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5/10(木)読響サントリー名曲/バラーティのブラームスVn協と下野竜也のドヴォルザーク交響曲第2番

2012年05月11日 01時18分33秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第549回サントリー名曲シリーズ

2012年5月10日(木)19:00~ サントリーホール・大ホール S席 1階 3列 20番 4,181円(会員割引)
指 揮: 下野竜也
ヴァイオリン: クリストフ・バラーティ*
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ブラームス: ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77*
《アンコール》
 エルンスト: シューベルトの『魔王』による大奇想曲 作品26*
ドヴォルザーク: 交響曲 第2番 変ロ長調 作品4

 いろいろとスケジュールの都合が合わず、読売日本交響楽団のサントリー名曲シリーズは2月以来となってしまった。2012/2013シーズンにすでに入っている。席替えして今シーズンから3列目の中央、ほぼ協奏曲のソリスト正面である。そして今日は、クリストフ・バラーティさんによるブラームスのヴァイオリン協奏曲と正指揮者下野竜也さんによるドヴォルザークの交響曲第2番。私のとってのシーズン幕開けは、魅力的なプログラムとなった。

 バラーティさんは1979年生まれでハンガリー出身。33歳という年齢は、ソリストとしては一番活きがよい時期ではないだろうか。身長も高く筋肉質のガッチリした体型だが、見ると指先は細く、いかにも繊細な動きをしそうである。
 もとより内省的なブラームスのヴァイオリン協奏曲は、アクロバティックに派手な技巧を前面に押し出すような曲ではない。それだけに、ソリストにとってはかえって演奏が難しいようで、そのまま弾いたら地味な演奏になってしまうし、派手にガシガシと掻き鳴らすとやりすぎで下品だと言われてしまう。その辺の塩梅が難しいのだ。
 バラーティさんはといえば、ほとんど直立不動の姿勢で、基本に忠実な演奏スタイルといった趣であった。ひとつひとつの音が正確に演奏され、音色も美しく涼やか。低音から最高音まで、極めて正確に音程と明瞭な音色で、安定した技巧である。また音楽作りにも、とくに奇をてらったような部分は皆無で、真正面から楽曲に取り組んでいる、といったイメージだ。まさに正統派ヴァイオリニストといえそうだ(あるいは優等生的?)。
 一方、下野さんと読響は、ヴァイオリン協奏曲だけにいつものような馬力のある演奏ではなく、こちらもやや地味目であった。下野さん流の軽く入るタメと、ハギレの良いリズム感で、普通(からやや遅め?)のテンポの取り方であっても、曲が重くならないのは見事な表現力だ。結果的に、今日の演奏は、キリリと引き締まった正統派の曲作りと演奏で、もっと若い演奏家たちのお手本になるような素晴らしい演奏であった。とくにバラーティさんへの拍手が多かったのと、オーケストラのメンバーの皆さんも彼を賞賛しているようだった。
 私の個人的な感想としては、バラーティさんは若い割には大人っぽい雰囲気の律儀な演奏で、うまくまとめあげていたので文句の付けようもないのだが、もうひとつガツンと来るものが不足しているように感じられた。内に秘められた魂の燃焼が感じられないというような、抽象的・観念的なレベルの話ではあるのだが。まあ、普段派手な演奏をするヴァイオリニストをたくさん聴いているので、余計にそう感じたのかもしれないし、曲がブラームスだったからかもしれない。
 逆にアンコールで弾いてくれた、エルンストの『魔王』は超絶技巧をこれ見よがしにひけらかすような曲で、過去に一度、韓国系ドイツ人のクララ・ジュミ・カンさんがやはりアンコールで弾いたのを聴いたことがある。この曲の演奏では、バラーティさんは律儀さを捨て去り、低音部などに荒っぽい音を交えながらも、勢いのある強烈な演奏を披露し、聴衆の大喝采を浴びていた。う~む。曲によって演奏スタイルをちゃんと使い分けているようである。

 後半は、下野さんが読響と取り組んでいる「ドヴォルザーク交響曲シリーズ」の最終回で、第2番。とはいえ、このシリーズはあまり聴いていない。今年2012年のお正月に横浜みなとみらいホールで、交響曲第3番と第9番「新世界から」を聴いたくらいである。ドヴォルザークの交響曲は、第8番と第9番くらいしかよく知らないし、食わず嫌いというわけでもないのだろうが、あまり聴く機会を持たなかった。今日は第2番。とくに演奏機会の少ない曲ではないだろうか。もちろん、ナマで聴くのは初めてである。
 曲自体(1888年初演)は、さすがに人気がないだけのことはあって(?)、どことなく曖昧な感じがする。ソナタ形式を踏襲していたり、ロマンティックな旋律や美しい和声が次々と現れてくるあたりは、やはりドヴォルザークらしい。メロディ・メーカーのドヴォルザークが本領を発揮する後年の作品群に比べると、息の長い美しい旋律が出てくるわけでもなく、ベートーヴェンのようにモチーフを展開する形式との中間的なカタチで、要するに曖昧な印象なのである。
 下野さんの指揮は、キレ味が鋭く、リズム感に優れていて、非常に分かりやすく好感度満点である。読響の演奏は、いつも通り(?)、金管が時折不安定になることを除けば、馬力のあるところも聴かせていたし、概ね良好といったところか。だが読響のサウンドとしては、カンブルランさんが振る時やスクロヴァチェフスキさんが振る時などは明瞭な音質の方向性のようなものを感じるのだが、下野さんの時はそれがあまり感じられない。指揮者によってオーケストラの音色が変わるのは当然としても、核となる音が欲しいのも確か。その上で、プラスαとなる何かで色づけされていく、そんなイメージで聴くことができたら、楽しいのだけれども…。

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