新規参入して来るかもしれません。

****** 共同通信、2009年7月17日

医学部定員369人増へ 「地域枠」県外大学もOK

 深刻な医師不足を解消するため、文部科学省は17日、本年度に過去最多となった大学医学部の総入学定員枠を来年度も369人増やし、国公私立79校で総定員8855人にすることを決めた。文科省は今後10年間、この総定員規模を臨時措置として続ける方針。

 都道府県が地元勤務を義務付ける代わりに奨学金を出す「地域枠」は、近隣の都道府県の大学にも設定できるように変更したのが特徴。都道府県ごとに7人まで認める。文科省は「医師不足解消のため県境をこえて積極的に連携してほしい」としている。

(以下略)

(共同通信、2009年7月17日)


地方の産科医療に関する最近のニュース(南丹病院、佐野厚生総合病院、新宮市医療センター、武蔵野赤十字病

2009年07月17日 | 地域周産期医療

****** 京都病院、2009年7月26日

緊急手術で外来休止も、当直は維持

南丹病院の産婦人科医減員で

 丹波2市1町の中核病院である公立南丹病院(京都府南丹市八木町)で、8月から産婦人科の常勤医が2人に減り、出産の取り扱い数を減らして対応する。全国的に医師不足が問題になる中、丹波でも産婦人科医療の課題が表面化した。

 2市1町で出産ができる医療機関は、同病院と亀岡市の民間診療所の2カ所だけ。南丹病院は年間500件前後の分娩(ぶんべん)を取り扱い、「南丹医療圏」で唯一、異常分娩や未熟児を扱う周産期医療二次病院として、早期破水など高リスクの妊婦の大半を受け入れている。

 同病院は8月以降、里帰り出産を制限することで分娩数を月10件前後減らす方針。さらに、帝王切開などが緊急に入った場合、手術中は外来診療を休止するなどの影響が出ることも懸念されている。

 南丹病院の産婦人科は夜間や祝日の当直体制を敷いており、現行の常勤医3人でも「医師の負担が大きい」との声が上がっていた。同病院は当面の措置として非常勤医を増員しようとしたが、現在めどが立っていない、という。医師の当直回数を増やすなどして当直体制を維持する方針だが、「長期になると体力にも限界がある」と医師の健康を不安視する声も出ている。

 国民健康保険南丹病院組合の国府正昭副管理者は「厳しい状況になって住民に迷惑をかけるかもしれない。理解と協力をお願いしたい」と訴えている。

(京都病院、2009年7月26日)

****** 京都新聞、2009年7月25日

南丹病院 8月から分娩数を縮小へ

産婦人科医産休、補充できず

 亀岡、南丹両市と京丹波町からなる「南丹医療圏」の中核医療施設、公立南丹病院(南丹市)が、産婦人科の常勤医3人のうち1人が産休に入る影響で、8月から分娩(ぶんべん)数を減らすことが25日分かった。子宮がんなど高度医療が必要な患者や、府北部の妊婦の受け入れにも、支障が出る可能性がある、という。

 南丹病院の産婦人科は常勤医3人、非常勤医2人の態勢で月約40件の分娩を扱っている。常勤医1人が8月から産休に入ることが判った昨冬以降、医師の派遣元の大学病院に医師補充の要望を続けたが、6月下旬に産婦人科医不足などを理由に「派遣は困難」と回答があった。

 同病院は今月15日、「南丹医療圏の産婦人科医療が崩壊しかねない」として、医師確保に支援を求める山田啓二府知事あての要望書を提出。里帰り出産などを制限して8月以降は分娩数を月30件前後に減らす方針だ。府北部から昨年、妊婦や出産直後の女性の搬送を15件受け入れたが、8月以降は困難になる恐れがある。同病院を運営する国民健康保険南丹病院組合の国府正昭副管理者は「産婦人科医療を守るため医師派遣を引き続き要望する」としている。

(京都新聞、2009年7月25日)

