ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

富山県の産科医療の状況

2009年02月26日 | 地域周産期医療

****** KNBニュース、富山、2009年2月25日

産科医療の課題は

 県の新年度予算案と私達の暮らしの関わりから、医師不足が深刻な産科医療への支援についてお伝えします。

 黒部市にある民間の産科婦人科クリニックです。 これまで58歳の医師1人で、お産に対応してきましたが、今月いっぱいで、お産を扱わないことを決めました。 理由は《体力の限界》。医師は後継者を探しましたが見つかりませんでした。

 黒部市に住む高橋さんは今月、このクリニックで長女を出産したばかりです。 以前、長男を出産した別のクリニックも今はお産が出来なくなっています。 高橋幸江さん「この子らを産んだ場所が無いっていうのも寂しいし、これから産もうと思っとる人たちのこと考えたら可哀想やなー不安やろなーと」

 県内でお産を扱う医療機関は年々減り続けています。 25ある公的病院では、およそ半分の13か所に。また民間では1病院、13のクリニックがありましたが、来月からは12のクリニックに減ります。 これで県内では合わせて9つの市町村でお産が出来る民間の医療機関がゼロとなってしまいました。

 産科の医師確保を目指そうと県は新年度予算案にお産を扱う医師への手当てに対する補助金として5400万円余りを盛り込みました。
 また、産科の医師の負担を減らすため助産師外来などを開設する医療機関への支援として、およそ500万円を組み入れました。

 助産師外来とは経過が順調な妊婦の健康診査や保健指導を助産師が中心となって行います。 平成18年以降、県内では県立中央病院など5つの病院に設けられています。

 そして、周産期医療を取り巻く課題はもうひとつ。不足しているNICUの整備です。県立中央病院では、この駐車場に最大で3階建ての新しい病棟を建設する予定です。 県は新年度予算案に5300万円あまりの実施設計費を計上しています。 しかし、その規模や中身については、今後NICUを増やすかどうか次第で、結論は出ていません。」

 県内のNICU、新生児集中治療室をめぐっては、去年4月に富山市民病院が14の病床を休止したままとなっています。 その後、県立中央病院が病床を5つ増やしましたが、依然として9つ足りない状況です。

 石井知事は「県民の安心とか健康は命に関わるからどなたも引き受けないとなれば、中央病院で、いかに財政が厳しくても受けなくてはならない。」としますが、引き受ける前提条件としては、あくまでも「富山市が市民病院のNICUの再開を断念した場合」としていて、富山市との話し合いは進んでいません。

 一方、富山大学附属病院はKNBの取材に対して平成23年4月にスタートする新しい病棟に設けるNICUの病床を現在の15から22へ7つ増やす計画を検討していることを明らかにしました。

 富山大学附属病院の斎藤滋副院長は「県立中央病院と大学病院の増床分で、できれば富山県内で生まれた赤ちゃん全てを富山県(内)で収容したいと考えています。」と話します。

 しかし、病床を増やすには専門の医師を確保するという課題が残されています。県内で新生児を専門とする医師は富山大学附属病院に2人、県立中央病院に2人、そして厚生連高岡病院に1人の5人しかいません。 斎藤副院長は公的な病院に新生児専門の常勤医の枠を増やすこと。そして大学が優秀な人材を提供していくことが最も必要な対策だと訴えます。 「やはり(新生児専門の)ドクターを少なくとも今の倍ぐらいの状態にしてあげないと夜も寝ることが出来ませんので是非、人材を輩出して働いている先生方の負担を減らすことが《ドクターが辞めない》ということにつながります。」

 1人でお産に向き合うことを辞めた黒部市の医師は「肩の荷が降りて正直ホッとしている」と答えました。 お産の現場で疲弊する医師たちを支援する体制づくりが急がれます。

(KNBニュース、富山、2009年2月25日)


医師の計画配置と公共の福祉

2009年02月24日 | 医療全般

コメント(私見):

