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12/24(月・祝)読響みなとみらい名曲/カンブルランの超高速で駆け抜ける「第九」

2012年12月25日 01時19分08秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第60回みなとみらいホリデー名曲シリーズ

2012年12月24日(月・祝)14:00~ 横浜みなとみらいコンサートホール S席 1階 2列 14番 7,000円
指 揮:シルヴァン・カンブルラン
ソプラノ: 木下美穂子
メゾ・ソプラノ: 林 美智子
テノール: 高橋 淳 → 与儀 巧
バリトン: 与那城 敬
合 唱: 新国立劇場合唱団
合唱指揮: 三澤洋史
管弦楽: 読売日本交響楽団
【曲目】
ベートーヴェン: 交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

 読売日本交響楽団のみなとみらいホリデー名曲シリーズの第60回は、常任指揮者のシルヴァン・カンブルランさんの指揮による「第九」。読響の今年の「第九」は、サントリー名曲シリーズ(12/19)、東京芸術劇場名曲シリーズ(12/22)、東京芸術劇場マチネーシリーズ(12/23)、みなとみらい名曲シリーズ(12/24)と、2回の「第九」特別演奏会(12/21、12/29)の6回公演だ(トップ画像は今日のコンサートのチラシではありません)。読響の「第九」は、サントリーホールの「定期演奏会」を除く定期シリーズに組み込まれているため、シリーズの年間会員になっていれば、S席でも4,000円ちょっとの金額で聴くことができる計算になるので、かなり得した気分になれる。今日のみなとみらいホールでのコンサートも、S席の1回券の定価は9,000円(!!)もするのだ。

 ソリストは、ここ数年すっかり定着した感のある、ソプラノ木下美穂子さん(ソプラノ)、林 美智子さん(メゾ・ソプラノ)、高橋 淳さん(テノール)、与那城 敬さん(バリトン)。ただし今年は、高橋さんが体調不良のため降板し、代役は与儀 巧さんとなった(来年2013年は高橋さんの予定)。いずれも二期会系のトップ・アーティスト揃いである。【画像は、上段左から木下美穂子さん、林 美智子さん、下段左から与儀 巧さん、与那城 敬さん】合唱は、三澤洋史さんの合唱指揮による新国立劇場合唱団。こちらもプロの合唱団としてその実力派折り紙付きである。一方、指揮者は毎年変わる。今年は、常任のカンブルランさんが、満を持しての登場だ。フランス風(?)の「第九」って、どういうものになるのか、興味津々で会場入り。

 定刻になって、まず合唱団が入場。左側が女声、右側が男声と、通常の配置である。総勢80名くらいか。続いてオーケストラのメンバーが入場。さらに、4名のソリストも入場し、オーケストラの後方、合唱団の前列に陣取った。腰掛けてしまうと、2列目の席からはほとんど見えないのが残念だ。カンブルランさんが軽快に登場して、曲が始まる。

 第1楽章、ヴァイオリンによる第1主題の提示にはアンサンブルがやや濁って聞こえ、オーケストラがまだ暖まっていない印象。もちろんすぐに修正されていく。カンブルランさんは、やや速めでインテンポ。リズム感もカッチリして切れ味鋭く、ストレートに突き進んで行く。今日の読響は、広いダイナミックレンジで、強奏時の音量も素晴らしく、ダイナミックで迫力満点の演奏であった。もちろん、全合奏のffでも、全体のバランスも良い。
 第2楽章のスケルツォは、かなり速めに感じた。かなり密度の詰まった感じの演奏で、速いテンポと広いダイナミックレンジで、あわただしく曲が進んでいく。中間部になるとややテンポは落としたものの速めのインテンポには違いなく、管楽器の各パートも旋律を豊かに歌わせる間がない。ホルンのソロの部分などは一生懸命テンポを出している感じだ。
 第3楽章の緩徐楽章も、速い。従ってこの楽章の持つ「天国的な平安」というイメージの楽想ではなく、ロマンティックな変奏曲という感じになった。このアプローチは衝撃的だったが、逆の見方をすれば、かなり新鮮な響きを持っていた。普通の演奏では、やや冗長に感じて眠気を誘うようなところがあるが、さすがに今日の演奏では、聴く方にも良い意味での緊張感が伝わってきていた。
 第4楽章も、もちろん速い。オーケストラも、低弦のレチタティーヴォも速めにグイグイと押し進められていく。第1~3楽章の主題が回帰した後、低弦から始まる「歓喜の歌」の主題も速めのインテンポ。虚飾を排した、といったら大袈裟だろうが、カッチリしたリズム感で、明瞭な演奏スタイルは、「スコアはこのように書かれているのだ」という主張であろうか。余分な「解釈」を持ち込まない演奏であるにも関わらず、強烈な音楽性を感じるのは、読響のダイナミックな演奏も功を奏していたのだと思う。
 与那城さんの歌い出しは、それほど強い押し出しではなかったが、ジワリと響いてくる美声で、よく通っていだ。4名のソリストが歌い出してくると、さすがに二期会のスター歌手たちの貫禄を見せた。ソプラノの木下さんはかなり地力があり豊かな声量を持っているが、今日は抑え気味でアンサンブルを重視していたようだ。従ってメゾ・ソプラノの林さんの声も十分に聞こえ、女声二人のハーモニーも美しく響いた。テノールの与儀さんは、ソロの部分がやや声量不足気味で、もう少し強く押し出してもよかったと思う。今日の4名のソリストの演奏は、個々の力量というよりは、4名のアンサンブルやハーモニーの美しさが素晴らしく、これはカンブルランさん流の音楽作りなのだろうか。
 合唱は特に素晴らしかった。さすがプロの合唱団である。今日の合唱は、立ち上がりがクッキリとした明瞭な発声で、ピタリとあったアンサンブル、強弱のニュアンスなども見事にコントロールされていた。天使の声のようなソプラノの弱音、全合唱の強奏時の音の厚み、さらに全合奏時のオーケストラとのバランスなど、素晴らしいの一語に尽きる。このあたりは、寄せ集めや急造の合唱団とは一線を画していたように思う。

 今日の「第九」はカンブルランさんの速球勝負のような音楽作りに驚かされつつも、その新鮮さには光ものがあった。フランス風というわけではないだろうが、ドイツの重厚・荘厳なイメージとは違っていたことは確かだ。その上に、読響と4名のソリスト、そして合唱団のハイレベルの演奏が乗ったために、極めてクオリティの高い、そしてちょっと風変わりな「第九」となった。このような演奏ももちろん「あり」である。やはり「第九」は懐が深い名曲なのだと思う。演奏時間、70分。

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