****** 読売新聞、栃木、2009年7月25日

佐野厚生総合病院 出産取り扱い継続へ

 医師不足によって11月末で出産の扱いを休止する可能性が出ていた佐野厚生総合病院(佐野市堀米町)は、医師を確保できることになり、12月以降も出産受け入れを継続することを決めた。休止した場合、県南部の出産受け入れ体制に大きな影響が出ると懸念されたが、回避された。

 同病院の産科の常勤医は現在2人だが、医局とのつながりの深い昭和大学(東京都)や佐野市内の産婦人科開業医の協力を得て、医師の派遣によって少なくとも1日3人体制で勤務できる見通しがつき、出産取り扱いの継続を決めたという。

 同病院は年間に約350件の出産を扱っており、母体や胎児へのリスクが高い出産に対応する県内7か所の「地域周産期医療機関」の1つでもある。

 2007年度に5人だった産科常勤医が08年度に3人に減少、さらに3月末で1人が退職し、医師不足が深刻化していた。

(読売新聞、栃木、2009年7月25日)

****** 産経新聞、和歌山、2009年7月16日

新宮市医療センター 産婦人科医師2人増の4人

 産婦人科の医師不足が課題となっていた新宮市立医療センター(同市蜂伏)は7月から医師2人を増員して4人勤務とし、同科の診療体制を1診から2診に変更した。

 同センター医療業務課によると、産婦人科はこれまで月~金曜の午前と月、水、金曜の午後に1診体制で診察していたが、医師の増員に伴い月~金曜の午前は毎日2診体制となり、午後も月曜は2診(水、金曜は1診)ができるようになった。

 産婦人科の医師は開院当初は3人だったが退職などで2人となり、その後3人体制に戻ったものの17年12月に1人が退職。18年1月から医師2人の状態が続いていた。

 20年4月に大阪府門真市の開業医が勤務することになり3人となったが、この医師も4カ月で退職し、同年8月から2人体制となっていた。

 同センターは新宮市、東牟婁郡内に加え、三重県熊野市などの住民らが利用。“里帰り出産”も含めた平成20年度の出産件数は331件で、産婦人科の治療など外来患者は1万696件、入院患者は5066件-などとなっている。

(産経新聞、和歌山、2009年7月16日)

****** 産経新聞、東京、2009年7月8日

武蔵野市が病院を財政支援 産科医療維持

 産婦人科の救急医療体制維持を図るため、武蔵野市は地域の医療拠点である武蔵野赤十字病院(同市境南町)に財政支援することを決め、同病院と8日、覚書を結んだ。今年度は同病院産婦人科の宿日直手当として500万円を補助する。

 産婦人科の医師不足が各地で深刻化する中、昨年9月に救急搬送された調布市の妊婦が地域の病院に受け入れ拒否されて重症化する問題が起きたことを契機に、市は同病院と対策を協議してきた。

 市健康課によると、市内で現在、周産期の急患の受け入れができるのは、武蔵野赤十字病院と民間開業医の2院だけ。武蔵野赤十字病院の産婦人科医は12人で、夜間や週末の宿直態勢を維持するのに苦心している状態という。

 同病院産婦人科の年間の宿日直手当は総額約2500万円だが、補助額は総患者数に占める市民の割合から算出した。多摩地域で自治体による病院の財政支援は珍しいケース。現在のところ同病院産婦人科に近隣市から財政支援の動きはないという。

 昨年9月の妊婦受け入れ拒否問題後、近隣の武蔵野市、三鷹市の行政や医師会が広域連携で対策を講じるため協議会を開いたが、有効な対策は打ち出せず、その後は協議会も開かれていないのが現状。

 武蔵野市健康課の中野健史課長は「多摩地域でもお産のできる病院数は減っており、多摩西部から武蔵野赤十字病院への患者さんの搬送が増えている。広域で対策を講じていくべきかもしれない」と話している。

(産経新聞、東京、2009年7月8日)