地方病院の職場環境は、20年前の方が今よりもはるかに過酷でした。

自分の所属する職場でも、当時、産婦人科だけでなく、麻酔科、眼科、脳神経外科、心臓血管外科など多くの診療科が1人医長体制で、院内の他科の医師と協力し、大学病院とも連携して、みんな必死になって年中無休で自分の科を守ってました。当時、医師達は今よりもはるかに過重労働だったことは事実です。

当時は、自分が、どの病院で研修して、いかにキャリアアップし、最終的にどこの病院に赴任するのか?は、医師本人の意向とは全く関係なく、すべて知らぬ間に決定されてました。また、いつ自分に転勤命令が下るのかも全く予想できませんでした。

現行の臨床研修制度が始まるまでは、それが医師人生の常識で、みんなこれが当たり前だと認識し、全く疑問を持ちませんでした。

現行の臨床研修制度が始まって、すでに5年が経過して、現行制度下で初期研修および後期研修を終えて、専門医資格を取得した医師達が、これから世の中に大量に出回り始めます。その医師達は、初期研修先も後期研修先も自分の自由意志で決めてきた人達です。彼らがこれからの自分の就職先や居住地を決める際に、今さら、誰かの命令や国家権力の強制で、意に反して動くことはないと思われます。

ここ数年でみんなの考え方が大きく変化し始めました。もはや、時計の針を20年前に戻すことはできません。研修医だけでなく、ベテラン医師の間でも昔の常識はだんだん通用しなくなってきました。

今、医師を適正に配置するシステムを再構築する必要に迫られています。しかし、地方病院の職場も、『本当はこんな職場には来たくなかったけど、命令されたのでイヤイヤやって来た人達の集団』では、決して長続きしないと思います。「どうしてもこの病院で働きたい!」と、喜んで来てもらえるような職場環境に変えていく必要があると考えています。

****** 毎日新聞、北海道、2009年2月20日

医師不足招いた「臨床研修制度」 大学病院が人材難に 医学部定員増など対策も後手

 各地の病院で相次ぐ休診や分娩(ぶんべん)中止、救急当番からの撤退、搬送患者の受け入れ拒否--。その元凶となっている医師不足を深刻化させたのが、04年度から導入された臨床研修制度だ。

 それまで新米医師たちは出身大学の付属病院で研修するのが一般的だった。大学は潤沢な人材を背景に地方へ医師を派遣し、地域医療を支えた。しかし、臨床研修制度の導入で大学に残る卒業生が減り、道内で今春卒業予定の医学生のうち大学病院以外の医療機関を研修先に選択する学生は6割近くに達する。人材難に陥った大学が医師を地方から引き揚げている。

 危機感を強めた北大、札幌医大、旭川医大は研修を終えた若手医師を呼び戻す共同事業に着手。これまで医師を派遣する地方病院は大学ごとに系列化されていたが、今後は3大学で共有し、医師たちの「修行の場」となる病院の選択肢を増やすという。旗振り役の近藤哲・北大教授(腫瘍(しゅよう)外科学)は「若手医師はメリットがない限り戻らない。大学が選ばれるようなシステムを作るしかない」と力を込める。

 臨床研修制度について、厚生労働省は10年度から必須科目を減らし、2年目の大半を希望の診療科での研修に充てられるよう見直す方針。専門医を早く育て、医師不足解消につなげるのが狙いだが、手稲渓仁会病院の酒井圭輔・臨床研修委員長は「医師に広い知識を身につけさせるという当初の理念はどこに行ったのか。促成栽培で医師は育たない」と批判する。北大病院の筒井裕之・卒後臨床研修センター長も「(10年度の研修医が)一人前になるのは3年後。その間に医療は崩壊してしまう」と悲観的だ。

(以下略)

(毎日新聞、北海道、2009年2月20日)


新卒医師研修、実質1年に 厚労・文科両省が短縮案

2009年02月19日 | 医療全般

コメント(私見):

