元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「コキーユ 貝殻」

2015-03-29 06:43:12 | 映画の感想(か行)
 99年作品。中原俊監督作らしく、とても肌触りが良く丁寧な仕上がり、しかし、中身があんまりないのもこの監督らしい。山本おさむの同名コミックの映画化で、脚色は「死にゆく妻との旅路」(2011年)などの山田耕大が担当している。

 地方都市にある中学校の同窓会に出席した中年男の浦山は、地元を離れて東京に越してからずっと疎遠だった、かつてのクラスメイトの直子に再会する。彼女は離婚して、今は中学生の娘と二人暮らし。この町で「コキーユ」という名のスナックを経営しているらしい。



 それから縁があって彼女の店に通うようになった浦山だが、上司の自殺未遂騒ぎがあってから足が遠のいてしまう。それでも浦山を慕う直子は、彼の職場に押しかけて思いを伝える。それを知った浦山は、出張と偽って直子とハイキングに出かける。だが、思わぬ出来事で二人の関係は終わりを告げるのであった。

 要するに、これは主人公の“ヤリ得”ってことじゃないか(笑)。主役二人のどうしようもない劣情を容赦なく描かないから、単なるムード映画になってしまった。とはいえ演じるのが小林薫と風吹ジュンなので、どう考えても生々しさは前面に出てこない。終盤に至る展開も行き当たりばったりで、どうも登場人物に感情移入しにくい。

 自ら命を絶とうとした浦山の上司が、全共闘時代を思い出しているというのは何やら違和感がある。脚本担当の山田は多数のロマンポルノ作品を手掛けた実績があるが、一般映画では持ち味は出せなかったようだ。ただし、上野彰吾のカメラによる清涼な映像は印象に残る。
コメント
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