妊婦健診と分娩の取り扱いを地域内で分担

2009年07月09日 | 地域周産期医療

全国的に分娩を取り扱う医療機関の数が激減し、一部の医療機関に患者さんが集中し、分娩を取り扱う医療機関の業務量が著しく増加しています。

地域の状況によっては、分娩取り扱いを休止した産科医療機関が妊婦健診を担当し、分娩を取り扱う医療機関とうまく連携するシステム(セミオープン・システム)を構築すれば、地域産科医療の崩壊をくい止める一助になるかもしれません。

松本地域は、分娩医療機関が6施設(信州大学、県立こども病院、丸の内病院、相沢病院、波田総合病院、わかばレディス&マタニティクリニック)、健診協力医療機関が15施設と、地方都市の中では産科医療機関の施設数が多いという特徴があり、セミオープン・システムを構築する意義は非常に大きいと思います。

飯田下伊那地域の場合、セミオープンシ・ステムのスタート時は、地域内に健診協力医療機関が3施設(下伊那赤十字病院、西沢病院、平岩ウイメンズクリニック)ありましたが、そのうちの2施設の常勤産婦人科医師が離職し、セミオープン・システムの継続が困難な状況となってきました。そのため、昨年4月より飯田市立病院の助産師外来を拡充し、助産師外来3診および産婦人科医による産科外来1診の妊婦健診を毎日実施し、専属の臨床検査技師2名による妊婦の超音波検査も開始しました。その結果、産婦人科医の外来診療の負担が軽減して、地域の周産期医療体制は何とか維持され現在に至ってます。

地域によって状況は全く異なるため、ある地域でうまくいったシステムであっても、他の地域には適用できない場合も少なくないと思われます。各地域で知恵をしぼって、それぞれの地域の現在の状況にマッチしたシステムを構築していく必要があります。

10年先も20年先も持続可能な地域周産期医療システムを構築していくために、次世代を担う多くの若い研修医達が安心してこの世界に参入できるように、充実した研修・指導体制、余裕のある勤務体制、楽しい職場の雰囲気、待遇面での十分な配慮、大学病院との密な連携など、魅力のある研修環境を地域の病院の中に創り上げていくことが大切だと思います。

****** 中日新聞、長野、2009年7月4日

分娩機関での健診が大幅減 松本地域の「出産・子育て制度」

 松本地域9市町村が取り組んでいる「出産・子育て安心ネットワーク制度」で、分娩(ぶんべん)を扱う医療機関の負担を減らす取り組みが広がってきた。妊娠当初から分娩医療機関で診てもらう妊婦は、導入した昨年7月以降は前年同期に比べ約4割減少。医療機関などからは「他の地域でも取り入れるべきだ」といった意見が上がっている。

 松本市内で2日夜にあった同制度の協議会で報告された。この制度は、分娩を扱わない地域の診療所や開業医が「健診協力医療機関」として妊婦健診を担当し、同市の信州大病院や波田町立波田総合病院など分娩医療機関の負担を軽減させる。妊婦は共通カルテ「共通診療ノート」を持ち、異なる医療機関でも情報を共有する仕組みだ。

 昨年7月から今年2月までに、分娩医療機関から妊娠証明を受けて妊婦健診を受けるなどした妊婦は846人で、前年同期比44・7%減少。その半面、健診協力医療機関で妊娠証明と妊婦健診を受けた人は1561人で、同比81・9%増加した。

 従来は、分娩医療機関で妊婦健診も受けていたケースがほとんどで、同健診は地域の診療所などにシフトしている状況だ。

(以下略)

(中日新聞、長野、2009年7月4日)


ダイエットの敵、リバウンド現象を克服するためにはどうしたらいいのか?