臨床研修制度が大幅に見直されます。まだ最終決定ではないようですが、主な変更点がだんだん明らかになってきました。

まず、必修診療科を、内科(6か月以上)、救急(3か月以上)、地域医療(1か月以上)の3科に減らし、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科の5科から2科を「選択必修」として、研修期間が実質1年間に短縮されます。それによって、専門研修の開始が実質1年早まり、医師不足の解消につなげる狙いがあります。

また、現在は研修医の募集定員枠を自由に設定できるため、定員割れの病院が多く、研修医が都市部の有力病院に偏在しています。そこで、制度を改めて、都道府県別、病院別の定員枠を厳密に設定し、研修医の地域偏在を解消する狙いがあります。病院別の定員枠は、直近数年間の平均採用数など過去の実績を基準に算出し、実態に即した定員設定とします。大学病院の定員枠を優遇して、大学病院の医師派遣機能回復を目指す狙いもあるようです。

さらに、臨床研修に続く専門医養成(後期研修)について、医師の診療科偏在を是正するよう、後期研修のあり方を見直すことも今後の検討課題として盛り込まれたとのことです。将来的には、診療科ごとの定員を設定することも検討されているようです。

個人的見解としては、2年間の臨床研修(初期研修)に関しては、現状のままでも全く構わないと思っています。むしろ後期研修のあり方の見直しの方がより重要だと思います。

****** 毎日新聞、2009年2月17日

医師臨床研修:1年短縮へ 「短い」「甘い」現場反発

 医師不足の原因ともいわれる新人医師の臨床研修制度を見直す動きが、現場で波紋を広げている。厚生労働省と文部科学省は10年度から、人手確保のため研修期間の実質1年短縮を認める意向で、18日にも専門家検討会で結論をまとめる。しかし「1年で十分に学べるのか」と懸念する医師は多く、見直しの目的である医師不足解消にも、効果を疑問視する声が出ている。【清水健二、河内敏康】

 「専攻する気のない科の研修は、意欲をそぐ」(大学病院医師)

 「やる気がない研修医を甘やかして制度を変えていいのか」(患者団体代表)

 今月2日の検討会は、各委員の主張が激しくぶつかった。焦点は2年間で7診療科を回る現行制度の是非。1年短縮の賛成派は「必修科目を減らし、残りは専門分野で学んだ方がいい」、反対派は「診療能力向上の理念に逆行する」と、議論は平行線をたどった。

 新人医師の多くはかつて、出身大学の医局(診療科)に所属し、雑用に追われ、専門以外の診療能力も育ちにくい状況だった。これを是正するために現行制度が導入された。厚労省研究班の調査では、研修医が2年で経験する症例数は徐々に増えており、内容に過半数が満足している。

 だが厚労省は、効果の検証をしないまま、研修短縮ありきで見直しを始めた。舛添要一厚労相は早くから「2年を1年に」と話し、全国の病院の約6割が加入する四病院団体協議会などの反対意見は、事務局作成の「たたき台」に反映されなかった。

(以下略)

(毎日新聞、2009年2月17日)


佐久市立浅間総合病院:産科医6人に増強 分娩予約も月60件超--4月から

2009年02月16日 | 地域周産期医療

私見(コメント):

佐久市立浅間総合病院の産婦人科常勤医が4月から6人体制に増強されるそうです。今のご時世で、(大学病院からの派遣ではなく)市独自の医師確保策だけで、産婦人科の常勤医を6人まで増やしたリクルート手腕は本当にすごいと思います。

かなりベテランンの婦人科腫瘍専門医から若手の後期研修医まで、年齢構成や専門分野のバランスも偏ってないようで、周産期医療、婦人科腫瘍医療、不妊治療などを幅広くカバーできることが期待されます。

佐久市内には佐久総合病院もありますから、この地域の産婦人科はかなり充実することになります。上田地域の患者さんにとっても朗報だと思います。

****** 毎日新聞、長野、2009年2月16日

佐久市立浅間総合病院:産科医6人に増強 分娩予約も月60件超--4月から

 佐久市立浅間総合病院(北原信三院長)で、4月から産婦人科医が2人増員され、6人体制に増強される。これに伴い、現在、月50件に制限している分娩(ぶんべん)予約枠を60件以上に拡大できることになった。【藤澤正和】

 同病院産婦人科は07年4月、帝京大から派遣されていた医師1人が、大学病院に引き揚げ医師2人となったため、月間の分娩数を24件に制限した。同11月に県外の勤務医が確保でき、出産数は50件に回復した。また初期研修を終えた研修医が産婦人科で後期研修中で、指導医とともに産科のローテーションに入り現在は4人体制。

 4月から新しく勤務するのは51歳と36歳の男性医師。1人は産科のほか腫瘍(しゅよう)と、がん治療専門医で、婦人科を中心に診療に当たる予定。もう1人は麻酔科も担当できる産婦人科医。6人体制になることで、帝王切開や不妊治療による出産とは別に、分娩予約を月60件に増やすという。

(以下略)

(毎日新聞、長野、2009年2月16日)


地域に産婦人科の機能を残すために

2009年02月15日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

産婦人科の場合は、いつお産になるか全くわからないので、分娩件数が多かろうが少なかろうが、24時間体制で誰かが常に病院の近辺に拘束されます。例えば、年間分娩件数が150件程度の施設だと、平均すれば分娩は2~3日に1件程度しかないので、分娩に備えてずっと病院内に張り付いていたとしても、実質何日もほとんど手持ち無沙汰のこともあるかもしれません。しかし、いくら仕事がなくても、いざという時に備えて病院から離れることができません。そして、いざお産が始まって、いよいよ産婦人科医の出番だと思って張り切っても、分娩経過が異常化した場合は、常勤産婦人科医1人だけでは十分に対応できず、人手が十分に整っている施設に救急車で母体搬送せざるを得ないかもしれません。

現代の産婦人科の診療では、個人プレーでできることには大きな限界があり、周産期医療にしろ、婦人科腫瘍医療にしろ、非常に大きなチームで診療する必要があります。しかし、地方の公的病院では、病院単独でいくら医師確保の努力をしても、必要な常勤医師数をすべて自前でまかなうのは非常に困難です。

地域に産婦人科の機能を残していこうとするのであれば、将来的に地域で必要とされる産婦人科専門医をいかにして養成していくのか?また、養成された産婦人科医をいかにバランスよく各地域に配置していくのか?ということを真剣に考える必要があります。

現状では、国や県には医師派遣機能をほとんど期待できません。また、民間の医師派遣会社に依存して、地方拠点病院の産婦人科常勤医を長期・安定的に確保していくのも不可能です。いろいろな意見があるとは思いますが、現実的に考えて、地方の拠点病院に産婦人科医を長期・安定的に供給できる機関は、大学病院以外に考えられません。

病院や医師の集約化は、相当強力なリーダーシップが存在しない限り、実行は非常に困難です。もしも、『多くの人を引きつけるカリスマ性のある教授の強力なリーダーシップの下に、毎年新たな人材が安定・継続的に確保され、大学病院や県内各地の拠点病院で多くの有能な人材が育ち、県内各地で医師が適正に配置されるような状況が実現する』とすれば、それはそれで理想的なあり方の一つだと思います。その理想を現実化するためには、県内の関係者が一体となって全面協力していく必要があります。

****** 中日新聞、長野、2009年2月11日

出産へ「安心ネット」定着 松本地域、医療機関の分担進む

 医師不足で分娩(ぶんべん)を扱う病院が減少する中、安全な出産を確保するため昨年始まった松本地域出産・子育て安心ネットワーク制度が定着し、分娩と健診を扱う医療機関の役割分担が進んできた。松本市では、妊娠当初から分娩医療機関で診てもらう市民の数が半減し、診療所など分娩を扱わない医療機関に移ってきている。

 同制度では、分娩を扱わない地域の診療所や開業医が「健診協力医療機関」として妊婦健診を担当し、分娩医療機関の負担を軽減する。妊婦は共通カルテ「共通診療ノート」を持ち、異なる医療機関で情報を共有する。

