元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「宇能鴻一郎の濡れて打つ」

2008-03-18 06:43:44 | 映画の感想(あ行)
 84年にっかつ作品。ロマンポルノの一作として撮られた映画だが、注目すべきは監督。「DEATH NOTE」などでお馴染みの金子修介の、これがデビュー作である。

 宇野鴻一郎の小説といえば例の「あたし・・・・しちゃったんです」というようなパープーなセリフまわしに代表されるようにリアルな設定にもかかわらず内容の軽さと非現実的な展開が特長であるが、これを映画にしてしまうと、ストーリーのはっきりしないメチャクチャな物語になることが多かった(といってもそんなに観ているわけじゃないよ ^^;)。ところがこの作品ではそのへんをうまくクリアしている。なんと、現実的な設定を完全に無視しちゃってるのだ。

 舞台はある高校のテニス部。ここに所属する女子学生(山本奈津子)の「青春」を描いてるんだけど・・・・実は往年の有名コミック「エースをねらえ!」の完全なパロディなのだ。登場人物もほぼ一緒で(私は元ネタについてはよく知らないけど、そうらしい)、ストーリーもおんなじで、ただ違うのは全員エッチで何かにつけてはからみの場面が挿入されること。「スポーツ、恋、友情」といった青春ドラマのテーマを徹底的に笑い飛ばす。青春学園ドラマのくっさ~い主題歌を流したり、「夕陽に向かって誓う」というおなじみの場面を恥ずかしげもなく映したり、完全にやりたい放題ふざけまくっている。

 しかし、不思議とメチャクチャな映画にならず、全編笑わせて楽しませてくれるのはこの監督の(映画を漫画に変えてしまうという)力量だろう。ヒロインがメガネをはずしたら意外にハンサムな同級生(いかにも少女漫画のパターン!)と最後は仲良くなり、めでたしめでたしで終わるかと思ったら、突然窓からスケベなテニスのコーチが飛び込んできて、「オレも仲間にいれろぉぉぉぉ!」と襲いかかる。このオチには大爆笑だ。

 主演の山本は、間違いなく80年代を代表する名女優だったが、ロマンポルノの終焉と共に一線を引退してしまったのが実に惜しい。金子監督の近作「神の左手 悪魔の右手」に顔を出しているというが、残念ながら私は未見である。

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