2009年07月05日 | ダイエット

多くの人がダイエットに挑戦し、一時的にはうまくいって体重が減っても、いつの間にか元より体重が増加してしまい、それを繰り返すうちに、ますます体重が増えていきます。そのようなウェイト・サイクリングに陥っている人は非常に多いですが、私もその典型例でした。

私の場合、若い時は気合いを入れると減量が割と簡単にできてましたが、その度にリバウンドを繰り返し、中年以降になると減量は半ばあきらめ気味でした。昨年の暮れに私の職場でもメタボ健診が始まり、腹囲測定があることを知り、久しぶりにダイエットに気合いが入りました。健診の直前に減量に成功し、ぎりぎりメタボリック症候群の基準からは外れることができました。苦労して減量に成功しても、すぐにリバウンドするようでは何にもなりません。減量よりも減量後の体重維持の方がずっと難しいと思います。

ダイエット成功後のリバウンド現象を克服するためには一体全体どうしたらいいのでしょうか?御一緒に考えてみたいと思います。

ダイエット成功後のリバウンド現象とは?

ダイエットがうまくいって、いったん減量に成功したとしても、その後再びもとの体重へ戻ってしまうリバウンド現象は、多くの人が経験しています。ダイエット成功後に短期間で前よりもさらに太るというのはよくある話です。特に、急激なダイエットで短期間に大幅に減量すると、体重がすぐに逆戻りしやすいことが知られています。リバウンド後は、以前より筋肉が減り脂肪だけが増えていて、しかも脂肪がとれにくい状態になってしまってます。この減量とリバウンドというサイクルを幾度も繰り返すウェイト・サイクリングに陥ると、1度目よりも2度目と回を重ねる毎に、ますます減量しにくくリバウンドしやすくなる方向に生体は変化していきます。これはダイエットを実行する前よりはるかに悪い状態です。こんな状態に陥らないようにくれぐれもお気をつけ下さい。

やせることよりも、やせた状態をいかに維持するかの方が、はるかに重要で困難な問題です。やせた状態を維持するために絶対に必要なことは、太る原因となった食習慣を変えることです。減量で減らした体重をいかに維持するかが最重要事項です。

ダイエット成功後、油断してはいけない期間は2年間です。特にダイエット成功後の半年間くらいは最も警戒すべき時期です。食事量には常に気を配り、体重が増加し始めたら、すかさず運動量を増やすなどして早めに対処しましょう。

減量後の体重維持は、減量の程度が大きいほど困難であることが知られています。現状から10%程度の減量でも成人病は著しく改善されますから、最初から理想体重を目指して挫折を繰り返すよりは、現在の不健康な状態から少しでも脱却できる実行可能な目標体重を設定してそれを確実にクリアしていく方が現実的です。

米国健康財団の健康体重に関する勧告では、まずは体重の10%程度の減量で十分としています。そしてこの体重を6カ月以上維持し、体重増加のないことを確認してから次のステップに移るようにとしています。

食事制限+運動がダイエットの基本!

食事制限によるダイエットを開始すると、ちゃんと実行すれば、最初の1カ月間はおもしろいように体重が減少しますが、2カ月目にはいると、体重の減少はほとんど止まります(適応現象)。これは、少ない摂取エネルギーに合わせて、基礎代謝量を低下させて消費エネルギーを減らそうとするために起こる現象です。ダイエットの途中で挫折する人の多くは、体重減少のみられないこの時期に減量をあきらめてしまうのです。

この適応現象を克服するために必要なのが運動なのです。運動をすると、活動エネルギー消費に加えて基礎代謝量も増加します。さらに、余剰エネルギーが脂肪に変換されにくくなります。適応現象を克服するために必要な1日運動量は300kcal程度とされています。およそ一万歩の歩行がこの運動量に当たります。

食事制限だけでは適応現象によって体重減少が止まる時期が何度もやってきます。そこで、さらに体重を減らすためには、より過酷な食事制限か、運動を加えるかのどちらかを選択しなければなりません。より過酷な食事制限は健康状態を悪化させてしまいます。食事制限はそのままにして、根気よく運動を続けて、何度も訪れる適応現象を克服してゆくことが大切です。

運動で消費できるエネルギーはそれほど多いものではありません。食事制限なしで、運動だけで体重を減少させることはほとんど不可能と考えて下さい。運動で体脂肪1kgを減らすためには、7200kcalのエネルギーを消費する必要があり、これをウォーキングに換算すると24万歩分の運動で消費されるエネルギーで、ランニングだとマラソン3回分の消費エネルギーです。運動の前後に体重計の目盛りが減るのは、発汗で体の水分が減った分がほとんどで、運動後に水を飲んだらすぐに元に戻ります。運動後に食欲が増進して普段より余分に食べてしまえば、むしろ体重は増えてしまいます。減量のためには、運動をして、なおかつ、摂取カロリーもある程度は制限する必要があります。

ダイエット効果のある運動とは?

適応現象を克服してゆくためには,1日300kcal程度消費する運動が必要ですが、具体的にいうと、ウォーキングで75分、階段の昇りで40分、水泳や縄飛びで30分、これらの運動を継続した場合の消費エネルギー量が300kcalに相当します。

300kcalというと、ビールなら大ビン1本と同じエネルギー量です。運動後に、ビール1杯飲めば消費エネルギーはプラスマイナスゼロとなってしまいます。

ダイエットには、短距離走のような急激で激しい運動よりも、軽く汗ばむ程度の軽い全身運動を長く続けるほうが効果があります。運動開始直後は、エネルギー源として筋肉中のグリコーゲンや血液中のブドウ糖が使われますが、運動開始後15~20分たってから脂肪が使われるようになり、30分を経過すると使用されるエネルギーのほとんどが脂肪になります。そのため、脂肪を燃焼させるためには、30~60分くらいは運動を持続した方が効果的です。また、週1回程度の運動ではダイエット効果はほぼゼロに等しく、毎日継続して行えるウォーキングなどの軽い運動がダイエットには適しています。毎日継続できるかどうかが重要なポイントで、激しい運動は必要ありません。

体脂肪は時間をかけてゆっくりと温めなければ燃焼が始まらず、しかも燃焼し続けるには多量の酸素を必要とします。脂肪を燃焼させるために一番効果のある運動が、大量の酸素を使う有酸素運動(酸素を取り入れながら行う運動)です。ウォーキング、ジョッギング、水泳、サイクリング、エアロビックダンスなどです。

さらに、ダンベル体操などの筋肉トレーニングでは、筋肉を鍛えて筋肉の量が増え、基礎代謝量が増えることによって消費エネルギーが増加します。また、ダイエットの食事制限で、脂肪ばかりでなく筋肉なども減少してしまう可能性がありますから、筋肉を鍛えて筋肉減少を予防することは大切です。

要するに、ダイエットのためには、ウォーキングなどの有酸素運動を主とし、それを補う形でダンベル体操のような筋肉トレーニングも併用するのがベストです。

ゆっくり気長に継続しましょう!

ダイエットの食事は、カロリーを押さえた、栄養バランスのよい食事を、規則正しく食べるというのが王道です。しかし、いちいちカロリー計算なんてやってられませんから、例えば、『間食は一切止め、3度の食事を品数はいつもと同じにして、各品の量をいつもの2/3に減らす(外食の場合は各品を1/3づつ残す)』というような方法も有効です。これを気長に続けてゆけば確実に体重は落ちていくはずです。最初の2週間くらいは空腹感に悩まされますが、3週間目以降くらいになると胃も小さくなってきて空腹感は次第になくなります。これと、有酸素運動と筋肉トレーニングとを組み合わせて確実に実行してゆけば、1カ月2~3kg程度の減量ペースが期待できます。実際に成功する人は少ないのですが、方法論としては非常に単純なことです。実行すれば必ず成功するはずですから、これをゆっくり気長に継続しましょう。


医師の研修制度はいま

2009年07月03日 | 医療全般

現行の医師臨床研修制度が開始されてから今年度で6年目となり、来年度からこの制度が大幅に変更される予定です。現行制度での必修診療科は、内科、外科、救急(麻酔含む)、小児科、産婦人科、精神科、地域医療の7科ですが、来年度からは必修診療科が、内科、救急、地域医療の3科に削減され、さらに都道府県ごとに定員の上限が設定されます。