 市によると、制度が本格化した昨年7月から今年1月までで、妊娠が判明した市民が受けた妊娠証明のうち、分娩医療機関の取扱件数は前年同期比54・2%減の356件。健診協力医療機関は同121・2%増の823件だった。

 妊娠証明を扱った医療機関が妊婦健診を実施するのが一般的で、妊婦健診が分娩医療機関から健診協力医療機関へとシフトしていることが浮き彫りになった。

(以下略)

(中日新聞、長野、2009年2月11日)


周産期医療提供体制立て直しの方策は?

2009年02月07日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

都会、地方を問わず、全国各地の周産期医療提供体制は危機的な状況にあり、大学病院や拠点病院も含めて産婦人科医不足が年々深刻化しています。

地域の開業の先生方が高齢化により次々にリタイアーし、拠点病院の勤務医が疲れ果てて連鎖反応的に大量離職していく中で、産婦人科医の人材が完全に枯渇してしまえば、県内の周産期医療提供体制がいったんは総崩れとなってしまうことも危惧されます。

医師個人の頑張りに頼っているだけでは、現体制を支えている医師が燃え尽きてヤル気を失くすたびに、地域周産期医療の崩壊が進行していくことになります。

今は将来を見据えて、あせらず一歩一歩、体制を立て直していくべき時です。

まずは、病院や医師の集約化を進めて医療崩壊の更なる進行をくいとめることが緊急の課題です。

それと並行して、未来を担う新人を大幅に増やす努力も非常に重要です。そして、彼らが途中でドロップアウトせずに立派に育って、将来、県内各地で大活躍できるように、大学病院や拠点病院の研修環境を充実させていく必要があります。そのための国レベルの思い切った支援策も必要だと思います。

****** 毎日新聞、2009年2月7日

産科医 3割で負担過剰 分娩数、限界に

 都道府県の医療計画策定の基礎となる2次医療圏のうち、病院勤務医1人が扱う分娩(ぶんべん)数が年150件を超す医療圏が3割を占めることが毎日新聞の調査で分かった。日本産科婦人科学会などは帝王切開などリスクを伴う分娩を受け入れる病院勤務医が無理なく扱えるのは150件程度までとしている。地域のお産環境が危ういバランスで成り立っている実態がうかがえる。【まとめ・大和田香織】

 調査は厚生労働省が07年12月時点で集計した355医療圏(兵庫県は周産期医療圏)ごとの分娩数、常勤産科医数を都道府県に照会し、取材を加味してまとめた。

 有効な数値を得られた287医療圏を分析すると、63%の182医療圏で医師1人当たり分娩数が100件を超え、30%の87医療圏で150件を超えていた。

 都道府県別では北海道(7医療圏)▽神奈川県(6医療圏)▽長野県(同)▽愛知県(5医療圏)▽京都府(同)などで、150件を超すケースが目立った。富良野(北海道)、湯沢・雄勝(秋田)の両医療圏は、一つしかない病院の常勤医1人で分娩数が年150件を超えた。

 今年1月までの1年間で、経営判断や医師不足などで分娩予約の受け付けを中止したり、産科の休止に至った病院は14府県17カ所に上ることも、今回の調査で分かった。

(以下略)

(毎日新聞、2009年2月7日)


臨床研修制度の見直し最終案骨子

2009年02月04日 | 医療全般

コメント(私見):

臨床研修制度が大幅に見直されるようです。

現行制度では、内科、外科、救急(麻酔科を含む)、小児科、産婦人科、精神科、地域保健・医療が必修科目となっていますが、今回公表された見直し最終案骨子では、初期研修が2年間であることは今後も維持されますが、必修科目は内科(6ヵ月)、救急(3ヵ月)、地域医療(1ヵ月)の3科目のみに削減され、残りの14ヵ月は自分が将来専門にしたい科目のみを研修することも可能となるようです。現行制度のように多くの科をローテートする方式を選択することも可能のようです。

