元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「全然大丈夫」

2008-04-02 06:32:20 | 映画の感想(さ行)

 少なくとも、退屈はしない映画だと思う。30歳前後である主要登場人物の、青春時代の幕引きを軽妙なタッチで描くという触れ込みのコメディだが、ひょっとしたら映画のテーマが“青春の終わり”だと思っているのは作者とキャストだけかもしれない。

 よく考えると“青春”なるものの正体は誰もハッキリとは分からない。一般世間的な認識だと、それは十代の半ば頃から始まって30歳ぐらいになったら勝手に終わってしまうもの・・・・らしいのだが、いったい具体的に何が始まって終わるのか判然としない。たぶん“社会的にやり直しが効く時期”のことだと思ってもみるのだが、中年以降になってもいくらでもツブシの効く器用な奴もいたりして(爆)、そう簡単に割り切れるものでもないだろう。・・・・と、どうでもいいことを考えたりしたのは、本作の主題の掘り下げが足りないからだ。

 同じく青春時代の黄昏を描いた熊切和嘉監督の「青春☆金属バット」が、観客に“青春とは何ぞや”みたいな小賢しい自問自答をさせるヒマを与えぬほどハイ・ヴォルテージのまま全編突っ走っていたのと比べれば、この映画はえらく微温的だ。

 植木屋の仕事を手伝いながら、いつかは“究極のお化け屋敷”を作ろうとしている(実はそんなことが出来る器ではないのだが ^^;)軟派な野郎と、彼の友人で清掃会社に勤める優柔不断な男、そして二人が思いを寄せる不器用な女との三角関係(みたいなもの)を中心に物語は進むが、彼らの内面の屈託を鋭くえぐるようなシャレにならない描写には最後までお目にかかれず、表面的で無用のくすぐりが続くのみ。大きく笑いが取れないのも当然かと思われる。

 ただし冒頭“退屈はしない”と書いた理由は、作劇の面白さではなく出演者陣のキャラクターの濃さによるものだ。天然ボケの権化みたいな荒川良々の存在感はここでも炸裂し、彼が出てくるだけで“お笑いの空気”がある程度は醸成されてしまう。友人役の岡田義徳も煮え切らない男を嫌味にならず実体化している。さらには蟹江敬三の泰然自若としたオトボケ演技、異能芸人の鳥居みゆきまで出てくるのには嬉しくなる。

 しかし、ヒロイン役の木村佳乃はまったくダメ。おちゃらけ演技で頑張っているつもりなのだろうが、すべてわざとらしい。要するに役にハマり込んでいない。救いようのないドジ女に扮しているつもりが、終盤近くには“いつもの木村佳乃”に戻ってしまう不甲斐なさ。彼女を含め、この年代の女優に人材が払底していることは、邦画界にとって大きなマイナスである。

 監督・脚本を務める藤田容介の作品に初めて接したことになるが、現時点では大きな評価は差し控えたい。

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