元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「エネミー・ライン」

2012-06-07 06:30:32 | 映画の感想(あ行)
 (原題:Behind Enemy Lines )2001年作品。内戦時のボスニアに不時着した米軍兵士の必死の脱出を描く、ジョン・ムーア監督作品。

 セルビア軍は常に“悪”なのだ。NATOの幹部は偽りの和平を演出したいだけの腑抜けた奴らだ。対して我がアメリカだけが“正義”なのだ。その“正義”を執行するためには国際協約なんてクソくらえだ・・・・といった夜郎自大なアメリカの独善主義が全面展開したシャシンである。

 しかしアメリカの独断専行だけが国際紛争の原因ではないのも確かで、単なる反米主義のスタンスでは国際情勢を見切れない昨今にあっては、“米国バンザイだからこの映画はダメ”という片付け方をするのも軽率であろう。しょせん映画は映画でしかないのである。



 で、単純に戦争アクションとして見れば、これはかなり面白い部類に属すると思う。たった一人で敵陣突破をするハメになった主人公が直面する危機また危機。ランボーみたいな戦闘マシーンでもない普通の兵士に出来るのは、ただ逃げることだけ。これがけっこう観客の共感を呼んでしまう。

 戦闘シーンはよく出来ていて、少し「プライベート・ライアン」を意識した部分もないではないが、実にハードでシャープである。ジャージ姿の敵スナイパーの存在も効果的。そして地雷のトラップが山のように仕掛けられている廃工場のシーンはゾッとした。まさに“生活の隣に戦争がある”という近代戦の普遍的真実を描き出している。

 ジョン・ムーアの演出は映像面でのケレンが鼻につくが、リアリズム一辺倒でやるよりも娯楽映画としてはこれで正解だろう。ジーン・ハックマンは手慣れたタカ派軍人ぶり。主演のオーウェン・ウィルソンは最初の方こそ印象の薄いアンチャンでしかないが、ドラマが進むにつれ顔が引き締まってくる。

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