また、都道府県別に初期研修医の募集定員の上限を設定して研修医を適正に配分し、研修医の地域的偏在を解消する意図もあるようです。

現行の制度では、産婦人科研修が必修になっているので、初期研修医が常に1~2名当科にも回って来ます。現在、当科では、2人の元気満々の男性研修医が6週間の産婦人科必修研修を終えて、さらに追加の産婦人科研修(8週間、12週間)を選択してくれて、毎日、病棟回診、分娩立ち会い、手術の執刀や助手、外来診療などで大活躍中で、本当に大助かりです。しかし、今後は産婦人科研修が必修でなくなるので、研修医マッチングがフルマッチングでも、その中に産婦人科を志望する者がたまたま1人もいない場合は、誰も産婦人科研修には回って来なくなります。元気な研修医がいなくなってしまうと非常に辛いです。個人的には、現行の制度のままでもいいと思ってます。

****** 読売新聞、2009年2月3日

臨床研修医 募集枠に上限

都道府県別に 見直し最終案骨子

 厚生労働省と文部科学省は2日、医師不足を招いたとされる臨床研修制度の見直しに向けた最終案の骨子をまとめ、両省が設置した合同の専門家検討会に提示した。検討会は今月18日の次回会合で、見直し案を最終決定する見通し。

 骨子は、研修医の都市部集中に歯止めをかけるため、都道府県別に研修医の募集定員の上限を設定。従来、大学病院が担ってきた地域の医師派遣機能を再構築するため、研修病院の募集定員や指定基準を見直す――などとしている。

 また、国が定める必修科目は現在、2年間で7診療科・部門となっているが、これを、1年目は内科と救急のみに、2年目は地域医療のみに削減。これにより、病院ごとの研修プログラムを弾力化させ、小児科や産科など医師不足の診療科を目指す研修医が早期に現場に出ることを可能にする。

(以下略)

(読売新聞、2009年2月3日)


産科復興に向けた長野県各地域の取り組み

2009年02月01日 | 地域周産期医療

・ 佐久市立国保浅間総合病院の産婦人科は、新年度から常勤医が2人増えて5人体制となり、産科業務を拡大していく予定とのことです。

・ 伊那中央病院の産婦人科は常勤医7人体制となり、施設を改修して年間分娩件数を千二百件程度と想定しているそうです。

・ 飯田市立病院の産婦人科は常勤医5人体制ですが、病診連携や助産師外来、メディカルクラークなどの充実により、年間分娩件数:千件程度を維持しています。

・ 医師不足により産科業務を休止していた県立須坂病院の産婦人科は、新年度から常勤医4人体制となり、産科を再開する予定とのことです。

これらの病院は、産科業務の存続すら非常に危ぶまれていた時期もありましたが、それぞれ存亡の危機をギリギリ何とか乗り越え、新たな道を模索し始めています。危機打開のためには、他地域で成功したモデルが必ずしも有効とは限りません。各地域の今の状況にあった医療行政を進めていく必要があります。

****** 医療タイムス、長野、2009年1月28日

前年比159件増の1151件 伊那中央の08年分娩件数

 上伊那地域で分娩を扱う唯一の公立病院となっている伊那中央病院(小川秋實院長)が2008年に受け入れた分娩の件数は、前年比159件増の1151件だった。同地域では、昭和伊南総合病院が08年3月末で分娩の取り扱いを休止。このため、伊那中央病院は08年度から年間1200件の分娩を想定し、産婦人科外来診療棟を新設するなどして対応している。

(中略)

飯田市立は前年並みの988件

 一方、里帰り出産の受け入れを一部制限している飯田市立病院(千賀修院長)は前年比2件減の988件と、前年並みの水準を確保した。同院の産婦人科は常勤4人、非常勤1人の4.5人体制。昨年は一時3人体制となっていたが、信大からの医師派遣などで現在の体制となった。

(以下略)

(医療タイムス、長野、2009年1月28日)