Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

1/31(日)フランツ・リスト管&南紫音/高木綾子/菊池洋子/中嶋彰子のモーツァルト・ガラ

2010年01月31日 23時50分15秒 | クラシックコンサート
「フランツ・リスト室内管弦楽団 “モーツァルト・ガラ・コンサート”」

2010年1月31日(日)14:00~ 千葉県文化会館・大ホール S席 1階 1列 24番 6,000円
ヴァイオリン: 南紫音*
フルート: 高木綾子**
ピアノ: 菊池洋子***
ソプラノ: 中嶋彰子****
管弦楽: フランツ・リスト室内管弦楽団
曲目:セレナード 第13番 ト長調 K.525「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」から第1楽章
   ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219「トルコ風」から第3楽章*
   ディヴェルティメント ニ長調K.136
   フルート協奏曲 第1番 ト長調 K.313 から第1楽章**

   ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」から第1楽章***
   カッサシオン ト長調 K.63から 第1・2・5・6・7楽章
   モテット「踊れ、喜べ、何時幸いなる魂よ」K.165****
  《アンコール》ヨハン・シュトラウスII オペレッタ「こうもり」より「侯爵様、あなたのようなお方は」****

  千葉県が主催するクラシック・プレミアム・シリーズのコンサート。今シーズンの第3回はフランツ・リスト室内管弦楽団と女性ソリスト4名による「モーツァルト・ガラ・コンサート」。人気ソリストが4名も出演するとあって、とても華やかなコンサートになった。
 フランツ・リスト室内管弦楽団というのは初めて聴いたが、これはなかなか素晴らしい室内管弦楽団だ。ハンガリーのフランツ・リスト音楽院の出身者により結成されデビューしたのが1963年という。ハンガリーといえば、リスト、バルトーク、コダーイなど偉大な作曲家を輩出している国。演奏家としても、私のもっとも敬愛するサー・ゲオルグ・ショルティ(指揮者)や昨年も来日したロスト・アンドレア(ソプラノ)などなじみも深い。またハンガリー舞曲やオペレッタが有名なだけに、ハンガリーの音楽家はリズム感が良い。そのあたりが、この室内管弦楽団に抜群のアンサンブルを生み出させている。今日は、第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン4、ヴィオラ3、チェロ3、コントラバス1、オーボエ2、ホルン2、という構成だった。指揮者がいないため、コンマスとアイコンタクトをとりながら、リズミカルに、そして音色はやや渋めの燻し銀といったところだが、ウィーン風とまではいかなくもまろやかで優しい。室内楽的に演奏するモーツァルトの音楽にはちょうどいい音色と音量だ。普通のオーケストラは指揮者が変わるたびに楽曲の解釈から演奏方法まで様々に変えられてしまう傾向が強いが、指揮者を置かない室内オケの場合、そのようなブレがないのかもしれない。一糸乱れず、実に見事なアンサンブルであった。それに演奏中の楽団員の表情が良い(1列目だからよく見えた)。皆、とても楽しそうに、お互いを信頼している様子がよく伝わってくる。音色の優しさもオーケストラの「人柄」が現れているようだった。遥か遠くのハンガリーからやって来て、地方をツアーで回ってくれる、このようなコンサートで、こんな素敵なモーツァルトを聴くことができて、望外の喜びであった。

 そして、4人のソリストの競演も華やかで楽しかった。ヴァイオリンの南紫音さんは、私もデビュー以来ずっと聴き続けてきたが、若いだけあって、聴くたびに成長していく感じがする。今日の「トルコ風」は偶然にも先週川久保賜紀さんの演奏を聴いたばかり。比較するものナンだが、川久保さんの流麗さに対して、南さんは素直な演奏の中にも溌剌とした伸びやかさが加わって、音色が明るくなった(もちろんモーツァルトだからということもある?)。演奏中の表情もやわらかで、いつもの思い詰めたような表情が見られないばかりか。時折微笑みをまじえながら、演奏を楽しんでいるようだった。Brava! 思えば、モーツァルトがこの曲を作曲したのと、今の南さんはほぼ同じ年齢。何か感じ取れることがあるのかもしれない。

 フルートの高木綾子さんはこの道の第一人者。残念ながら私の守備範囲ではないので、何ともコメントのしようがないのだが、とにかく上手い人だなあ、という印象。低音部の深みのある音色から高音部まで、柔らかな音色で優雅な演奏だった。

 ピアノの菊池洋子さんは、今までナマ演奏を聴いたことがなく、以前から是非一度聴いてみたいと思っていたピアニストだ。深紅のドレスで登場した菊池さんの印象は、「背の高い人」。やっぱりピアニストは手が大きいから…関係ないか。今日の協奏曲は、指揮者がいないため、ピアニストは客席に背を向ける配置、指揮者が弾き振りをする時と同じだ。従って、ずっと菊池さんの背中を見ていたことになるが、指使いもよく見えたので面白かった。菊池さんはモーツァルトを得意としているようで、転がるような丸い音色で、軽やかな印象。その中にも微妙なニュアンスの表現が非常に丁寧で、繊細だった。

 ソプラノの中嶋彰子さんは言わずと知れたベテラン。有名なモテットも堂々たる押し出しで歌ってくれた。今日のコンサートで登場したどの楽器よりも音量が大きいのは、中嶋さんの声だった(?)。中嶋さんの歌い方は完全にオペラ風。今日の管弦楽の規模だと、ちょっと声が大きすぎたかな、とも感じられた。会場が広かったので、声量自体は正しかったのだと思うが、1列目で聴くのはちょっとキツかった。中嶋さんの声質には芯があり、どちらかといえば硬質で力強い。この曲にはちょっとあわないような気もするが、歌そのものは技術的にも完璧といって良い。文句なしのBrava! である。
 アンコールに飛び出したのはオペレッタ「こうもり」から。モーツァルト・ガラ・コンサートなのに…。これこそ中嶋さんの本領発揮。ステージの際まで出てきて見事に歌いきった。最後だけウィーン風のお正月のような楽しい幕切れだった。

 終演後、恒例のサイン会。南紫音さんのデビューCDにはすでにサインをしてもらっているので(2008年のリサイタル/紀尾井ホール)、今日は菊池洋子さんのCDを購入、サインしていただいた。


 ついでといっては大変申し訳なかったが、4人のソリストさんたちに、プログラムにサインをいただいた。
 南さんに聞いたところ、新しいアルバムは3月10日の発売とのこと。3月20日のリサイタル(市川市)に行く予定なので、その時は新しいアルバムにまたサインしてもらえるかしら…。
 中嶋さんに「最後に『こうもり』が出てくるとは思いませんでした」と伝えたら、「ちょっとしたサプライズでご用意しました」とのこと。本当にサプライズでした。


4人にサインをいただいたプログラム(もっと豪華なプログラムならよかったのに…)

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