この臨床研修制度が開始されるまでは、医学部を卒業した新人医師のほとんどが直ちにどこかの大学の医局に入局しました。また、地域の基幹病院のほとんどが、どこかの大学の関連病院となっていて、関連病院独自の医師採用はほとんどあり得ませんでした。当時は、どこかの大学医局に所属しないことには、ちゃんとした研修が開始できませんでしたし、将来的にも有力病院への就職がほとんど不可能でした。現行の臨床研修制度の導入により、研修医自身の自由意思で研修病院を決められるようになり、卒後医師の多くが都市部の大病院などでの研修を希望した結果、特に地方大学医学部では医局に入局する医師の数が激減し、大学医局による医師派遣に依存してきた地域医療の崩壊が全国各地で大きな問題となりました。

医師として一人前になるまでには、多くの病院で、多くの経験を積み、多くの先輩医師からの指導を受ける必要があり、最初から最後まで一つの病院だけで臨床研修を完結させることは難しいと思います。大学病院も関連病院も、人手不足では何もできません。大学医学部と関連病院とが、一つの運命共同体として、多くの若者達が志願して集まって来るような、魅力のある柔軟な組織であり続ける必要があります。

長野県の場合、信州大学附属病院で初期研修を開始する者の数は以前よりも減りましたが、県内全体の研修医の総数は以前よりもわずかに増えているそうです。佐久総合病院、相澤病院、諏訪中央病院など、地方にあっても全国から多くの研修医が集まる人気研修病院も存在します。今後、見直し後の臨床研修制度にうまく対応していくためには、信州大学医学部と関連病院とが一致協力していく必要があると思います。

****** 朝日新聞、長野、2009年6月22日

医師の研修制度はいま 新研修制度の目的は

(前略)

 医師不足の元凶のような扱いをされてきた新制度だが、医師不足と研修制度を直接結び付けることで、本質的な問題を見えにくくしているとの指摘がある。

 厚労省と文科省による検討会は、意見とりまとめで「医師不足への対応は、研修制度の見直しだけでは不十分」として、「医師養成の拡大、医師の勤務環境の改善、医療関係職種間の連携など、関連する対策の一層の強化を強く望む」とした。

 国立大学医学部長会議常置委員会は「低医療費策の結果による失政だ。早急に医学部定員を増やし、高等教育費や医療費を増やさなければ根本的解決にならない」と強く要望している。

 ただ、直面する課題として、医局では新制度導入当初の2年分の研修医が「ゼロ」になった影響や研修後の医師が大学に戻らなくなったことにより、医師派遣機能が低下したのは事実だ。

 元々、医療の細分化や、出産や育児をする女性医師を支える仕組みの不備などで、必要とされる医師の数は不足していた。そこに医師を環流させるポンプ役の医局に医師がいなくなったため、医師配置が行き詰まってしまった。

 信大付属病院の研修医は減ったが、県内全体を見れば逆に微増している。県内の医師不足は、県内に来る研修医が少なくなったからではなく、医局に入る研修医が少なくなって起きたのは明らかだ。

 だが、いったん自由化した医師の進路を再び医局に固定したり、医局による人事に不満のある医療関係者がいる以上、医局の力を再び強めたりするのは難しいのが現実だ。

 県は、医局の医師派遣機能が低下したのを受け、県内の医師の適正配置を話し合う場として、05年に地域医療対策協議会を設置した。今年度、信大医学部に設けた「寄付講座」では医師派遣システムも検討する。だが、大学関係者からは「人事を含めた医療の現場を知っているのは医局である以上、県が医師配置に介入するのは難しいのでは」との声がもっぱらだ。

 県病院事業局の勝山努局長は「研修制度でも医師不足への対応でも、肝心な視点は『患者が喜ぶ医師』をどれだけ育成できるかだ。医学部教育を含めた医師養成課程に厚労省も文科省も一体になってかかわり、抜本的に改革しなければいけない」と指摘する。

(以下略)

(朝日新聞、長野、2009年6月22日)