元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「お父さんのバックドロップ」

2015-03-16 06:29:29 | 映画の感想(あ行)
 2004年作品。絵に描いたようなスポ根もので、誰が映画化してもそれなりの出来になりそうな題材だが、あまり面白くなかったのは、これが監督デビュー作であった李闘士男の演出が想像以上にヘタだったからだ。

 小学生の一雄は、プロレスラーである父親の下田牛之助と、祖父の松之助と3人で小さなアパートで暮らしている。プロレスが大嫌いな一雄は牛之助の職業を恥ずかしく思い、父親と打ち解けられない。クラスメイトにも父親の職業を秘密にしているほどだ。そんな一雄に牛之助は仲良くなろうとアプローチするが、あまりに不器用で逆に溝は深くなるばかり。そんな牛之助に出来ることは、やっぱりマットの上で父親のカッコイイところを見せるしかなかった。そして、空手チャンピオンとの無謀な他流試合に挑む。



 とにかくドラマ運びが散漫。焦点が絞り切れていない。うだつの上がらぬ中年男と利発な小学生の息子との父子家庭の描写、そして大一番に備える主人公の奮闘ぶり、映画のメインはこの二点で良い。隣に住む未亡人とのやり取りや息子の学校生活、トボケた祖父やレスラー仲間などの扱いは必要最小限に留めておくべきであった。

 時代背景が1980年である意味もあまりなく、大阪が舞台である必要もない。それでも肝心の試合場面が盛り上がれば言うことなかったのだが、これが素人っぽさ丸出しだ。数秒で終わっているような試合を、なぜか主人公は致命傷も負わずに何度も起きあがる。技の出し方にも工夫がなく、同じようなショットが延々と流れるのみ。

 主演の宇梶剛士は特にこの映画用に向けてトレーニングしたようには見えないし、何より子役の神木隆之介と親子だとはとても思えない。それにしても、このタイトル自体が“ネタバレ”であると言えるが、劇中に終盤まで(セリフ以外に)全然バックドロップが出てこないのも納得できない(笑)。

 李闘士男は本作の後に何本か映画を手掛け、テレビドラマの演出もコンスタントに続けているが、いまだに代表作と呼べる作品が無い。監督業より自身の会社の経営に専念した方が良いのではないかと、勝手なことを思ってしまった。
コメント
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