元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ローカル・ヒーロー 夢に生きた男」

2020-06-19 06:55:02 | 映画の感想(ら行)
 (原題:LOCAL HERO)83年イギリス作品。一見社会派映画のように見えて、実は本来私が苦手としている(笑)ファンタジーものだ。しかし、大仰な仕掛けと御都合主義的なプロットが横溢する一般のファンター映画(←このあたり、筆者の偏見が全面展開している ^^;)とは違い、日常のすぐ隣にあるような非日常といった、トンデモ度合が少ない設定で進められているので、あまり違和感は覚えない。それどころか、このユルさと泰然自若としたテンポは、観る者を惹き付けるのには十分だと思う。

 アメリカの大手石油会社の会長ハッパーは、巨大な石油精製工場をスコットランドの片田舎の漁村ファーネスに建設する計画を思いつく。その交渉役として若手社員のマッキンタイヤを指名。理由は名前がスコットランド系っぽいという理由だけだ。またハッパーは天体観測オタクであり、マッキンタイヤに、土地買収交渉と同時に当地の星空の模様を電話で知らせることも命じた。



 当地では大規模な反対に遭うと思われたが、意外にもファーネスの村民はマッキンタイヤに協力的。しかし、湾の浜辺に住む老人ベンは断固として土地の買収に応じなかった。そんな時、村の上空に信じ難いような大流星群が発生。マッキンタイヤはハッパーにそのことを報告すると、一刻も早く天体観測をしたいハッパーはヘリコプターで駆けつける。

 ファーネスは一見普通の村だが、周囲はいつも霧が立ち込め、村に子供の姿がほとんどない。ベンや海洋学者のマリーナにしても、どこか浮世離れしている。まさに異世界と言っても差し支えない。しかしながら、そこで通常のファンタジー映画のように“剣と魔法がどうのこうの”というパターンには持って行かない。日常を少し離れた、普段は立ち入らない路地に足を踏み入れたような、そんなライト感覚の非日常がマッタリと展開してゆくのだが、これが妙に心地良い。

 ハッパーはこの世界を気に入ってしまい、おそらくはマッキンタイヤも再びこの地を訪れるだろうと予想出来る。監督ビル・フォーサイスは、そんなエコでスローな村の生活を“現代社会に対するアンチテーゼ”みたいな大上段に振りかぶったような扱い方をしない。そこがまた説得力を持つのである。

 ハッパーに扮するのはバート・ランカスターで、さすがにこの名優が出てくると映画の安定感は増してくる。ピーター・リガートにデニス・ローソン、フルトン・マッケイ、ジェニー・シーグローヴといった面子も、派手さはないが良い味を出している。クリス・メンゲスのカメラよるスコットランドの風景は美しい。音楽を担当しているのは意外と映画の仕事も多いダイアー・ストレイツのマーク・ノップラーで、ここでも手堅くスコアを提供している。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする