元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「デューン 砂の惑星 PART2」

2024-04-07 06:07:58 | 映画の感想(た行)
 (原題:DUNE PART TWO )世評は悪くないようだが、個人的にはピンと来ない。前作(2021年)は第94回米アカデミー賞で6部門に輝いたのに対し、本作は無冠であったのもそれを象徴しているのかもしれない。まあ、この映画は純然たる“続編”であるのでアワード側の評価はPART1で完了したとの見方も出来るが、気勢が上がらないのは確かだ。

 宇宙で最も価値のある物質メランジの唯一の産出地である砂の惑星デューンで繰り広げられたアトレイデス家とハルコンネン家の戦いは、後者に軍配が上がる。一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポールは、砂漠の民フレメンの協力を得て、反撃の狼煙を上げる。これに対し、ハルコンネン家はデューンの新たな支配者として次期男爵フェイド=ラウサを送り込む。一方、フレメンの部族長スティルガーは“外の世界”から来た母子がデューンを救うとの啓示を受ける。



 とにかく、ポールが救世主として覚醒するまでが長すぎる。フランク・ハーバートによる原作は読んでいないが、たぶんこのスピリチュアルな展開が後半のハイライトとして書かれているのだとは思う。しかし、少なくとも映画においては(個人的には)どうでもいいプロットである。そもそも、主人公の自覚に至る過程が常人の理解を超えたレベルのものであるため、ここはいくら重点的に描いても尺ばかり取って訴求力に欠けるのだ。おかげで肝心の大規模な戦闘シーンが割を食ってしまった。

 かと思えば、ポールとハルコンネン家の因縁話とか、主人公とフェイド=ラウサとの一騎打ちとか、さほど効果的とは思えないモチーフが挿入されて作劇のテンポは悪くなるばかり。さらに突っ込んだ話をすれば、ハイテクな兵器が配備されているにも関わらず刀剣類主体の接近戦ばかりが強調されているのは、とてもスマートには見えない。

 ドゥニ・ヴィルヌーヴの演出は相変わらず粘着質で歯切れが悪い。まあ、主演のティモシー・シャラメのファンにとっては嬉しいショットが目白押しだろうが(笑)、レベッカ・ファーガソンにゼンデイヤ、ジョシュ・ブローリン、オースティン・バトラー、フローレンス・ピュー、クリストファー・ウォーケン、シャーロット・ランプリング、ハビエル・バルデムら多彩なキャストがそれぞれ持ち味を発揮していたとは思えない。

 さらに言えば、レア・セドゥやアニャ・テイラー=ジョイなんか、どこに出ていたのか分からないほどだ。もちろん多大な予算が投入されているのは分かるし、特に巨大サンドワームの造型には驚かされるが、物語自体に面白味が欠けるため鑑賞後の映画の印象は薄い。
コメント
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